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〈原著研究論文〉
潤滑下の転がり滑り点接触部に生ずる気泡に関する研究
加藤 康志郎
ANumericalandExperimentalStudyofBubblesgeneratedinRoll−
1ng−SlidingPointContactsunderLubrication
KoshiroKATO
(ReceivedonDec.16,2011)
Abstract
Thispaperconnrmsthelocationwherethebubblesaregeneratedbetweentworollersinthelubricatedcondition
byusinganumericalanalysisbasedontheelastohydrodynamiclubrication(EHL)theoryandexperiments.Today,
the別mthicknessandthepressureoflubricantcanbefbrecastedaccuratelybyuslngtheHELtheory・However,
thepressurebelowthezeroorambientpressureislimitedsincethefluidcannotsustainnegativepressureandthe
negativepressure(evaporation)isverysmallconlParedtothepositivepressure・Therefbre,thegenerationof
negativepressurecannotbefbrecastinmostnumerlCalanalyses・Theexistenceofbubblesinthelubricantca
SOmeharmsuchastheobstructionofasmoothflowofthelubricantintheplpeandthedisproportionoftherela−
tionshipbetweenthepressureandthevolumeoftheoilinthehydraulicequlPment・Therefbre,itisslgnificantto
ClarifytheoperatingconditionofthebubblegenerationintheEHLcontactandthefutureofbubbles.Ananaly
icalsoftwareTED/CPAisusedtoconnrmthelocationofnegativepressureoccurrence・Itallowsthegenerati
Ofnegativepressuretousethemodinedequationofthedensity−PreSSurerelationofDowsonandHigglnSOn・A
two−rOllermachineandanopticalmicro−SCOPeareuSedtoobservethebubbles・AndthefbllowlngCOnClusions
WereObtained・Inananalyticalsolution,thehighertheoilnlmpressureis,themorethenegativepressure
generated・Theoil鎖1mofthegenerationofbubblesisthickerthantheEHLoilmm・Bubblesaregeneratedinthe
exitsideofEHLcontactarea・Thetimeuntilbubblesdisappearisinfluencedbythesizeofitandtheviscoslty
thelubricant.
キーワード:EHL,点接触,負圧,気胞発生,油膜厚さ
1.はじめに
白濁の原因が,油の撹拝と負圧による気胞発生にある
と考えている.
転がり軸受やトラクションドライブで,負圧やキャ
歯車,転がり軸受,トラクションドライブなどの転
がりと滑りを伴う機械要素において,荷重は油膜に生
じる圧力によって支えられる.そこでの油膜厚さと油
膜圧力は,今日では弾性流体潤滑(EHL)理論に基づく数
値解析により予測されている.しかし,この理論では,
負圧は荷重を支えないこと,また,正圧に比べ極端に
小さいことの理由から,負圧の発生を無視した解析が
行われている(1).
筆者らは,潤滑油のトラクション特性を二円筒試験
から評価する手法を研究してきた(2).これら一連の実
験を通し,潤滑油が常に白濁するのを目にしてきた.
ビテーションが運転の妨げになったとの報告はなされ
ていない.しかし,気泡の存在は,パイプ内の油の流
れや油の体積に影響を及ぼすであろう.さらに,油の
熱伝導率を引き下げ冷却装置に余計な負荷を与えるこ
とになろう.
自動車に無段変速機が多用される今日,これら点接
触下での気胞発生の位置と,発生に至る運転条件を予
測することは有意義なことである.
本研究では,EHL解析に用いられる境界条件を変更
し負圧を含む解を求め,負圧の発生位置を明らかにす
る.また,2円筒試験機を用いて,気泡の発生と成長
鶴岡工業高等専門学校研究紀要第46号
♂β好み
を観察し,さらに気胞発生油膜厚さを求める.これら
の結果をEHL潤滑領域図に記入し,気泡発生領域を明
確にする.次いで,気胞発生油膜厚さとEHL油膜厚さ
との比較を行う.最後に気泡の消滅過程を検討する.
♂βが(毎
み12ク み
トニニ
み12ク みノ
、ご.・/J
-2ihr
=0
み
(3)
ここで,hは油膜厚さ,pは油膜圧九umは平均転が
り速度である.
2.EHL理論基本式と解析結果
油膜の形状には次式を用いた.
2.1EHL理論基本式と解法
EHL理論における数値角斬は,油の粘度一圧力式と密度
一圧力式を考慮したRe叩0臆の式と,2円筒の弾性変形量
を考慮した膜厚式との連立解を得ることである.本研究で
は,せん断による油膜の湿度上昇を無視した解析を行う.
