重不況の経済学6章1~2節 上町 悠哉 政府の役割 図1:2000年代輸出型経済の資金フロー概念図 政府は、収入税収など の収入13に対して豊 満な支出19を行って いるように見える。 しかし、政府は民間の 事業の補完的役割を果 たすために存在してお り、政府は民間経済と の関係を常に意識して 行動を決定しなくては ならない。 政府の役割 図2:政府部門・家計部門・非金融法人企業の推移 政府は民間事業の補完をしなくてはならない。つまり政府部門が赤字の場合 は、民間経済の不調の反映といえる。赤字額が伸びる場合、民間経済で深刻な 問題が起きている可能性が高い。 政府財政の役割一つ目 政府サービスを実施するための資金供給 図3:租税負担率と国民負担率の各国比較 政府の一つ目の目的は、民間の企業活動を補完 するための「サービスを提供すること自体」で あり、政府財政はその政府としてのサービスを 実施するための資金供給である。 しかし日本の財政規模は限界といえるほど小さいとされている。日本の国民負 担の割合は各国と比べてもかなり低く、社会保障が高齢化によってより多くの財 源が必要となるような状況中、その持続性といった観点からすでに限界に近いと 考えられる 政府財政の役割 二つ目 経済循環の補完者としての政府財政 政府財政のもう一つの役割とは、一国の経済の経済 (資金)循環の中での役割であり、すなわち一国の マクロ経済に需要不足があるときに、それを補完・ 補填するという役割である。 筆者はこの経済循環の補完者としての政府財政が重 要であると考えている。この第二の役割で政府財政 の目的は、民間経済を補完することだから、その目 的は「保管の範囲を超えてクラウディングアウトを 生じさせる規模の財政出動を許さないという基準」 を自動的に与えることとなる。マクロ経済の資金循 環から見て妥当な財政規模を示すものとして「マク ロ経済補完基準財政規模」と筆者は名づけている。 重不況下での政府の役割 図4;重不況で起きる内需不足の悪循環 重不況では、利益が出な いもしくは先行きが不安定 なため、企業は雇用を縮小 する。すると雇用減退によ る消費者マインドの冷え込 みが起き、さらに物が売れ ず、企業の利益や国民の所 得が減っていく。 セイサイクルから漏出し た資金を国が借り上げ、 セイサイクル内の資金を 循環させるべきだ。すな わち政府が需要を作り出 すことが重要である。 マクロ経済補完基準財政規模 図5:日本のGDPギャップ推移 日本の財政状況は、発展途上国並の水準まで悪化している。しかしながら、ギリ シャのようなその国の経済の身の丈を超えた過剰な政府サービスを、日本は行って いるわけではないからであると筆者は考えている。 GDPギャップは需給の乖離を示すが、その需要の不足分を政府が補うべきであり、 その範囲内なら財政出動は行われるべきだとする。橋本・小泉改革では、財政出動 を縮小させその結果、GDPギャップはコンスタントにマイナスとなり、税収はます ます増えないとしている。 マクロ経済補完基準財政規模 財政が悪化してしまうという考え方は、 政府の財政一点しか見ていない意見であ る。財政収支の単独均衡を目指すべきで はなく「マクロ経済補完基準財政規模」 にのっとった「一国経済全体の資金循環 の均衡(つまりセイ・サイクルからの漏 出と還流のバランス)」を実現する財政 規模を目指すべきだと筆者は主張してい る。そして、その財源は、セイ・サイク ルから漏出した預金などの資金を国債発 行によって「GDPギャップを埋める水準」 まで調達すればよいと考えられる。 ギリシャ危機 図6:ギリシャの財政赤字(対GDP比)の推移 ギリシャのように、経済の身の丈以上の過剰な政府サービスを行って はならない。ギリシャの場合は日本と違って、GDPギャップはプラスす なわち需要超過状態だった。国内の資金が不足していたにもかかわらず、 政府も財政が赤字で、ギリシャ政府は累積債務を積み上げていった。 まとめ 財政の悪化も確かに問題ではある。しかし、 赤字を減らすあるいは借金を返せた国は存在 しない。赤字残高を増やさないようにしつつ、 経済の成長によって税収を増加させその税収 によって、財政を健全化する方法しかない。 財政の均衡ではなく、セイ・サイクル内で 「GDPギャップを埋める水準」の資金を循環 させ、セイ・サイクル内の資金循環を活発に できれば、内需拡大に伴い税収も増え、経済 成長によって結果として財政を改善できる。 論点:日本の税制について
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