社会情報学研究, Vol .6 ,1 9 3 0,2 0 0 0 実質為替レート決定に関する諸斑論と現実 権俸基$・重政良充“ S t u d i 倒 o nt h eThωriωofR e a lEx changeRa t eDe tenmnation * KwonB o n g k i ' "• YoshimitsuShigemasa* Exchanger a t eb e h a v i o ri sv e r yi m p o r t a n tt o d a y,a n dh e r e we f o c u so nt h e r e a le x c h a n g er a t e .T h e r ea r esomet h e o r i e so fi t sd e t e r m i n a t i o n,a n dwewould l i k et oknoww h i c ht h e o r yi st h eb e s t .Wei n t r o d u c et h r e et h e o r i e s and d i s c u s s t h e i ra d v a n t a g e sandl i m i t a t i o n s . Ourc o n c l u s i o n sa r ea sf o l l o w s : E a c ht h e o r yf o c u s e so nd i f f e r e n tt h i n g sc o n s i d e r e dt ob ei m p o r t a n te l e m e n t so fr e a le x c h a n g er a t ed e t e r m i n a t i o n . Thef i r s t o n ef o c u s e sonc a p i t a lf l o w,t h es e c o n do n ef o c u s e sons t r u c t u r a lv a r i a b l e s,a n d . The f i r s tt h e o r yc o n t a i n sa t h et h i r do n ef o c u s e so np r o d u c t i v i t yd i f f e r e n t i al nt h a ti th a sa nu n r e a l i s t i ca s s u m p t i o nt h a tcommodity p r i c e sa r e l i m i t a t i o n,i p e r f e c t l yf l e x i b l e .Thes e c o n di sambiguousw i t hr e g a r dt os t r u c t u r a lv a r i a b l e s . e c a u s ei tmayb es t a t i s t i c a l l yv a l i d . Thet h i r di su s e f u l,b KeyWords (キーワード) R e a lExchangeRate(実質為替レート), C u r r e n tA c c o u n t(経常勘定), l n t e r n a la n d r o d u c t i v i t yD i f f e r e n t i a l (生産性格差), e x t e r n a lB a l a n c e (対内・対外均衡), P C a p i t a lFlow (資本フ口-) 1.はじめに は外国の標準的財バスケット)1:測った自国財 (より一般的には自国の標準的財パスケット)の 今日の経済において,為替レ…トの動きが様々 価格,又は自閲財の価格(物価水準)に対する自 な形で経済活動に影響を与えている事は周知のと 国通貨で測った外国財の価格(物価水準)として おりである.そこで,本稿では為替レートの決定 定義され,名目為替レートを E,自国・外国の物 理論を紹介するとともに 価水準を P,P・で表わすと,実質為替レートは, を説明できるのか 現実の為替レート変動 出来ないならばその原因或い は問題点はどこにあるのかを考えてみたい. Q P/EP*と表わすことが出来る.つまり, Q 口 は長期的に,どのような水準に決定されるかを見 ていくのである. 以下では長期均衡実質為替レートの決定につい て見ていくが,ここで実質為替レートの定義をし ておこう.名目為替レートとは別個の概念である 実質為替レートは,通常,外国財(より一般的に 2 . 長期均衡実質ゐ替レート 長期均衡実質為替レ トに関するよそヂルは以下 事典大学社会情報学部 ( F a c u l t yo fS o c i a lI n f o r m a t i o nS c i e n c e,KureU n i v e r s i t y ) 川県工業高等専門学校 ( K u r eN a t i o n a lC o l l e g eo fT e c h n o l o g y ) 2 0 実質為替レート決定に関する諸理論と現実 の 2つのアプロ…チに分割される 通じて対外均衡の概念を伝達する一方,短期的な 1 ) 1.時間に関して変化する購買力平価として特 経常勘定残高は一般的に最適な結果ではないと強 調している.また近年では,様々な一時的・永続 徴づけるもの 2 . 対内均衡と対外均衡維持のための結合要件 聞の相互の動きに関して新しい説明を可能にして として特徴づけるもの 以上 2つのアブローチが存在するが 的ショックに反応した経常勘定と実質為替レ}ト 1番目の アプローチに関しては妥当性に関する統一的な見 いる. 最も単純なモヂルとして以下の例を利用しよう. 解が存在しないので,ここでは 2番目のアプロー 各国が単一の財を生産する 2国が存在する.各財 チに重点をおき,実証的根拠を見ていく. は生産国通貨で 1という価格を持っとする .Qは 経験的応用は後者のアプローチについて実施さ 相対価格,あるいは実質為替レート ( E P */ P ) れており,構成要素に関しては,経常勘定を,均 であり,外岡財 (F) を 1単位購入するために必 衡実質為替レ」トを根本的資本フ口ーの概念,或 要な自岡財 い資本ブ口}と均等化することと一致するものと ( H ) の量として表示される. C , CFは自国で消費される各財の実質最である. YH は自国の実質生産量, Bは自国の純資本流入, して定義してきた. 