経済原論IA 第4回 西村「ミクロ経済学入門」 第4章 消費者行動と需要曲線 京都大学経済学部 依田高典 1 需要分析のハイライト 需要の所得弾力性 上級財・中立財・下級財の分類 スルツキー方程式 所得効果と代替効果への分解 2 1. 財の分類: 上級財:所得増加 → 消費増加 奢侈財:特に所得増加以上に消費増加 必需財:特に所得増加ほどには消費増加 しない 中立財:所得増加 → 消費一定 例:食塩、タバコ、トイレットペーパー 下級財:所得増加 → 消費減少 例:焼酎、インスタントコーヒー 3 2. 需要の所得弾力性 需要の所得弾力性:EI=[ΔX1/X1]/[ΔI/I] 所得弾力性 EI>1 1>EI>0 財の分類 奢侈財 上級財 必需財 EI=0 中立財 EI<0 下級財(劣等財) 4 3. エンゲル曲線 エンゲル曲線:所得(縦軸)と需要量(横軸) の関係 上級財:エンゲル曲線正の傾き 下級財:エンゲル曲線負の傾き エンゲルの法則:エンゲル係数(食費の所 得に占める割合)は所得水準の上昇に伴い 低下する⇔食料の所得弾力性は1より小さ い 5 4. 相似拡大的な効用関数 相似拡大的(ホモセティック)な効用関数: 所得消費曲線が原点を通る直線 ⇔ エンゲル曲線が原点を通る直線 ⇔ 需要所得弾力性が1:EI=1 6 X2 I’/P2 D’ I/P2 所得消費曲線: 所得が変化するときの需要 の軌跡 D O X1 X1→X1’ 7 5. 価格消費曲線 ほかの事情を一定として、 ある財の価格が変化 → 購買可能集合の変化 → 需要量の変化(需要曲線の導出) 8 X2 I/P2 A O X1 A’ X1’ I/P1 価格消費曲線: 価格が変化するときの需要 の軌跡 I/P1’ X1 9 P1 価格消費曲線から得られた通 常の需要曲線 P1 P1’ DD O X1 X1 X1’ 10 6. スルツキー方程式 代替効果:効用水準を一定としたときの、相対価格変化によ る需要変化 所得効果:相対価格を一定としたときの、所得変化による需 要変化 需要量の変化=代替効果 + 所得効果 X1’ーX1 =(X1’’ーX1) + (X1’ーX1’’) X1 P1 I X1 P1 U X1 X1 I 11 X2 需要量の変化=代替効果+所得効果 X1’ーX1=(X1’’ーX1)+ (X1’ーX1’’) D D’ D” O X1 X1” X1’ X1 12 6. ギッフェン財 需要曲線が右上がりな財 ⇔ 価格が下がると、需要が減るような財 ⇔ 下級財において、負の所得効果が非常に 大きく、代替効果を上回る財 13 7. 補償需要曲線(ヒックスの需要曲線) 効用水準を一定として、代替効果だけを表す需 要曲線 必ず負の傾きを持つ 14 P1 補償需要曲線 P1 P1’ 通常の需要曲線 O X1 X1 X1” X1’ 15 8. 需要の交叉弾力性 ある財の価格1%の変化が、別の財の需要の 何%の変化をもたらすか E21 = [ΔX2/X2] / [ΔP1/P1] E21>0 → 粗代替財 例:コーヒーと紅茶、バターとマーガリン E21<0 → 粗補完財 例:コーヒーと砂糖、パンとバター 16 山本「演習」(時間に余裕がある場合) 選択問題5. 値上げ前の焼き鳥6皿 〜 値上げ後の焼き鳥4皿 選択問題6. 値上げ前後の焼き鳥の変化は-4皿 そのうち代替効果 が-2皿 従って所得効果は-2皿 選択問題7. 値上げ前の支出:6×200+2×400=2000円 値上げ後に同満足を得るための支出: 4×400+4×400=3200円 選択問題8. 焼き鳥の値上がりによって、酒への需要量が2本から3本 に増えている 粗代替財 17
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