ミクロ経済学・ミシュラン・ガイド

ミクロ経済学
ミシュラン・ガイド v.3
1
ここでは受講者のために、ミクロ
経済学でのミシュラン
クラスの重要概念のまとめを行い
ます。
Ⓒ高橋青天
経済問題と消費者行動理論
2
第1部
J. R. Hicks 1904-1989
序:経済問題とは?
3
 ミクロ経済学:希少な資源がどのように配分され、与えら
れた技術のもとでどのように生産に使われ、その生産さ
れたものがどのように分配されるか、という問題が、いか
にして解決されているのかを分析する学問。
(資源<欲望
選択
機会費用)
 問題を解くための経済システム
民間部門(企業、家計):市場を使って解決
公共部門(国、地方政府、公的企業):市場以外の政治的
プロセスで解決
ミクロ経済学のお勧めテキスト
4
 てっとり早く理解したい人
『図解雑学 ミクロ経済学』(ナツメ社)
 じっくりと勉強したい人
『入門 ミクロ経済学』(新世社)
『ミクロ経済学入門 第2版』(岩波書店)
 数学を使い深く勉強したい人
『ミクロ経済学 第2版』(東洋経済新報社)
消費者行動理論
5
例:明学生T君がこずかい
200円でミカン(一個10円)と
リンゴ(一個20円)を買うとき。
ミ
カ
ン
B:(15,20)
 財空間
(第一象限の点:0.001台の車という
財の無限分割可能性の仮定)
 予算線
 消費可能集合
(予算線と軸で囲まれた領域)
A:(5,10)
C:(5,5)
財空間
リンゴ
合理的消費者
6
 合理性の仮定
(i) より多い財ペアを好む
例:(1,2)と(4,6)では、(4,6)のペアを必ず選好する。
(ii) ある二組の財ペアA,Bについての選好(好み)を聞かれたとき、必ず、次の
いずれかの返事をする。
(1) AよりもBを好む(A ≺ B)
(2) BよりもAをこのむ(A ≻ B)
(3) AとBは無差別(A ≈ B)
(iii) ある三組(A,B,C) について、もし(A ≻B) かつ(B ≻C) ならば(A ≻C) が成立。
以上の仮定(1)~(iii) のもとで、右下がりの無差別曲線が導出される。
(iv) 選好の凸性:無差別曲線上の二点A,Bを結ぶ直線上の点で表わされる財
ペアは、その両端を除いて、A,B よりも好まれる。
以上の仮定の下で、原点に膨らんだ無差別曲線が導出される。
無差別曲線の導出
7
以下の質問をT君に繰り返し行う!
1)任意の財ペアF を財空間上から選ぶ。
2)F とは異なる財ペアGを財空間上から選ぶ。
3)FとGのどちらを選ぶか質問をする。
4)FとGが無差別なら、Gを記入する。
5)もし、FよりもGが好まれるか、GがFよりも好ま
れる場合、G とは異なる財空間上の点を選ぶ。
6)手順1)から5)を繰り返す。
無差別曲線
選好の凸性より、
このような出っ張
りがなくなる!
F
H
A
C
B
点Fを通る、右下がりの曲線を描くことができる。
さらに、Fとは異なる点Hから同様の質問を繰り返
すことにより、Hを通る、右下がりの曲線を得る。
同様の手順を繰り返すことにより、このような曲線を無数に描くことができる。
無差別曲線の性質
8
選好がより高い
20
10
1)通常の無差別曲線
2) 右上がり
3) 交わる
注意:選好水準20の無差別曲線上の点 は選好水準10の無差別曲線上の点 に較べて、2倍の満足度
であることを意味しない。単に、 の方が に較べて満足が高いことしか意味しない。
最適消費量の決定
9
ミ
カ
ン
の
消
費
量
20
限界代替率(MRS):無差別曲線上の任意の点での接線の傾きの絶対値
A
MRSは逓減する!
E
B
MRS=
(同じ選好水準に保つために必要なリンゴの増分)
(一単位のミカンの減少分)
C
- (リンゴの価格÷ミカンの価格)
10
リンゴの消費量
<最適消費量の決定> E点:MRS=価格比
需要曲線の導出
10
A C:代替効果
ミ
カ
ン
の
消
費
量
総変化: AB
C B:所得効果
リ
ン
ゴ
の
価
格
リンゴに対するT君の需要曲線
C
B
リンゴ価格=10円の予算線
A
3
リンゴ価格=20円の予算線
10
20
10
リンゴの消費量
3
10
リンゴの消費量
需要理論(by J.R.Hicks)
11
*代替効果:新しい価格で、この個人が以前と同じ満足を得られるように所得補償が行われたと想
定したときの各財の消費量への効果 (“あほらし効果”)
常にマイナス効果(価格変化とは逆方向)
*所得効果:実質所得の損失により各財の消費量への効果(“がんばろ効果”)
マイナス効果かプラス効果かは無差別曲線の形に依存
<財の分類>
・所得効果マイナス:劣等財
・所得効果プラス :正常財
*需要法則:一般的に、所得効果よりも代替効果が大きいと考えられるので、価格と消費量の間に
はマイナスの関係が成立する。価格が上がれば消費(需要)量が減り、価格が下がれば、その
消費(需要)量が増える。(例外:ギッフェン財)
需要の価格弾力性
12
 需要の価格弾力性
D (E )  

