沖縄県南部地域における飛来塩分、気象要因及び発錆量の相関について 南 1.6 西 北 c 1.4 東 西 1.6 南 北 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 4 5 6 7 8 9 10 11 12 H19_1 図3.1 飛来塩分量 (内陸部) 南 1.6 西 北 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 H18_1 2 3 東 飛来塩分量 (mdd) 東 飛来塩分量 (mdd) 1.6 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 飛来塩分量 (mdd) 飛来塩分量 (mdd) 1.研究目的 構造研究室 035311G 岩元洋貴 025323F 金城辰徳 沖縄県は高温多湿で、周囲を海に囲まれており、海塩粒子の飛散等により、鋼材の腐食しやすい環境下 にある。このような厳しい環境下で、鋼板が外気中でどの程度発錆するかを把握しておくことは構造物を 構築する上で極めて重要なことである。本研究では、内陸部と 表 2.1捕集期間 腐食環境の厳しい海岸部において土研式捕集器を用いて 飛来塩分 気象要因 飛来塩分の測定を行った。また、気象データ収集及び錆 内陸部 暴露試験による錆環境評価を行った。 H18/1/6~H19/2/2 H18/1/6~H19/2/2 海岸部 2.測定概要 海岸部屋上1 1)飛来塩分捕集 海岸部屋上2 H18/3/3~H19/2/2 H18/3/3~H19/2/2 ①期間 捕集は内陸部(琉球大学構内)、海岸部(那覇港海岸、那覇港近傍事務所ビル屋上、勢理客地区事務所 ビル屋上)内に設置した錆暴露試験場で行った。期間を表 2.1 に示す。 ②捕集方法 飛来塩分捕集器は各方位(東西南北)に 10×10cm の枠飛来塩分捕集口を設置したステンレス製のボッ クスタイプで、その枠中に飛来した水分を採取する。また、飛来塩分捕集器による試料の塩分濃度〔%〕 と試料量〔ml〕により飛来塩分量〔mdd〕を計測する。 2)気象データ 気象庁の那覇地区のデータである一時間毎の値(相対湿度〔%〕風向、 平均風速〔m/s〕)と一日毎の値(平均気温〔℃〕平均相対湿度〔%〕 、 風向、平均風速〔m/s〕 、降水量〔mm〕、日照時間〔時間〕、全天日射量 合計〔MJ/㎡〕、天気概況〔昼、夜〕 )を元に捕集期間中のそれぞれの合計、 日平均量、平均頻度風速等を求めた。 方位を 16 分割して、飛来塩分捕集口に対して法線方向を 1 とし、風向 との関係を 0.25 単位で定めた重み係数を風向頻度指標とした。 (図 2.1) 図2.1風向頻度指標の対象方位 また、各方向の風向頻度指標に 1h 当たりの平均風速をかけた数の合計を 捕集期間の時間数で割った値を平均頻度指標と定義する。 平均頻度風速=Σ(風向頻度指標×1h あたりの平均風速)/個数(捕集日数×24h) ISO の基準に基づき、1h あたりの相対湿度が 80%より大きく、かつ気温が 0℃より大きい値を 1 とし て、それ以外を 0 とする湿度指標を濡れ時間と定義する。 全天日射量とは、単位面積の水平面に入射する太陽放射の総量で、直達日射、天空の全方向から入射す る散乱入射および雲からの反射日射をあわせたものをいい、日の出および日の入り後もわずかながら観測 される。 3.測定結果 ①飛来塩分量調査 月別飛来塩分量を図 3.1~図 3.4 に示す。図より、内陸部は海岸部に比べ飛来塩分量は少ないことが下 のグラフより見て取れる。また、平均頻度風速との関係性より4月~10月の期間は南側の飛来塩分量が 多く、11月~3月の期間は北側からの飛来塩分量が増えていることが見て取れる。更に、台風の影響が あった月は飛来塩分量も飛躍的に増えている。 図3.2 飛来塩分量 (海岸部) 東 西 南 北 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 0.0 H18_1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 H19_1 1.4 H18_1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 H19_1 図3.3 飛来塩分量 (海岸部屋上1) 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 H19_1 図3.4 飛来塩分量 (海岸部屋上2) 図 3.5 に平均風速と飛来塩分量の相関図、図 3.6 に飛来塩分と腐食度との比較図、図 3.7 に飛来塩分と腐 食度との相関図を示す。 平均頻度風速を四方向合計すると平均風速となることから、平均風速と総飛来塩分量の関係を図 3.5 に 示す。図 3.5 から、飛来塩分と平均風速は比例関係が見られる。また、各地点によって異なった傾きを示 す比例関係が見て取れる。更に、内陸部より海岸部が風速増大による飛来塩分量増加の度合いが大きい。 図 3.6 の飛来塩分と腐食度との比較図では、両者は定性的類似性が見て取れる。 図 3.7 の飛来塩分と腐食度との相関図からは、両者の比例関係がうかがえる。 35 1.5 1 0.5 腐食度 35.0 飛来塩分 1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0 4.5 5.0 5.5 平均風速 (m/s) 6.0 6.5 0.0 H18_1 2 図3.5平均風速と腐食度との相関図 3 4 5 6 7 8 9 10 11 飛来塩分量 (mdd) 2 40.0 飛来塩分量 (mdd) 飛来塩分量 (mdd) 腐食度 (mdd) 内陸部 海岸部 海岸部屋上1 海岸部屋上2 3 2.5 1.0 内陸部 0.9 海岸部屋上1 0.8 海岸部 0.7 海岸部屋上2 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 12 H19_1 図3.6飛来塩分と腐食度との相関図 20.0 15.0 腐食度 (mdd) 10.0 5.0 0.0 35.0 30.0 25.0 40.0 図3.7飛来塩分と腐食度との相関図 図 3.8~図 3.11 に各方位別の飛来塩分量及び平均頻度風速と計測月の相関を示す。