IAIR 認定プラクティショナー ベーシックⅠ ∼筋膜∼ ■ 腹部ポンピングの意義と方法 <意義> ・ 腹部の血流増加によって、内臓の硬さの軽減することで脊柱の可動性向上。 ・ インナーマッスルの機能改善。 <方法> ① 右図の三カ所を呼気に合わせて、床方向に押す。 * 1 カ所を多くポンピングすると身体が癒しモードに入って しまう為、 逆に筋力が低下する。 (後者の方法は治癒力が低下している方に対して行う。) *後者の方法は生理1∼3日目までの女性には行わない。 <ポイント> ・吐ききる。 ・力まない。 ・ 手が入るとこまで入れる。 理論的背景: 腹部のポンピングでは内臓の血流増加に伴う、神経機能の促通によって筋の促通をはかっ ている。これは、交感神経の結節である太陽(内臓)神軽叢に対するアプローチである。他 には心臓神経叢、下腹神経叢があり、内臓機能、自律神経に大きな影響を及ぼす。 ■ 横断系隔膜(骨盤隔膜・横隔膜・胸郭出口)を治療する意義 <意義> ・間質液(細胞外液)の流れをよくする。 ・呼吸器機能の改善。 理論的背景: 腹部ポンピングで述べた、交換神経の結節のひとつ、心臓神経叢へのアプローチで、循環 機能の調整に必須の部位である。また、横隔膜に対する直接的効果として、横隔膜に付着す る臓器(胃、肝臓、動静脈、肺、心臓など)の物理的粘弾性促進効果も期待出来る。 ■骨盤隔膜・横隔膜のリリース方法 <方法> ① 両手を軽く丸め、下腹部又は胸郭下部に置く。 ② 下腹部にあるボール(イメージ)を潰すように、 平行に圧をかける。 ③ 柔ら居場所から硬い場所へ徐々に移行する。 * 硬い場所は無理してリリースしない。 理論的背景: 腹部ポンピングで述べた、交換神経の結節のひとつ、下腹神経叢へのアプローチで、自律 神経の不調は勿論、腸機能、生殖器への機能障害へのアプローチが出来る。これらに加え骨 盤底筋群の促通も行える。 ■ 胸郭出口のリリース法 <方法> ① 胸鎖関節下部に手を置き、 左右上下に動かし硬い方向を見つける。 ② 硬い方向へゆらす。 理論的背景: 胸郭出口周辺には腕神経叢や動脈、筋と上肢機能に関わる組織、または気管などの循環器、 食道などの消化器機能への影響がある。これらの多くは斜角筋によるこれらの拘束、肋骨の 可動性低下による拘束による影響を受け、胸郭出口へのアプローチで改善することが出来る。 ■ 頸長筋リリースの意義・方法 <意義> ・ 頸部のインナーマッスルである頸長筋の機能改善により、 胸鎖乳突筋や僧帽筋の緊張の抑制、嚥下機能の改善を図る。 <方法> ① 胸鎖乳突筋と食道・気管の間にある頸長筋を触診。 ② 頸長筋と頸椎前部から剥がすように、上下にリリースする。 理論的背景: 頸長筋は頸部のインナーマッスルである。役割は頸椎を抗重力位に保つ。しかし,姿勢の 不慮による機能不全により、僧帽筋やその他のアウターでの代償が起きる。その結果、頸部 周囲の問題を起こす。促通による機能障害へのアプローチも可能だが、頸椎、食道や気管に 癒着している組織をリリースすることで、頸腸筋の促通が行える。 ■ 舌骨リリースの意義・方法 <意義> 顎二腹筋などの緊張を緩和し顎関節の機能改善を促す。 <方法> ① 舌骨の歪みを評価する。(上下、左右、回旋) ② 歪みをさらに助長させるように動かし待つ。 (間接法)又は、ゆがみを直す方向に動かし 待つ。(直接法) ③ ニュルッと動いた感じをつかんだらリリース完了。 理論的背景: 舌骨には、下顎、胸骨、後頭骨、肩甲骨と様々の部位への繋がる筋の中継地点である。 これらの機能不全の裏には舌骨の可動性低下がある。