「子どもを生かすグループ・エンカウンター」 - Hi-HO

「子どもを生かすグループ・エンカウンター」
子どもも教師も元気になるためのヒントは・・・
↓
学級や集団の中にたくさん詰まっている。
↓
せっかくの資源はぜひ生かしていきましょう!
○ 学級集団を生かした関係づくり
学校は、児童・生徒の発達段階に応じて成長していくことを援助するところであり、
教育するところである。グループ間の人間関係を通して、行動の変容やパーソナリティ
の成長を図っていく。学校において、いろいろな成長をもたらす人間関係づくりを進め
ていくために、どうすればよいのだろうか。
教師には、教師だからこそ使えるカウンセリングがある。それは予防、開発的カウン
セリングであり、育てるカウンセリングである。
不登校やいじめ、授業不成立などの問題が起こったとき、解決を援助するのが「治すカ
ウンセリング」である。一方、
「育てるカウンセリング」とは、問題発生の予防および適
応や自己成長を援助するのカウンセリングであり、内在する対人関係への不安・緊張を
軽減して児童のストレスを除去していくことにその目的がある。
育てるカウンセリングでは、人生で遭遇するさまざまな問題を自力で乗り越え、解決
していく能力を養う必要がある。それは自分の思考・行動・感情について自己理解し、
自己変容していく能力ということである。これは、新しい指導のひとつである「生きる
力」にもつながる(飛田、2001)
。学校において教師でなければできないことは3つある。
① 人間関係づくり
② 進路に関する相談
③ 学習に関する相談
これら3つは日々子どもに接している教師でないと、なかなかむずかしい。教師だから
こそ力を発揮できる部分である。
教師生活で培ってきた経験だけでは、今の子どもたちの問題には対処できない部分が
ある。プラスαを付け加えると経験が光ってくる。つまりそれが教師のできるカウンセ
リング、育てるカウンセリングである。
教師だからこそ使えるカウンセリングよって、教師として、学級集団の中にある「個
を越えた力」を生かしていくことが求められている。
→ 構成的グループ・エンカウンター(Structured Group Encounter )
※
SGE と略記されることもある
1
1.定義と目的
○ 構成的グループ・エンカウンターとは?
→ 次の3つの部分から構成されている。
構成的
+ グループ
( structured )
( group )
枠を与える
集団
+ エンカウンター
( encounter )
出会い、ホンネとホンネの交流
(人数、ねらい、時間など)
<定 義>
「ふれあいと自己発見のための教育技法」
教育現場にそって定義づけるなら
「グループ体験を教師が意図的に組織し(=構成的)
、ホンネとホンネのふれあいに
よる人間関係を通して、今まで知らなかった自分や他者に出会うための教育技法」
(河村・小野寺、2001)
<目 的> ホンネのふれあいと自己発見を促し、人間的な自己成長をねらう。
① 集団内にリレーションをつくること
※リレーション:お互いに相手を尊重しながら、感情交流ができる関係。
② 人々が自己発見( discovery of self )をすること
○ 自己発見とは?
→ 今まで気がつかなかったか、気づいていても表現できなかった自分をオープン
にしていくプロセス
※「ジョハリの窓」で考えよう。
自己ならびに他者から見た自己の領域を表す概念。
ジョハリの窓
自分が知っている自分
自分が知らない自分
B
他者が知っている自分
他者が知らない自分
A
B
C
D
A
自他にオープンな領域
C
人に隠している秘密の
領域
SGE 実施
<浅い人間関係>
人に指摘されるまでは
気づかない自己盲点の
領域
D 自分にも人にもわから
ない無意識領域
A
B
C
D
<深い人間関係>
2
2.SGE の展開
○ 4つの柱にそって展開する。
(1) インストラクション ・・・・・ エクササイズの目的、やり方、ルールを教示する
こと。
→ SGE の効果に大きく影響
例:さぁ、これから「なんでもバスケット」をします。学級のみ んながどんな仲間なのか
を知ることが目的です。みんなそれぞれイスを持って、真ん中を向いて輪になって
座りましょう。
例:人が嫌がることを言ってはいけませんよ。
<ポイント> ①どんな導入ならモチベーションは高まるか?