計算には市販のソフトmを使用した.以下に計算で
用いた基本式と負庄の扱いを述べる.
油の粘度−−−一圧力式は,負圧の発生の確認と言う意味から
も,収束解の得やすいR∝血血(3)の式を用いた.
司書
ク
1+孟、−z−1い)
Fig.1Relativedensityvs.pressure
ここで,ク0は大気圧下の潤滑油の粘度,αは粘度の圧力
TablelCalculationparameterS
係数劇,ZはR∝血由の式における粘度の圧力係数である.
本研究ではz司.57,劇戸196MPaとした.
α
〝ロ
凡 g′ 〟劇 1l■
【1h鮮明 P肝a・S】 【m】 【hⅣa】 lms】 lNl
来なかった.そこで,粘度に上限ク腰=942MPa・Sを設け,
A
粘度はこれを超えないものとして角斬を行った.
0.()3793
(SN−1(州)
0.2(i2∼
9.J2
0.05∼1
ユ5
l
この式でも,高粘度の油の場合に収束解を得ることが出
×10・写
油の密度」王力式はDowson一班gginsOn(4)の式を用いた.
β(p)=β0
B 0.0(i6j5
5・9×108+1・34p
5.9×108
(SN−1)
式(2)の圧力と粘度の関係を図1に示す.EHL解析で
は,計算領域を細かな要素に刻み,要素毎に収束条件
を満たした値を解としている.計算の途中で要素に負
の圧力が生じた場合は,これをただちに0に置き換え
再計算する,いわゆるReynoldsの境界条件が採られて
ろ(ズ,γ)=カ0+
XlO5
0.026一−
】
戸
×10・5
(SilicoIleOil)
エヱ2ヰ
0.05∼J
ヰ.S8
C
ここで,ββは潤滑油の大気圧での密度である.
$.33〕
×10・6
住157
_.∠
2旦 2jiγ
ズ2
p(ズ’,〆)血’少
いる.
・言仁仁
角斬ソフトmの将数は,R即101血の境界条件を
用いない点で,負圧領域でも油の密度は式(2)に従うとして
(ガーガヅ+(γ一〆)2
見方ノ秒はⅩ,y方向の等価半径,E,は等価縦弾性係数
計算を行う.収束解を得た後に,圧力が負の領域に限り,
である.
圧力による密度の変化を1/2→1/22→…→1/2n倍と小さく
計算条件を表1に示す.潤滑油は実験で用いた高粘
度鉱油A(SN−100)とB(SN−1),C(シリコンオイル)の3
種類とした.粘度が大きく異なるのが特徴である.ロ
」ラ間に荷重Iyを与え,点接触とした.計算の範囲は
ヘルツの接触半幅をbとすれば,−3b<Ⅹ<1.3b,一2b
しながら言十算を繰り返し,圧力を0に近づける手法を採用
している.本研究ではn=6までの計算とした.
接触状態を点接触とし,Ⅹを転がり方向座標とすれは
R即101dsの式は次のように表される.
<y<2bで,129×129のメッシュとした.式(3)と式(4)
の連立解を求めるに当たりマルチレベル法を採用し,
反復計算の過程において,次式(5)の計算の精度が
−54−
0.5
加藤:潤滑下の転がり滑り点接触部に生ずる気胞に関する研究
0.001以下の場合を解とした.
w=仁ピタ(ズー,〆)故ゆ
ど等粘度一剛体領域に,右上に行くほど高圧粘度一弾
性流体領域(EHL)になる.図中の△□○は,表1の油,
A,B,Cの特性を用いて解析したことを意味している.
(5)
なお,計算には必要に応じてDowson・Higginson(4)の
無次元量,
2.2解析結果
図3に,3種類の油の計算結果の一例(図2の条
件a,b,C)を示す.横軸は接触部の転がり方向長さで,
左が油の流入側,0が接触部中央,右が油の出
G=αg’,ぴ=り0〃椚/岬一月ズ),町=W/(g’月ズ)
を用いた.
Microscope Roller Lubricant Torque
Load
1
0
︵N⊃、cき?︶>m
0−ring
Bearing Light ServOmOtO
Flg.4IhagramOftheexpe正mentalapparatus
Table2恥erimentalcondition
10−l
U爪[m/s]
.2 −
gE(=州8′う 8/3‖
∪)
Fig.2LubricationareaChart(Calculation)
SN−100
0∼1.833
SN−1
0′−2.094
Silicone oil
0へ月.157
叶 叩
0.5
0.5,1
0.5
口側となる.縦軸は油膜圧力である.計算条件が図2
の右上方に移るほど,油膜圧力はc<b<aと次第に高く
なり,接触が過酷になる様が見て取れる.特にaでは
EHL特有の圧力スパイクが発生している.
