実質為替レート決定に関する諸斑論と現実 - HARP

社会情報学研究, Vol
.6
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9
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実質為替レート決定に関する諸斑論と現実
権俸基$・重政良充“
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KeyWords (キーワード)
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l (生産性格差),
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e (対内・対外均衡), P
C
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lFlow (資本フ口-)
1.はじめに
は外国の標準的財バスケット)1:測った自国財
(より一般的には自国の標準的財パスケット)の
今日の経済において,為替レ…トの動きが様々
価格,又は自閲財の価格(物価水準)に対する自
な形で経済活動に影響を与えている事は周知のと
国通貨で測った外国財の価格(物価水準)として
おりである.そこで,本稿では為替レートの決定
定義され,名目為替レートを E,自国・外国の物
理論を紹介するとともに
価水準を P,P・で表わすと,実質為替レートは,
を説明できるのか
現実の為替レート変動
出来ないならばその原因或い
は問題点はどこにあるのかを考えてみたい.
Q P/EP*と表わすことが出来る.つまり, Q
口
は長期的に,どのような水準に決定されるかを見
ていくのである.
以下では長期均衡実質為替レートの決定につい
て見ていくが,ここで実質為替レートの定義をし
ておこう.名目為替レートとは別個の概念である
実質為替レートは,通常,外国財(より一般的に
2
. 長期均衡実質ゐ替レート
長期均衡実質為替レ トに関するよそヂルは以下
事典大学社会情報学部 (
F
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川県工業高等専門学校 (
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)
2
0
実質為替レート決定に関する諸理論と現実
の 2つのアプロ…チに分割される
通じて対外均衡の概念を伝達する一方,短期的な
1
)
1.時間に関して変化する購買力平価として特
経常勘定残高は一般的に最適な結果ではないと強
調している.また近年では,様々な一時的・永続
徴づけるもの
2
. 対内均衡と対外均衡維持のための結合要件
聞の相互の動きに関して新しい説明を可能にして
として特徴づけるもの
以上 2つのアブローチが存在するが
的ショックに反応した経常勘定と実質為替レ}ト
1番目の
アプローチに関しては妥当性に関する統一的な見
いる.
最も単純なモヂルとして以下の例を利用しよう.
解が存在しないので,ここでは 2番目のアプロー
各国が単一の財を生産する 2国が存在する.各財
チに重点をおき,実証的根拠を見ていく.
は生産国通貨で 1という価格を持っとする .Qは
経験的応用は後者のアプローチについて実施さ
相対価格,あるいは実質為替レート
(
E
P
*/
P
)
れており,構成要素に関しては,経常勘定を,均
であり,外岡財 (F) を 1単位購入するために必
衡実質為替レ」トを根本的資本フ口ーの概念,或
要な自岡財
い資本ブ口}と均等化することと一致するものと
(
H
) の量として表示される. C ,
CFは自国で消費される各財の実質最である. YH
は自国の実質生産量, Bは自国の純資本流入,
して定義してきた.
自閤財で測った貿易収支赤字である. A==Y+B
いは対内均衡に関する様々な定義の下での望まし
この概念的アプ口}チに基づいた分析により,
H
は自国におけるアブソープションの水準である.
観察された為替レ}ト変化の長期的傾向の大部分
CH*,CF*,YぺB*=-B/Q,A ・
お Y・
+ B・
が説明可能であるが
は外国に関する同意表現であり, Y*,B ¥ A *
このアプ口一チには難点も
存在した.例えば,以下の 2点である.
1.ぞれ自身経験的に詳細さを持っていないこ
と
2
. 対外均衡の定義に関する明確な合意が存在
しないこと
ここでは,
2番目の問題に重点をおく.一方で
は,対外均衡を経常勘定(資本)ブ口}の任意の
水準として定義することはあまりアピ}ルできな
い.他方で,純国際的債務の望ましいストックに
は外国財で測られる.効用関数はコブーダグラス
型とする.
Uロ (
C
H
)
l叩(C
F
) U*=(CH*)m・
(Cr
*
)いm
*
(
2.
1
)
C目 立 (l-m)(Y+B) CF口 m(Y+B)/Q
(
2
.
