第6章.株式市場と株価

(3)株価の決定理論
○配当割引モデル
○株式投資の予想収益率E(R0)
=[予想配当+予想キャピタルゲイン]/投資額
=1株当り[予想配当D1+予想キャピタルゲイン]
÷現在の株価P0
E(R0)={D1+E(P1)-P0}/P0
: ①式
– 将来の配当・株価は、確定しておらず不確実である。
– D1,E(P1), E(R0)は平均的に見込まれる大きさ(期待
値)
1
•
預金・債券(安全資産)と株式(リスク
資産)との間の資産選択の結果、
• E(R0)=r+δ が成立。
r:金利 δ:リスクプレミアム
これを①式に代入すると
• 現在の株価P0
•
P0 = (D1+E(P1))/(1+r+δ ): ②式
• 同様にして、
• E(P1) = (D2+E(P2))/(1+r+δ ):③式
2
• ③式を②式に代入
D1
D 2  E ( P 2)

P0=
2
1  r δ (1  r δ)
上の式のE(P2)について同様の代入操作を行い、
さらにE(P3)、E(P4)・・・に同様のプロセスを繰り返
すと、結局
・株価P0=D1/(1+r+δ)+ D2/(1+r +δ)2
+ D3/(1+r +δ )3+‥‥
: ④式
3
○配当割引モデル:④式の意味するもの?
• 株式:配当を受け取る権利(利益配当請求権)
• 株式の価値=
1年後
受 取 D1
配当
現 在 D1/(1+r+δ)
価値
2 年後
3年後…
D2
D3…
D2/(1+r+δ)2
D3/(1+r+δ)3…
・現在価値:将来価値を金利等(割引率)を使って、現在時点
での値打ちに引き直し(割り引く)たもの。
・ここでは、
時間要因
リスク要因
4
・毎年一定の配当を受け取る株式のケース
従って、D1= D2 = D3= ‥‥=D 、④式より
株価P=D/(1+r+δ)+ D/(1+r+δ)2+ D/(1+r+δ)3+‥‥
:⑤式
等比数列の無限和(無限等比級数):
公比 1/(1+r+δ) 初項 D/(1+r+δ)
P=初項/(1-公比) if |公比|<1
D /(1  r   )
株価P=
1
1
1 r  
=
:⑥式
・株価の決定要因:
例えば、配当D=50円、金利3%(r=0.03)、リスクプレミアム
2%(δ=0.02)なら、株価
5
○企業が成長し、1株当り配当も毎年増大(成長率g)する
ケース
D1= D, D2 = D(1+g), D3= D(1+g)2, ‥‥
では、株価Pを表す式⑥はどう変わるか?
・株価P=D/(1+r+δ)+ D(1+g)/(1+r+δ)2
+D (1+g)2/(1+r+δ)3+‥‥
:⑦式
等比数列の無限和(無限等比級数):
公比 (1+g)/(1+r+δ) 初項 D/(1+r+δ)
P=初項/(1-公比) if |公比|<1
D /(1  r   )
・株価P=
1 g
1
1 r  
=
:⑧式
6
• 株価の決定要因:
• 例えば、配当D=50円、金利3%(r=0.03)、リスクプ
レミアム2%(δ=0.02)、企業成長率2.5%(g=0.025)
なら、
• 株価
– 参考文献:
– 福光・高橋『ベーシック証券市場論』第6章
– 井出正介・高橋文郎『ビジネスゼミナール経営財務入
門』第4章
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(4)株式投資の指標
・配当利回りYield
=
cf. 株式投資の収益率
=配当利回り+株価の値上り率:①式
・⑧式が成立しているなら
配当利回り=r+δ-g
日経06.10.01.
8
・配当利回りと長期金利
(%)
12
10
8
長期金利
6
4
配当利回り
2
0
70
75
80
85
90
95
00
05
(年)
9
・PER:Price Earnings Ratio
株価収益率
=
株式が年間企業利益の何倍まで
買われているのかを示す
– 株価の割安・割高の指標
– 企業の成長性と関連
• ⑧式が成立しているとすると、
⑧式の両辺を企業収益Eで割
ると
• PER=D/E÷(r+δ-g)
=配当性向/ (r+δ-g)
日経金融06.10.08.
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・ 日本株PER低下の解釈
①日本株の割高が是正された
②日本の金利rは世界一低い
ことを考えると、むしろ割安に
なった。
③日本企業の収益成長gは
期待できないと市場は判断
日経新聞05.6.03.
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・PBR:Price to Book Value
Ratio
株価純資産倍率
=
総資産-負債
=
PBRが1以下は、生きている
企業の価値が解散価値以下
:資本が有効に活用されて
いない企業
or 割安に放置されている株
日経新聞06.8.25.
12
・⑧式で、現在の株価と
配当(or収益)を前提
・割引率= r+δ
日経金融06.10.03.
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