本解析では,わずかではあるが負圧の存在を許容してい
る.a,b,Cの何れにおいても出口側に負庄の存在を見るこ
とができる.負圧は,図2の吉傾範囲全域において出口側
に出現し,それは正圧が高いほど大きい.
次に,図2の卵包が発生するのか,また,その位
置はどこなのかを実験で確認する.
3.2円筒試験による油膜内の気胞観察
3.1実験装置および実験条件
図4に使用した装置の概要を示す.右端のサーボモータ
の回転は回転軸を介して下部ローラに伝えられる.一方,
上部ローラは回転軸に支えられ,自由に回転することがで
きる.また,上下の移動が可能で,任意の荷重を下部ロー
ラに与えることができる.上部および下部ローラには炭素
鋼を使用し,半径は,それぞれ地m,50mm,上部ローラ
ー0.1
X【mm】
Fig.3Pressuredistributionvs.coordinatex
図2は,計算の範囲をJohnson(5)の無次元量(gE.g
v)で整理したものである.潤滑状態は,左下に行くほ
ー55−
鶴岡工業高等専門学校研究紀要第46号
にはクラウニング半径15mmを設けた.これにより二つの
3.2 気泡発生油膜享さhIlと負荷対等油膜厚さhE
次に,ローラ間に形成される油膜を観察する.下部ローラ
を一定速度で回転させ,それに上部ローラを徐々に降下さ
ローラは,転がり方向へ長い1:1.5のだ円接触をなす.表
面にはパフ研磨を施し鏡面とした.実験中,二つのローラ
また,ローラ間に形成される油膜の様子は,後方から光を
せると,ある位置で油膜内に突然気泡が発生する.下部ロ
ーラの表面は1回転中に偏心のためわずかに上下運動する.
気胞はその周期に合わせ発生する.その様子を図6に示す.
当て100∼500倍のマイクロスコープで観察しビデオテープ
油はシリコンオイルである.
に記録した.
図は1ノ30秒毎の5枚の連続写真から構成されている.一
番上の写真の左端J部が接触中央(図3のⅩ=0の位置),
上の黒い影が上部ローラ(まだ回転していない),下の黒
は容器に満たされた油に完全に浸されており,外気と触れ
合うことはない.実験は大気圧下,室温25±2℃にて行った.
表2に実験条件を示す.図5は油の特性と実験条件を
JdlIl犯nの無次元量で整理したものである.実験範囲は計算
範囲(図2)の相当部分を網羅していることが分かる.
し、影が下部ローラ(左から右に0.026m南で移動している),
間の白い部分が油膜である.油膜の内部に細い線(気泡)
を見ることができる.ここで,気胞の発
△:SN−100
□:SN−1
△
○:Siliconeoil
(Experiment)
□
′ ̄ヽ
」r
㌔
10−1
100
gE
刑g.5hlbricadonareachart(E叩e血mentadon)
(×150,U30sed
Flg7.Bubblesdbservedintheon鎚mSN−1
町nderronerrotatedwithl.05m鳥andO.5N)
生が確認できた時の油膜厚さを,気胞発生油膜厚さhBと
する.図6では,hB≒150〃mであった.
その後,気胞は時間と共に成長しペーパナイフ状の影を
つくる.影の右端の形状から油の速度分布を知ることがで
きる.左端もわずかではあるが接触の中央方向へ移動する.
左端の移動は偏心によりローラ間の隙間がhBよりわずか
に狭くなるためである.
図7に,上部ローラに荷重0.5Nを乗せ連続的に降下させ
た時のローラ間の様子を示す.油はSN−1,下部ローラの転
がり速度は1.05m南で,1/30秒毎の6枚の連続写真である.
(×100,1/30s耽)
Fig.6GmwthofthebubbleinSilicmeojユ
札h血r】℃mαmぬbd南瓜0.026m/s)
上から2枚目の油膜亨さhBで気泡が発生し,ローラ間が狭
くなるにつれ,気胞は厚く左右に成長する.さらに隙間が
狭くなると(下から2枚目),トラクションカにより上部
−56−
加藤:潤滑下の転がり滑り点接触部に生ずる気胞に関する研究
ローラが徐々に回転し始める.右下の夫印の範囲で,上部
は速度にほを洗ヒ例して増加し,hBは常にhEの約2倍であ
ローラは回転している.