②どうやって心的外傷を防ぐか
③どういうグループ分けが適切か
(2)ウォーミングアップ ・・・・・ インストラクションとエクササイズの間に、ウォー
ミングアップを入れる。これは心の緊張の緩和に
役立つ。
「アイスブレ−キング」とも呼ばれる。
例:フリーウォーク、後だしジャンケン
(3)エクササイズ ・・・・・ 心理的成長を促進するための課題。
例:
「いいとこさがし」「別れの花束」
< ねらい > 次のように分類される。
① 自己理解 ・・・・・ 私ってこういう人間なんだなぁ
② 自己受容 ・・・・・ 短所、欠点もあるけれど、でも私にもいいところがある!
③ 自己表現、主張 ・・・・・ 自分の気持ちを上手に相手に伝える
④ 感受性の促進 ・・・・・ 相手の気持ちを察知して、行動する
⑤ 信頼体験 ・・・・・ 自分を信頼する、他人を信頼する体験
⑥ 他者理解 ・・・・・ 相手のことを受け入れる、よさを認める
※構成=「枠」を伴う理由
→ 不安・緊張から解放される
→ 枠があるからこそ自由に動ける、作業しやすい、素直な自己開示ができる
など
<特 徴
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
>
ルールややり方が分かりやすい
短時間でも出来る。(ショートエクササイズもある)
子どもの実態や学級集団の状態によって、構成を変えて繰り返しできる。
授業や集団活動でも活用しやすい。
スキルのポイントが明確である
卓越したパフォーマンス能力がない教師でも活用できる
日常生活に連続性がある
※介入 ・・・・・ エクササイズ中の子どもの心的外傷を防ぐ。
→ やらせっぱなしではいけない。
3
(4) シェアリング ・・・・・ エクササイズを通して気づいたこと、感じたことなど自分
のなかに生まれた感情や考えを、自分自身のなかで、そし
て他のメンバーとホンネで語りあい、分かちあうこと。
・エクササイズを道具としてそこから
感じたこと
考えたこと
学んだこと
気づいたこと
を振り返る。
それを共有し、
分かちあう。
・シェアリングの形態
全体でする、小グループ、振り返り用紙を用いる・・・ など。
※
言葉で表現することは体験を意識化することになり、その場限りの体験で
終わらずにすむ。ここがゲームとの違いである。
3.指導する際のポイント(リーダーとして)
○より効果的に行うには
1)教師自身が体験していることの重要性
→よさとむずかしさの体験
2)リーダー自身の上手な自己開示
→教師が「自分の言葉で語る」
3)学級や集団にあったものを。
→ 教師が「これ、楽しそう」だけではなく、クラスの状態を見極めて
選択する。
※学級集団の実態把握・・・ <Q −U>(河村茂雄)がある。
「居心地のよいクラスにするためのアンケート(学級満足度尺度)」
「やる気のあるクラスをつくるためのアンケート(学校生活意欲尺度)」
○「居心地のいい集団」とは一体どんな集団?
→ ルールもなく、自由な集団?果たしてそうだろうか?
