Aki & Richard Chapter10.1.1

Aki & Richards
Chapter 10.1.1-10.1.5
The Seismic Source: Kinematics
井出研 修士2年 田村 慎太朗
10.1.2 10章では何を考えるか
地震の震源域で実際に起こる物理過程とは何か?
応力依存する物質の性質の理解が必要
• 応力の解放をともなう破壊核形成や破壊伝播
• ダイナミックの問題
観測波形から震源の運動学へ
• 表現定理を足がかりに震源について調べる
• ある震源を仮定した時の遠地変位波形の特徴とは?
• 問題を簡単にするためにいくつかの制限や近似をする
4章で点震源の遠地変位波形の式が得られている(式(4.84)~(4.86))
A    γ
という場合に相当する
10章ではより一般的な場合を考える
• 波長が断層サイズと同程度かそれ以下となるケース
• 有限の大きさをもつ震源に関するパラメータとは?
11章で扱う
10.1.0 表現定理
震源での変位 u (ξ, ) と観測点での変位 u (x, t ) の関係を表したもの
ui (x, t ) 

 

d

[u j (ξ, )]c jkpqGip,q (x, t; ξ, ) k d(ξ)
u (x, t )
Gip (x, t; ξ, )
u (ξ, )
10.1.1 遠地変位波形;均質・等方・無限媒質
震源で生じた波が受ける経路(Path)の影響を最小限にするために
均質・等方・無限媒質で考える
観測点が十分遠方にあり断層サイズより十分大きい場合、
グリーン関数の遠地項が重要になる
(10.1)式の多雨に関する積分を実行して


u i ( x, t )  
4 2 xq
1


4 2 xq
1
 i p  
r 
c jkpq
u j  ξ, t   k d

r  
 


 c

 i p   ip  
jkpq
r
(10.3)
r 
u j  ξ, t    k d

 
10.1.1 遠地変位波形;均質・等方・無限媒質
10.3式に対して次のようにすると
10.3式で微分

xq
を実行
観測点は十分に遠いと仮定
断層

は平面であり
すべりの向きは

上で一様
r
  q , r 1 より小さい項を無視
xq
rこれらは面積に対してほぼ定数
, i 
[u j (ξ, t )]  n j  u(ξ, t )
P波
i
r 
 
ui (x, t ) 
 c jkpq p q k n j 
u ξ, t   d
3

 
4 r0


(10.6)
S波  ip   i p
r 
 

 c jkpq q k n j 
u ξ, t   d
3

 
4 r0


far-field of


10.1.1 遠地変位波形;均質・等方・無限媒質
i
r 
 
ui (x, t ) 

c



n


u
ξ
,
t


 d
jkpq p q k j
3

 
4 r0


(10.6)
 ip   i p
r 
 

 c jkpq q k n j 
u ξ, t   d
3

 
4 r0


far-field of


 i  i  1 ,
P波の振幅は記号と記号に比例して減少
P波・S波の放射パターンを表す
P波・S波の変位波形の形
それぞれの部分に●〒をかけると
より
r0 i
 i  ( ip   i p )   p   p  0
1
3
変位波形は簡単な積分の式によって表わされる
S波の振幅は記号と直行
r0 
P波
 or  n j) 、断層から見た観測点の向き などに
c
これは波の伝播速度(
断層面の向き
γ  、変位の方向
p
P波は記号と平行
1
よって決まる
3
k
S波の振幅はP波の約5倍大きい
γ (x, t )  u ξ, t  x  ξ d( ) (10.7)
S波は記号と直交
S波
 
γ
γ γ
関金と勲県を今絶と直交する単位ベクトルとすればそれぞれの方向の成分は
c 
c jkpq p q k n j
c jkpq p q k n j
10.1.2 遠地変位波形;不均質媒質の場合
点震で積分する代わりに、各面要素
d
d を点震源とみなして
重ね合わせることによっても (10.4)式を得られる
例:P波の場合

