マンガン過剰と着果負担がタンカンの異常落葉の発生に及ぼす影響 ○上之薗茂 (鹿児島農総セ果樹) 果実を摘果)と着果区(同日に1樹当たり10個に 【目的】 鹿児島県内のタンカン産地では,秋から翌春に 着果調整)を設けて4反復で試験を行った。褐色 かけて葉に褐色斑点を生じて激しく落葉する異常 斑点の発生率と落葉率は10月上旬に赤道部の春枝 落葉が発生し問題となっている。これまで異常落 に着生している葉50枚にラベルし,経時的に調査 葉の発生にはマンガン過剰や着果負担が影響する した後,算出した。分析試料は赤道部の着果のな と考えられてきたが,未だその詳細は明らかにさ い春枝と着生している葉を採取し,葉中マンガン れてない。そこで,マンガン過剰と着果負担が異 含量と枝葉中デンプン含量の分析を行った。 常落葉の発生に及ぼす影響を水耕栽培において明 【結果および考察】 Mn10倍区の葉中マンガン含量は315~604mgkg -1 らかにし,発生機作の解明に資する。 【材料および方法】 に達し,Mn標準区を大きく上回った(表1)。Mn 鹿児島県農業開発総合センター果樹部の雨よけ 標準区では葉の褐色斑点がわずかに発生していた ビニールハウス内で,2011年5月に水耕栽培(15 が,Mn10倍区では全く発生せず,落葉率は両区と Lポリバケツ,水耕液10L)を開始した3年生カラ も同程度であった。着果区の枝葉中のデンプン含 タチ台タンカン「垂水1号」を供試して,2012年 量 は 全 摘果 区 に比 べ て明 ら か に少 なか っ た( 表 に以下の2試験を実施した。マンガン過剰の影響 2)。着果によって褐色斑点の発生率は顕著に増 を明らかにするため(試験1),Mn標準区(水耕 加し,落葉率も著しく増加した。全摘果でも枝葉 -1 溶液のMn濃度1mgL )とMn10倍区(水耕溶液のMn濃 中のデンプン含量が少ない樹は褐色斑点が高い割 -1 度10mgL )を設けて2反復で試験を行った。いず 合で発生した。これらの結果から,タンカンの異 れも開花とともに花を取り除き,全く果実は着け 常落葉の発生にはマンガン過剰よりも着果負担の なかった。また,着果負担の影響を明らかにする 影響の方が大きく,異常落葉の発生はデンプン等 ため(試験2),全摘果区(2012年8月10日に全 の炭水化物の不足に起因していると推察された。 表1 マンガン過剰と異常落葉(試験1) 葉中Mn含量 (mgkg-1DW) 水耕溶液の Mn濃度 試験区 mgL-1 Mn標準 1.0 Mn10倍 10.0 反復 11/20 1 41 2 82 1 455 2 315 1/23 53 89 604 323 褐色斑点の発生率(%) 10/11 11/19 12/19 1/23 2/12 0 0 0 0 3 0 0 2 4 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 落葉率(%) 3/8 3 2 0 0 10/11 11/19 12/19 1/23 2/12 0 2 10 10 12 0 0 0 0 2 0 0 0 2 2 0 4 6 8 10 3/8 12 4 2 12 注)1. 2011年5月から両区とも水耕液のマンガン濃度を1mgL-1で管理し,2012年5月からMn10倍区のみ10mgL-1にした。 2. 褐色斑点の発生は褐色斑点が葉上に1個でもあれば計数した(表2も同じ)。 表2 着果負担と異常落葉(試験2) デンプン含量 (11/30,%DW) 試験区 反復 全摘果 着果 葉中Mn含量 (mgkg-1DW) 褐色斑点の発生率(%) 11/20 1/23 10/11 11/19 12/19 1/23 2/12 落葉率(%) 葉 枝 1 4.92 9.48 2 3.21 7.35 66 78 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 2.34 7.31 121 109 0 0 0 0 0 2 0 0 8 10 10 12 4 1.28 1.36 57 67 0 0 66 79 88 93 0 0 0 16 32 44 1 0.70 1.00 103 114 0 38 83 97 100 100 0 0 6 36 56 88 2 0.66 0.70 111 135 0 88 100 100 100 - 0 2 14 80 86 100 3 0.62 0.68 118 139 0 98 100 100 100 - 0 2 66 98 98 100 4 0.72 0.51 144 131 0 85 100 100 - - 0 4 54 90 100 100 68 66 0 0 0 2 0 3/8 0 10/11 11/19 12/19 1/23 2/12 0 4 8 10 12 3/8 12 注)両区とも水耕液のマンガン濃度は1mgL-1で管理した。 ─ 34 ─ p031-043cs5.indd 34 2013/08/02 13:47:10
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