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7 ブロイラー農場のサルモネラ浸潤状況調査
紀中家畜保健衛生所
○山本 敦司 嵩 秀彦
(背 景)
ブロイラーのサルモネラ感染は、鶏自体に明確な症状を示さず保菌鶏となることが多い。
しかしながら、サルモネラ菌は人の食中毒の原因菌となる可能性が高く、近年の食中毒原因
菌の上位を占めており、国民の食品の安全性に対する関心が高まっている中、より安全な食
品を生産し供給する立場からもその防疫対策が必要である。
(目 的)
今回、管内の同系列のブロイラー農場3戸についてサルモネラ浸潤状況を調査するため採
材し、サルモネラの分離を試みた。また、分離されたサルモネラについて薬剤感受性試験を
行い、感染原因等について検討を行った。
(材料および方法)
1日齢(初生雛)、14日齢、30日齢、出荷前の50日齢(現在、出荷日齢は52日齢
から55日齢)の4回採材を行い、盲腸便(鶏舎内に落下したもの、または盲腸から直接採
材したもの)、環境スワブ(鶏舎内塵埃、換気扇、および給餌器)、からサルモネラの分離
を試みた。
また、今回分離された株を用いて、1濃度ディスク法による薬剤感受性試験(抗菌性物質
20種類)を行った。
(結 果)
盲腸便において、初生雛導入時は、サルモネラはいずれの農場でも分離されなかったが、
14日齢で1農場においてSalmonella Infantis(以下SI)とSalmonella Schwarzengru
nd(以下SS)が分離され、30日齢で3農場においてSI、SSとその他の血清型のサル
モネラが分離され、50日齢で3農場においてSIが分離された。環境スワブからは今回サ
ルモネラは分離されなかった。
これらの分離されたサルモネラについて薬剤感受性試験を行った結果、全株においてスル
ファジメトキシン(SDMX)に対し耐性を示し、他にオキシテトラサイクリン(OTC3
0)、カナマイシン(KM)とビコザマイシン(BCM)に対し耐性を示す株が多かった。
(考 察)
今回、採材間隔が長いため、いつサルモネラが侵入してきたかを特定するのは難しいが、
14日齢以降、一貫してSIが分離された。また、盲腸便からサルモネラが分離されたこと
から鶏舎内も広くサルモネラに汚染されていると予想していたが、今回環境材料からはサル
モネラが分離されず、このことは採材方法等に何らかの問題があると考えられた。さらに薬
剤に耐性を示す株の存在も明らかになった。同系列の3農場で食中毒の原因菌とされるSI
を中心として数種のサルモネラが分離されていることから、その侵入経路を特定するため聞
き取り等を行い、それに対する原因特定を試みたが至らなかった。そのため出荷後の鶏舎の
適切な水洗、消毒、ネズミ対策、斃死鶏の早期発見・除去などを改めて指導するとともに、
今後とも初生雛導入から14日齢を中心にモニタリングを行い、感染原因を特定しサルモネ
ラの軽減、清浄化を図っていきたい。