(4.84)式であれらの代わりにこれら
u d を用いて
u A
x  ξ 
 k k d( )
ui (x, t ) 
2
u j  ξ, t 
3 
4 
r  
 
(10.8)
far-field P-wave of
1
 i j  
積分の面要素 d を点震源とみなす方法では簡単に不均質への拡張ができる
P波なら(4.93)式から
far-field P-wave of
F P  ( 0 ) l
P

u(x, t ) 

u
(

,
t

T
(x,  ))d

2 P

4  ( 0 )  (x) ( 0 ) (x)  R (x,  0 )
(10.9)
10.1.3 遠地変位波形の一般的な性質
均質・等方・無限媒質で議論する
断層上にリファレンスとなる点をもうけ、その点を原点とする
P●
積分の面要素
d
x
r0
r
と観測点 x との距離 r は
r  x  ξ  r0 1 
ξ
2
r02

γ
●

O
ξ
d
2(ξ  γ )
r0
2
2 2






ξ
ξ
1
2
(
ξ

γ
)
1


 r0 1   2 
   2  
2  r0
r0  8  r0  



2
1 ξ
(ξ  γ ) 2
 r0  (ξ  γ ) 


2 r0
2r0
10.1.3 遠地変位波形の一般的な性質
断層サイズより
r0
が大きい場合、(10.10)式を次のように近似する
r ~ r0  (ξ  γ)
近似による誤差:r

(10.11)
1
2
[ ξ  (ξ  γ ) 2 ]
2r0
この違いが1/4波長よりも大きいと積分の結果に重大な誤差を生む
r
よって(10.11)式のような近似をするためには
r0
1

2
2
2
[ ξ  (ξ  γ ) ]  または、 L 
(10.12)
2
2r0
4
4章では断層を点震源とみなしており、その条件は L 
(10.12)式よりずっと制限がきつい
 だが
(10.12)式の条件下で変位波形の式を書き直すと(10.7)式は
r0  (ξ  γ ) 

(x, t )  ( γ, t )   u ξ, t 
d

c


(10.12)
10.1.3 遠地変位波形の一般的な性質
周波数領域での性質を調べるために(10.13)式にフーリエ変換をする
 i[r0  (ξ  γ )]
(x,  )  ( γ,  )   u (ξ,  ) exp
 d

c


 ir0 
  i (ξ  γ ) 
 exp
   u (ξ,  ) exp
 d
c


 c 
位相補正
(10.14)
二重フーリエ変換
とくに二重フーリエ変換の部分は波数ベクトルを用いて
 u(ξ,  ) exp  i(ξ  k )d

k
u (ξ, 
)
全てのあれに対してこれが既知なら
これを求められるが、
/c
遠地の観測で分かるのは  γ これの射影のみで
k //  , k   / c
従って位相速度  / k が媒質の速度
c よりも大きい波しか遠地では観測できない
u (ξ,  ) を知るには近地の観測も必要
10.1.4 低周波での地震波スペクトルの振る舞い
周波数  が0に近づくと、遠地変位波形のフーリエ変換は定数に収束する
u (ξ,  )   u (ξ, t ) exp( it ) dt
u (ξ,   0)   u (ξ, t ) dt  u (ξ, t  )
(x,   0)   u (ξ,   0) d

  u (ξ, t  ) d (10.16)