自閤財で測った貿易収支赤字である. A==Y+B いは対内均衡に関する様々な定義の下での望まし この概念的アプ口}チに基づいた分析により, H は自国におけるアブソープションの水準である. 観察された為替レ}ト変化の長期的傾向の大部分 CH*,CF*,YぺB*=-B/Q,A ・ お Y・ + B・ が説明可能であるが は外国に関する同意表現であり, Y*,B ¥ A * このアプ口一チには難点も 存在した.例えば,以下の 2点である. 1.ぞれ自身経験的に詳細さを持っていないこ と 2 . 対外均衡の定義に関する明確な合意が存在 しないこと ここでは, 2番目の問題に重点をおく.一方で は,対外均衡を経常勘定(資本)ブ口}の任意の 水準として定義することはあまりアピ}ルできな い.他方で,純国際的債務の望ましいストックに は外国財で測られる.効用関数はコブーダグラス 型とする. Uロ ( C H ) l叩(C F ) U*=(CH*)m・ (Cr * )いm * ( 2. 1 ) C目 立 (l-m)(Y+B) CF口 m(Y+B)/Q ( 2 . 2 ) 皿 CH*=Qm・ ( y・ -B/Q) C F *ロ (l-m・ )(Y*-B/Q)( 2 . 3 ) 市場クリア一条件は CH+CH*=Y CF+C〆 口 Y・ ( 2. 4 ) 注目されようとも,対外均衡に関する概念的記述 2 . 2 )一( 2.4)より,実質為替レートの市 よって, ( は,興なる悶々に関する債権が不完全代替である 場クリアー水準は, 程度を決定する諸要因についての充分な理解を反 Q-mY-(1-m-m・ ) B 映していない.東に,一般的には,対外均衡は実 一 m*Y* ( 2 . 5 ) 質為替レ…トと独立して定義されうるという仮定 であり,市場参加者は自国財を貯むと仮定する. は妥当しない. かくて,他の条件を一定とすると,自国への純資 本流入の増加は,自問財相対価格の上昇(外国財 3 . 実質輿時点問均衡モデル ( P e t e rI s a r d のそ デルに基づいて) 本節では, P e t e rI s a r d2) の実質異時点閉そデ 相対価格 Qの下務)をもたらし, dQ 1 -m-m* dB m*Y* 一 一 くO ( 2 . 6 ) ルに碁づいて長期均衡レ…トの決定を見ていく. である.というのは,自問財消費の増加割合は, 本質的に,典時点問モデルは,経常勘定残高を 外国アブソ…プションの減少割合より大きいから 2 1 権俸基・重政良充 である. 照的に,実質為替レ…ト変動の幅が資本移動性の このフレームワークは,実質為替レートの可変 程度と対産出量貿易比率の両方を反映するような 性と資本移動の程度問の関係,及び棟々なタイプ 動学的反応を生み出すことである.例えば,自国 のショックに反応した実質為替レ}トと経常勘定 産出量減少のケ}スを考えよう.純資本流入が産 との聞の相互の動きに関する見解を導く.任意の 出量減少が吸収に与える影響を軽減している期間 2 . 5 )式の微分により以下の ショック Oに関して ( 中 ( 0く s Bくs Y ) 自国生産品の相対価格はショッ ことが示される. ク蔵前の価格の上方にとどまる.結果として,負 dQ d ( } m dY m・ Y* d) ( ・ Q dY Y* d) ( ・ l-m-m dB ・ d(} m*Y ( 2 . 7 ) の生産ショックが終わった後では,国際的借入れ が急速に行われる問 自困アブソープションは自 国生産量の下方に維持され 自困製品の相対価格 をショック直前の水準の下方へと移動させる.よ 任意のショックに対する実質為替レートの反応 り一般的には,ショック直前の水準に比べての純 は,自問・外国の産出最の水準と純資本フローが 資本フロ…と実質為替レートの共変化は,産出最 ショックに反応する程度に依存し,自国・外国の のショック直前の水準からの議離の時間的側面を , m*) ばかりに依帯するの 対産出量貿易比準 (m 反映する.更に,純資本ブ口}と実質為替レート ではない. 両方のスイングの幡は 外国産出量に影響を与えずに自国産出量の水準 を減少させるショックのケ…スを考え,初期状態 m* として,ショック以前には貿易収支はぜロ Y mY/Qであると仮定する. ( 2 . 7 )式より, 場口 I : lQ Q 1 -m-m*I : lB 一一一一 一一一 I : lY Y m Y 資本移動性の程度を民映 し,実質為替レートのスイングの幅は対産出量貿 易比率をも反映する. さて,ここで興時点間モデルの特徴である 2期 間を考えよう.自国は今期資本流入国であると仮 定する.すると,定義 ( 2 . 8 ) ( A Y+B) により,今 口 期は所得以上の消費(アブソープション)が可能 である.ところが,来期においては,資本流出, である.かくて,資本移動が存在しない C~B=O) すなわち対外借入れの返済が起こるので,所得以 ケ…スでは,自国財の相対価格の上昇は,自国財 下の消費(アプソ…プシヨン)しかできない.こ 産出量の等比例的減少をもたらす.更に,資本移 のことが興時点間モデルの特徴であり,国際的貸 動が存主主するケースでは,相対的に低い対産出量 s a r dは長期を 借がキャンセルされることから. I 貿易比率を持つ岡々において実質為替レ}トの相 想定していると替えるのである. 対的により大きな変化が発生する. ( 2 . 8 ) 式を利用して異なる資本移動性の下での 一時的・永続的供給ショックの影響を比較する. =O) 第一に,資本移動が帯症しないケース(sB では,供給ショックが実質為替レートに与えるイ ンパクト効果は,資本ブ口}によって影響されず, 需要ショックに関しては,自閲・外国の産出量 2 . 8 ) 式と同意の式は以下であ が不変であれば, ( る. D .Q Q 1 -m-rr~* m D .B Y ( 2 . 9) よゥてショックの永続性と無関係である.第二に, 資本移動性がなければ,定義により実質アブソー 永続的であると予見される供給ショックのインパ プションは産出量を上回ることはできない.