需要量の%変化分
価格の %変化分
P*

1
D * 点 Eで の 接 線 の 傾 き
 弾力性の決定要因
1)奢侈品かどうか?
2)代替財が存在するかどうか?
3)所得額と比較して、その財への支出額
の割合が大きいか小さいか?
E
P*
点Eの接線
接線の傾き
D*
収入と需要の価格弾力性
13
 価格が下がる(上がる)時
価
格
弾力性=1
弾力性>1
収入は変化しない。
収入は増加(減少)。
D  1
D  1
D  1
E
A
F
B
弾力性<1
注)
収入は減少(増加)。
(OCEA)=
( ODFB)
O
C
D
消費量
これから必要な数学の準備
14
 直線の方程式
1)傾き=βと切片=α:
y  x
2)点 (a , b)を通る、傾き=β の方程式:
( y  b)   ( x  a)
3)点(a , b) と点 (c , d) を通る直線の方程式:
bd
( y  a)  
 ac

 ( x  b)

応用例(1):一括所得税 vs 個別消費税
15
定義
・一括税
:所得に何円で課税
・個別消費税 :財価格へ何%で課税(従課税方式)
そ
の
他
財
の
価
格
その他財価格で測った税収
問題
「福田総理が、ガソリンに個別消費税で課税するか、一括所得
税で課税するかして、同一の税収の確保を考えているとする。
どちらの税方式が、個人の負担が少ないか?」
消費税後均衡点
ポイント
1)一括税:予算線を平行移動させる(所得効果のみ)。
消費税:予算線を時計廻りに回転させる
(所得効果+代替効果)。
一括税後均衡点
超過負担
一括税後予算線
消費税後予算線
2)同じ税収が実現するためには、消費税後の均衡点は、
消費税後予算線と一括税後予算線の交点となる。
(各自、直線の方程式を使ってこのことを確認すること。)
ガソリンの消費量
類題1:個別消費税と税の還付
16
問題
「ガソリンに個別消費税を課税し、
その個人が支払ったガソリン
の税金を還付するという政策に関して、
福田首相が、支払った税金が戻るのだから、
個人への負担はゼロだという主張に対する
賛否?」
還
付
還付後均衡点
税
収
課税後均衡点
課税前均衡点
超過負担
超過負担(死重荷損失)が発生し、厚生状態
は課税前の状態に戻らない。
ガソリンの消費量
類題2:一般補助金と特定補助金の政策効果
17
 補助金=マイナスの税金
<特定補助金>
特定の支出に関する補助金。
例1:ガソリン価格へ何%の補助
(その分だけ価格が下がる)
例2:国庫支出金(教育、道路)
<一般補助金>
どのような支出にも使える補助金。
例1:所得補助
例2:地方交付税
一般補助金の均衡点
政策実施前の均衡点
特定補助金の均衡点
ガソリンの消費量
*)同じ補助額を特定補助金で行った場合、一般補助金に較べて効果が低い。
応用例(2):貯蓄の決定#1
18
*)家計は生涯所得(Y1)が
与えられたもとで、二期間にわたる
消費C1,C2を決める。
 個人貯蓄決定モデル
(生)
第1期
(退職)
Y1(第1期所得)
第2期
(死)
1)1期の予算方程式:
Y2=0 (第2期所得)
Y1  C 1  S
2)2期の予算方程式:
S(貯蓄)
C1(第1期の消費)
(1+r)S (元本+利子)
C2(第2期の消費)
・現在価値:将来の10000円=現在の9500円
・将来財の価値を割り引く:割引率(市場利子率)
(1  r ) S  C 2
3)2期間の予算方程式:
上記2式からSを消去して、
C2
C1 
 Y1
(1  r )
第2期消費の現在価値
貯蓄の決定#2
19
応用例:利子課税の効果
(予算線が所得点Yを中
心に反時計回りに回転
する)
 図解
代替効果:相対的に安くなった現在財の
消費を増やす。
消費点
C2
所得効果:実質所得減少による現在財と
将来財の消費を減らす。
(1+r)S
-(1+r)
C1
所得点
Y
S(貯蓄)
応用例(3):労働供給の決定
20
 余暇時間の導入(労働=苦痛=マイナスの効用)
*)個人に与えられた一定時間(H):24時間、24×7時間、24×7×365時間
H
余暇時間(Z=H-L)
労働時間(L)
*)所得(Y)=賃金率(時給:w)×労働時間(L)
行動仮説:個人は、賃金率とHが与えられたもとで、消費財の
消費量(x)と余暇時間(Z)を,選好が最大になるようにきめる。
労働供給決定#2
21
 図解
x
予算方程式
(消費財価格=1、Z=余暇時間)
wL  w(H  Z ) x
 x   w(Z  H )
-w
傾き(-w),点(H,0) を通る直線。
Z
余暇時間
労働時間
H
応用例:労働賃金課税 =>予算線が反時計回りに回転 =>代替効果+所得効果
パレート効率性とコア
22
第2部
Francis Ysidro Edgeworth (1845-1926)
Vilfredo Pareto (1848-1923)
純粋交換経済(2財・2人)
23
 経済環境:A、Bの2人が財X,Yを市場で交換する経済を
考える。
記号:
X
A
: A さ ん の X財 の 初 期 保 有 量
X B : Bさ ん の X財 の 初 期 保 有 量
Y A : A さ ん の Y財 の 初 期 保 有 量
Y B : Bさ ん の Y財 の 初 期 保 有 量
 XA : Aさ ん の X財 の 消 費 量
X B : Bさ ん の X財 の 消 費 量
Y A : Aさ ん の Y財 の 消 費 量
Y B : Bさ ん の X財 の 消 費 量
1)
X X A  X B
2)
Y  Y A  YB
個人Aの最適消費量の決定(個人Bも同じ)
24
 無差別曲線と予算線
Yの 消 費 量
<最適化の条件>
Y
M RS A 
無差別曲線