例:南かがやき教室
→ ホンネとホンネの交流があること
→ つまり、リレーションのある関係
→ 構えのない状態。
→ リレーションがあるとき、初めてそこには居心地のよさが感じられ
る。
→ 互いに気持ちよく生活できるためのマナー(ルール)が定着してい
て、ふれあいの交流ができ、子どもたち一人ひとりが、自ら進んで所
属したいと思うような集団。
一緒にいても緊張せず、リラックスした状態でいられる。お互いに構えがなく、
ホンネで自分のことを語り合うことができる。このリレーションのある人間関係を
日常生活で持っていることは、生きる支えとなる。人の心の健康を保持し、生きる
4
意欲を増進させる(河村、2002)
↓
子どもも教師もお互いに元気になれるのは、学級が居心地のいいクラスになって
いることである。
縁があって出会えた教師と子どもたちである。
お互いのよさが十分引き出されて、お互い元気を充電しあえるような学級づ
くり、関係づくりの一つに、構成的グループ・エンカウンターを利用してみ
てください。
※ SGE はさまざまな場面で活用できる
○ PTA への活用
○ 不登校の子どもたちへの活用
【参考 HP】
構成的グループ・エンカウンター公式 HP http://toshobunka.co.jp/sge/
秋田・学校におけるカウンセリングを考える会 HP http://www.pat.hi-ho.ne.jp/soyama/
スプリング・フィールド HP http://www5b.biglobe.ne.jp/~spring01/
【参考文献】
・「エンカウンター」 國分康孝 1981 誠信書房
・「育てるカウンセリングが学級を変える[小学校編]」 國分康孝他 1998 図書文化
・「教師のためのカウンセリング技術」
(スクールカウンセリングの実践技術 No.1) 松原
達哉他 2001 教育開発研究所
・「エンカウンターで総合が変わる」(小学校編) 國分康孝他 2000 図書文化
・「エンカウンターで総合が変わる」(中学校編) 國分康孝他 2000 図書文化
・「ワークシートによる教室復帰エクササイズ」 河村茂雄編集 2002 図書文化
・「カウンセリングの技法」 國分康孝 1979 誠信書房
・「育てるカウンセリング実践シリーズ1「学級崩壊 予防・回復マニュアル」 河村茂雄
2000 図書文化
・「育てるカウンセリング実践シリーズ2 グループ体験によるタイプ別学級育成プログラ
ム (小学校編)
」 河村茂雄 2001 河村茂雄
・平成 12 年度学習会資料「構成的グループ・エンカウンターについて」 曽山和彦
・平成 14 年度中央学習会資料「構成的グループ・エンカウンターとはなにか」 佐藤健吉
・平成 14 年度県南学習会資料「構成的グループ・エンカウンターについて」 高橋さゆ里
5
2002・11・16
高 橋 さゆ里
「生学総研」秋季・実践研修会資料
☆
☆
☆
☆
☆
本日のエクササイズ
☆
☆
☆
☆
☆
☆
☆
「自己開示握手」
ねらい :自己開示、信頼体験
理論的背景:かかわり技法
「後出しじゃんけん」
ねらい :緊張をほぐす
理論的背景:アイスブレーキング
「干支チェーン」
ねらい :ジェスチャーを使ってコミュニケーションをはかる
理論的背景:自己開示、非言語コミュニケーション、受容
「なんでもバスケット」
ねらい :オニは、はじめは表面的で目に見えるものから、次第に内面のことを
言い、自己開示の体験をする
理論的背景:自己開示、他者理解、他者受容
「10円玉リレー」
ねらい :グループのメンバーとの一体感を体験する
理論的背景:アイスブレ−キング
「フリーウォーク」
ねらい :ゆっくり自由に歩くことで、自分の気持ちに目を向ける体験をする。
理論的背景:実存主義
「肩もみインタビュー」
ねらい :軽いスキンシップで緊張をほぐしながら、自己開示の体験をする。
理論的背景:自己開示、傾聴、アクティブリスニング
「ぷらすめっせーじ」
ねらい : 短所だと思っていることを長所にリフレーミングする。
「短所、長所、ひっくるめて私は私である」ことに自己肯定感を高める。
理論的背景:リフレーミング
「グループ・シェアリング」
6
☆ ぷらすめっせーじ しーと ☆
name
○
(
)
自分で短所(あ
まり好きではないなぁ・・・)と思うことを、下の欄に記入してみよう。
1.
2.
○ 短所だと思っていたことも、見方を変えるとステキな長所に早変わり!
(
)さんへ
1.
2.
(
)&(
7
)より