2
)
皿
CH*=Qm・
(
y・
-B/Q) C
F
*ロ (l-m・
)(Y*-B/Q)(
2
.
3
)
市場クリア一条件は
CH+CH*=Y
CF+C〆
口 Y・
(
2.
4
)
注目されようとも,対外均衡に関する概念的記述
2
.
2
)一(
2.4)より,実質為替レートの市
よって, (
は,興なる悶々に関する債権が不完全代替である
場クリアー水準は,
程度を決定する諸要因についての充分な理解を反
Q-mY-(1-m-m・
)
B
映していない.東に,一般的には,対外均衡は実
一
m*Y*
(
2
.
5
)
質為替レ…トと独立して定義されうるという仮定
であり,市場参加者は自国財を貯むと仮定する.
は妥当しない.
かくて,他の条件を一定とすると,自国への純資
本流入の増加は,自問財相対価格の上昇(外国財
3
. 実質輿時点問均衡モデル (
P
e
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r
d のそ
デルに基づいて)
本節では, P
e
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r
d2) の実質異時点閉そデ
相対価格 Qの下務)をもたらし,
dQ
1
-m-m*
dB
m*Y*
一 一
くO
(
2
.
6
)
ルに碁づいて長期均衡レ…トの決定を見ていく.
である.というのは,自問財消費の増加割合は,
本質的に,典時点問モデルは,経常勘定残高を
外国アブソ…プションの減少割合より大きいから
2
1
権俸基・重政良充
である.
照的に,実質為替レ…ト変動の幅が資本移動性の
このフレームワークは,実質為替レートの可変
程度と対産出量貿易比率の両方を反映するような
性と資本移動の程度問の関係,及び棟々なタイプ
動学的反応を生み出すことである.例えば,自国
のショックに反応した実質為替レ}トと経常勘定
産出量減少のケ}スを考えよう.純資本流入が産
との聞の相互の動きに関する見解を導く.任意の
出量減少が吸収に与える影響を軽減している期間
2
.
5
)式の微分により以下の
ショック Oに関して (
中 (
0く s
Bくs
Y
) 自国生産品の相対価格はショッ
ことが示される.
ク蔵前の価格の上方にとどまる.結果として,負
dQ
d
(
}
m dY
m・
Y* d)
(
・
Q dY
Y* d)
(
・
l-m-m dB
・ d(}
m*Y
(
2
.
7
)
の生産ショックが終わった後では,国際的借入れ
が急速に行われる問
自困アブソープションは自
国生産量の下方に維持され
自困製品の相対価格
をショック直前の水準の下方へと移動させる.よ
任意のショックに対する実質為替レートの反応
り一般的には,ショック直前の水準に比べての純
は,自問・外国の産出最の水準と純資本フローが
資本フロ…と実質為替レートの共変化は,産出最
ショックに反応する程度に依存し,自国・外国の
のショック直前の水準からの議離の時間的側面を
,
m*) ばかりに依帯するの
対産出量貿易比準 (m
反映する.更に,純資本ブ口}と実質為替レート
ではない.
両方のスイングの幡は
外国産出量に影響を与えずに自国産出量の水準
を減少させるショックのケ…スを考え,初期状態
m*
として,ショック以前には貿易収支はぜロ
Y mY/Qであると仮定する. (
2
.
7
)式より,
場口
I
:
lQ
Q
1
-m-m*I
:
lB
一一一一
一一一
I
:
lY
Y
m
Y
資本移動性の程度を民映
し,実質為替レートのスイングの幅は対産出量貿
易比率をも反映する.
さて,ここで興時点間モデルの特徴である 2期
間を考えよう.自国は今期資本流入国であると仮
定する.すると,定義
(
2
.
8
)
(
A Y+B) により,今
口
期は所得以上の消費(アブソープション)が可能
である.ところが,来期においては,資本流出,
である.かくて,資本移動が存在しない C~B=O)
すなわち対外借入れの返済が起こるので,所得以
ケ…スでは,自国財の相対価格の上昇は,自国財
下の消費(アプソ…プシヨン)しかできない.こ
産出量の等比例的減少をもたらす.更に,資本移
のことが興時点間モデルの特徴であり,国際的貸
動が存主主するケースでは,相対的に低い対産出量
s
a
r
dは長期を
借がキャンセルされることから. I
貿易比率を持つ岡々において実質為替レ}トの相
想定していると替えるのである.