YA
消費点

0A
X
A
X
PY
<予算方程式>
 pX 
(Y  Y A )   
(X  X A)
 pY 
初期保有点
YA
pX
予算線
A
傾き
 p 
 X 
 pY 
X
Xの 消費量
ボックス図の作成
25

契約曲線上: M R S A  M R S B
契約曲線(パレート効率な点の集合)
0B
Y
X
0B
合体
合体
0A
X
0A
Y
ボックス図の名称に関する歴史
26
 Vincent Tarascio (1976)”A Correction: On the Genealogy of
the So-called Edgeworth-Bowley Diagram,” Western
Economic Journal
“ Neither on that page nor anywhere else in mathematical
Psychics nor in the three volumes of Edgeworth’s Papers
Relating to Political Economy is a box diagram to be
found.”
“ in 1906 the box diagram appears in several placesss in
Pareto’s Manuale, and for the first time in its familiar
form in economic literature.”
パレート効率性
27
 定義:パレート改善
いずれの経済主体の経済状態を悪化させることなく、少く
なくとも1人の経済主体の経済状態を改善させることがで
きる場合。
 定義:パレート効率(パレート最適)
どのようにしてもパレート改善が不可能な状態。
市場均衡とパレート効率性
28
 価格調整メカニズム
XB
XB
0B
売
り
X財市場:超過供給
Y財市場:超過需要
YA
買い

YA
YB
X財価格:下落
Y財市場:上昇
買い
YB
売り
0A
X
A
X
A
予算線が半時計
回りに回転
厚生経済学の第一命題
29
 市場均衡はパレート効率である
XB
XB
0B
X財市場:需要=供給
Y財市場:需要=供給
YA
YB
E

YA
0A
X
A
X
A
YB
市場均衡:M RS A
 M RS B
均衡点Eは契約曲線
上
パレート効率
厚生経済学の第二命題
30
 任意のパレート効率な状態は、初期保有量の適当な再分配のもとで、市場均衡と
して実現できる。
XB
XB
0B
この初期保有点からは、
パレート効率な点Eが実現
できない。
YA
YB
E