これによる顎関節症、頸部痛、胸 郭の可動性、肩甲骨のコントロール不全による上肢機能へ影響を及ぼす。 ■ 僧帽筋・胸鎖乳突筋リリースの意義と方法 <意義> 頸部周囲の筋膜系のリリースに効果的。 頸椎の可動性に効果的。 <方法> ① 胸鎖乳突筋の場合、治療側の耳を上方又は床方向に引っ張る。 ② その状態から、胸鎖乳突筋停止部を軽くマッサージする。 ③ 僧帽筋の場合、手を交差するように下顎部と肩甲骨上部を押さえる。 ④ 筋膜層まで押し込み、Z 字を描く方向にリリースする。 理論的背景: 僧帽筋、胸鎖乳突筋をリリースをするのは、頸部周囲の筋緊張の影 響が最も多い筋である。また、これらの筋は頭蓋の可動性に大きく 関わる筋で、僧帽筋は後頭骨、胸鎖乳突筋は側頭骨と第一次呼吸を 治療するために重要な頭蓋である。 ■ 胸骨リリースの意義と方法 <意義> 胸骨は元々パズルのように分かれ、その間は軟骨組織で結合している。 心理的な苦痛を味わった際には、胸骨周辺が硬くなる実感をする人も 少なくなく、呼吸器、循環器系への影響がある。 エモーショナルな部分のリリースにも繋がる。 <方法> ① 左右の胸骨の傾きを見る。 ② 胸骨を中心に集めるように左右から集め、歪みを取り待つ。 理論的背景: 胸骨は頭蓋骨などと同じで小さな骨のかけらであった。それら は軟骨組織で結合し成長する過程で胸骨体、胸骨柄となる。軟 骨組織であった場所は少なからず軟骨組織としての役割を持っ ていて可動性がある。そのため、胸骨の下の縦隔(左右の肺の 間、胸椎、横隔膜などに付着し心臓を覆っている)のリリース も行える。 ■ 大腰筋と腸骨筋のリリースの意義と方法 <意義> ・ 骨盤内で癒着を起こしている大腰筋と腸骨筋間の機能改善、 脊柱∼骨盤∼大腿骨の機能分離を促す。 ・ 下肢の血流改善や tone への調整効果。 <方法> ① 両手を軽く握り、腸骨内側から腸骨筋を触れる。 ② 徐々に深く手を入れ、腸骨筋と大腰筋の重なり合う部分を探す。 ③ 腸骨筋から大腰筋を剥がすようにリリースする。 理論的背景: 最重要インナーマッスルである大腰筋。これらは特に黒人、欧米 時に著名に発達が見られる。日本の研究では、転倒しない高齢者 にこの筋の発達が観察されている。基本的に日本人全体としては 機能障害に陥っている人がほとんどで、促通が難しい。そのため 筋は萎縮し、腰椎または腸骨筋との癒着があり筋の滑走が行われ ない。そのため癒着ポイントを剥がすことで筋の滑走を促し、筋 の発揮がしやすい環境を作ることが出来る。 ■ 腸腰筋と大腿四頭筋のリリースの意義と方法 <意義> ・ 股関節の伸展制限を起こすポイント。 ・ 脳卒中後遺症の臥床時の下肢屈曲痙性抑制にも効果的。 <方法> ① 大腿内側(小転子)を目指して手を入れる。 ② 大腰筋と大腿四頭筋の交差点を触診。 ③ 大腰筋と大腿四頭筋を剥がすようにリリースする。 理論的背景: 小転子付近では筋が密集し、血管、神経、靱帯の走行がある。これらの癒着は股関節の可動 性を低下させ、下肢への血流阻害因子となる。 ■ 大腰筋リリースの意義と方法 <意義> ・ 大多数の患者さんが機能不全を起こしている大腰筋の緊張を緩和する。 ・ 大腰筋由来の腰痛に非常に効果的。 <方法> ① 腹部より大腰筋を挟み込むように包む。 ② 左右に動かし、固さを取る。 理論的背景: 大腰筋、腸骨筋のリリースの所でも述べたが、この筋は機能不全を起こしやすく癒着して いる場合が多い。腸骨筋との癒着もあるが、左右の大腰筋間での癒着も存在し、左右の動き に分離出来ていない。また、内臓との癒着があり、腰椎の可動性への障害もある。
© Copyright 2024 ExpyDoc