対的により大きな変化が発生する.
(
2
.
8
) 式を利用して異なる資本移動性の下での
一時的・永続的供給ショックの影響を比較する.
=O)
第一に,資本移動が帯症しないケース(sB
では,供給ショックが実質為替レートに与えるイ
ンパクト効果は,資本ブ口}によって影響されず,
需要ショックに関しては,自閲・外国の産出量
2
.
8
) 式と同意の式は以下であ
が不変であれば, (
る.
D
.Q
Q
1 -m-rr~*
m
D
.B
Y
(
2
.
9)
よゥてショックの永続性と無関係である.第二に,
資本移動性がなければ,定義により実質アブソー
永続的であると予見される供給ショックのインパ
プションは産出量を上回ることはできない.かく
クト効果は,資本移動性の経度に対して小さな感
て,もし名日常襲成長が自閏経済を過熱させると,
応性を示すと考えられる.
唯一の安全弁は自国物価水準の上昇であり,実質
(
2
.
8
) 式から明らかになる第三のポイントは,
一時的供給ショックは,永続的供給ショックと対
為替レートを一定に保つように名目為替レートが
変化する.対照的に
自国需要の一時的増大が純
2
2
実質為替レ…ト決定に関する諸理論と現実
資本流入によって調整されるならば,実質アプソ}
とする貿易収支に影響を及ぼす実物的要因を考慮
プションは産出量を上回ることが出来,実質為替
しつつ,マク口対内外閥均衡の達成の問題も内包
レ}トは変化するであろう.このケースでは,実
したストックとツ口}の相互作用モデルを設定し
質為替レ…ト変動の幅は純資本流入に対して正の
て長期実質為替レ}トの決定因を理論的に解明し,
方向で等比例的であり,対産出盤貿易比率に対し
あわせてその実証をも試みた
て負の方向で等比例的である.
FARUQEEの所説を検討し,紹介することにす
以上の単純な例によって合意される為替レ…ト
HAMID
る.
動学のパタ}ンは,典時点問アプローチにより実
購貿力平価 (
P
P
P
) は実質為替レートの一定性
証的に検定可能な新しい依説が提供されることを
を保証するが,現実には実質為替レ}トの PPP
示し,このアブ口}チに基づいた分析は変動為替
基準からの論離が存夜し,その論離は対外的競争
レートの行動を説明する能力を改轄するであろう
性の獲得戒は喪失として解釈可能である.吏に,
という希望を提供する.が,問題点も存在する.
為替レート変化が貿易収支に与える影響はしばし
I
財価格は完全に伸
ば予測困難である.よって,実質為替レ}ト決定
縮的である j という非現実的な仮定を反映してお
に関して PPPよりも一般的な見解が必要となる.
ほとんどの異時点間モヂルは
り
,
1つの主要なチャレンジはその仮定を緩和す
ることである.以前述べたように,
r
閣内物価水
準は名目為替レ…トに対して緩慢に調整する j と
以下では,実質為替レートの趨勢的変化の源を
調査するが,著者の論文における特徴を列挙して
おこう.
いう認識は実質為替レートの可変性が名目為替レ…
-維持可能な実質為替レ…トを対内均衡及ぴ対
ト体制に感応的である理由を説明するのに重要で
外均衡と両立可能な傭或は経路であると定義
あると思われる.
すること
・ストックココブ口ーの枠組み内での維持可能な
実質為替レ}トは
4
. HAMIDFARUQEE3)の所輸について
原則的に対内的及び対外
的マクロ経済的均衡を説明可能であること
伝統的な貨幣数最説又はマネタリー・アプロー
・均衡実質為替レートの決定要因は,世界市場
チに依拠した購質カ平価 (
p
P
p
)説によれば,長
での自閣の純貿易ポジションに影響を与える
期的には名目為替レ…トの動きが各国物価水準の
饗閣をも合むこと
相対的な動きを相殺して,実質為替レ…トを一定
-生藤性アプローチに注目すること
に維持し,各国の相対的な物価水準の動きは,各
動きによって決定される.しかしながら現実には,
1)実質為替レート決定のモデルとその解釈
モヂルとして以下の 5つの仮定を満たす経済を
非貿易財の存在や貿易障壁などのため, pppは
考える.
