重不況の経済学 - ホーム

第3章1節 前半
09BA390L 山村美帆
新古典派とケインズ派の世界同時不況下での政策
新古典派:政府の財政出動は効果がないばかりか有害
財政出動の資金は国債の発行により調達しているため、財政出動
セイ法則とは・・財の生産の際に支払われた賃金・配当が回りま
が増えれば民間の投資に使われたはずの貯蓄が国債購入に吸収
わって必ず財の需要を作り出す、つまり供給が必ず需要を作り
されてしまう。
出すという法則。
この法則が成り立つのであれば需要は独立した経済変動の要
ケインズ学派:国債発行で吸い上げた資金は、政府が吸
因ではないため、供給サイドのみの対策を考えればよい。
収しなければ民間の投資に使われないまま
民間投資に資金が向かうのはセイ法則が成り立つ場合のみ。
新古典派はセイ法則が成り立たない場合におきる経済現象のメカ
生産による賃金・配当は必ず消費(民間投資)に向かうため新
ニズムを見落としている!
古典派の主張は正しいということに
セイ法則の破れ
セイ法則成立の3つの要件
①効用最大化原理
・・人は自分の満足を最大化しようとするためにお金を全額使う。
②三面等価(生産=所得=支出)が成り立つ
③生産・購入のサイクルが一定期間内に完了
⇒ 供給が需要を生み出すセイ・サイクルが成立
セイ法則の破れ
人が効用最大化のために使う資金がセイ・サイクル財(セイ・サイ
クル内の財であり付加価値を生む財)に向かえば三面等価も成
立し、売れ残りも生じない。
しかし・・
現実にはセイ・サイクル外のさまざまな使途への漏出がある!
貯蓄・資本・株式・土地・貴金属…
これらに資金が流れる
=金融・資産経済への漏
両経済間の資金の漏出・
出が過剰な状態では、
還流の変動が金融・資産
実体経済では財を購入す
と実体経済の収縮、膨張
る資金が縮小して不景気
を左右する
が生じてしまう。
新古典派の漏出に対する考え方
価格調整のメカニズム論
売れなければ企業が価格を低下させ
るために需要が増え結局すべてが売
れる。名目収入は下がるがお金の価
値が上がり実質収入は変わらない。
時間選考論
効用最大化のために人はある時点で
消費を抑制しても将来のある時点で
は消費を増加させる
+貯蓄増から金利が下がると企業は
収益最大化のために将来の需要増に
向け設備投資を行う
相殺論
多数の経済主体が存在するために消
費を減らす人もいれば増やす人もいて、
集計すれば個々の行動は相殺され消
費は安定。
◎価格の下方硬直性
◎価格の不遡及問題
・・資金調達や仕入れ、賃金の支払いなどは
事前の名目価格により契約しているため、過
去に戻ってこの価格を下げることはできない。
⇒名目収益が下がればこれらの支払に窮す
ることに
消費回復がいつごろになるか分からない不
確実性が高い状況で金利が安いというだけ
では設備投資をしない
不況による雇用不安、出生率の低下など消費を
長期的に一定方向に変化させる要因の存在
⇒企業の投資収益率の将来予想を低下させ設
備投資は斉一的に減少
政府の景気刺激策の意味
設備投資、政府による消費、投資も需要を形成するファクター
◎財政出動・・公共事業などを行い直接セイ・サイクル財の需要を創出
⇒確実な需要創出効果がある
◎金融緩和策・・資金の供給や資金コストを低下させることで間接的に
設備投資・住宅投資を刺激し、需要創出を期待。
⇒小泉政権下で推し進められた金融緩和政策は90年~長期停滞では
設備投資を生み出していない。
セイ・サイクル財の需要の将来見通しが低いために設備投資を過剰と判断して抑制
⇒金融・資産経済に資金が滞留
日本の長期停滞のように需要が成長を抑制し資本が余っている状況では、
企業の投資決定というプロセスを経なければ需要を創出できない金融緩和策
の効果がないのは当然!
セイ・サイクルからの漏出・還流を
左右する要因
海外投資超過
資本収支赤字=経常収支黒字
⇒海外投資の超過分は輸出超過分と一致し、国内で生産された財が輸出される際の
購入資金としてセイサイクル内に還流する。
しかし・・輸出立国を続ける場合、資金は国内のセイサイクルに還流しない!
輸出立国とは・・
内需不足のために、純輸出(輸出―輸
入)がGDPギャップのマイナスを埋める
経済構造の国であり、貿易収支を継続
的に黒字にすることを目指す
キャッシュとして国内のセイ
サイクルには還流しない
J国が60兆円の財を
W国に輸出し、40兆円
の財をW国から輸入
差し引き20兆円は
J国の貿易黒字
J国の貿易黒字=W国の貿易赤字
W国の赤字を継続させるた
めにはこの20兆円はW国に
貸し出さなければならない。
輸出立国政策は内需の元となる所得を圧迫、内需拡大とは両立しない!
長期的、制度的に漏出を左右する要因
①国の豊かさ
耐久消費財の普及率が上限に近付けば、モノから生産性上昇率の低いサービ
ス産業のウエイトが増大→成長率が低下+耐久消費財の需要減
②一国内での分裂
消費性向が低く所得を投資や貯蓄に回す割合の多い富裕層への所得配分比
率の上昇
③文化や価値観の変化
斉一的な文化や価値観の変化により資金の配分割合が変化
(例:小泉政権下の生産性の向上、無駄遣い排除)
④人口構成の変化 高齢化の進展
これらが企業の将来需要見通し低下を招き設備投資縮小
⇒価格投資や海外投資に資金漏出