かく クト効果は,資本移動性の経度に対して小さな感 て,もし名日常襲成長が自閏経済を過熱させると, 応性を示すと考えられる. 唯一の安全弁は自国物価水準の上昇であり,実質 ( 2 . 8 ) 式から明らかになる第三のポイントは, 一時的供給ショックは,永続的供給ショックと対 為替レートを一定に保つように名目為替レートが 変化する.対照的に 自国需要の一時的増大が純 2 2 実質為替レ…ト決定に関する諸理論と現実 資本流入によって調整されるならば,実質アプソ} とする貿易収支に影響を及ぼす実物的要因を考慮 プションは産出量を上回ることが出来,実質為替 しつつ,マク口対内外閥均衡の達成の問題も内包 レ}トは変化するであろう.このケースでは,実 したストックとツ口}の相互作用モデルを設定し 質為替レ…ト変動の幅は純資本流入に対して正の て長期実質為替レ}トの決定因を理論的に解明し, 方向で等比例的であり,対産出盤貿易比率に対し あわせてその実証をも試みた て負の方向で等比例的である. FARUQEEの所説を検討し,紹介することにす 以上の単純な例によって合意される為替レ…ト HAMID る. 動学のパタ}ンは,典時点問アプローチにより実 購貿力平価 ( P P P ) は実質為替レートの一定性 証的に検定可能な新しい依説が提供されることを を保証するが,現実には実質為替レ}トの PPP 示し,このアブ口}チに基づいた分析は変動為替 基準からの論離が存夜し,その論離は対外的競争 レートの行動を説明する能力を改轄するであろう 性の獲得戒は喪失として解釈可能である.吏に, という希望を提供する.が,問題点も存在する. 為替レート変化が貿易収支に与える影響はしばし I 財価格は完全に伸 ば予測困難である.よって,実質為替レ}ト決定 縮的である j という非現実的な仮定を反映してお に関して PPPよりも一般的な見解が必要となる. ほとんどの異時点間モヂルは り , 1つの主要なチャレンジはその仮定を緩和す ることである.以前述べたように, r 閣内物価水 準は名目為替レ…トに対して緩慢に調整する j と 以下では,実質為替レートの趨勢的変化の源を 調査するが,著者の論文における特徴を列挙して おこう. いう認識は実質為替レートの可変性が名目為替レ… -維持可能な実質為替レ…トを対内均衡及ぴ対 ト体制に感応的である理由を説明するのに重要で 外均衡と両立可能な傭或は経路であると定義 あると思われる. すること ・ストックココブ口ーの枠組み内での維持可能な 実質為替レ}トは 4 . HAMIDFARUQEE3)の所輸について 原則的に対内的及び対外 的マクロ経済的均衡を説明可能であること 伝統的な貨幣数最説又はマネタリー・アプロー ・均衡実質為替レートの決定要因は,世界市場 チに依拠した購質カ平価 ( p P p )説によれば,長 での自閣の純貿易ポジションに影響を与える 期的には名目為替レ…トの動きが各国物価水準の 饗閣をも合むこと 相対的な動きを相殺して,実質為替レ…トを一定 -生藤性アプローチに注目すること に維持し,各国の相対的な物価水準の動きは,各 動きによって決定される.しかしながら現実には, 1)実質為替レート決定のモデルとその解釈 モヂルとして以下の 5つの仮定を満たす経済を 非貿易財の存在や貿易障壁などのため, pppは 考える. 成立しない. 1 )自国(小国)と外国(大国)の 2図からなる, 2 )各国は 2財(自国財と外岡財)の貿易と lつの 国の名目貨幣供給量と実質貨幣需要最の相対的な ところで,たとえ非貿易財や貿易隙接が存在し の基準 ( b e n c h なくても,実質為替レ}トは ppp 金融資産の取引を行う 3 )緒変数は実質値(外国 m a r k ) である不変の水準と必ずしも一致する保 財単位)で表示される 4 )産出最は完全雇用水準 障はなく,議離するかもしれない.その理由は何 )外岡資産の実質利子率は一定で で一定である, 5 であろうか.換脅すれば,長期的な実質為替レー あり トの決定闘は何であろうか.これが以下の主題で ある. 以下では,国家聞の生産性上昇率格差をはじめ r・で示される. 自闘が保有する対外実質純資産ストックは fで 示される.自閣の貿易収支は 自国財と外国財の 相対価格及び外生的シフトパラメターに依存する 2 3 権俸恭・議政良充 とし,自国の純輸出(貿易収支)を以下の式で定 義する. nx=-yq十 x ;y> 0 3 . 2 ),( 3 . 3 ),( 3.4)式より, ち , ( yq+x十r * f = α dE t[ え ] 十 併( f d _f ) ( 3. 1 ) ( 3 . 5 ) である. ( 3 . 5 ) 式は国際収支均衡条件であるが, ( q:自国財の実質価格として定義される実質為 この条件は,財・サーピスの純フローと所得を越 替レ…トく qの上昇は自国通貨の実質増価>, x : えた望ましい趨過支出(望ましい経常収支)との シツトパラメター,すなわち,岡家聞の生産性上 均等を要求している.換替すれば,中期にわたる 昇率格差や貿易政策の変化の影響を受ける純輸出, 経常収支(不均衡)は維持可能な国際資本移動に y 弾力性アプロ…チの観点では,マ…シャルロ よってブァイナンスされる. ラーナ一条件令意味するパラメタ…) サーピス収支を捨象すると,経常勘定は単に財 ( 3 . 2 ),( 3 . 5 ) 式より, 2つの内生変数, f ,qと 2つの外生変数, f d,xから成立する連立線形方 の純輸出プラス利子所得として定義され,経常収 程式が形成される.初期条件に依存して,一般解 aは園内で保有される対外純資産の蓄積率 f 支c は以下のように導出される. に等しい ( ca=f)ので,以下のように表わされる. f= yq+x+r・f (・のついた変数は時間に 叩 関する導関数 q( t )清 司( t )十 σ[ f(t)-f(t)];dく ( 3 . 6 ) d(t)zft(t)十土主 ( t ) ( 3 . 7 ) : r .e- ( 3 . 8 ) y ( 3 . 2 ) f(t)=). 次に,維持可能な国際収支ポジションは,望ま o : r 量( t )口). y .l(日 ) E t [ fd( s ) ] d s e -I.(8-唱 t[ X( s ) ]d s ( 3 . 