成立しない.
1
)自国(小国)と外国(大国)の 2図からなる,
2
)各国は 2財(自国財と外岡財)の貿易と lつの
国の名目貨幣供給量と実質貨幣需要最の相対的な
ところで,たとえ非貿易財や貿易隙接が存在し
の基準 (
b
e
n
c
h
なくても,実質為替レ}トは ppp
金融資産の取引を行う
3
)緒変数は実質値(外国
m
a
r
k
) である不変の水準と必ずしも一致する保
財単位)で表示される
4
)産出最は完全雇用水準
障はなく,議離するかもしれない.その理由は何
)外岡資産の実質利子率は一定で
で一定である, 5
であろうか.換脅すれば,長期的な実質為替レー
あり
トの決定闘は何であろうか.これが以下の主題で
ある.
以下では,国家聞の生産性上昇率格差をはじめ
r・で示される.
自闘が保有する対外実質純資産ストックは fで
示される.自閣の貿易収支は
自国財と外国財の
相対価格及び外生的シフトパラメターに依存する
2
3
権俸恭・議政良充
とし,自国の純輸出(貿易収支)を以下の式で定
義する.
nx=-yq十 x
;y>
0
3
.
2
),(
3
.
3
),(
3.4)式より,
ち
, (
yq+x十r
*
f
=
α dE
t[
え
]
十
併(
f
d
_f
)
(
3.
1
)
(
3
.
5
)
である. (
3
.
5
) 式は国際収支均衡条件であるが,
(
q:自国財の実質価格として定義される実質為
この条件は,財・サーピスの純フローと所得を越
替レ…トく qの上昇は自国通貨の実質増価>, x
:
えた望ましい趨過支出(望ましい経常収支)との
シツトパラメター,すなわち,岡家聞の生産性上
均等を要求している.換替すれば,中期にわたる
昇率格差や貿易政策の変化の影響を受ける純輸出,
経常収支(不均衡)は維持可能な国際資本移動に
y 弾力性アプロ…チの観点では,マ…シャルロ
よってブァイナンスされる.
ラーナ一条件令意味するパラメタ…)
サーピス収支を捨象すると,経常勘定は単に財
(
3
.
2
),(
3
.
5
) 式より, 2つの内生変数, f
,qと
2つの外生変数, f
d,xから成立する連立線形方
の純輸出プラス利子所得として定義され,経常収
程式が形成される.初期条件に依存して,一般解
aは園内で保有される対外純資産の蓄積率 f
支c
は以下のように導出される.
に等しい (
ca=f)ので,以下のように表わされる.
f= yq+x+r・f (・のついた変数は時間に
叩
関する導関数
q(
t
)清
司(
t
)十 σ[
f(t)-f(t)];dく
(
3
.
6
)
d(t)zft(t)十土主 (
t
)
(
3
.
7
)
:
r
.e-
(
3
.
8
)
y
(
3
.
2
)
f(t)=).
次に,維持可能な国際収支ポジションは,望ま
o
:
r
量(
t
)口).
y
.l(日
)
E
t
[
fd(
s
)
]
d
s
e
-I.(8-唱 t[
X(
s
)
]d
s
(
3
.
9
)
dによってファ
しい戒は維持可能な資本フロー率f
イナンスされる経常収支を反映するものであり,
ここで,パーのついた変数は長期的(ストック)
dは,以下
対外純資産の望ましい蓄積(減少)率f
均衡値,他の変数は現在の(フロー)均衡備であ
の行動方程式により示される.
る.
(
3
.
8
) 式より,対外純資産の均衡保有最 f(
t
)
f
d= d(
r
-p)
+併(fd
_f
);
δ併
, >0
(
3
.
3
)
は対外純資産の目様水準に関して期待される将来
ここで, fdで示されている望ましい蓄積率は自国
の変化 l
fd (
t)
ftに依存ことがわかる. 同様に
実質利子率 rと閣内の長期実質利子率 pとの格差
(
3
.
