15/07/31 グローバル経済へのリスクファクター!

7 月 31 日版 グローバル経済へのリスクファクター!
3 つのリスクファクターがマーケットに大きな影を落としている。今月は、1.ギリシャ危機 2.中国株暴落 3.
米利上げついて考えてみたい。
1. ギリシャ危機
急進左派連合シリザは国民投票の決定を否定する緊縮策を実行するようになり、恥も何もないと言うか、
一般人には理解を超える対応を続けているが、どうにか欧州連合から当座の資金援助を引出つつある。
条件とされた緊縮策を実行できるか?はたまたチプラスが政権を維持できるか?前途多難である。ギリシ
ャは、これから何十年と債務のリスケジュールと金融支援を受ける為の交渉が続くのであろう。
従ってマーケットを揺るがす大問題に発展する可能性は低いだろう。
2. 中国株暴落
6 月 12 日まで急騰してきた株価が突然連日の暴落に転じた。これは、報道にある投機家グループがカラ
売りしたからではない。中国の実体経済が、2000 年代から続けてきた過剰投資が需要を遥かに超えてし
まった事と、需要に見合うレベル迄、経済成長率を減速させる事が出来ず、不動産価格を高水準に保つ為、
政府投資を続ける等、政策矛盾が暴落を招いたと考える。2015 年 6 月迄過去 5 年の上海総合株価指数と
中国経済先行指標を対比すると、先行指標は低下しているが、上海総合株価指数は、去年の初夏以来急騰
を続けている。この事からも、暴落した最大の理由は、経済の基礎条件によっては、正当化出来ない程、
株価が上がり過ぎていた事がわかる。2015 年第 2 四半期の GDP 成長率が第 1 四半期と同じ+7.0%だっ
たが、政府公表経済統計は化粧を施された代物なのだろう。正直なデータを見れば成長が大きく減速して
いる可能性も否定できない。比較的信頼性がある 2015 年 6 月迄過去 3 年間の中国コンテナ輸送量指数は、
2013 年の 1100 台から、直近では 800 台までに下がっているが、特に 3 月以降になって下落率が加速し
ている。中国の実体経済の成長率鈍化は深刻化しているかもしれない。しかしながら、政権維持の為、株
価を何としても支えたいと考える習錦平政権は、どのような事をしても株価を釣り上げる事が予想され、
論理的考察ではないが、1~2 年は何とか持ちこたえるのではないか。
3. 米利上げ
29 日のFOMC議事録は従来からの私の予想を裏付ける内容だった。景気は緩やかに改善しており雇用も
明確に改善したものの、イラン制裁緩和による原油供給増加や中国経済減速による商品価格の低下は、明
確に今後のインフレ見通しを低下させる内容であった。驚くのは、FRBスタッフがうっかり出した経済
指標がきわめて弱い内容で 2015 年から 2020 年のインフレ・成長予想は、それぞれ 1.8-1.9%と 1.8%と 2%
に届かない事が明らかになった。金利は上げるとしても、今年 1 回のみで来年以降更に上げるのは、グロ
ーバル市場、新興市場への影響を注視しつつ実施せざるを得ず、実際はかなり難しいと考える。
<結論>
1. 上記からギリシャ問題によるリスク許容度が低下する可能性は殆どなくなった。
2. 上海株価低迷と経済減速が世界経済に大きなマイナスを与え始めるが、共産党独裁政権の為、何が起こる
か判らず長期的想定は難しいが、1~2 年程度の短期で考えれば、AIIBで想定される大幅な海外インフ
ラ工事輸出等、他国との形振り構わぬ貿易拡大策等でどうにか経済の極端な鈍化を避けるものと考える。
3. 今年 9 月以降に一度は米国政策金利引上実施が予想されるが、引上幅は低くその後は実施されない可能性
が想定される。これに加え、個別企業業績に対応して米国株の振幅巾が大きく極めて不安定になっている。
引続き米ドルキャッシュを中心とする保守的アセットアロケーションが効率的と考える。