電解銀イオン水を用いた製氷機ストッカー内の殺菌効果の検証 一井

電解銀イオン水を用いた製氷機ストッカー内の殺菌効果の検証
○一井翔太郎・甲斐希・紙谷喜則
(鹿児島大学院農)
【目的】
近年,食品事故により消費者の食に対する,安全・安心
電解銀イオン水による氷(以下銀イオン氷)に殺菌抗菌効
への関心が高まっている。食品加工業者における衛生管理
果の可能性があるのではと考え,次に銀イオン氷の殺菌抗
の取り組みは,一般衛生管理から HACCP へと注目度が
菌効果の検証を行った。
変化しているが,一般衛生管理ができていない加工業者で
表 1.飲食店の製氷機内の生菌数の有無
は HACCP も成り立たない。今回は,一般衛生管理での
病原性菌の混入を考え,見過ごしがちな,氷に関して調査
を行った。氷は低温環境下である為,一般生菌の繁殖に対
A店
B店
C店
銀イオン
手前
○
×
△
右側
○
×
○
×
左側
○
×
×
×
奥
○
×
△
×
底
○
×
△
×
しての懸念が抱かれず,定期的な洗浄殺菌が疎かになって
○:菌数が 1×102~4 程度
いる可能性がある。清潔な状態で氷を消費者に提供できて
△:菌数が 1×101 程度
いるのか明確にする為,拭き取り検査を行ったので報告す
×:菌の検出が確認されなかった
る。また,氷を生成する水を代替として電解銀イオン水を
【実験②銀イオン氷による庫内殺菌効果の検証]】
用いた場合製氷機内の衛生状況はどのように変化するの
【材料および方法】
3×3 ㎝プラスチックプレートを表面・側面を紙やすり
か確認する。
【実験①拭き取り検査】
(#180)で削り傷をつけた。大腸菌液を作成し(約 103,
【材料および方法】
106 個/mL)
,スプレーを用いてプラスチックプレートに噴
実際に製氷機が設置してある飲食店を訪問し 3 つの製
きかけた。計測時間は 4,8,24h とし,作成した菌付着
氷機を拭き取り検査を行った(店の名前は伏せる為表記は
プレートを銀イオン氷を全て掻き出した製氷機の底,左右,
数字でする)
。また研究室で所持している銀イオン水製氷
銀イオン氷と直接触れない上の部分の 4 か所に両面テー
機(電解銀イオン水[濃度 170ppb/10mA]を用いて氷を生
プで 3 枚ずつ計 12 枚貼り付けた。一定時間経過後,各箇
成する製氷機)でも拭き取り検査を行った。
所からプレートを 1 枚取り実験①と同様の手順で拭き取
作成した滅菌済みの綿棒で,滅菌拭き取り枠(10 ㎝×
り培養を行い菌の有無を確認した。また,対照区として銀
10 ㎝:ニッスイ)を使用し,縦・横・斜めに各 5 往復拭
イオン氷に関係なく低温環境下で大腸菌が死滅するかを
き取り,滅菌済み生理食塩水 1mL 入りの試験管に拭き取
確認するためにシャーレにプレートを 3 枚入れ製氷機内
った綿棒を投入した。拭き取り箇所は手前,右,左,奥,
に放置し一定時間後に上記と同じ手順で培養を行った。
底の 5 か所で行った。その後,撹拌を行い標準培地(ナカ
【結果および考察】
ライテスク)を用いて平板培養をし,24h 後菌の有無を確
大腸菌を付着したプレートを銀イオン製氷機に入れる
認した。銀イオン製氷機では,構造上手前の拭き取りが出
と4時間後から大腸菌は死滅し検出されなかった。また,
来なかったので 4 か所で同様の実験を行った。
氷が触れる箇所とそうでない箇所どちらも死滅が確認さ
【結果および考察】
れた。要因として氷が生成されて落ちる時の衝撃で,ミス
表 1.を見るとわかる様に飲食店の 3 つの製氷機の内 2
ト状になり壁面に銀イオンが付着した為と考える。対照区
つから一般生菌が検出された。一方,定期的な洗浄殺菌を
のプレートからは大腸菌が検出された。また,融氷水の銀
行っていなかった銀イオン水製氷機では菌は検出されな
イオン濃度を測定したところ 26.8ppb となり,これは国
かった。この結果から,一般的な製氷機では定期的な洗浄
の指定する 100ppb を下回る為,人体にも影響がないこと
殺菌を怠ると菌が混入し生育していることが分かり,銀イ
が分かった。今後,製氷機に銀イオンを導入することで消
オン製氷機では,菌が生育しないことが分かった。そこで
費者に高品質の氷を提供できると考える。
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