YA

0A
X
A
X
A
YB
初期保有量の再分配が必要
となる!
*)二分法:効率性基準と
平等性基準
コアの概念
31
 契約曲線のEFの部分をコアと呼ぶ。初期保有点からコアで表わされる
任意の配分点へ移動することにAもBも同意する(パレート改善)。
0B
XB
F
コア
E
YA
0A

X
A
初期保有点
YB
4人・2財モデル
32
 Aさんタイプの個人:A1、A2
 Bさんタイプの個人:B1、B2
 いま、2人(A1、B1)・2財経済のとき、点Eでの配
分が決まっていたとする。このとき、A2とB2が再
配分の協議に新たに参加したとする。
点Eの配分は、4人にとってパレート効率でなくなる!
個人B1とA1,A2との結託(個人B2の排除)
33
B1とA1、A2が結託 し、A1とA2が点Dの配分を実現 し、B1が点Gを実現。
0B
XB
点G、Dで,点Eより高い
無差別曲線が実現する。
F
コア
E
G 
D


YA
初期保有点
YB
3人が結託することにより、
パレート改善となる。
0A
X
A
個人B1の(A1,A2)への提案(個人B2の排除)
34
B1がKGで表わされるY財をA1、A2へあげる代わりに、A1からX財IJ, A2からJKを
貰う。=>B1の配分点が、点Iから点G へ移動。
0B
XB
F
E
G
YA
0A
K
D
J
I
X

A
初期保有点
YB
個人B2の(A1,A2)への逆提案(個人B1の排除)
35
初期保有点Iを通り、より傾きの急な直線上で個人B1と同様の提案を個人B2が行う。
0B
XB
個人B2の提案
G’
D’
E
個人B1の提案
YA
0A
K
B2の状態は変わらず、点D’で、
B1の提案よりも高い無差別曲線
が実現。
F

J
X
A
初期保有点
I
YB
B2,A1,A2が結託すること
により、B1の提案よりも
パレート改善となる。
コアの収縮
36
 個人B1の提案と個人B2による逆提案、さらに個人B1による逆提案という
プロセスを通じて、結局、どちらもこれ以上再提案ができないコア内のA
点に到達する。
0B
XB
収縮したコア
これ以上再提案
ができない状態。
F
B
逆に、A1とA2がそれ
ぞれB1,B2に同様の
提案することにより達
成するコア内の点。

A

E
YA
0A

X
A
初期保有点
YB
コアの収束とその意味
37
 Aタイプ、Bタイプの個人をさらに増やした場合:3人、4
人、・・・・、無限人
コアは一点に収束=市場均衡でも実現可能

コア収束の意味:消費者がお互いに結託したり排除され
たりしながら情報を収集するプロセス。
コア:個人の数が増えると情報収集費用が膨大となる。
市場均衡:情報コストがゼロに近い。
公共財を含む資源配分問題の図解
38
第3部
「コルムの三角形」入門
これまでの最適資源配分問題の解説(1)
39
 サミュエルソン条件の導出
M RT XG  M RS A  M RS B
P. Samuelson
(1915-)
*)土居著『公共経済学』より
これまでの最適資源配分問題の解説(2)
40
 リンダール均衡
*)土居著『公共経済学』より
なぜコルム三角形なのか?(1)
41
 利点1
コルム三角形のみで純公共財を含む資源配分問題に関
する以下の議論を直感的に説明できる。
1)サミュエルソン条件の導出
2)リンダール均衡
3)自発的供給問題とナッシュ均衡
4)中立性命題
なぜコルム三角形なのか?(2)
42
 利点2
図のみによる直感的説明;必要なのは中学で学ぶ
図形に関する知識のみ
・三角形と平行線に関する比率
*)中3、数A
・正三角形の性質
コルム三角形の限界
43
 私的財と公共財に関する線形変換
の仮定
 私的財と公共財の2財・2人モデル
「コルム三角形」関連文献(外国語)
44
 Kolm, S.-C. (1970) La Valeur Publique (Paris,
Dunod)
 Laffont,J-J. (1987) Fundamentals of Public
Economics (Cambridge, Mass., MIT Press).
 Ley, E. (1996),”On the Private Provision of Public
Goods: A Diagrammatic Exposition,”
Investigations Economicas, 20:1, 105-123.
 Thomson, W. (1999),”Economies with Public Goods:
An Elementary Treatment,” Journal of Public
Economic Theory, 1, 139-176.
「コルム三角形」関連文献(日本語)
45
 奥野正寛・鈴村興太郎(1988) 『ミクロ経済学II』(岩波
書店)
 西條辰義(2000) 『レクチャノート:厚生経済学』(非出
版講義ノート)
 田平正典(2003) 『地方公共支出の最適配分』(多賀
出版)
*)コルム三角形を使った説明は、非常に少ない!
理由:
・原論文がフランス語
・競合的な図の存在
コルム三角形の仮定
46
 仮定1:AとBの二人から構成される経済である。
 仮定2:私的財と、完全非排除性かつ完全非競合性を持
つ純公共財の2種類の財が存在する。
 仮定3:各人は私的財の形で一定の初期保有量を所有
しており、私的財と公共財を消費する。
 仮定4:私的財と公共財は1対1で技術的に線形変換さ
れる(PPFが線形)。
コルム三角形とボックス図の比較
47
Bの無差別曲線
契約曲線
Aの無差別曲線
OB
共通予算線
契約曲線
効率的配分点
OA
OA
OB
OA
初期保有点
コルム三角形
ボックス図
ボックス図の作成
48

