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・本講義の参考文献:福光・高橋『ベーシック証券市場論』
同文舘出版、川村雄介『証券市場』財経詳報社
第1章.株式・株式市場
(2)株式の流通市場
• 株式流通市場の種類
①取引所市場:立会取引と立会外取引
②取引所以外での取引
(a)上場銘柄の取引所外取引
(b)未公開株取引市場
(c)PTS
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①取引所市場
• ジャスダック証券取引所の取引手法
– オークション方式と
を併用
→取引が頻繁でない銘柄に常時売買機会を提供
(流動性の供給)
cf.米国のNASDAQ市場はマーケットメイカー制度
・NASDAQ(National Association of Securities Dealers
Automated Quotations ):米国店頭市場
・ジャスダックJASDAQ(Japan・・・)
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②(a)上場銘柄の取引所外取引
• 金融ビッグバンにより98.12.市場集中(取引所集
中)義務の撤廃
• →取引方法の自由化: (a)取引所外取引、
(c)PTS(私設取引システム)の登場
• →市場間競争
• (a)取引所外取引
– 証券会社や機関投資家による大口の取引、ブロック・
トレーディングや取引所の取引時間外での取引
– 東証取引高の6~10%程度
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日本証券経済研究所『現代日本の証券市場』2006年版
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(b)未公開株取引市場
• 金融ビッグバンの中で97年、日本証券業協会が
未公開株を取引するグリーンシート市場を開設
• 未公開株専門の証券会社(ディーブレイン証券)
も設立される。
• 証券会社が売り気配・買い気配を提示し、証券会
社の店頭で売買。PTSを使って証券会社間を仲介。
• 登録銘柄:87銘柄、上場廃止となった銘柄も登録
可能(フェニックス銘柄)
• cf.米国のピンクシート市場、OTCブリティンボード
市場、ローカル市場
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(c)PTS(私設取引システム)
• 電子取引による
が可能になる。ECN(電子証券取引ネットワーク)
• 米国:1969年のInstinet が最初で90年代に急増
– ネット証券会社を通じる格安手数料志向の注
文の増大
• NASDAQ市場全体の30%を占める
– → NASDAQ市場との市場間競争
・PTS:Proprietary Trading System
・ECN:Electronic Communication Network
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・日本のPTS
日本証券
経済研究所
『現代日本の
証券市場』
2004年版
日経金融新聞06.09.12.
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○ベンチャー企業向け株式市場
• ジャスダック市場:971社登録(06.09.20.現在)
• 東証マザーズ:1999年11月開設 現在158社上場
• 大証ヘラクレス:2000年5月 ナスダック・ジャパンと
して開設、現在150社上場
• 東証等に比べて、上場基準が緩やか
• 市場間競争:新規上場企業の獲得競争
– 未熟な企業・不適切な企業を上場させる危険性
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日本証券経済研究所『現代日本の証券市場2004年版』
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福光・高橋『ベーシック証券市場論』第3章
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ベンチャー市場:株式公開までの期間
・創業から公開までの期間が、大幅に短縮
20.0
18.0
95年
16.0
98年
14.0
2001年
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
71~
61~70
51~60
46~50
41~45
36~40
31~35
26~30
21~25
16~20
11~15
6~10
~5
0.0
(社歴:年)
(注)各年の新規公開企業総数(2001年は店頭経由上場企業除く)を100とする
(出所)野村リサーチ・アンド・アドバイザリー株式会社
・公開までの期間:
楽天:3年2ヶ月、 ライブドア:4年
日経新聞06.08.29.
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(3).株価の決定理論
・ 株式:
- 株式会社に対する所有権を細かく等分し、それを表示
した有価証券(株券)
・ 株主の権利:
– ①
- ②
- ③(会社解散時の)
- ○配当割引モデル:
- 上記②の観点から株価の決定メカニズムを考える
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○配当割引モデル
• 投資家の資産選択
– 預金・債券(安全資産)に投資 or
– 株式(リスク資産)に投資
⇒有利な方に投資
• こうした
• 安全資産の収益率=金利r
• リスク資産である株式の予想収益率E(R0)
– R:株式投資の収益率、E:予想を示す記号、
– 0,1,2 :時点を示す記号で、0が現在、1が1年先
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• 株式からは、i年後にDi円の配当を受取る
ことができる(と見込まれている)。
受取配当
1年後
2年後
3年後・・・
D1
D2
D3 ・・・
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○株式投資の予想収益率E(R0)
=
=1株当り[予想配当D1+予想キャピタルゲイン]
÷現在の株価P0
1年後の予想株価E(P1)-現在の株価P0
: ①式
将来の配当・株価は、確定しておらず不確実である。
D1,E(P1), E(R0)は平均的に見込まれる大きさ
(期待値)
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• 投資家の資産選択
– 預金・債券に投資 or 株式に投資
収益率は
金利rで確定
収益率は不確実で
平均値がE(R0)
すると E(R0)=r なら、投資家は安全確実な
預金・債券投資を好む
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• 投資家が株式を保有(に投資)するためには、
• E(R0)>r となることが必要。
• E(R0)=r +δ (δ>0) の時、投資家は預金・債券投
資と株式投資とを同等(無差別)だと見なす。
• δはリスクプレミアム:
• δの大きさを規定する要因:
– その企業の株式の不確実性・リスク↑⇒ δ↑
• より正確には、分散投資によっても削減できない、その企業株式
のリスク(分散不能リスク)↑⇒δ↑ cf. 前期第3章(2)資産運動・
投資のリスク分散
– 投資家のリスク回避度↑⇒ δ↑
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○投資家の資産選択と株式投資収益率
• 預金・債券に投資(収益率=金利r) or
株式に投資(収益率E(R0)) ⇒有利な方に投資
• E(R0)>r+δ なら、株式投資が有利
⇒株式が買われる⇒株価P0上昇
⇒①式より、株式投資の収益率E(R0)低下
• 逆に、E(R0)<r+δ なら、E(R0)上昇
• 結局、最終的には
が成立。
①式より E(R0)=(D1+E(P1)-P0)/P0=r+δ
∴
: ②式
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• では、 ②式の中の1年先の株価E(P1)はどう決定
されるのか?
– 1年先にも現在時点と同様の資産選択(預金・
債券or株式)が行われると考える。単純化して、
1年先の金利も現在と同じ r と仮定。
– ②式を導いた論法を1年ずらして、1年先の時
点での資産選択について適用する。
時間
現在
1年先
2年先
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– 1年先から1年間株式に投資した場合の予想収
益率をE(R1)とすると、①式と同様に
– E(R1)= (D2+E(P2)-E(P1))/ E(P1) で
あり、
– これが資産選択行動の結果、金利プラス株式
投資のリスクプレミアム r+δ に等しくなる。
– E(R1)=(D2+E(P2)-E(P1))/E(P1)
=r+δ より
• よって、
:③式
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• ③式を②式に代入
D1
D 2  E ( P 2)

P0=
2
1  r δ (1  r δ)
上の式のE(P2)について同様の代入操作を行い、
さらにE(P3)、E(P4)・・・に同様のプロセスを繰り返
すと、結局
・株価
: ④式
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