図より、平均頻度風 速及び飛来塩分量と計測月との相関は平均して似ており、飛来塩分量は風に大きく影響を受けることが分 かる。 2.0 0.8 1.5 0.6 1.2 0.2 0.0 0.0 5 6 7 月 8 1.5 1.0 0.4 0.5 0.0 H18_1 2 9 10 11 12H19_1 図3.8 平均頻度風速と飛来塩分(東) 1.4 2.5 0.6 0.5 4 3.0 2.0 0.2 3 琉大 0.8 1.0 H18_1 2 那覇海岸 1.6 1.0 0.4 0.0 1.8 3.5 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 H19_1 1.2 那覇屋上 弘済会 平均頻度風速 1.8 3.5 1.6 3.0 1.4 2.5 1.0 2.0 0.8 1.5 0.6 0.4 1.0 0.2 0.5 0.0 0.0 H18_1 2 月 図3.9 平均頻度風速と飛来塩分(西) 4.0 3 4 5 6 7 月 8 9 那覇海岸 琉大 那覇屋上 弘済会 平均頻度風速 4.0 3.5 3.0 1.2 2.5 1.0 2.0 0.8 1.5 0.6 1.0 0.4 0.5 0.2 0.0 10 11 12 H19_1 平均頻度風速 (mdd) 2.5 1.0 1.4 4.0 飛来塩分量 (mdd) 3.0 1.2 那覇海岸 琉大 那覇屋上 弘済会 平均頻度風速 平均頻度風速 (m/s) 1.6 飛来塩分量 (mdd) 1.8 3.5 平均頻度風速 (mdd) 飛来塩分量 (mdd) 1.4 4.0 飛来塩分量 (mdd) 1.6 平均頻度風速 (m/s) 那覇海岸 琉大 那覇屋上 弘済会 平均頻度風速 1.8 0.0 H18_1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 H19_1 月 図3.10 平均頻度風速と飛来塩分(南) 図3.11 平均頻度風速と飛来塩分(北) ②錆量と気象要因の関係 図 3.12 に腐食度と平均頻度風速の相関図を示す。全体的には緩やかではあるが、平均頻度風速が高く なるにつれ腐食度も高くなるという相関が見られた。地点別に見ると,4 地点全てにおいてそれぞれ腐食度 と平均頻度風速の緩やかな比例関係が見られた。 1 時間毎の相対湿度(%)を元に、捕集期間の濡れ時間数の合計を捕集日数で割った値である(日平均) 濡れ時間(h/day)から腐食度との相関を比較した図を図 3.13 に示す。図より、実線で示した領域の期間 4/3~5/9 と梅雨時期の期間 5/9~6/8, 6/8~7/6 と台風の影響が考えられる期間 7/6~8/3,8/3~9/1 の濡れ時 間は長い。この 4 月、5 月、6 月、8 月の 4 ヶ月を除けば、内陸部と海岸部各地点での濡れ時間と腐食度 に、相応の関係が見られた。 図 3.14、図 3.15 に腐食度と日平均日照時間、日平均日射量の相関図を示す。図より内陸部、海岸部各 地点とも、実線で示した領域の 7/6~8/3 の期間を除けば日平均日照時間と腐食度、日平均全天日射量と 腐食度ともにゆるやかではあるが、反比例関係が見られた。7/6~8/3 の期間は台風の影響のため、腐食度 が突出していると考えられる。日平均日照時間、日平均全天日射量が低い冬場は腐食度が高い傾向が見て 取れる。 45 内陸部 海岸部 海岸部屋上1 海岸部屋上2 50 35 30 25 45 20 15 10 5 0 1 2 平均頻度風速(m/h) 3 4 腐食度(mdd) 0 40 35 腐食度(mdd) 腐食度(mdd) 40 30 25 20 15 10 5 0 0 図3.12 腐食度と平均頻度風速の相関図 5 10 濡れ時間(h/day) 15 20 図3.13腐食度と濡れ時間の相関図 内陸部 海岸部 海岸部屋上1 海岸部屋上2 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 内陸部 海岸部 海岸部屋上1 海岸部屋上2 50 45 40 35 腐食度(mdd) 内陸部 海岸部 海岸部屋上1 海岸部屋上2 50 30 25 20 15 10 5 0 0 2 4 6 日平均日照時間(h/day) 8 10 図3.14 腐食度と日平均日照時間の相関図 0 5 10 15 20 25 日平均全天日射量(MJ/(㎡day)) 図3.15 腐食度と日平均日射量の相関図 4.結論 今回の計測では以下の傾向が示された。 ①腐食度は飛来塩分と比例関係にある。 ②飛来塩分量は平均頻度風速に比例する。 ③内陸部での飛来塩分は平均頻度風速に大きく左右されない。 ④全体的には緩やかではあるが、平均頻度風速が高くなるにつれ腐食度も高くなるという相関が見られた。 ⑤濡れ時間と腐食度に相応の関係が見られた。 ⑥日平均日射量と腐食度、日平均全天日射量と腐食度ともに緩やかではあるが、反比例関係が見られた。 参考文献 1)気象庁の気象データ 2)上野・棚橋・中村・益山:ACM センサーと飛来塩分捕集器による錆環境評価、平成 17 年度琉球大学工学部卒業論文 3)日本コンクリート工学協会:コンクリートと構造物の腐食・防食に関する試験方法ならびに基準(案) 36
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