平成2 平成25年度教育課程研究協議会【 年度教育課程研究協議会【小学校・ 小学校・理科部会】 科部会】 1 理科教育の今日的課題 (1)理科の有用性に対する意識 ※平成 24 年度全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙調査の結果より ○理科の勉強が好きな小学生・中学生の割合は国語,算数・数学に比べて高いが, 「理科の勉 強は大切」 「理科の授業で学習したことは将来社会に出たときに役に立つ」と回答した割合 は,国語,算数・数学に比べて低い。 小学校 理科 中学校 国語 算数 理科 国語 数学 全国 県 全国 県 全国 県 全国 県 全国 県 全国 県 勉強が好き 82% 84% 63% 66% 65% 67% 62% 67% 58% 59% 53% 54% 勉強は大切 86% 90% 93% 95% 93% 95% 69% 77% 90% 94% 82% 85% 授業で学習したことは 将来役に立つ 73% 80% 89% 92% 90% 93% 53% 62% 83% 89% 71% 71% *「当てはまる」 「どちらかといえば当てはまる」と回答した児童生徒の割合 ○「理科の授業の内容はよく分かる」と回答した小学生と中学生の割合の差が国語,算数・数 学と比べて大きい。 小学校 中学校 差(小-中) 全国 県 全国 県 全国 県 理科の授業の内容はよく分かりますか 86% 90% 65% 70% 21 20 国語の授業の内容はよく分かりますか 83% 87% 72% 79% 11 8 算数・数学の授業の内容はよく分かりますか 79% 82% 66% 66% 13 16 *「当てはまる」 「どちらかといえば当てはまる」と回答した児童生徒の割合 ○全国学力・学習状況調査の結果を踏まえて,小学校理科でできることは何か ・ただ,楽しい,好きということだけではなくて何を身につけさせるのか。 ・各単元の中で,子どもたちに考えさせ,他者の考えを生かして違う見方をさせていく。 ・分析,討論を行い科学的な見方や考え方を養っていくことが今後さらに重要になっていく。 (2)問題解決のスキルとプロセス ○他人事ではなく,自分事にして学ばせる ○問題解決の熟練された技術【スキル】 ・問題を追究していく。 ・自分で問題を意図的に設定する(理科の教科の特性・独自性) 。 ○問題解決の過程【プロセス】 ・自分の考えを顕在化させて,それを基に評価(思考・表現)を行い,指導につなげていく。 ・信憑性のあるデータを作成し,データをよく吟味して科学的証拠に基づく説明を行う。 教師の演示実験による1つのデータで結論付けない。 (3)科学的思考力の育成 ○論理的に考える ・データから事実の解釈,説明,結論を導き出していく。 ○批判的に考える ・自他の考えを照合し,多様な考えからの暫定的な考えを構築する(合意形成) 。 ・予想や仮説の場面では,多様な考えを引き出す言語活動を行う。 (ただ単に理由を考えさせ,わけを言わせるだけの言語活動にしない) ・子どもの意見が一つしか出ない場合は,教師がゆさぶりをかけることも必要である。 ○実践的に考える:知識の活用と科学的なものづくりを行っていく。 小・理科 1 ※主体的に取り組むための,問題設定するまでの過程について ・問題に, 「不思議だ,どうしてだろう」という思いで臨めば,主体的に取り組もうとする。 子どもとのやりとり:子どもと現象のあいだで問題を見いだす。 →子どもの気付き,疑問 疑問→ 疑問→/→/→問題設定を行う。 問題設定 ・ 『授業は,マニュアル通りではなく,シナリオ通り』 演じるのは,子ども。場面に応じて,臨機応変に変えていくことも必要である。 1時間の授業時間内に問題解決のすべてを入れようとすると無理が生じる ・考える時間を保障する。 その時に,理科では必ず具体の事物・現象から始める。観察・実験,体験が必要になる。 →そこから自分の見方がスタートする→他人事だったものが自分事になっていく。 ・5W1Hをうまく使う。発問を工夫する。特に,WHYとHOWを使い分ける。 「なぜ~?なぜならば・・・」の形式から「何が,いつ,どこで,どのように?」の形式へ 教師の発問が, 「なぜ~?」では,子どもは答えにくい。 「なんで・どうして」を「どのように~?」の問いに変えて,多様な考えを引き出す。 ○理科学習における問題解決の過程【プロセス】 ①自然の事物・現象への働きかけ ②問題の把握・設定 ③予想・仮説の設定 ④検証計画の立案 ⑤観察・ 観察・実験 →問題解決の 問題解決の中核, 中核,児童による 児童による意図的 による意図的・ 意図的・目的的な 目的的な活動 ⑥結果の整理 ⑦考察 ⑧結論の導出 ・体験 体験→ 体験→言語活動→ 言語活動→体験→ 体験→言語活動の繰返し。バランスよく。 言語活動 「探究的な学習活動の重視」・・・主体的な授業参加 ①の自然の事物・現象への働きかけを十分(時間的・内容的に)にとる→問題意識を醸成 ⑤の観察・実験に時間を十分にかけることができるように。 ⑥の結果の整理には,自分の思いは入らない(判断は入らない) 。 ⑥結果の整理と⑦考察をはっきり分ける。 ⑦の考察に,自分の思いが入ってくる。 (考察,分かったこと,まとめ,結論が混ぜて使われている→言葉の意味を踏まえて整理を) 自分の予想と結果が異なる場合は,必ずその要因を振り返らせ,考える時間を設定する。 ⑧の結論が②の問題に対するアンサーになる。 ④の計画で実験方法が,ビーカーよりも試験管の方がよいのであれば教師が準備をする。 教師は, 『子どもにまかせる』が,時として『放任』になっていないか,見直す。 ・時間配分が大切。この授業では,主にどこに主眼をおくのか。教師のかかわりも重要。 ① 言語活動 ⑥ ⑦ ⑧ 考 察 結論の導出 小・理科 2 観察・・・・実験 予想・仮説 *毎回, 「書く活動」ばかりでは,いけない。 言語活動 ⑤ 結果の整理 ④ 検証計画の立案 ③ 問題のののの把握 自然のののの事物・・・・現象への働働働働きかけ ② 振り返り・見直し ○体験と言語で織りなす問題解決 ○問題解決の縦のラインと横のラインをあわせる ・多様な考えから,他のグループと結果を照らし合わせ,最終的に全員で共有していく。 ・多数決では,結果は決まらない。 観察で事実を捉え,実験で証明していく『 『実証性』 実証性』 誰がどこでやっても条件が同じであれば,同じ結果になる『 『再現性』 再現性』 そして,みんながなるほどと思える『 『客観性』 客観性』を大切にしていく。 2 平成 24 年度全国学力・学習状況調査を踏まえた詳細分析と観察・実験の技能の習得状況に関する分析 (1)詳細分析 ○分析結果から見られる特徴的な傾向 ・同一単元での学習内容であっても,知識・技能の習得や活用に課題が見られる。 他単元,他学年の内容,中学校との関連する内容,他教科の内容等においても同様の傾向 ・学習した内容を忘れてしまったために無解答になっている場合が多く見られる。 ○分析結果を踏まえた指導改善のポイント ・児童の実態を把握しながら指導する問題解決を充実させる。 ・科学的な言葉の意味を自然の事物・現象と関係付けて考察する学習指導を充実させる。 習得した知識を使って,適用,分析,構想,改善するなど,実際の自然や日常生活で考察で きるように指導することが大切である。 ・学習した科学的な言葉や概念を使用する機会を充実させる。 学年の系統性や単元間の関連性を意識した指導計画を立案する。例えば「回路」という科学 的な言葉を各学年で意図的に使用する機会を設定するような指導の工夫・改善が大切である。 「活用の枠組み」 (適用・分析・構想・改善) 適用 分析 構想 改善 理科で学んだことを,実際の自然や日常生活にあてはめて用いることができるかど うかを問う。 観察・実験の結果についてその要因や根拠を考察し,説明できるかどうかを問う。 問題点を把握し,解決の方法を構想したり,問題の解決を想定したりすることがで きるかどうかを問う。 自分の考えを証拠や理由に立脚しながら主張したり,他者の考えを認識し,多様な 観点からその妥当性や信頼性を吟味したりすることなどにより,批判的に捉え,自 分の考えを改善できるかどうかを問う。 (2)観察・実験の技能の習得状況に関する調査分析 対象学年及び児童数:小学校4年~6年児童 662 人,実施期間:平成 24 年 6 月~12 月 実施方法:評価者が対象児童と一対一形式で操作を行わせ,評価規準に沿って評価し分析 調査項目:虫眼鏡,顕微鏡,方位磁針,アルコールランプ,直列・並列つなぎ,検流計等 ○調査分析結果から見られる特徴的な傾向 ・課題のある技能:並列つなぎ,顕微鏡の操作(特にピントを合わせること) ○学力調査の結果と技能の習得状況の対比から見られる傾向 ・虫眼鏡の操作については,学力調査では課題が見られるが,実際の技能の習得では多くの児 童ができている。 (最終的な通過率は高いものの,操作過程で試行錯誤しつつの操作や学力調 査の誤答例と同様に 「虫眼鏡を観察するものに接触させる」 など適切でない操作が見られる。 ) ・方位磁針の操作について,学力調査と実際の技能の習得状況ともに課題が見られる。 ○調査分析を踏まえた指導改善のポイント ・各地域・学校における観察・実験技能の習得状況を把握する。 ・観察,実験器具に触れる機会を増やす学習指導を充実させる。 学習した学年よりも後の学年の方が技能の通過率が下がる傾向が見られる。 ・観察,実験器具の機能を理解して操作する学習指導を充実させる。 小・理科 3 3 行政説明 ・理科教育設備整備費等補助金の事業計画の追加募集について(8月9日まで) ・理科の観察,実験指導等に関する研究協議実施事業の第二次募集について(9月) ・理科観察実験支援事業について(7月19日付教義第1497号で市町村教育委員会へ事務連絡を発送済) ・学校における放射線に関する教育の支援 4 学習評価 (1)3つの基本的な考え方 ○目標に準拠した評価による観点別学習状況の評価や評定の着実な実施 ○学力の重要な要素を示した学習指導要領等の趣旨の反映 ○学校や設置者の創意工夫を生かす現場主義を重視した学習評価の推進 ※評価の観点を「関心・意欲・態度」 , 「思考・判断・表現」 , 「技能」 , 「知識・理解」に整理。 設置者や学校においては,これに基づく適切な観点を設定する。 (2)観点別学習状況 A: 「十分満足できる」状況と判断されるもの B: 「おおむね満足できる」状況と判断されるもの C: 「努力を要する」状況と判断されるもの ・例えば,科学的思考・表現の学習評価では理科の目標と照合して,自分の考えがどの程度, 表出しているかで判断するべきところ, 単にきれいな図がかけているという理由でAとして いないか。 (3)留意点 ・学習評価をその後の学習指導の改善に生かす。 ・評価結果について,教師同士で検討し,実践事例を着実に継承する。 ・年間指導計画に観点別学習状況の評価に係る最適の時期や方法を観点ごとに整理する。 ・評価するべき点を見落としていないかを確認する。 ・必要以上に評価機会が設定されていないかを確認する。 ・評価資料の収集,分析に多大な時間を要する設定になっていないかを確認する。 ※学習指導の在り方の見直しや個に応じた指導の充実を図るための学習評価 ※発言を正確に記録したり,レポートの記述を分析したりして評定にいかすための学習評価 参考資料: 「評価規準の作成のための参考資料」 (小学校) 平成22年11月 国立教育政策研究所,教育課程研究センター 5 まとめ (村山教科調査官) ○理科では,体験(観察・実験)と言語活動のバランスが重要 ・全国学力・学習状況調査の理科では,学力のすべてを測っているわけではない。子ども,教 師,また実験器具等も含めて背景にあるものを見ていく必要がある。日々の授業実践をトー タルで考え,指導に当たっていただきたい。 ○授業は,教材に向かっていくのが原点 ・学びの本質を常に問わねばならない。 ○さらなる授業改善が必要なものも現実的な問題としてある 小学校理科の 小学校理科の教科の 教科の目標が達成されるよう,熱い思いをもって指導に当たっていただきたい。 目標 小学校理科の 小学校理科の目標( 目標(平成20 平成20年改訂 20年改訂 学習指導要領より 学習指導要領より) より) 自然に 自然に親しみ, しみ,見通しをもって 見通しをもって観察 しをもって観察, 観察,実験などを 実験などを行 などを行い,問題解決の 問題解決の能力と 能力と自然を 自然を愛す る心情を 心情を育てるとともに, てるとともに,自然の 自然の事物・ 事物・現象についての 現象についての実感 についての実感を 実感を伴った理解 った理解を 理解を図り,科学 的な見方や 見方や考え方を養う。 6 研究協議 ○平成25年度教育課程指導資料 冊子版・ホームページ版 より 学習評価の観点の「科学的な思考・表現」を評価するうえで,工夫している点と課題点につ いて 小・理科 4
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