これが0の極限では、最終すべり量の積分となり
γ
には依存しない
遠地変位波形のスペクトルは低周波数で地震モーメントに比例した定数値になる
これは最終すべり量が同じならば同じ結果になり、すべり過程の詳細にはよらない
10.5章で扱う
10.1.4 低周波での地震波スペクトルの振る舞い
さらなる仮定として、断層すべりの速度  u は絶対に向きを変えないとすると
(x, t ) の符号は全ての時間で同じ
この場合、フーリエ変換三三三三三は
(x,  )   0 でフラットなだけでなく最大値となる
さらに震源スペクトルすべり過程の詳細によらず、overshootを持たなくなる
ことが多くの研究者によって指摘されている
断層の面積  がごくごく小さく、すべりu (ξ, t ) が時間についてステップ関数
だと仮定すると
(10.13)式より遠地変位波形はデルタ関数になりスペクトルもフラットになる
スペクトルがフラットの低周波では
ステップ関数のスリップをともなう点震源と等価
この考えは、比較的小さな地震からLove波とRayleigh波の位相速度を決定する
single-station methodに拡張されている
10.1.5 一方向に伝播する断層モデル
前述のとおり、遠地変位波形の観測だけでは震源関数 u (ξ, t ) を決定できない
最小限の震源パラメータを設定するのが有効
①断層の表現
断層を長さ L 、幅 W1の長方形で記述する
破壊は断層の片側から長さ L にわたって速度 v で広がる
座標系は次のようにする
2
W
v
破壊すべりは次式で与える
u(ξ, t )  f (t  1 / v)
0
1
L
if 0  1  L and 0  2  W
(10.17)
if 1  0 or 1  L, or 2  0 or 2  W
10.1.5 一方向に伝播する断層モデル
(10.17)式を(10.13)式に代入すると
W
(x, t )  
0

L
0
f  t  r0  1  1 1   2 2  d d
1
2
c
 c v

(10.18)
断層の幅 W が十分小さいと仮定し、

これを観測点の方向と破壊が広がる方向との間の角度とすると
 r
 1 cos 
(x, t )  W  f t  0  1  
d1


0
c 
v
 c
L
f (t  rこれ
0 / c)
(10.19)
はごく小さい断層から出る遠地変位波形だと予期できる
破壊が有限の断層で起きることによるsmoothing effectが波形にでる
10.1.5 一方向に伝播する断層モデル
フーリエ変換をしてその影響を調べると

 1 cos 
(x, t )  iWf ( )e
0 expi1 v  c  d1
  r0 
sin X

  f ( )WL
expi
  X 
X
2

 c
ir0 / c
ここで
L
X  (L / 2)[1 / v  (cos) / c]
断層が有限の大きさをもつことによる影響は
sin X
この部分に出ている
X
X   ,2 , ごとに節(node)が生じる
図10.4では 2 /   L[1 / v  (cos) これにあてはめて
/ c]
これにより
断層パラメータを求めている
sin X
高周波領域では Xこれは部分に比例して減少する
 1
このsmoothingは角度  によって強さが変わる
   より   0このときの方が高周波を観測しやすい
(10.20)
10.1.5 一方向に伝播する断層モデル
②すべり関数
すべり関数を次のように定義する
t0
f (t )  0
 Dt / T 0  t  T
T t
D
fこれのフーリエ変換をとって(10.20)式に代入すると
(t )
sin X 1  eiT
(x,  )  WLD
X
T
(10.21)
(10.22)
有限の大きさの断層をすべる効果に加え、すべりきるまでの時間が有限になった
ことによる効果が加わっている
1
高周波領域ではどちらも  に比例して減少する
高周波領域では  2 に比例して減少
以上、ハスケルモデルにおける
パラメータをまとめると
L,W , v, D, T
10.1.5 一方向に伝播する断層モデル
断層の大きさとすべり量を決めてしまえば、
似たようなgeometryのクラック問題と比較することでストレスドロップを
だいたいみつもることができる
多くの地震でストレスドロップはその地震のマグニチュードによらず
1 ~ 10 [MPa] の範囲にある
すべり速度 D / T が 0.1 ~ 1 [m / s] 程度
Abe(1975)によれば
  ( D / T )
という関係がある
簡単なスケーリングの関係としては
すべり速度を一定 & 断層の幅・ライズタイム・最終すべり量も断層の長さに比例
v  const.
すると
  const.
W ,T , D  L
M 0  L3
これが多くの地震で成立するという観測もある一方、ある大きさの地震までは
ストレスドロップはイベントのモーメントが大きくなるにつれ増加し、
それより大きい地震からは定数になる、という報告もある(Shi et al.,1998)