IAIR 認定プラクティショナー ベーシックⅡ ∼上肢∼ ■ 肘関節(橈骨頭)の調整 方法: ① 橈骨輪状靱帯を上下から挟み緩みを作る。 ② 前腕を回内させる。 ③ 靱帯の緩みを保持した状態で、肘関節を伸展させるように 素早くアジャストする。 * 過伸展させないように! * 前腕の遠位部と近位部両方とも動かす。 * パキッと音が鳴れば完了。硬い人又は力の入ってしまう人 は何回かに分け小刻みにアジャストする。 *背臥位で行っても良い。 前腕を持ってベッド面にグリグリ押し当てる方法もある。 ■ 前腕橈側手根関節の調整 方法: ① 橈骨茎状突起に親指を引っかけ、上方(橈骨頭方向)へ 押す。 ② この状態から素早く、上下に腕を振り抜きアジャストする。 理論的背景: 橈骨頭が亜脱臼を起こしている場合が多い。この時、遠位の橈 骨も変位し、橈尺間の可動性が失われる。同時に、手関節の可 動性が失われる。これにより、肘、手関節の可動性の代償とし て肩関節が動員される。これによる、肩関節周辺の筋の緊張を 招き同時に、広背筋、脊柱起立筋の緊張が高まる。そのため、 橈骨頭並びに前腕橈側手根関節の調整が必要となる。 ■ 腕尺関節の調整 方法: ① 肘窩に前腕を挟み、肘関節を屈曲する。 ② 上腕骨と尺骨の関節面を引き離しアジャストする。 理論的背景: 上腕骨と尺骨の関節面にトラクションをかけることで関節 の遊びを促す。 ■ 前腕骨間膜の調整 方法: ① 前腕遠位の皮膚を回内又は回外させる。 ② この状態から、手関節を掌屈、背屈させる。 * 橈骨を近位に押しつけながら。(患者様自身の動き、ムーブ メントを使っての方法もある。) 理論的背景: 橈尺骨間には膜組織が存在し、そこに血管、神経が通る。この膜の可動性を促すことで、関 節運動だけでなく、血流、神経、リンパなどの流れに対するアプローチも可能である。また、 片麻痺患者の上肢筋緊張に効果的である。これは、骨間膜滑走性低下や筋間の滑走性の低下 による筋緊張が影響しているためである。 ■ 上腕筋と上腕三頭筋間のリリース 方法: ① 上腕筋と上腕三頭筋間を触診する。 ② 上腕骨を触るように触診し筋間を剥がしていく。 理論的背景: 屈筋と伸筋間の癒着が起こることで、分離した筋の活動を妨げる。 またこれによる異常筋緊張を引き起こす。 ■ 手根管(手根部)の調整 方法: ① 手根部で手のアーチを作る(母指球と小指球を近づける)。 ② この状態をキープしたまま、上肢を上下に振り下ろし、アジャス トする。 理論的背景: 関節は老化が進むと詰まって広がるという法則から、手根管にも同様のことが起きる。その ため手の機能的アーチが低下する。これにより手根管を通る正中神経が圧迫を受ける。 ■ 月、舟状骨の調整 方法: ① 月状骨の触診は、リスター結節を触り掌屈すると現れる。 舟状骨はかぎたばこかを触り尺屈すると現れる。 ② 二つの骨を同時に触れ、掌屈、背屈を繰り返す。 ③ 関節のクリック音がなくなるまで行う。 理論的背景: 手の機能軸はどれも、月状骨または舟状骨を中心としているため、 可動性低下が生まれやすい。また、手のアーチの頂点でもあるため、 これらの関節の機能低下は機能的アーチを崩すことになる。 これらの機能低下は、第二、三中手骨の機能低下を起こす。 ■ 手根中手関節と中手骨間の調整 方法: ① 手根中手関節の関節間、中手骨間をそれぞれ単独に分離して 動くようにねじる。 ■ 指節の調整 方法: ① 各指節間をねじる。 理論的背景: 通常人体は、一方がねじれればもう一方は反対にねじれる事でバランスを取る。しかし、関 節の機能障害を起こしている箇所では、関節をまたいだ骨同士のねじれが同方向であること が多い。