契約曲線上: M R S A  M R S B
契約曲線(パレート効率な点の集合)
X
Y
0B
合体
合体
0A
X
0B
0A
Y
Aの実行可能三角形の作図
49
実行可能点E
コルム三角形上の点
gA
F
F’
P
g
Q
E
*
A
G
PPF
I
H
60
M
*
xA
0A
*
(*)
0 A xA
0A M

PE
PM

xA
w
QE '
QJ

E’
0
J
0A
E 'G
JI
(**)
0A M
0A w

0A P
0A F

K
JI
KH
E’G=私的財消費量( 0
*
A
xA
)
50
 (1.1)
*
0 A xA

0A M
 (1.2)
0A M

0A w
0A P

QE '
QJ

0A F
*
0 A xA

PM
0A w
 結果:
PE

E 'G
JI
JI
KH
E 'G
E 'G  0 A xA
*
KH
KH= 0 A w
実行可能三角形の合体
51
 Bに関しても同様に実行可能三角形を描くことができる。
 両実行可能三角形を合体
コルムの三角形
左から合体
Aの実行可能三角形
右から合体
コルムの三角形
図3
Bの実行可能三角形
実行可能配分点Zの性質
52
実行可能条件: w  ( w A  w B )  g  ( x A  x B )
効率的配分: 実行可能条件の等号が成立。
F
D
x ' Ax '
A
Z
x 'B
g'
B
E
C
効率的配分の証明
53
 実行可能条件を等号で
成立
( a  x ' A  a  x ' B  a  g ') / 2  a ( x ' A  x ' B  g ') / 2
w A  w B  x ' A  x 'B  g '
ただし、a は正三角形の一辺の長さ。
コルム三角形と共通予算線の性質
54
 まとめ
A
共通予算線
効率的配分点
Z
契約曲線
F
D
wB
wA
B
C
E
図4
公共財ゼロの配分点=初期保有点
限界代替率(MRS)の定義
55
g
M R S A ( Z )  g /( w A  x A )
*
Aの予算線
*
g
M RS A (Z )  (wA  xA ) / g
*
Z
*
*
*
wA
xA
図1’
*)Bの限界代替率も同様に定義される。
効率配分点Zの性質
56
契約曲線
wA  xA
*
g
*