9)式より,純輸出の外生的で永続的な構成要
dと現実の水準 fと
及ぴ対外純資産の目標水準 f
t
)は将来の貿易撹乱の期待経路に関する現
素え (
の聞の格差の関数である.ここでは長期実質利子
症割引価値 l
x(
t)
ft
に依存することがわかる.そ
ρ ロr・)と仮定する.
事は世界利子惑に等しい (
3
.
8
),(
3
.
9
) 式に依存する主要な結
して,この (
吏に,国際資本移動による内外実質収益率を均
果は
(
3
.7)式より得られ,長期均衡実質為替レー
等化させる裁定条件,従って実質利子平価条件を
ト品を,経常勘定と対外純資産ポジション両者に
考慮しよう.
おける基礎的構成要素の関数として確定した事で
ある.
r口 r
"
'
α
E
t[
ゐ
]
(
3
.
4
)
(α:岡内消費における国内財に対する支出シェ
ア,払:t
期の情報に基づく合理的期待値)
中期のブロ…均衡としての維持可能な国際収支
口 f
dという式で示される. この
ポジションは, f
3
.
6
) 式より中期にわたる内外均衡を維
次に, (
持しうる実質為替レートの調整とその長期的均衡
(値)との聞の関係が明らかにされる. この実質
為替レ…ト q(
t
)に関する維持可能な経路(或は
鞍点経路)は,対内的・対外的マクロ経済的均衡
条件より,内外両均衡と両立しうる維持可能な実
と関係しており,完全ストック均衡が達成される
質為替レートの均衡値戒は経路が保証される.即
までは長期均衡値である司 (
t
)とは異なるのであ
2
4
実質為替レート決定に関する諸理論と現実
る.
る生産性成長格差或は交易条件に影響を与える財
長期均衡への移行中,実質為替レ…トは,定常
価格ショックのような変数を含んでいるかもしれ
均衡値に向かう対外純資産の収束経路を保証する
ない.金融閣では,当該国経済の長期的対外純資
長期均衡値から晴離して推移するかもしれない.
産ポジションを本質的に決定するファンダメンタ
ff
d=
0で示される.定常状
ルズは,ライブ・サイクル効果を通じた貯蓄・投
態 で 一 定 の 外 生 変 数 の 値 が 与 え ら れ る と ( fd
資に対する態度,政府の負債残高等の要閣を含ん
(
t
)ロ f,x(t)=
寸),定常状態での均衡は以下の
でいるかもしれない.
定常状態均衡は
口
式で与えられる.
2) 日・米に関守る実証分析
ェ
ロιf+三一.f
q(
t
)
y
y
(
t
)寸
,
HAMIDは,実質為替レートと根本的決定要因
の聞の長期的関係を識別・推定することを中心と
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) r*
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a(
t
)=0
口
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n分析を行っている.
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, c
期的変動に関しては,変化しつつある定常状態に
c
o
i
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t
e
g
r
a
t
i
o
n:定常的,かつ長期的関係を決
定する諸変数の線形結合が少なくとも 1つ存在す
o
るならば, N個の異なった定常変数の集合が c
i
n
t
e
g
r
a
t
i
o
nである.
o
i
n
t
e
g
r
a
t
i
o
nの変数は,一時的に
直!略的に, c
関連した均衡為替レートの変化と所与の定常状態
離れて変動するかもしれないが,時が経過すると
値との聞には明らかな相違
に関連した一定の PPP
体系的に収束しなければならない.
経済が定常状態に到達し,ファンダメンタルズ
が定常状態値に落ち着いたときにのみ,実質為替
レ…トの一定性の観点、から PPPが妥当すること
に注目しよう.一方で
ファンダメンタルズの長
恥
実質為替レ]トのケ…スでは,
点が存在する.
定常状態では,貿易収支は単に対外純資産の均
-短期の投機的要因及び循環的要因の存在が,
衡水準によってのみ決定される.この結果は,ア
実質為替レ…トを一時的に維持可能な経路か
プソ…プション・アプ口…チのストック・パ}ジョ
ら識離させるかもしれず,維持可能な経路は
ンとして解釈可能である.即ち,望ましい対外純
(非定常的)ファンダメンタルズの変動によっ
資産ポジションは,維持可能な純貯蓄ブ口~
(y-
A,すなわち貯蓄・投資バランス),及ぴ貿易収
て定義される.