また、大脳の運動領域を表すホムンクルスを見ても分かるように、指を含めた手に おける運動領域は広範囲にある。その為、指節間の障害も多岐にわたる。 ■ 肩甲上腕関節の調整 方法: ① 肩関節を軽度外転させ、腋窩に手を置く。 ② 肩関節の内旋・外旋の可動性を診て、 動きの少ない方に回旋させる。 ③ その際に、腋窩を押さえた手でしっかり骨頭を押さえる。 ④ エンドフィールまで詰めて、骨頭をアジャストする。 理論的背景: 球関節であり可動範囲は3度と大きい。この関節の可動性低下は、肩関節周辺の筋緊張の亢 進を招く。 ■ 小胸筋の調整 方法: ① 骨to骨のタッチで小胸筋を触れる。 ② この状態から小刻みに上肢全体を揺する。 *肩甲骨が動くように 理論的背景: 小胸筋の機能不全は肩甲骨の可動性にダイレクトに影響する。 肩甲骨は上肢の筋は勿論のこと、全身のバランス機能としても重要であり、 肩甲骨がフリーで、コントロールすることが出来ると事がバランス能力向上に繋がる。 ■ 肩関節後部のリリース 方法: ① 肩関節90 屈曲位にする。 ② 肘頭から肩関節後方に向かって垂直に圧をかけ、緊張の 強い部分を探す。 ③ 緊張の強い場所に圧をかけながら硬さを取る。 理論的背景: 肩関節には多くの靱帯、筋が存在し、上腕骨頭の二倍の面積を有する関節包で構成されて いる。解剖学的特徴から骨頭は前方への脱臼リスクが高く、後方は多数の組織があり脱臼リ スクは低いが硬くなりやすい。 ■ 肩甲挙筋のリリース 方法: ① 肩甲骨の上角より肩甲挙筋を触診する。 ② 触診したまま肩甲挙筋の緊張が落ちるところまで肩甲骨を挙 上させ待つ。 理論的背景: 肩甲挙筋の機能不全により僧帽筋の緊張が起きる。本来肩甲骨 は上下左右と自由度は高いが、僧帽筋の緊張などで肩甲骨が挙上 し、これによって胸鎖乳突筋などの周囲筋の緊張が高まる。これ を緩和するように頸椎は前方変位しいわゆる猫背の姿勢になる。 これによる胸郭の可動性低下によって呼吸機能低下や自律神経機 能の低下を生む。 ■ 肩甲胸郭関節の調整 方法: ① 肩甲骨内側に指を入れる。 ② 肩甲骨を内転させ胸郭と肩甲骨の間に空間を作るように リリースする。 ③ 肩胛骨で円を描くように胸郭の上で動かす。 理論的背景: 広義の肩関節の中で唯一体幹との関節を構成している部 分は胸鎖関節のみである。他は筋によりつり下げられている ため常に緊張状態である。中でも昨今ではデスクワークが増 え、手先の仕事ばかりである。これにより肩甲骨から腕とい う認識の低下が起こり、肩甲骨と胸郭との関節面の可動性が 低下し、さらなる機能障害を起こす。 ■ 斜角筋の調整 方法: ① 左右の頸椎の回旋可動域を評価し、 可動域の低下している側の斜角筋の硬さを見る。 ② 斜角筋を触診した状態で、 頸椎の同側側屈と対側回旋させる。 ③ 術者の下肢を脇の下に入れ、術者の下肢を脇の下で 押すように指示する。 ④ 緊張が徐々に落ちていくのを感じる。 理論的背景: 斜角筋はインナーマッスルであり呼吸補助筋(努力性吸 気時に第一、二肋骨を挙げる)である。呼吸機能低下、マ ルアライメントにより頸部周囲筋の機能障害によって斜 角筋の緊張が高まる。上記のように頸部を動かすことで斜 角筋が緩み、肩甲骨の下制を行うことで相反抑制作用によ り斜角筋の緊張をさらに調整する。 <上肢治療のポイント> ・ 肩関節の問題は前腕から攻めるべし! ・ 手部の問題は肩関節から攻めるべし! ・ 肩関節の問題に対しては脊柱骨盤も重要!(特に骨盤)
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