9 ) dによってファ しい戒は維持可能な資本フロー率f イナンスされる経常収支を反映するものであり, ここで,パーのついた変数は長期的(ストック) dは,以下 対外純資産の望ましい蓄積(減少)率f 均衡値,他の変数は現在の(フロー)均衡備であ の行動方程式により示される. る. ( 3 . 8 ) 式より,対外純資産の均衡保有最 f( t ) f d= d( r -p) +併(fd _f ); δ併 , >0 ( 3 . 3 ) は対外純資産の目様水準に関して期待される将来 ここで, fdで示されている望ましい蓄積率は自国 の変化 l fd ( t) ftに依存ことがわかる. 同様に 実質利子率 rと閣内の長期実質利子率 pとの格差 ( 3 . 9)式より,純輸出の外生的で永続的な構成要 dと現実の水準 fと 及ぴ対外純資産の目標水準 f t )は将来の貿易撹乱の期待経路に関する現 素え ( の聞の格差の関数である.ここでは長期実質利子 症割引価値 l x( t) ft に依存することがわかる.そ ρ ロr・)と仮定する. 事は世界利子惑に等しい ( 3 . 8 ),( 3 . 9 ) 式に依存する主要な結 して,この ( 吏に,国際資本移動による内外実質収益率を均 果は ( 3 .7)式より得られ,長期均衡実質為替レー 等化させる裁定条件,従って実質利子平価条件を ト品を,経常勘定と対外純資産ポジション両者に 考慮しよう. おける基礎的構成要素の関数として確定した事で ある. r口 r " ' α E t[ ゐ ] ( 3 . 4 ) (α:岡内消費における国内財に対する支出シェ ア,払:t 期の情報に基づく合理的期待値) 中期のブロ…均衡としての維持可能な国際収支 口 f dという式で示される. この ポジションは, f 3 . 6 ) 式より中期にわたる内外均衡を維 次に, ( 持しうる実質為替レートの調整とその長期的均衡 (値)との聞の関係が明らかにされる. この実質 為替レ…ト q( t )に関する維持可能な経路(或は 鞍点経路)は,対内的・対外的マクロ経済的均衡 条件より,内外両均衡と両立しうる維持可能な実 と関係しており,完全ストック均衡が達成される 質為替レートの均衡値戒は経路が保証される.即 までは長期均衡値である司 ( t )とは異なるのであ 2 4 実質為替レート決定に関する諸理論と現実 る. る生産性成長格差或は交易条件に影響を与える財 長期均衡への移行中,実質為替レ…トは,定常 価格ショックのような変数を含んでいるかもしれ 均衡値に向かう対外純資産の収束経路を保証する ない.金融閣では,当該国経済の長期的対外純資 長期均衡値から晴離して推移するかもしれない. 産ポジションを本質的に決定するファンダメンタ ff d= 0で示される.定常状 ルズは,ライブ・サイクル効果を通じた貯蓄・投 態 で 一 定 の 外 生 変 数 の 値 が 与 え ら れ る と ( fd 資に対する態度,政府の負債残高等の要閣を含ん ( t )ロ f,x(t)= 寸),定常状態での均衡は以下の でいるかもしれない. 定常状態均衡は 口 式で与えられる. 2) 日・米に関守る実証分析 ェ ロιf+三一.f q( t ) y y ( t )寸 , HAMIDは,実質為替レートと根本的決定要因 の聞の長期的関係を識別・推定することを中心と n x( t ) r* f ,c a( t )=0 口 o i n t e g r 叫 I O n分析を行っている. し , c 期的変動に関しては,変化しつつある定常状態に c o i n t e g r a t i o n:定常的,かつ長期的関係を決 定する諸変数の線形結合が少なくとも 1つ存在す o るならば, N個の異なった定常変数の集合が c i n t e g r a t i o nである. o i n t e g r a t i o nの変数は,一時的に 直!略的に, c 関連した均衡為替レートの変化と所与の定常状態 離れて変動するかもしれないが,時が経過すると 値との聞には明らかな相違 に関連した一定の PPP 体系的に収束しなければならない. 経済が定常状態に到達し,ファンダメンタルズ が定常状態値に落ち着いたときにのみ,実質為替 レ…トの一定性の観点、から PPPが妥当すること に注目しよう.一方で ファンダメンタルズの長 恥 実質為替レ]トのケ…スでは, 点が存在する. 定常状態では,貿易収支は単に対外純資産の均 -短期の投機的要因及び循環的要因の存在が, 衡水準によってのみ決定される.この結果は,ア 実質為替レ…トを一時的に維持可能な経路か プソ…プション・アプ口…チのストック・パ}ジョ ら識離させるかもしれず,維持可能な経路は ンとして解釈可能である.即ち,望ましい対外純 (非定常的)ファンダメンタルズの変動によっ 資産ポジションは,維持可能な純貯蓄ブ口~ (y- A,すなわち貯蓄・投資バランス),及ぴ貿易収 て定義される. -時が経っと,開放経済に関する自己修正メカ フロー均衡と両立 支の維持可能な流列(ブロ-)を決定づける.定 ニズムにより,ストック 常状態では,純輸出は安定的水準の対外負債に起 する長期均衡値への実質為替レートの維持可 悶する利子債務を相殺するのに充分な本源的黒字 能な調整が確実になる. z である.その結果,長期的に対外純資産に影響を 以下,アメリカと日本について実証分析が行わ 与えずに娘期的に経常収支に影響を与えるそれら れており,使用ヂ}タは以下の通りである. の撹乱は,定常均衡において,純輸出に影響を与 ・実質為替レート:実質実効為替レ}トに関す えずに実質為替レートの変化に転換するのである. P Iに基づいた指標 (REER) るC 要約すると,均衡実質為替レ}トの決定要因は -対外純資産に関するストックデータに含まれ 世界市場における 1 )自閣の純貿易ポジションと, )交易 る説明変数 l)GNPシェア (NFA), 2 2 )資本の純貸し手戒は純借り手であるための自閣 条件 (TOT) の碁本的な傾向(態度)の両者に影響を与える要 閣を含んでいるのである. 