-時が経っと,開放経済に関する自己修正メカ
フロー均衡と両立
支の維持可能な流列(ブロ-)を決定づける.定
ニズムにより,ストック
常状態では,純輸出は安定的水準の対外負債に起
する長期均衡値への実質為替レートの維持可
悶する利子債務を相殺するのに充分な本源的黒字
能な調整が確実になる.
z
である.その結果,長期的に対外純資産に影響を
以下,アメリカと日本について実証分析が行わ
与えずに娘期的に経常収支に影響を与えるそれら
れており,使用ヂ}タは以下の通りである.
の撹乱は,定常均衡において,純輸出に影響を与
・実質為替レート:実質実効為替レ}トに関す
えずに実質為替レートの変化に転換するのである.
P
Iに基づいた指標 (REER)
るC
要約すると,均衡実質為替レ}トの決定要因は
-対外純資産に関するストックデータに含まれ
世界市場における 1
)自閣の純貿易ポジションと,
)交易
る説明変数 l)GNPシェア (NFA), 2
2
)資本の純貸し手戒は純借り手であるための自閣
条件 (TOT)
の碁本的な傾向(態度)の両者に影響を与える要
閣を含んでいるのである.
貿易商では,主として経常勘定を通じて作用す
る決定要因は,非貿易財の相対価格に影響を与え
-生産性
1
)貿易財対非貿易財の相対価格の比較指数
(TNT)
2
)労働生産性水準の比較指数 (PROD)
2
5
権俸恭・重政良充
3) 実証結果
(1)アメリカ
的要素から生じるのである.
(
2
)日本 5)
4)
最大間有値(,~ MAX) とトレース (TRACE)
・帰無仮説は TRACE, AMAX両統計値により
統計舗を用いて検証が行われている.
AMAX:正確に r十 1佃の c
o
i
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n
g関
再び棄却される.
A) アメリカ
係に対する代替手段に反するせいぜい r個
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gベクトルについて検証す
る
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→・検定統計備に基づくと,多重の c
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と AMAXにより,強力に棄却される.
J
、
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,
岨
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という帰無仮説 (
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) は TRACE
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4つの時系列の中で cointegrationがない j
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駒
岨
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gベクトルについて検証する.
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国
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欄
四
圃
を説明できない
-生産性格差と純富の両者は,アメリカの実質
為替レ}トの長期的決定において適切である
.観察された実質為替レート可変性の約五分の
ーは永続的ショックと長期実質為替レートへ
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1
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の変化のせいにすることが出来る.
く戦後のアメリカ実質為替レートの最も顕著な特
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.
1
.
0
.
2
質〉
→現実の備と維持可能な値の両者が一貫して下
落していること
・貿易財対非貿易財の相対価格の比較指数
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着実な下落トレンド
-dv
司
た生産性成長率から生じた.
nH
を示し,この下降傾向は,自国及び外国の偏っ
0.
1
-対外純資産 NFA
→1
9
8
0年代までの全体期間にわたり比較的安定.
しかし,アメリカが世界最大の債権固から世
1
1
.
1
界最大の債務国へと移行した事も示す.
ドル実質為替レ}トの循環的変動は,現実とト
.
}
t
,
、
講離として解釈可能であり,短期的循環かっ投機
1
的)残差構成要素は,長期的経路からの一時的な
1
t
・
レンドイ肢の聞の格差として得られる.この(定常
•
"
'
"
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ド昂・'/(, 7
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1
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1
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"
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6
実質為替レート決定に関する諸理論と現実
として替及されている.彼らは,維持可能な経常
-生巌性と実質為替レ}トのみが単独で c
o
i
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t
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同
g
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勘定は必ずしも経常勘定均衡を合意しない.逆に
日本のケ}スにおいて PRODの代わりに TNT
替えば,相当の期間にわたり経常勘定赤字(黒字)
を使用した c
o
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e
g
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a
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i
o
n推定は非常に似た結果
を維持可能な構造的資本流入(流出)が存在して
をもたらした事にも触れている.そして,アメリ
もよいのである.