った.
最後には,ローラ間の隙間は荷重を支えるのに必要なあ
る一定の油膜厚さとなる.この時の油膜亭さを負荷支持油
粘度の高いSN−1の方が厚い.また,滑り速度に対する傾向
膜亨さhEとする.油膜享さはhB≫hEであり,気胞の発
はシリコンオイルと同様で,油膜厚さは滑り速度にほぼ比
生は油膜圧力が物体を支えるはるか以前から始まることが
例して増加し,常にhB≫hEである.以上のことより,潤
滑下の転がり滑り点接触において,気胞は容易に発生する
高粘度鉱油双阜1およびSNl00の場合,hB,hE共に,
分かる.
図8に,3種類の油のそれぞれの油膜享さhBとhEに
及ぼす滑り速度の影響を示す.図7に示した様に,上部ロ
ことが明らかとなった.
ーラは下部ローラに引きずられ回転するが,負荷が0.5Nと
軽荷重であることより,上部ローラの回転速度は下部ロー
ラのそれに比べ極端に低い.よって,ここで
をf鄭師勺に増やし,弾性流体潤滑の状態を作り,hBとEHL
図8の実験は0.5Nの軽荷重で行われた.次に,この荷重
下の理論油膜享さhTとの比較を行う.結果を図9に示す.
用いた油はSN−1で,与えた荷重は0.5∼2.ONである.なお,
理論油膜厚さhTは次式とした(6).
は上部ローラの回転を無視し,下部ローラの速度を滑り速
度として採用した.縦軸は油膜享さである.
シリコンオイルの場合,高粘度であるために,低い滑り
力r=2.69月ズUO・67GO・53阿州・067(1−0.6e ̄0・738舟)(6)
速度域でも厚いhBとhEが得られている.hBとhE
ここで,kは接触部のだ円率である.
言ミuエー血エ■毒長里吉∈︼≡0
荷重を増やすと,負荷支持瀾惧享さhEも減少する.
(句 (×10b)
但)
Fig.10Generationofbubblesinsihconeo止
(Twordnersrotatedwith0.01m南respecdveb)
さらに,トラクションカが増加し,上部ローラの回転数は
無視できないまで増加する.横軸はこれを加味し平均転が
り速度umとした.
荷重2NでhEとhTがほぼ」−・致したことより,潤滑状態
はここからEI]L状態になったと判断することができる.式
飢g.80ilfilmthi血1eSSVS.Shdingspeed
(6)から明らかなように,.hTは荷重にほとんど影響されな
いことより,潤滑油SN−1に関して,気胞発生油膜厚さは
EHL油膜事さのほぼ10倍であると言える.
点接触下における広範囲(図5)の実験を行った結果そ
の全てにおいて気胞の発生が確認された.気胞発生油膜厚
さは,軽荷重下では荷重支持油膜厚さの約2倍,重荷重下
のEHL状態ではEHL油月輿享さの約10倍であることが明
らかとなった.
3.3 気泡発生油蹄革さhBに及ぼすせん断の影響
EHL理論では,油のせん断による油月影\の影響は,油膜
温度の上昇による油膜享さの減少として捉えられており,
先にも述べたように,気胞に関する記述は行われていない.
しかし,油中の気胞発生には,油へのせん断作用が大きく
Flg,90ilfilm血dmessvs.meanSurfacev輌
影響することが報じられている(7)
−57−
鶴岡工業高等専門学校研究紀要第46号
3.4 気胞の消滅過程
発生した気胞のその後は,油容器の容積と形状およびロ
これまでの十連の実験では,上部ローラは下部ローラに
つられて回転する.しかし,両者の転がり速度には大きな
相違が存在した.気胞発生の主な要因が油のせん断とも考
えられることより,この点を明らかにするために,両ロー
ラを等速で回転させ,接近させることを試みた.上下ロー
ラの半径をそれぞれ30mmとし,上部ローラの先脚こはク
ラウニング半径15mmを,下部ローラはフラットとした.
ーラの速度に左右される.本実験の1軸回転では,気胞は
静止ローラ側に留まり成長し浮上する.2軸回転では糸田い
線となって回転ローラに沿って運ばれてゆく.線はちぎれ
球状に,⊥部は合体し表面へ,他は合体・分離しながら容
器内をめぐり白濁の一因となる.これら気抱の存在が油の
容量増をもたらす.一方,この気胞は油蒸気であることよ
り油への相変換は容易だと考えられる.