SW
ZU

SW
x
RT
*
x B*
*
A
Z

QW
T
wA
QR
wB
S
B
*)三角形TQRに関する平行線
の比から
Q
U
図7
W
R
C
契約曲線=パレート効率な点の集合
57
 サムエルソン条件の証明
M RS A (Z )  g / (wA  xA ) 
QW
M RS B (Z )  g / (wB  x ) 
WR
*
*
*
*
B
QR
QR
M R S A ( Z )  M R S B ( Z )  ( Q W / Q R )  (W R / Q R )  1  M R T
共通予算線上の性質:GW/GJ=IW/IK
58
 与えられた共通予算線上では、両者の負担率は一定である。
・⊿WXG & ⊿WZI
*)この図の場合はA
がBよりも負担率が高
い。
IW/GW=IZ/GX
Aの負担率=GW/GJ
Bの負担率=JW/GJ
X
・正三角形の性質
Z
GJ=GX ,IK=IZ
G
I
W
K
J
リンダール均衡(1)
59
・負担率の変更
同じ負担率で、Bの
方がAよりも多くの公
共財を欲している。
W’
Bの負担率を上げ、A
の負担率を下げる。
X
Z
共通予算線が時計
方向へ回転する。
W
図8
リンダール均衡(2)
60
・共通予算線の回転
WW’’共通予算線
W’
W’’
同じ負担率でAがBよ
りもより多く公共財を
欲する。
Z’
X
X’
Aの負担率を上げBの
負担率を下げる。
Z
予算線が反時計回り
に回転。
W
リンダール均衡(3)
61
リンダール機構:
AとBの負担率の変
更。
W
共通予算線が左右
に回転する。
Q
一定の負担率で同じ
量の公共財を欲する。
W
図8
点Qでリンダール均
衡が実現。
企業家行動理論
62
第4部
ALFRED MARSHALL (1842-1924)
生産関数
63
Y
・生産関数:
F (L, K )
生産要素投入と生産物
との技術関係を表す関数。
A’
Yo
(生産要素投入)
労働(L)
資本(K)
(その他要素)
数式表現:
切断面
F( )
産出物(Y)
Y  F (L, K )
K
点 Eの 接 線
Yoの等産出量曲線
E
L
等産出曲線
64
・等産出(量)曲線
生産関数のグラフを同じ生産水準
で切ることにより、無差別曲線と同じ
性質の図が描かれる。
・無差別曲線との違い
1)各生産水準は比較可能。
例:20単位の等産出量曲線は10単位
のそれの2倍の産出水準を表す。
2)各等産出量曲線上の任意の点の
接線の傾きの絶対値は限界技術変形率
(MRTS)と呼ばれている。その意味は、限界
代替率と同じ。
Y  20
K
Y  10
M RTS
L
規模の収穫と等産出量曲線
65
規模の収益性:すべての投入量を同じだけ増やしたとき産出量
がどれだけ変化するか
Y  40
Y  30
Y  30 Y  40
Y  10
Y  30
Y  10
Y  10
Y  40
Y  20
規模に関する収穫逓増
(2倍=>2倍以上の産出)
Y  20
規模に関する収穫一定
(2倍=>2倍の産出)
Y  20
規模に関する収穫逓減
(2倍=>2倍以下の産出)
短期と長期
66
 短期:企業が工場設備などの資本投入量を変化させるこ
とができないが、労働投入量などは変化させることができ
る期間
・変化できない生産要素:固定生産要素
=>
・変化できる生産要素:可変生産要素
 長期:企業がすべての投入要素を変化させることができ
る期間
企業家行動
67
 仮説:企業は利潤(収入ー費用)を最大にするように産出
量を決める。
 二段階での企業行動の定式化
ステップ1)産出量と費用の関係を示す費用曲線を費用最
小化行動から導出。
ステップ2)費用曲線を使い、利潤を定義し、利潤最大化の
条件を導出。
費用最小化問題
68
 与えられた産出量水準
(Y1)のもとで総費用(C)を
最小化する。
K
Y  Y1
等費用線 K    wr  L  Cr


Kの要素価格:レンタル料(r)
Lの要素価格:賃金率(w)
費用最小化条件: M R T S 
費用最小点
w
r
 等費用線(C):その直線上
の投入ペアが同じ総費用
をもたらす。
(消費者行動理論の予算線と
比較せよ!)
 w
 
 r 
L
2種類の費用曲線導出
69
 短期費用曲線(K=K1で固定)と長期費用曲線
C
Y  Y3
K
Y  Y2
Y  Y1
長期総費用=短期総費用
短期総費用
C3
C2
K1
長期総費用
C1
C2
C3
C1
Y
L
Y1
Y2
Y3
長期費用曲線と短期費用曲線
70
 前の図から、もしスムーズな
曲線の場合は、右図のような
関係が成立する。
(点A で接線を共有している。)
長期費用曲線
短期費用曲線(K=K1)
 包絡線定理:短期費用曲線
と長期費用曲線は一点で接
線を共有する。従って、接点
の軌跡として長期費用曲線
が求められる。
C3
C2
C1
A
Y1
Y2
Y3
短期費用曲線
71
 各種費用概念
 平均費用(AV):