カに関する結果と共に,生産性アプローチに対し
B
) 日本
て強力な支持を与えた.
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以上の実証結果を基に,著者は実質為替レ…ト
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と生産性格差との関係について以下のような結論
『岨
を導出している.
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・対外純資産及び生産性格差は実質為替レ}
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・生産性は長期的に重要であり,生産性格差
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2
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長期的関係がある
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『部門別生産性格援は,アメリカ及び日本
に関する実質為替レ…ト変化のトレンドの
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とは意義があろう.
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重要な役割を果たしていることが明らかにされた.
更に,実証閣でこれらの結論がほぼ証明されたこ
川
較生態性上昇率格差及び対外純資産ポジションが
1/
•
結論として,理論閣では実物的側聞としての比
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1
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:C.¥'dicu/C,
川
5. 基 礎 的 均 衡 レ ー ト と 実 質 為 替 レ ー ト
(SIMON WREN-LEWISの所論に基づいて)
本節では, SIMONWRENLEWIS6)の所論に
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2い
叩
基づいて,長期均衡為替レート決定のメカニズム
私
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1 〆ハ¥
を見ていく.
以下では基礎的均衡為替レ}ト(Fundamental
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輔
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.
2ド
念を利用して実質為替レ…トと経常勘定を関連づ
.
0
.
3い
けるが,この概念は W
illiamson[
1
0
] により,
.
0.
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維持可能な経常勘定と両立する実質為替レート j
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噂
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a
1
'161咽1
2
1
9
1品
川削
岬制
刊糊
2
7
権俸基・重政良光
ここで FEERの定義をしておこう. SIMON
r
他によれば t FEERとは t やがては当該経済の
である7)
このモデルの構造は
4
.1閣で示される(枠内の
貯蓄行動及び投資機会によってもたらされる構造
変数は外生).物価・賃金方程式は実質賃金を決
的資本フローに正織にマッチするような経常勘定
定する.価格設定,及び賃金設定のみが NAIRU
に終わる賀易・所得ブ口ーを生み出す実質為替レー
と 一 致 し て 行 わ れ る . NAIRU と は
トjである.ここで
t
FEERは中期概念であり,
r
定常イン
フレを生み出すような財・労働市場の利用レベル
NAIRUに
国内産出高及び需要最の中期均衡値に基づいてそ
の組合せ jである.このモデルには
の計算を行う必要があることに注意すべきである.
対する 3つの主要な影響,すなわち税率,構造変
岡内活動の均衡水準は NAIRU (
N
a
t
u
r
a
lR
a
t
e
)
数(労働市場のミスマッチ等) 実質為替レート
t
t
¥/
F
E
E
R
4
.
1
図 8)
が存在する.例えば,直接税の増加は賃金の上昇
生み出す.その時,実質為替レートは,経常勘定
をもたらす.実質賃金と利潤の聞のこの不一致に
が構造的資本フローによってマッチされるように
よりインプレーションが発生し,失業の増加によ
調整する.ぞれらがマッチするとき,実質為替レー
り工場の利用が減少したときにのみ消滅する.財-
トは FEERと等しくなる.
労働市場の利用率は労働需要曲線,あるいは雇用
しかし, FEERはこの段階では NAIRU と
J
o
y
c
e&W
r
e
n
L
e
w
i
s,1
9
91)によって結
方程式 (
致しないかもしれない.現在の賃金・物価方程式
び付けられる.
によれば,低い実質為替レ}トは賃金を引き下げ
所与の財市場生産力水準,労働市場の労働供給
るよりも物価を上昇させがちである.結果として
水準に関して, NAIRU もまた生産高や躍用の水
インフレ}ションは変化し,産出高が再び下落し
,FEERの概念
準を合意する. (ここでの NAIRU
た時にのみ落ち着く.が,低い産出高は輸入を減
は中期のものであり,資本ストック,つまり生産
が上昇する. 4
.
2図で,こ
少させ,その結果FEER
能力,は一定であるにこの産出荷水準は通常の
れらの関係と FEERと NAIRUが一致する均衡
形式で輸入に影響する.世界貿易が与えられると,
が図示される.