貿易商では,主として経常勘定を通じて作用す る決定要因は,非貿易財の相対価格に影響を与え -生産性 1 )貿易財対非貿易財の相対価格の比較指数 (TNT) 2 )労働生産性水準の比較指数 (PROD) 2 5 権俸恭・重政良充 3) 実証結果 (1)アメリカ 的要素から生じるのである. ( 2 )日本 5) 4) 最大間有値(,~ MAX) とトレース (TRACE) ・帰無仮説は TRACE, AMAX両統計値により 統計舗を用いて検証が行われている. AMAX:正確に r十 1佃の c o i n t e g r a t i n g関 再び棄却される. A) アメリカ 係に対する代替手段に反するせいぜい r個 のc o i n t e g r a t i n gベクトルについて検証す る アγ2 7 fH vf mun, w f e u h -- 。 日 一‘ s-1iw 剛 川田守 N F I I REER 3 9 却 - 1 1 . 5 6 Unr 畦s t r i c t c d 1 .0 0 1 .0 6 N o r m a l i z c d R C S U I C I C dE st i m . 3I C $ REER.惜し S 4N F A .+0 . 9 I T N T . 0 . 3 0 ; 忘 {x c l u s i o no nTOT.x J(I)酬 1.95) . 4 7 N F A .+TNT. O . J O ; REER. 1 { 忘 l I c 1u s i o no nTOγ: ln dhomoscn : c i l Yo nTNT ,; ' ( ' ( 2 ) J . J J ) -60 t i o n関係が存在する. ザ →・検定統計備に基づくと,多重の c o i n t e g r a - 宇ト と AMAXにより,強力に棄却される. J 、 , , 岨 内 uw,. . という帰無仮説 ( n u l lh y p o t h e s i s ) は TRACE リ ロ r 4つの時系列の中で cointegrationがない j 湾問m u 駒 岨 i n t e g r a t i n gベクトルについて検証する. MセJAJS 替 手 段 に 反 す る せ い ぜ い r側 の c o - C o i n c c ; r a c i o nU ¥ : c l i h o o dR : u i oT C $ c S Numbcro rc o i n t c g n l l i n gv c c l o r s : >.MAX n u l lh y p o t h c s i s 2 9 . 5 2 r o 1 3 . 3 5 rs 1 17.30~ rs2 7 . 8 2 rs3 P . U . 3m C l c rE . sl i m;'il l : s ( C o r r c s p o n d i n sm. 3: < i m: l1 c i s e n ¥ ' c c l o r ) 清一η TRACE:少なくとも r+1 倒 の ベ ク ト ル の 代 T a b l c2 .J o l rtJl'IJc nMc : rimumU k t l i l . o o dT c slJn n dP a r O l l l t tCfu l i m o l e s : ・ U l l i l r dS l l l l r s( 19 5 0 9 0 ) ' ( 怠i g c n 刈 l u c si nd c s e c r i d i n go t d c r :0 . 5 5 3 .0 . 3 9 1,0 . 3 7 3,0 . 1 9 0,0 瓜犯) C o n S I: ln l 1 0 . 5 6 0 . 2 8 酬 国 .NFA,TNT両者とも単独では REERの変動 欄 四 圃 を説明できない -生産性格差と純富の両者は,アメリカの実質 為替レ}トの長期的決定において適切である .観察された実質為替レート可変性の約五分の ーは永続的ショックと長期実質為替レートへ r 1 = i t :1I向上 U . S .R r n /E.1'd/(III.~t: R l I I t ' :Ik l / m /( / ,1. , r m lV n l "t : r . 0 . 2 0 . 1 。 の変化のせいにすることが出来る. く戦後のアメリカ実質為替レートの最も顕著な特 . 0 . 1 . 0 . 2 質〉 →現実の備と維持可能な値の両者が一貫して下 落していること ・貿易財対非貿易財の相対価格の比較指数 ・O.~ I \I ~I 19~' 1 9 ' 9 愉 1 % 7 1 9 7 1 1 9 H 1 ' 17 9 1 9 U 1 ' ) M 7 TNT 4 サンプル期間にわたり F i! , ! ¥ lr c2 .U . S .R r ( / l l : : x d " I I I . : t rR t l l c ' : ・ 仁 川 ・l i m / C " I I I l l t m r l l l 着実な下落トレンド -dv 司 た生産性成長率から生じた. nH を示し,この下降傾向は,自国及び外国の偏っ 0. 1 -対外純資産 NFA →1 9 8 0年代までの全体期間にわたり比較的安定. しかし,アメリカが世界最大の債権固から世 1 1 . 1 界最大の債務国へと移行した事も示す. ドル実質為替レ}トの循環的変動は,現実とト . } t , 、 講離として解釈可能であり,短期的循環かっ投機 1 的)残差構成要素は,長期的経路からの一時的な 1 t ・ レンドイ肢の聞の格差として得られる.この(定常 • " ' " I~." I'I~'I ド昂・'/(, 7 " 1 7 1 ・ I H " 1 7 ゆ l'I~.1 " I M 7 2 6 実質為替レート決定に関する諸理論と現実 として替及されている.彼らは,維持可能な経常 -生巌性と実質為替レ}トのみが単独で c o i n t e 同 g r a t eしている 勘定は必ずしも経常勘定均衡を合意しない.逆に 日本のケ}スにおいて PRODの代わりに TNT 替えば,相当の期間にわたり経常勘定赤字(黒字) を使用した c o i n t e g r a t i o n推定は非常に似た結果 を維持可能な構造的資本流入(流出)が存在して をもたらした事にも触れている.