総費用
短期費用曲線
AF
OF
 平均可変費用(AVC): 
AE
A
BE
可変費用(VC)
 固定費用(FC):
B
E
D
 限界費用(MC):点Aでの接線の
固定費用(FC)
傾き。
o
産出量
F
Y
利潤最大化(1)
72
 利潤=販売額ー総費用
=価格×生産量
ー総費用
π=P×Y ー C(Y)
PY
*
最大利潤
*
C (Y )
MC
・利潤最大化条件
限界費用(MC)=価格(P)
P
最大利潤
Y
*
利潤最大化(2)
73
 MC,AC,AVC を使った図
P  P1:正の利潤
A
P  P2:利潤ゼロ(損益分岐点)
P  P3:負の利潤
操業停止=固定費が損失
操業継続=固定費ー可変費用の一部
P  P4 :操業停止点
操業停止=固定費が損失
操業継続=固定費が損失
*)価格がこれ以下になると、操業停止
の方が費用が小さくなる。
**)供給曲線:ABCD
P1
P2
P3
B
P4
C
O
パレート効率とPPF
 2財・2要素モデル
74
OY
X財とY財を、労働Lと資本Kを
使って生産するX企業、Y企
業を想定。
<各企業の初期保有資源>
L  L X  LY
K  K
<生産量>
X
 KY
X財生産量: X
Y財生産量: Y
*)契約曲線が生産可能性曲線
として描かれる。
**)PPF上の接線の傾きの絶対
値は、限界変形率(MRT) と呼
ばれている。
契約曲線
ボックス図
X2
X3
X1
Y3
Y2
等産出量曲線
Y1
Ox
パレート効率な点の集合
Y
Y1
Y2
限界変形率(MRT)
Y3
X1
X2
X3
生産可能性曲線(PPF)
X
生産可能性曲線(PPF)の応用
75
 貿易理論
Y
生産点
PPF:一国の資源が与えられた下での貿易財の生産
無差別曲線:1国の財の選好
1国の選好
 公共経済学
PPF:1国、1地方の資源が与えられた下での私的財(X)
と
公共財(Y)の生産
無差別曲線:1国、1地方の選好
消費点
X
Y
 厚生経済学
2人・2財と生産を含むパレート効率性条件
OB
M RT  M RS A  M RS B
OA
X
特殊ケース:1要素・1産出モデル
76
 生産関数
投入物:L
産出物:Y
Y
利潤最大化条件: M P 
w
p
等利潤線
・等利潤線(π)
産出物価格:P
投入物価格:w
  pY  w L
 w

Y   L 
p
 p
限界生産物(MP)
*)限界生産物逓減法則:生産関数の接線の傾きが逓減する。
L
1次同次生産関数
77
 定義:すべての投入量をα(>0)倍
すると産出物がα倍となる。
・数式表現:  Y  F ( K ,  L )
・よく使われる表現
y
f (k )
y  F ( k ,1)  f ( k )
Y
K 

y

,
k



L
L


 数値例
コブ=ダグラス生産関数

1 
Y  AK L
y  Ak

k
厚生経済学の第一命題再考
78
 第一命題
完備な市場での均衡
パレート効率
 対偶命題
パレート効率でない
市場が完備でない
市場が完備でなくなるケース(市場の失敗)
79
 私的に供給されない公共財の存在
(道路、橋などのインフラ)
 外部経済の存在
(公害、技術のコピー)
 規模に関して収穫逓増産業の存在
(自然独占、寡占企業)
 リスクと不確実性の存在
(モラル・ハザードや逆選抜)
独占の理論(1)
80
 完全競争と独占
企業数
完全競争市場
独占市場
無数
1
企業の主体的均衡条件 価格=限界費用
限界収入=限界費用
・供給曲線
・直面する需要曲線
右上がり
水平線
なし
右下がり
資源配分の効率性
満たされている
生産が過少、価格が過
大で超過負担あり
独占理論(2)
81
 図解
MC
AC
1

p 1    M C
 

 :需要価格弾力性
市場需要曲線
P
利潤
産出量
限界収入曲線(MR)
特殊ケース:1要素・1産出モデル
82
 生産関数
投入物:L
産出物:Y
Y
利潤最大化条件: M P 
w
p
等利潤線
・等利潤線(π)
産出物価格:P
投入物価格:w
  pY  w L
 w

Y   L 
p
 p
限界生産物(MP)
*)限界生産物逓減法則:生産関数の接線の傾きが逓減する。
L
1次同次生産関数
83
 定義:すべての投入量をα(>0)倍
すると産出物がα倍となる。
・数式表現:  Y  F ( K ,  L )
・よく使われる表現
y
f (k )
y  F ( k ,1)  f ( k )
Y
K 

