4)株価の決定理論

(4)株価の決定理論
○株式リスク・プレミアムについての補足説明
• 株式:配当を受け取る権利(利益配当請求権)
• 株価=将来に渡って受け取る配当の現在価値(の総額):
配当割引モデル
1年後
受 取 D1
配当
現 在 D1/(1+r)
価値
2 年後
3年後…
D2
D3…
D2/(1+r)2
D3/(1+r)3…
金利: r
株価P=D1/(1+r)+ D2/(1+r )2+ D3/(1+r )3+‥‥ : ①式
• 投資家はリスク回避的:
– 同額の収益が見込めるのなら、リスクのあるものより
安全確実なものを好む。
• 不確実でリスクのある1年後の100円の現在価
値
– 100/(1+r+δ)
– δ:リスクプレミアム
– δの大きさを規定する要因:
• その企業の株式配当の不確実性・リスク↑⇒ δ↑
• 投資家のリスク回避度↑⇒ δ↑
• 株式投資のリスクを考慮した上での株価の決定
• 株価P=D1/(1+r+δ)+ D2/(1+r +δ)2
•
+ D3/(1+r +δ )3+‥‥
: ④式
◎④式についての厳密な説明
○株式投資の予想収益率E(R0)
=
=1株当り[予想配当D1+予想キャピタルゲイン]
÷現在の株価P0
1年後の予想株価E(P1)-現在の株価P0
: ⑨式
将来の配当・株価は、確定しておらず不確実である。
D1,E(P1), E(R0)は平均的に見込まれる大きさ
(期待値)
• 投資家の資産選択
– 預金・債券に投資 or 株式に投資
収益率は
金利rで確定
収益率は不確実で
平均値がE(R0)
すると E(R0)=r なら、投資家は安全確実な
預金・債券投資を好む
• 投資家が株式を保有(に投資)するためには、
• E(R0)>r となることが必要。
• E(R0)=r +δ (δ>0) の時、投資家は預金・
債券投資と株式投資とを同等(無差別)だと見
なす。
• δはリスクプレミアム:
○投資家の資産選択と株式投資収益率
• 預金・債券に投資(収益率=金利r) or
株式に投資(収益率E(R0)) ⇒有利な方に投
資
• E(R0)>r+δ なら、株式投資が有利
⇒株式が買われる⇒株価P0上昇
⇒⑨式より、株式投資の収益率E(R0)低下
• 逆に、E(R0)<r+δ なら、E(R0)上昇
• 結局、最終的には
が成立
⑩式
∴
⑨式より E(R0)=(D1+E(P1)-P0)/
P0=r+δ
: ⑪式
同様の論法を⑪式のE(P1),E(P2),・・・に
適用して、繰り返し代入すると④式が得ら
れる(以下のスライドを参照)。
配当だけでなく、
を考えても、理論的には
株価は④式(配当割引モデル)によって決
定される。
• では、 ⑪式の中の1年先の株価E(P1)はどう決定
されるのか?
– 1年先にも現在時点と同様の資産選択(預金・
債券or株式)が行われると考える。単純化して、
1年先の金利も現在と同じ r と仮定。
– ⑪式を導いた論法を1年ずらして、1年先の時
点での資産選択について適用する。
時間
現在
1年先
2年先
– 1年先から1年間株式に投資した場合の予想収
益率をE(R1)とすると、⑨式と同様に
– E(R1)= (D2+E(P2)-E(P1))/ E(P1)
であり、
– これが資産選択行動の結果、金利プラス株式
投資のリスクプレミアム r+δ に等しくなる。
– E(R1)=(D2+E(P2)-E(P1))/E(P1)
=r+δ より
• よって、
E(P1) = (D2+E(P2))/(1+r+δ ):⑫式
• ⑫式を⑪ 式に代入
D1
D 2  E ( P 2)

P0=
2
1  r δ (1  r δ)
上の式のE(P2)について同様の代入操作を行い、
さらにE(P3)、E(P4)・・・に同様のプロセスを繰り返
すと、結局
・株価P0=D1/(1+r+δ)+ D2/(1+r +δ)2
+ D3/(1+r +δ )3+‥‥
: ④式
• 投資家の資産選択の結果、
•
⑩式
が成立
• ここで、株式投資の期待収益率E(R) =現実
の収益率R、が長期的には成立すると仮定
• すると、株式リスク・プレミアムδを、現実の
データを使って、株式投資の現実の収益率R
マイナス金利r、として求めることができる。
山口勝業『日本経済のリスク・プレミアム』東洋経済新報社 p.78
(5)株式投資の指標
・配当利回りYield
=
cf.
・⑧式:
株価P=D/(r+δ-g)
が成立しているなら
配当利回り=r+δ-g
日経08.9.06.
・配当利回りと長期金利
(%)
12
10
8
長期金利
6
4
配当利回り
2
日経08.9.06.
0
70
75
80
85
90
95
00
05
(年)
・PER:Price Earnings Ratio
株価収益率
=
– 株式が年間企業利益の何倍ま
で買われているのかを示す
– 株価の割安・割高の指標
– 企業の成長性と関連
• ⑧式が成立しているとすると、
⑧式の両辺を企業収益Eで割
ると
• PER=D/E÷(r+δ-g)
=配当性向/ (r+δ-g)
日経08.7.19.
・ 日本株PER低下の解釈
①日本株の割高が是正された
②日本の金利rは世界一低い
ことを考えると、むしろ割安に
なった。
③日本企業の収益成長gは
期待できないと市場は判断
日経新聞05.6.03.
日経08.3.18.
・PBR:Price to Book
Value Ratio
株価純資産倍率
=
総資産-負債
=
・2008年9月30日の株価で計算、日経08.10.01.
PBRが1以下は、生きている企業の価値が解散価値以下
: 資本が有効に活用されていない企業
or 割安に放置されている株
PER
PBR
トヨタ
配当利
回り
4.35%
6.46倍
0.94倍
本田
4.08
6.45
0.85
日産
8.62
4.35
0.60
パナソニック
2.46
12.40
0.93
8.33
0.69
シャープ 3.66
2008年10月10日の株価で計算、財務指標は実績値
○2007年10月時点の株式指標
PER
トヨタ
配当利
回り
1.83%
本田
1.67
12.42
1.64
日産
2.83
11.80
1.53
松下
1.44
23.61
1.31
シャープ 1.32
21.57
1.85
PBR
14.40倍 2.00倍
2007年10月12日の株価で計算