そして,アメリ もよいのである. カに関する結果と共に,生産性アプローチに対し B ) 日本 て強力な支持を与えた. T a b l c4 . Joll I : m s e nMa x . i l l l l l l l lL i l c c / i l loodTws andPara l / lt l t rゐlimala:J a p a f l( J9 S J・仰j・ ( E i g c nVlll u c si nd c s c c n d i n go r d : cr :0 . 5 2 2,0 . 49 0,0 . 1 3 0,0 . 0 9 6 ) 4) 要 約 以上の実証結果を基に,著者は実質為替レ…ト C o i n t : c g r a t i o nL ik : c l i h o o dRa ; t i o γ C $ t $ a : t i n gV C C I O r s : Numb : c ro (c o i n t c g r n u l lh 押o t h c s i s と生産性格差との関係について以下のような結論 『岨 を導出している. > . M A X 2 6 . 62 o 2 4 . 2 6 8 . 6 2 3 . 6 1 1 2 r;$ 蜘 r; $ 1)アメリカ γ r; a c :c 5 9 . 50 ' 3 2 . 8 8 ‘ 8 . 6 2 3 . 6 1 r='J ・対外純資産及び生産性格差は実質為替レ} REER " a ・生産性は長期的に重要であり,生産性格差 ωl 2 )日本 NFA i 似. 9 9 8 . 1 1 四 一日 1 2 . 9 5 U n r c s t r i c l c d Norm a : l i z c d 1 .0 0 R c s t r i c t c dE st i刷 出 制 ' ' 幽 句 , ・・vfmmV1d トと長期的関係がある n r a r a m : c l c rE st i m a t : c s ( C o r r : c s p o n d i n gm! 1x i m : I 1c i g c n v c c l o r ) REER. 0 . 6 6 P R O D . : 欄 1 { 尽x c l u s i o no nTOTa n dN F I I,x ( 2 )圃1.9 5 ) に関する様々な尺度は,実質為替レートと 長期的関係がある r iJ;lIr c3 .}"I附 I I r . l rH r / ll f:.f('''tIIl.~r H t l l r : ・ " ' ,11fI/(//1/1Tn!ll'/V"/lIr.r 1 - ﹄ t • 『部門別生産性格援は,アメリカ及び日本 に関する実質為替レ…ト変化のトレンドの I J . 2 大部分を説明する j という見解を強く支持 u d F , J J /.J /, げ/ノ 町/〆 m/ 剛 川 , a dFf ノ とは意義があろう. waF . ( lA 重要な役割を果たしていることが明らかにされた. 更に,実証閣でこれらの結論がほぼ証明されたこ 川 較生態性上昇率格差及び対外純資産ポジションが 1/ • 結論として,理論閣では実物的側聞としての比 b w川 / . , ﹄ . , ‘ t する. , 1 1 . ( , ・ . 1 '....~.. T r c n . Jw i l hTlr r . ( I. M1 '・ ' ・ L . . L . . . . ' -. L. I I ' I H 同5 白 川 “ / ' 1 I l 0 l 1 1 恥嶋 1~7Z 1 ' )7' I ' I M 1 9 叫 1 9 M . r i; t u r c . 1 . J“,,(11/川,'U,'(/IEf山川,~r 1 1 1 1 1 , ' :C.¥'dicu/C, 川 5. 基 礎 的 均 衡 レ ー ト と 実 質 為 替 レ ー ト (SIMON WREN-LEWISの所論に基づいて) 本節では, SIMONWRENLEWIS6)の所論に 0 .1 , ヘ 0 . 3い F A j f i q l . . 0 . 2い 叩 基づいて,長期均衡為替レート決定のメカニズム 私 , ' . 0 1 〆ハ¥ を見ていく. 以下では基礎的均衡為替レ}ト(Fundamental I ト C ) ' c l cw i l hTtrr u E E ・(,'・'~;"". : 1 、 輔 、 ・ 3.Vt:y :r, , ' ト、、、ノ ' ¥ ¥¥ 九 :. ' A 0 . 1 , , 岡 山 ・ ‘ E q u i l i b r i u m Exchange R a t e :FEER) という概 ‘ 0 . 2ド 念を利用して実質為替レ…トと経常勘定を関連づ . 0 . 3い けるが,この概念は W illiamson[ 1 0 ] により, . 0. 41 f 維持可能な経常勘定と両立する実質為替レート j . 1 (ρi '''~l 戸 ム ¥ J ¥ ‘ 、 _ , C y c l cw i l h/ ' R O I ) 同 骨 19~b I ' X , 噂 1 9 f . . a 1 '161咽1 2 1 9 1品 川削 岬制 刊糊 2 7 権俸基・重政良光 ここで FEERの定義をしておこう. SIMON r 他によれば t FEERとは t やがては当該経済の である7) このモデルの構造は 4 .1閣で示される(枠内の 貯蓄行動及び投資機会によってもたらされる構造 変数は外生).物価・賃金方程式は実質賃金を決 的資本フローに正織にマッチするような経常勘定 定する.価格設定,及び賃金設定のみが NAIRU に終わる賀易・所得ブ口ーを生み出す実質為替レー と 一 致 し て 行 わ れ る . NAIRU と は トjである.ここで t FEERは中期概念であり, r 定常イン フレを生み出すような財・労働市場の利用レベル NAIRUに 国内産出高及び需要最の中期均衡値に基づいてそ の組合せ jである.このモデルには の計算を行う必要があることに注意すべきである. 対する 3つの主要な影響,すなわち税率,構造変 岡内活動の均衡水準は NAIRU ( N a t u r a lR a t e ) 数(労働市場のミスマッチ等) 実質為替レート t t ¥/ F E E R 4 . 1 図 8) が存在する.例えば,直接税の増加は賃金の上昇 生み出す.その時,実質為替レートは,経常勘定 をもたらす.実質賃金と利潤の聞のこの不一致に が構造的資本フローによってマッチされるように よりインプレーションが発生し,失業の増加によ 調整する.ぞれらがマッチするとき,実質為替レー り工場の利用が減少したときにのみ消滅する.財- トは FEERと等しくなる. 労働市場の利用率は労働需要曲線,あるいは雇用 しかし, FEERはこの段階では NAIRU と J o y c e&W r e n L e w i s,1 9 91)によって結 方程式 ( 致しないかもしれない.現在の賃金・物価方程式 び付けられる. によれば,低い実質為替レ}トは賃金を引き下げ 所与の財市場生産力水準,労働市場の労働供給 るよりも物価を上昇させがちである.結果として 水準に関して, NAIRU もまた生産高や躍用の水 インフレ}ションは変化し,産出高が再び下落し ,FEERの概念 準を合意する. (ここでの NAIRU た時にのみ落ち着く.が,低い産出高は輸入を減 は中期のものであり,資本ストック,つまり生産 が上昇する. 4 . 2図で,こ 少させ,その結果FEER 能力,は一定であるにこの産出荷水準は通常の れらの関係と FEERと NAIRUが一致する均衡 形式で輸入に影響する.世界貿易が与えられると, が図示される. 財価格と I DPは変動し,輸出・輸入は実質為替 レートの特定の値に対して条件付きの経常勘定を 4 . 2図 に お い て , 縦 軸 は 実 質 為 替 レ } ト , qzEP/Y,横軸は資本ストックの利用水準で 2 8 実質為替レート決定に関する諸理論と現実 NAI民. urelationship(!ntemalbalancel 倫﹄ n u o e d “ 叫 川崎 町 ーー mmm 崎 C u r r e n ta c c O n u t= S t r u c t u r a lt 10ws ( E x l e m a lb a l a n c e ) U ti J iz a t i o n 4 . 2図 9) ある.ここで注意すべき点は,名目為替レート B と主娠し,資本移動の租度の差に焦点をさ当ててい は受取勘定建で定義されている事,資本ストック る.そこで,彼は初期状態として貿易収支ぜ口を 利用水準の上昇は失業の減少を合意する事,の 2 仮定し,資本移動の程度により,実質為替レート 点である. の変化が異なることを示した.また,彼のモデル 経常勘定,すなわち対外均衡線は右下がりであ る 均衡では輸出と輸入の格差は構造的資本 10) フロ}によりマッチきれなければならない. では,国際貸借が完結すると仮定されており,彼 のよそヂルは I 長期 j と判断できる. 続いて HAMIDについて考える.彼は,実質 NAIRUは対内均衡を表わし,高い実質為替レー 為替レ}トの定義に関して,対内・対外両均衡維 トは高い利用水準をもたらす.均衡では,高い実 持のための結合要件として特徴付けており, 質為替レートにより生産能力利用水準の上昇が可 I s a r dと同様の立場である.彼の特徴は比較生産 能である. 性上昇率格悲(生産性アプ口一チ)に注目したこ 経済の総合均衡のためには,同一の実質賃金率 と,及び実証分析により比較生産性上昇率格避が と同一の生産能力利用水準で対内均衡が達成され 実質為替レートの決定において麓要な役割を果た なければならない.よって,各時点において…義 していることを示したことである. 的な均衡実質為替レートが存在する. 他の重要な外生変数としては構造的資本フロー があるが,ここで I 構造的 j とは峻昧である.短 最後に SIMON他について考える.彼らは,基 礎的均衡レート (FEER) という中期的概念を用 いて実質為替レートと経常勘定を関連づけていた. 期投機的フローは明らかに構造的ではなく,直接 彼らのそヂルの中で意袈な役割を果たしていたの 投資フローは高度に永続的であり,急速には逆転 構造変数であり,具体例として労働市場のミスマッ しない根本的な収益機会を反映している.ポ…ト チ等を挙げていた. ブォーリオ投資フローの位置は明らかではない. 以上の関係をまとめると以下の様になり, 3者 とも、注目点が異なることが明らかである. 6 . 3者の比較 以上,実質均衡為替レ…トの決定に関する 3つ の理論を考察した. 3者のモデルはどこが異なる のであろうか.本節ではその相違点を明らかにし たい.注目点は f 実質為替レ}トの決定において 中心的役割を果たすものは仰かjである. s a r dの理論について考える.彼は,実 先ず, I 質為替レ…トは自国・外国の対産出量貿易比率の みではなく,純資本フローによっても決定される Y 五 日 占 ISARD 資本移動の程度の差 HAMID 比較生産性上昇率の格差 ト一一 SIMON他 構造変数(税準,労働市場のミ スマッチ等) 2 9 権俸基・重政良充 7 ) NAIRUとはインフレが定常状態にある産出量 7 .結 び 及び、失業の水準である.尚,彼らは, EMS参入 本稿では,長期均衡実質為替レートの決定に関 する 3つの想論を考察し,比較した.その結果, による岡内経済の内部変化や NAIRU自体のシブ トを全く考慮していない. 3っ と も 往 日 点 が 異 な る こ と が 判 明 し た . 先 ず 8 ) SIMONWREN-LEWIS,[ 9 , ] P6,F i g. 1 I s a r dについては, I s a r d 自身も指摘しているよ 9 ) SIMONWREN-LEWIS,[ 9 , ] P7,F i g . 2 r 財価格は完全伸縮的である j という非現 1 0 ) 対外均衡線が右下がりとなるのは以下の理由に 実的な仮定を置いている点に限界を感じる.また, よる.商い利用水準により,高水準の輸入が発生 I s a r dの文献では実証分析が行われていない.次 する.対外均衡持続には高水準の輸出が必要であ に SIMON 他 の 理 論 に つ い て も , 構 造 変 数 り,低い実質為替レ…トが必要となる. うに, ( S t r u c t u r a lv a r i a b l e s ) として何を定義するかに 関して唆昧な点がある.最後に. HAMIDは,各 番考文献 回の比較生産性成長率格差という新しい観点から [ 1JP e t e rI s a r d,E xch αngeR αt eE c o n o m i c s,Cam- 為替レート変化を分析し 実証結果により理論の b r i d g eUn iv e r s it yP r e s s,1 9 9 5 “ Long-Run D etermi[ 2 J HAMID FARUQEE, 妥当性を証明した. では,現実の為替レートの変動を最もよく説明 n a n t so ft h e Real Exchange R a t e :A S t o c k - できる理論はどれであろうか.以上の相違点の比 t α : / 1pα: p e r ・ s ,V o l . 42 , FlowP e r s p e c t i v e ",IMFS 較考祭から,我々は HAMIDの そ デ ル を 一 歩 前 March 1 9 9 5p p . 8 0 1 0 7 進したモデルとして評価できるが,労働生産性に [ 3 ]KennethA.FrootandKennthRogoff , “P e r - 関して若干の閉鎖点が残っている.それは貿易財 s p e c t i v e sonPPPandLong-runReal日xchange (製造業部門)の労働生産性は考慮されているが, Ra旬 s ",H andbooko l I n t e r n αt i o n α1 Economi c s, 非貿易財(サーピス業部門)の労働生産性は考慮 u o l .m,E l s e v i e rS c i e n c e,1 9 9 5,p p .1 6 4 7 1 6 8 8 されていない点である O 確かに、モデルに組み込 .“ ,C o v e r 吋 I n t e r e s tA r b i t r a g e [ 4 JTaylor,Mark,P むことができれば,現実に近く,より説明力の高 andmarketT u r b u l e n c e ",E c o n o m i cJ o u r n α1 9 9, いモデルとなるであろう.さらに,国際収支の定 p p . 3 7 6 3 9 1 義に,今回捨象されているサーピス収支を合める ことが可能ならば より一般的な理論となるであ [ 5 J Rogoff ,K enneth “ ,T e s t so ft h eM a r t i n g a l e Modelf o rF o r e i g nExchangeF u t u r e sMarkets", i nEssaysonE x p e c t a t i o n sand日xchangeRat e ろう. Vo l at i l it y, d o c t o r a l d e s e r t i o n, Camb r i d g e, M a s s . :M a s s a c h u s e t t sI n s t i t u t eo fTechnology, 注・引用文献 1 )P e t e rI s a r d[ 1 ] , c hap. lO ,newd i r e c t i o n sf o r c o n c e p t u a lmodelso ff l e x i b l eexchanger a t e s, pp. l71-173 1 9 8 0 ., “ TheP e s oProblemi n [ 6 J Krasker,WilliamS T e s t i n gt h eE f f i c i e n c yo f Forward Exchange 2 幻 )P e t e rI s a r d口 [ l 日 ] , c hap. 10pp. 16 8 " o u r n α10 1Monetαr yE c o n o m i c s6 , Markets",J 幻 3 ) HAMID FARUQ日 日 , [ 2 ]p p . 8 0 1 0 7 p p . 2 6 9 2 7 6 巴 句 司 叩 悶 句 司 叩 一 句 司 句 句 , ]p . 9 3,T a b l e 2 . 4 ) HAMIDFARUQEE [ 2 F i g u r e 1, p. 9 7,F i g u r e 2 p. 9 5, 5 ) HAMIDFARUQEE [ 2 , ] p. 10 0,T a b l e 4, P. 1 0 2,F i g u r e 3, P1 0 3,F i g u r e 4 2 6 ) SIMONWREN-LEWIS [ 9 Jp p .ト2 [ 7 J MaCallum,B e n e t tT .,1 9 9 4“ AR e c o n s i d e r a… t i o no ft h e Uncovered I n t e r e s tP a r i t y Rela… t i o n s h i p ",J o u r nαl 0 1Monetαr yE c o n o m i c s3 3, pp. 105-132 e l i e f s and s y s t e m a t i cR a t i o n a l [ 8 ]“Changing B 3 0 実質為替レート決定に関する諸理論と現実 F o r e c a s tE r r o r sw i t hE v i d e n c e from F o r e i g n , l Vol .LIX S u p p l e m e n t ,1 9 9 , 1p p . c h e s t e rS c h o o E x c h a n g e ",Am e r i c αnE c o n o m i cR e v i e w7 9,p p . 1 2 2 6 2 1 6 3 6 e t e rWestaway,S o t e r I o s [ 9 ]SimonWren-Lewis,P S o t e r , i andRayB a r r e l l“ E v a l u a t i n gt h eU . K . ' s h eERM"TheManC h o i c eo fE n t r yRatei n加 t [ 10 ]W i l l i a m s o n,The Exchange Rate System, W a s h i n g t o n : I n s t i t u t ef o rI n t e r n a t i o n a l Eco 町 nomics,1 9 8 3
© Copyright 2024 ExpyDoc