佐賀県研究成果情報 キュウリ退緑黄化病(旧:黄化症)の発生原因 [要約

佐賀県研究成果情報
キュウリ退緑黄化病(旧:黄化症)の発生原因
[要約]キュウリ退緑黄化病(仮称,旧名:黄化症)は、タバココナジラミ類が媒介する
クロステロウイルスの一種であるCucurbit chlorotic yellows virus(CCYV, 仮称)の感染
が原因である。
佐賀県農業試験研究センター
土壌環境部 病害虫農薬研究担当
部会名
野菜専門部会
連絡先
専門
病害虫
0952-45-2141
[email protected]
対象
キュウリ
[背景・ねらい]
平成16年から県内のキュウリ産地において認められたキュウリ黄化症の発生には、新系統の
タバココナジラミ(タバココナジラミバイオタイプQ)が関与していることを明らかとした
(平成18年度成果情報)。しかし、本虫の中には、発症しない個体群も存在するなど発生原因
としてウイルスの関与が疑われたため、再調査を行う。
[成果の内容・特徴]
1.キュウリ黄化症発症株から九州沖縄農業研究センターが新たな手法を用いてウイルス検出
を行ったところ、クロステロウイルスの一種であるCucurbit chlorotic yellows virus
(CCYV,仮称)が検出された(図1)。
2.CCYV保毒タバココナジラミバイオタイプQをキュウリに接種することにより黄化症が再現
され、同種ウイルスが検出される(表1、図2)。一方、CCYVを保毒しないインゲンマメ継
代飼育虫を接種しても発症しない(表1)。
3.以上の結果から、キュウリ黄化症はタバココナジラミ類が媒介するCCYVによって起こる病
害であり、病名をキュウリ退緑黄化病(仮称)と命名された。
4.県内現地のキュウリ黄化症株から同種のウイルスが検出され、キュウリ退緑黄化病の発生
が確認された(表2、表3)。
[成果の活用面・留意点]
1.本病の症状は、退緑小斑点が拡大・癒合しながら葉脈の緑を残す黄化葉に進展するととも
に、下位葉から上位葉に黄化葉が拡大する。この症状は、オンシツコナジラミが媒介するキ
ュウリ黄化病に酷似する。
2.退緑黄化病の発生を防ぐためには、媒介昆虫であるタバココナジラミ類の防除を行う。施
設に防虫ネット(目合い0.4mm)を設置し、タバココナジラミ類の侵入を少なくする。
3.キュウリの他、メロン、スイカでの本ウイルスの発生が確認されている。
[具体的データ]
図1 CCYVの電子顕微鏡像
(矢印のひも状の粒子がウイルス)
図2 接種56日後のキュウリ黄化症症状
(接種上位7葉)
九州沖縄農業研究センター原図
表1 タバココナジラミ接種によるキュウリ黄化症の再現a)
接種後経過日数
10日
16日
22日
56日
キュウリ継代バイオタイプQ接種b) 0/3c)
1/3
2/3
2/3
+
インゲン継代バイオタイプQ接種b)
0/3
0/3
0/3
0/3
−
無接種
0/3
0/3
0/3
0/3
ウイルス検出d)
a)2007年5月28日、ワグネルポット植えキュウリ(品種:エクセレント節成2号、本葉5∼7葉期)
の第3葉に供試虫を各15頭接種した。
b)2006年12月12日、黄化症発生キュウリ圃場より採取したタバココナジラミバイオタイプQを
キュウリまたはインゲンで継代した。
C)発症株数/接種株数
d)CCYV特異的プライマーを用いたRT-PCRにより検出した。
表2 県内圃場におけるコナジラミ類の寄生と黄化症の発生1)2)
A圃場
1葉あたり B圃場
コナジラミ類
成・幼虫数 C圃場
D圃場
A圃場
B圃場
黄化症
発生株率
C圃場
D圃場
8/11
0.03
0.01
0.03
0.01
0.0
0.0
0.0
0.0
8/18
0.18
0.00
0.05
0.01
0.0
0.0
0.0
0.0
8/25
0.16
0.02
0.08
0.00
0.0
0.0
0.2
0.0
8/31
0.51
0.03
0.24
0.00
1.4
0.0
1.3
0.3
9/7
0.83
0.28
0.21
0.00
4.1
0.1
1.8
0.1
9/20
0.09
0.34
−
0.01
7.4
0.2
−
0.1
10/2
0.11
0.15
−
0.01
13.3
0.8
−
0.6
10/17
0.31
0.05
−
0.05
35.7
2.3
−
1.5
10/30
0.42
0.33
−
0.03
52.0
5.7
−
1.8
11/13 ウイルス検出
0.08
0.15
−
0.09
61.3
+
8.6
+
−
+
4.0
+
1)A圃場・・8月9日定植、品種;エクセレント353、台木;ゆうゆう一輝黒、サイド、谷に1mm目の防虫ネット被覆
B圃場・・8月11日定植、品種;エクセレント353、台木;ゆうゆう一輝黒、サイドに0.4mm目の防虫ネット被覆
C圃場・・8月8日定植、品種;エクセレント353、台木;ゆうゆう一輝黒、サイドに1mm目の防虫ネット被覆※台風通過により9/7で調査終了
D圃場・・8月7日定植、品種;エクセレント353、台木;ゆうゆう一輝黒、サイド、谷に0.4mm目の防虫ネット被覆
2)圃場調査は2006年、ウイルス検出は2007年に行った。
表3 県内キュウリ圃場におけるCCYVの検出
採取地
1 武雄市
2 武雄市
3 伊万里市
4 伊万里市
5 伊万里市
6 小城市三日月町
7 佐賀市川副町
8 佐賀市川副町
9 佐賀市久保田町
10 小城市
11 小城市三日月町
12 唐津市
採取日
H17.10.17
H17.10.17
H18.4.5
H18.4.5
H18.4.5
H18.8.25
H19.5.24
H19.9.6
H19.10.18
H19.11.30
H19.12.28
H20.1.10
採取部位
黄化症状葉
黄化症状葉
黄化症状葉
黄化症状葉
黄化症状葉
黄化症状葉
黄化症状葉
黄化症状葉
タバココナジラミ
黄化症状葉
黄化症状葉
黄化症状葉
CCYV
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
[その他]
研究課題名:果菜類の新規コナジラミ
「バイオタイプQ」等防除
技術の開発
予算区分:受託「先端技術を活用した
農林水産研究高度化事業」
研究期間:2007年度
研究担当者:古田明子、衞藤友紀、
山口純一郎
発表論文等: