妊娠期および泌乳期マウスへのアスタキサンチン投与が 母体および新生

妊娠期および泌乳期マウスへのアスタキサンチン投与が
母体および新生仔マウスのIgA産生に及ぼす影響
谷口 康晴 (生体機構学研究室)
【背景および目的】
新生子畜の下痢症や乳牛の乳房炎などの細菌感染による疾病は、家畜生産に多大な経済
的損失を引き起こす。これらの疾病を予防するためには動物の免疫能を高める必要がある
が、カロテノイドの一つであるアスタキサンチンには強い抗酸化作用があるため、免疫機
能の向上効果が期待されている。そこで本研究では、アスタキサンチンを妊娠期および泌
乳期のマウスに給与し、母体の乳腺におけるIgA産生とその新生仔へのIgAの移行に及ぼす
アスタキサンチンの影響を調べた。
【材料および方法】
ICR系妊娠マウス計17匹を対照区およびアスタキサンチン区に割り当て、アスタキサンチ
ン(120ppm)は交配後6日目から出産後14日目までの26日間、飼料に混和して給与した。
母体の体重、飲水量および飼料摂取量と新生仔の体重は毎日測定した。出生後7日目に新生
仔の数が10匹になるように間引きし、間引きした新生仔から血清、胃内容物、小腸および
直腸糞を採取した。また、出産後14日目に母体と新生仔を解剖して、母体からは血清、乳
腺、小腸(空回腸)および直腸糞を、新生仔からは血清、胃内容物、小腸および直腸糞を採取
した。母体と新生仔の血清中IgG濃度、母体の血清および直腸糞と新生仔の血清、胃内容物、
小腸および直腸糞中のIgA濃度をELISA法により測定した。母体の乳腺、空腸および回腸の
IgA産生細胞数は蛍光免疫染色で、また乳腺におけるIgA C-region、pIgRおよびCCL28の
mRNA発現量を半定量的RT-PCRによって調べた。
【結果および考察】
母体の体重、飲水量および飼料摂取量と新生仔の体重は、処理区間に有意差はなかった。
2週齢の新生仔の血清および胃内容物中IgA濃度は1週齢よりも増加し(P<0.001)
、またア
スタキサンチン給与によって2週齢の新生仔の血清中IgA濃度(P<0.10)が増加した。アス
タキサンチン給与によって母体の乳腺におけるIgA産生細胞数が増加した(P<0.10)が、空腸
および回腸のIgA産生細胞数と乳腺におけるIgA C-region、pIgRおよびCCL28のmRNA発
現量には処理区間に差はなかった。母体および新生仔の血清中IgG濃度と母体の血清および
直腸糞中のIgA濃度には、処理区間に差はなかった。
以上の結果から、アスタキサンチン給与は泌乳マウスの乳腺におけるIgA産生細胞の増加
に影響することが示唆されたが、乳腺から新生子へのIgAの移行にはほとんど影響しないと
考えられた。