財価格と I
DPは変動し,輸出・輸入は実質為替
レートの特定の値に対して条件付きの経常勘定を
4
.
2図 に お い て , 縦 軸 は 実 質 為 替 レ } ト ,
qzEP/Y,横軸は資本ストックの利用水準で
2
8
実質為替レート決定に関する諸理論と現実
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2図 9)
ある.ここで注意すべき点は,名目為替レート B
と主娠し,資本移動の租度の差に焦点をさ当ててい
は受取勘定建で定義されている事,資本ストック
る.そこで,彼は初期状態として貿易収支ぜ口を
利用水準の上昇は失業の減少を合意する事,の 2
仮定し,資本移動の程度により,実質為替レート
点である.
の変化が異なることを示した.また,彼のモデル
経常勘定,すなわち対外均衡線は右下がりであ
る
均衡では輸出と輸入の格差は構造的資本
10)
フロ}によりマッチきれなければならない.
では,国際貸借が完結すると仮定されており,彼
のよそヂルは
I
長期 j と判断できる.
続いて HAMIDについて考える.彼は,実質
NAIRUは対内均衡を表わし,高い実質為替レー
為替レ}トの定義に関して,対内・対外両均衡維
トは高い利用水準をもたらす.均衡では,高い実
持のための結合要件として特徴付けており,
質為替レートにより生産能力利用水準の上昇が可
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dと同様の立場である.彼の特徴は比較生産
能である.
性上昇率格悲(生産性アプ口一チ)に注目したこ
経済の総合均衡のためには,同一の実質賃金率
と,及び実証分析により比較生産性上昇率格避が
と同一の生産能力利用水準で対内均衡が達成され
実質為替レートの決定において麓要な役割を果た
なければならない.よって,各時点において…義
していることを示したことである.
的な均衡実質為替レートが存在する.
他の重要な外生変数としては構造的資本フロー
があるが,ここで
I
構造的 j とは峻昧である.短
最後に SIMON他について考える.彼らは,基
礎的均衡レート (FEER) という中期的概念を用
いて実質為替レートと経常勘定を関連づけていた.
期投機的フローは明らかに構造的ではなく,直接
彼らのそヂルの中で意袈な役割を果たしていたの
投資フローは高度に永続的であり,急速には逆転
構造変数であり,具体例として労働市場のミスマッ
しない根本的な収益機会を反映している.ポ…ト
チ等を挙げていた.
ブォーリオ投資フローの位置は明らかではない.
以上の関係をまとめると以下の様になり,
3者
とも、注目点が異なることが明らかである.
6
. 3者の比較
以上,実質均衡為替レ…トの決定に関する 3つ
の理論を考察した. 3者のモデルはどこが異なる
のであろうか.本節ではその相違点を明らかにし
たい.注目点は
f
実質為替レ}トの決定において
中心的役割を果たすものは仰かjである.
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dの理論について考える.彼は,実
先ず, I
質為替レ…トは自国・外国の対産出量貿易比率の
みではなく,純資本フローによっても決定される
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資本移動の程度の差
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比較生産性上昇率の格差
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SIMON他
構造変数(税準,労働市場のミ
スマッチ等)
2
9
権俸基・重政良充
7
) NAIRUとはインフレが定常状態にある産出量
7
.結 び
及び、失業の水準である.尚,彼らは, EMS参入
本稿では,長期均衡実質為替レートの決定に関
する 3つの想論を考察し,比較した.その結果,
による岡内経済の内部変化や NAIRU自体のシブ
トを全く考慮していない.
3っ と も 往 日 点 が 異 な る こ と が 判 明 し た . 先 ず
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財価格は完全伸縮的である j という非現
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) 対外均衡線が右下がりとなるのは以下の理由に
実的な仮定を置いている点に限界を感じる.また,
よる.商い利用水準により,高水準の輸入が発生
I
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dの文献では実証分析が行われていない.次
する.対外均衡持続には高水準の輸出が必要であ
に SIMON 他 の 理 論 に つ い て も , 構 造 変 数
り,低い実質為替レ…トが必要となる.
うに,
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関して唆昧な点がある.最後に. HAMIDは,各
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より一般的な理論となるであ
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