図12に気胞の消滅の様子を示す.上部ローラの半径は
このことにより,接触部は円形となる∴
図10に,ローラ間に生じた気胞の様子を示す.油はシ
リコンオイルである.写真上下の黒い部分が上下ローラで,
ともに転がり速度は0.01m庵で左から右へ回転している.白
い部分が油膜で,写真(A)では中央に三日月型の気抱が見ら
れる.(B)は倍率を下げ,気胞のその後を示したものである.
三日月型が二つにちぎれ,ローラ表面に沿い移動する様子
10mmで回転しないように軸は固定されている.下部ローラ
の半径は5伽mで,4.3×10 ̄4ⅠⅠ血の速度で左から右に移動
している.左端の写真のJ部が接触中央である.上部ロー
ラを下部ローラに軽く接触させて引き上げると扁平な気胞
が生じる.さらに引き上げると,気胞は次第に球形となり
が分かる.
次に,下部ローラのみが回転した場合と,両ローラを等
油中に漂う.その後,隙間を一定に保てば気胞は浮上しな
がら小さくなり消滅する.
図13に,気胞の直径と気胞が消滅するまでの時間を
示した.細成が同系列の油SN−1とSN−100では,粘度の高
速で回転させた場合の,気胞発生油月輿享さhBを比較しよう.
結果を図11に示す.横軸は平均転がり速度,縦軸は気胞
発生油月輿享さ,○印が1軸回転 △印が2軸回転である.
hBは,平均転がり速度にほぼ比例して増加する.
い訂ト1の方が,発生する気胞も大きく寿命も長い.また,
寿命は発生した直径の二乗に比例することが分かる.系列
を異にするシリコンオイルでも寿命と直径には同様の関係
︵且○∈芦
∪=(Ul+∪2)/2 m/s
50
Fig・110ilfilm血道messhBvs.meanSurfhcevd∝卸
1(船
150
Dはme愴ー山m)
Flg.13LifespanVS.diameterOfthebubbles
が見受けられ,消滅は気胞表面からの拡散によるものと理
解できる.
4.おわりに
(×500)
Flg.12GeneradonanddisappearanCeOfabubblein
潤滑下における転がり滑り点接触部に発生する気胞に関
SN・1仕hderrderrDtatedwith4.3×10,4nJg)
して,負圧の発生を許容するEHl解析と2円筒試験機を用
いた実験の結果,以下のことが明らかとなった.
1)気胞の発生博閏滑領域図の広い範囲に渡る
また,2軸を等速回転させた場合のhBは,1軸回転のそ
れのおよそ1/2である.これより,油膜のせん断速度が気
胞の発生に大きく影響することが分かる.
2)気抱は油膜が荷重を支えるはるか以前から発生する
3)気胞の発生位置は油の出口側である
叫気胞は固定壁側に発生する
−58−
加藤:潤滑下の転がり滑り点接触部に生ずる気胞に関する研究
5)油膜のせん断速度が速いほど気胞は発生しやすい
句気胞が油中に存在する時間は,気胞の直径の二乗に
比例する
最後に,学生時代に本研究に携わった平田信広氏,
高橋光氏,梅津賢氏,佐藤雅之氏に,また,オイルの
援助をいただきました出光興産(株)営業研究所に感
謝申し上げます.
参考文献
(1)C.H.Venner.andA.A.Lubrecht.,Multilevel
methodsinlubrication,EIsevierScience(2000)
(2)K.Kato,TIwasaki,M.KatoandK.houe.,Evaluationof
LimitlngShearStressofLubricantsbyRollertest.
JSMEInternationaljournal(1993)515
(3)Roelands,C.J.A.,CorrelationaspectsoftheViscosity−
Temperature−PressuerRelationshipoflubricatingOil,
Ph.D.Thesis.(Netherlands).(1966)
(4)Dowson,D.andHigginson,G.R.,Elastohydrodynamic
Lubrication,PetbamOnPress,London(1966)
(5)Johnson,K.L.,J.Mech.Eng.Sci.,2l−1(1970),9.
(6)B.J.Hamrock,andD.Dowson,IsothermalElastodro
dymamicLubricationofPointContacts,ASEM(1977),264
(7)京極啓史,染谷常夫㌔閏滑油中における気胞発生・成
長機構,機論B,51巻,461号,(1985).66
−59一