マクロ経済学 II 第11章 久松佳彰 国際金融と国際マクロ経済学 • • • • 海外経済を明示的に考える。 これを開放(open)マクロ経済学と呼ぶ。 為替レートの働きを学ぶ。 マンデル=フレミング・モデルの基本を学ぶ。 為替レートの決定 • 為替レートとは、各国通貨間の交換比率のこ とである。 • 1ドル=108円 • 為替レートは外国為替市場で決まる。外貨を 買いたい(円を売りたい)銀行と、外貨を売り たい(円を買いたい)銀行が、直接もしくはブ ローカー(短資会社)を通じて、取引を行なう。 • 政府・中央銀行は外貨準備を持っている。 多様な為替レート指標 • 実効(effective)為替レート: 円と他の個々の 通貨との為替レートの動きを、その通貨の ウェイト(加重)で平均したものである。 • どのくらい円高に振れているか、円安に振れ ているかという指数の形で表す。 名目為替レートと実質為替レート • 市場で決まる為替レートは名目為替レート。 • マクロ経済で重要なのは、実質為替レート。 • 物価が変化しないなかでの円高は、日本の 商品の海外での価格を高くし、海外製品の日 本での価格を安くする。 • アメリカの物価が上がっているなかでの円高 は、両国の財・サービスの価格差を変化させ ない。影響がない。 • 両国の物価を含めて為替レートを考える必要 実質為替レート • 名目為替レート×(日本の物価)/(アメリカの物 価) • 指数で表すので、実際には 現在の為替レート 日本の物価指数 基準年の為替レート アメリカの物価指数 • 実質実効為替レートも考えることができる 為替レート 実効為替レート 実質実効為替レート M 1 2004 M 1 2003 M 1 2002 M 1 2001 M 1 2000 M 1 1999 M 1 1998 M 1 1997 M 1 1996 M 1 1995 M 1 1994 M 1 1993 M 1 1992 M 1 1991 M 1 1990 M 1 1989 M 1 1988 M 1 1987 M 1 1986 M 1 1985 M 1 1984 M 1 1983 M 1 1982 M 1 1981 M 1 1980 為替レート( 指数、2000年=100) 出所: I MF,IFS. 140 120 100 80 60 40 20 0 資産と為替レート • 外国為替市場では大規模な取引が行なわれ ている。 • 貿易の実需とは関係ない、投機・投資が取引 目的の実態。 • 儲けるのは大変よ。 長期的な為替レートの動きと購買力 平価理論 • 購買力平価 – 2通貨間の為替レートは、両国の物価の動きに よって決まるという考え方 • 一物一価の考え方 – ある商品の輸出入が可能であれば、貿易によっ て二カ国間で価格の均一化があるはず。 購買力平価理論 p1 ep1* 物価で考えると、 P eP* 変化率をとると、 P e P * * P e P 順番を入れ替えて、 e P P * * e P P • すなわち、円ドルの為 替レートは、日本の物 価上昇率とアメリカの 物価上昇率の差に等し く動いていくことになる。 購買力平価レート • 購買力平価レートは、その時点の為替レート のある種の理論値と考えることができる。現 実の為替レートがこの購買力平価レートをあ まりにも乖離している場合には、現実の為替 レートが本来あるべき水準にないことを意味 すると解釈できる。 • 物価指数はどれを使うか?基準年をいつに するか? 為替レートと貿易 • 為替レート以外の要因でおきた輸出入の変 化は為替レートに影響を及ぼす。 • 米国が景気拡大すると、米国の輸入増=日 本の輸出増。その影響で、ドル供給量は増加 し、ドル安=円高の方向に為替レートを動か す。 為替介入と通貨制度 • 中央銀行のドル売りは、外国為替市場でのド ル売りですから、他の条件に変化がなければ、 為替レートを円高に持っていく。 変動為替レート制 • 海外で起こったマクロ変動をある程度遮断す る特徴がある。変動為替レート制の(インフ レ)隔離効果と呼ぶ。 • 米国でインフレ→米国製品割高→日本から の輸出増加・日本の輸入減少→ドル供給増 加→ドル安・円高⇒円高はちょうどインフレを 打ち消す • 変動為替レートは海外のインフレを隔離する マンデル=フレミング理論 • 金融政策 • 金融緩和→利子率下落→投資増大→有効需要増大 • 有効需要増大→海外からの輸入増大→ドル需要増大 • 為替レートはドル高・円安へ→為替レートは円安→輸出増 大・輸入減少→有効需要増大 マンデル・フレミング理論 • 財政政策 • 財政拡大→有効需要増大 • →利子率上昇→投資減少→有効需要減少 • 利子率上昇→資本流入→為替レート円高へ→輸出 減少・輸入増大→有効需要減少 • 財政政策による輸出のクラウディングアウト効果
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