y

,
k



L
L


 数値例
コブ=ダグラス生産関数

1 
Y  AK L
y  Ak

k
1変数関数の微分について
84
 ある1変数関数上の点における接線と、その関数で描かれる曲線が
重なり合う部分での変化を考えることを微分という。
2変数関数と微分
85
u
u ( x1 , x 2 )
u
A’
C'
0
切断面
微分とは、先生が教壇を
移動する距離を、
地球の大きさと較べたぐ
らいの変化のことである。
M'
dx 1
dx 2
N'
D'
x
C
M
図2
x
1
D
2
全微分と偏微分
86
 曲面上の点での接平面を考えるとき、接平面と曲面の重
なった部分での変化を全微分という。
 それぞれの座標軸方向への曲面と接平面の切断面を考
えたとき、曲面の切断面と接平面の切断面が重なリ合う
部分の変化を偏微分という。
曲面の切断面
87
全微分の計算
88
 図2を使った説明
点Mでの接平面上の移動:点Mから点N
 X1方向とX2方向への移動の分解
X1方向:dX1 -- uの変化: u /  x1
X2方向:dX2 -- uの変化: u /  x 2
 総変化(全微分)
du  (  u /  x1 ) dx1  (  u /  x 2 ) dx 2
限界代替率(MRS)の計算
89
 無差別曲線上の動き:du=0
du  0 
u
 x1
dx1 
u
x2
u
dx 2
dx1
 
 x1
u
x2
 
M U x1
M U x2
dx 2
よく使われる関数形
90
 以下の関数に関して、MRSを計算せよ!
u 
x1 
x2
 u  x1 x 2 ( 反 比 例 の 関 数 )

u  ( x1 ) ( x2 )

(    1) ( コ ブ = ダ グ ラ ス 関 数 )
Mathematica での図示(1)
91
 関数形:
z x
0.5
y
0.5
3
2.5
2
3
1.5
2
1
3
0
3
2
2
1
0.5
1
1
0
0
0.5
1
1.5
2
0 0
三次元図
横断面図
2.5
3
Mathematicaでの図示(2)
92
 側面と平行な面での切断面
1.75
1.75
1.5
1.5
1.25
1.25
1
1
0.75
0.75
0.5
0.5
0.25
0.25
0.5
1
1.5
2
2.5
<点(2,0,0)での断面>
3
0.5
1
1.5
2
<点(0,2,0)での断面>
2.5
3
資源配分機能
93
外部性
外部不経済の例
94
 公害のケース
A企業:養漁企業(被害者)
B企業:メッキ工場(加害者)
B企業
損害
排水
湖
状況:
メッキ工場を経営するB企業の湖への
排水のため、養漁をしているA企業
に、ここで捕れた魚の市場価格下落
や注文の減少などの損害を与えている
と想定する。
養漁場
A企業
図解(1)
95
 費用と便益
(ABCD) -
(BCD) =
(ABD)
社会的均衡
MCb+MDa
A
B
C
私的均衡
MCb
D
MBb
MDa
Xb** Xb*
Xb (産出量)
図解(2):ピグー税
96
 費用と便益
(ABCD) -
(BCD) =
(ABD)
MCb+MDa
社会的均衡
A
B
ピグー税
C
私的均衡
MCb
D
MBb
Xb**
Xb*
:(税収)=>消費者へ返還される。
MDa
Xb (産出量)
図解(3):補助金政策
97
 費用と便益:
(BEDC) -
(BCD)=
(BED)
(企業Bの損失)
(補助金)
(BED)+
(BAE) =
(ABD)
MCb+MDa
社会的均衡
B
C
私的均衡
A
E
MCb
D
MBb
Xb**
Xb*
MDa
Xb (産出量)
*政策:政府がB企業に対して、Xb*の水準から生産量を減少させるならば、Xb**
の産出水準で測られたA企業へMDa に等しい補助金を支払う。
図解(4):交渉(企業A=漁業権)
98
 費用と便益
(ABCD) -
(企業Aの便益増分)
(BCD)=
(ABD)
(企業Bの損失分)
MCb+MDa
社会的均衡
B
C
A
弁償額
MCb
D
MBb
Xb**
Xb*
*B企業は、A企業に与える損害MDa に等しい額を弁償する。
MDa
Xb (産出量)
図解(5):交渉(企業B=所有権)
99
 費用と便益
(ABCD) -
(企業Aの便益増分)
(BCD)=
(ABD)
(企業Bの損失分)
MCb+MDa
社会的均衡
B
C
A
最大弁償額
MCb
D
MBb
最小弁償額
Xb**
Xb*
*A企業は、生産削減によりB企業に与える損失 を弁償する。
MDa
Xb (産出量)
コースの定理
100
 コースの定理:加害者、被害者のどちらに所有権が付与
されている場合でも、自発的な交渉により、社会的に最
適な状態を達成しうる。
 問題点
1)取引費用=ゼロ:相手を交渉に持ち込み、取引をまとめ
るための費用(訴訟費用)。
2)所得配分効果を無視:初期の所有権の置かれ方に依存
する。