薬理学PBL 10.胃十二指腸潰瘍 入江、毛野、土田、藤本、山本 胃・十二指腸潰瘍とは ・胃酸によって、臓器の粘膜の一部が深く傷つきえ ぐれてしまい、孔ができること。 原因 ・攻撃因子(酸、ペプシン)と防御因子(血液、重 炭酸イオン、粘液、プロスタグランジン)のバ ランスが崩れる。 胃酸の分泌機構と治療薬の作用点 H+ プロトンポンプ阻害剤(PPI) 胃腔側 K+ 胃壁細胞 プロトンポンプ 促進 抑制 Gs Gq Gi H2R遮断薬 M3 Ach H2R M1 CCKB EP3 SSTR ヒスタミン ソマトスタチン 迷走神経 プロスタグランジン(PG) Ach ECL細胞 ガストリン 胃・十二指腸潰瘍の二大原因 • ピロリ菌の影響 (9割) →ピロリ菌がだす毒 素により、胃に慢 性の炎症が起こ る • NSAIDSの影響 2. NSAIDs(非ステロイド抗炎症薬) (5%) COX-1 : シクロオキシゲナーゼ(PG合成酵素) →NSAIDSがプロス NSAIDs タグランジン産出 を阻害する アラキドン酸 Cox-1 プロスタグランジン 治療の基本 ①出血の有無 ②NSAIDs服用の有無 NSAIDs(+)・・・NSAIDsの服用中止 or PPI+PG製剤の併用 ③H. pylori感染の有無 H. pylori(+)・・・ 除菌療法(問題1&2) H. pylori(-)・・・ 非除菌療法(問題3) 治療の方針 H. pylori除菌療法(問題1&2) 基本形は、PPI+抗生物質の多剤併用 一次除菌:PPI+CAM+AMPC・・・除菌率 7080 % CAMの耐性菌や宿主因子により、失敗もありうる。 その場合は、二次除菌へ。 二次除菌:PPI+AMPC+MNZ・・・除菌率 約 90 % H. pylori非除菌療法(問題3) H. pylori(-)、除菌失敗などの症例で適用 ・PPI ・ヒスタミンH2受容体拮抗薬 ・選択的ムスカリン受容体拮抗薬 ・防御因子増強薬 H. pylori除菌療法 一次除菌 ランサップ800 1シート 分2 1週間 • タケプロンカプセル30 2カプセル 一般名:ランソプラゾール • アモリンカプセル250 6カプセル 一般名:アモキシシリン • クラリス錠200 4錠 一般名:クラリスロマイシン 1シート(1日分)、朝夕2回 ランソプラゾール プロトンポンプ阻害薬(PPI) • 作用機序 胃粘膜壁細胞のH⁺-K⁺ ATPaseのSH基と結合し、 不可逆的に阻害 • 副作用 発疹、肝障害、味覚障害など • 禁忌 アタザナビル硫酸塩を投与中の患者(胃酸分泌抑 制作用により、硫酸アタザナビルの溶解性が低下す る恐れがある。 ) アモキシシリン 抗菌薬(ペニシリン系抗生物質) • 作用機序 微生物の細胞壁合成を阻害 • 副作用 消化器症状(下痢・吐き気・嘔吐など) • 禁忌 伝染性単核症の患者(発疹の発現頻度を高 める恐れがある。 ) クラリスロマイシン 抗菌薬(マクロライド系抗生物質) ・作用機序 微生物の70Sリボソームの50Sサブユニットと結合 し、タンパク合成を阻害 ・副作用 消化器症状(下痢・吐き気・嘔吐など) ・禁忌 エルゴタミン薬剤を投与中の患者など (血管攣縮 等の重篤な副作用をおこす恐れがある。 ) 禁忌まとめ • 本剤の各成分およびペニシリン系抗生物質で過敏症を起こ したことがある人 • アタザナビル硫酸塩、リルピビリン塩酸塩、ピモジド、エルゴ タミン含有製剤、タダラフィルを投与中の患者 • 肝臓又は腎臓に障害のある患者で、コルヒチンを投与中の 患者 • 伝染性単核症のある患者 • 高度の腎障害のある患者(アモキシシリン、クラリスロマイシ ンの血中濃度が上昇することがあり、本剤では各製剤の投 与量を調節できないため。) H.Pylori除菌療法 二次除菌 一次除菌失敗 • 10~20%程度で除菌が失敗 • クラリスロマイシン耐性菌の増加 国内外の試験でメトロニダゾールが有効 ! クラリスロマイシン→メトロニダゾール H.Pylori除菌療法(二次除菌) • 1)パリエット(10) 2錠 分2 朝夕食後 7日間 (一般名)ラベプラゾールNa ←PPI • 2)サワシリンカプセル(250)6カプセル 分2 朝夕食後 7日間 (一般名)アモキシシリン • 3)フラジール錠(250) ←抗菌薬 2錠 分2 朝夕食後 7日間 (一般名)メトロニダゾール ←抗菌薬 フラジール錠(メトロニダゾール) • 特徴・作用機序 H.ピロリ菌の酵素で(R-NO)に変化 R-NO→殺菌作用 副産物のヒドロキシラジカルがDNA切断 副作用は少ない 副作用・禁忌 ・副作用(H.ピロリ除菌に用いた場合) 過敏症・消化器症状・肝機能障害など 全て頻度不明 稀に血液障害・中枢神経障害・末梢神経障害 ・禁忌 本剤に対する過敏症の既往 脳器質的疾患・脊髄器質的疾患(中枢神経系症状の可能性) 妊娠三ヶ月以内の患者 投与注意 相互作用 併用注意 • アルコール: アルデヒド脱水素酵素を阻害し,血中アセトアルデヒド濃度を 上昇させる。 • ワルファリン: ワルファリンの代謝を阻害し,その血中濃度を上昇させる。 パリエット(ラベプラゾール) • 作用機序 最新のPPI(H+/K+ATPase阻害) 低濃度H+でも活性化→即効性 ワーファリンやクロピドグレルとの併用におい ても相互作用が少なく安心 副作用・禁忌 ・副作用 下痢・軟便(5%以上) ・相互作用注意 ジゴキシン併用(強心剤) ゲフィチニブ併用(抗癌剤) ・禁忌 アタザナビル硫酸塩併用(エイズ治療) サワシリンカプセル(アモキシシリン) • 特徴、作用機序 アモキシシリン水和物カプセル ランサップ800のアモリンカプセルと基本的に 同じ 非除菌療法 1)ガスターD錠 2)アルロイドG ガスターD錠 (一般名:ファモチジン) • 特徴 安全域が広く,抗男性ホルモン作用及び薬 物代謝酵素阻害作用を有さない。 胃酸の分泌を強力に抑え、作用時間も長い ので一日数回の服用ですむ。 ガスターD錠 (一般名:ファモチジン) ・作用機序 ヒスタミンH2受容体拮抗薬である。胃粘膜壁細 胞のH2受容体を遮断し、胃酸分泌を抑制する。 ・副作用(重大なもの) 1)ショック,アナフィラキシー様症状〔呼吸困難,全 身潮紅,血管浮腫(顔面浮腫,咽頭浮腫等),蕁麻 疹等〕 2)汎血球減少,無顆粒球症,再生不良性貧血,溶 血性貧血 (初期症状:全身倦怠,脱力,皮下・粘膜 下出血,発熱等) 3)皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群), 中毒性表皮壊死症(Lyell症候群) 4)肝機能障害,黄疸 5)横紋筋融解症 6)間質性肺炎 7)間質性腎炎 ・その他の副作用 便秘、発疹、肝機能値の異常 乳首の腫れや痛み、生理不順 眠気、頭痛、めまい、不安感、無気力感 混乱状態、幻覚 ・禁忌 成分に過敏症のある患者 アルロイドG (一般名:アルギン酸ナトリウム) ・作用機序、特徴 胃や食道の粘膜に付着し、胃液・食物など の攻撃から粘膜を保護する役割を果たす胃腸 薬(胃粘膜保護剤) 血小板の血液凝固作用を促進する止血効 果もある。 ・副作用 • 発疹、かゆみなどの過敏症状、下痢、軟便、 口や喉の渇き、胸やけなどの消化器症状な ど。 • この他、肝機能症状、心悸亢進、頭痛、月経 異常など。 • 禁忌はとくになし。 おわ り
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