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暫定版
修正・加筆の可能性あり
(付録)
「準備:非線形光学効果(1)」
1.
2.
3.
4.
5.
分極振動
共鳴状態:位置依存
光減衰・光増幅
線形・非線形ばね振動
比較:線形・非線形電気感受率
付録430のアプローチ
1.
2.
3.
4.
5.
6.
分極振動とは振動電場に誘われて伸縮する電気双極子の集団運動
電気双極子を「ブランコ」に例えて、増幅・減衰される光波と分極振動との関係について記述する。
増幅・減衰を光波と電気双極子間のエネルギーの移動(やりとり)で表現するために電子振動子模型を採用する。
非線形電気感受率について「不完全なばね」による電子振動子模型で説明する。
非線形ばね振動で求めた非線形電気感受率の問題点を挙げる。
注意:赤色は実数、青色は複素数、角周波数を単に周波数と記述します。
430-1
付録:401
但し、記号(ω、ν)で修正
ω:共鳴周波数、ν:光波周波数
復習:電子振動子模型(1)
電子振動子模型とは
1. 電子が「仮想的なばね」に繋がれている状態
2. 振動電場Eで「強制振動」
振動解
入射光波:振動電場E
x ( t ) = − X (ν ) exp iν t
→ − X (ν ) cos (ν t −ψ )
振動
x方向
Ex ( t ) = A exp iν t
運動方程式:電子位置変位
 X (ν ) =
素電荷
共鳴周波数
振動電場E
共鳴周波数:あくまで電子が「仮想的なばね」に繋がれている
モデルにおいて、ばねの振動周波数のこと。共鳴周波数付近で
電子位置変位が最大になる。(共鳴条件)
減衰定数:振動に対するブレーキ(不可逆過程)。電子振動子
模型では双極子放射により失われる力学的エネルギーに対応。
励起電子が長寿命であれば減衰定数は小さい。
実数表示
(e m) A
ω 2 −ν 2 + iνγ
νγ
 tanψ (ν ) = 2
ω −ν 2
d 2x
dx
e
2
+
γ
+
ω
=
−
x
A exp iν t
dt 2
dt
m
減衰定数
複素数表示
なんとなく言えること:
1.
2.
ν ω
ν ω
1 ω
位相遅れ
ならば
のとき追従する(位相遅れ零)
のとき追従しない(位相遅れ
430-2
π
)
若干修正:401
復習:電子振動子模型(2)
入射光波:振動電場E
分極振動:ブランコ
伸縮する電気双極子
原子核(赤):電子(青)
原子核は不動
Ex ( t ) = A cosν t
振動解:最大
ν = ω →ψ =
入射光波:振動電場E
π
Ex ( t ) = cosν t
x ( t ) = − sinν t
2
π

− X (ν ) cos ν t − 
x (t ) =
2

∝ − A sinν t
共鳴条件:振幅最大
• 光波周波数と共鳴周波数を一致させる。
• 電子位置が零(電気双極子の長さ零)のとき電場Eを与える
ことで電子を加速させる。
• 振動電場Eと電子位置変位xは「cos」と「sin」の関係に
ある。(符号に注意)
• ブランコを勢いよくこぎたいのであれば、「いつ、どこで、
どちらの方向に」力を与えればよいのか?
• 電子振動子模型とブランコの類似性に注目して欲しい。
緑矢印
電場E
青矢印
電子が受ける力
430-3
分極振動:共鳴(1)
基本波:複素数表示
基本波:実数表示
Ex ( t ) = A exp iν t
Ex ( t ) = A cosν t
振動解:光減衰
振動解:光減衰
ω =ν
x ( t ) 
→ i X (ν ) exp iν t
ω =ν
→ − X (ν ) sinν t
x ( t ) 
π

∝ iA exp iν t = A exp i ν t + 
2

π

∝ − A sin
=
ν t cos ν t + 
2

振動解:光増幅
振動解:光増幅
ω =ν
x ( t ) 
→ −i X (ν ) exp iν t
ω =ν
x ( t ) 
→ X (ν ) sinν t
π

∝ −i=
A exp iν t A exp i ν t − 
2

π

∝ A sinν t =cos ν t − 
2

注意:基本波の振幅が実数のとき、光減衰・光
増幅とも振幅が純虚数「±i」になる。
等価
注意:光減衰・光増幅の場合、基本波と分極振
動解は±90°の位相差を持つ。
430-4
注意:入射光波を「基本波」と記述
分極振動:共鳴(2)
光減衰:
• ブランコの勢い増加
• 光波のエネルギーが電気双
極子側に移動
• 子供が乗っているブランコ
を親が押すようなもの
光増幅:
• ブランコの勢い減少
• 電気双極子から光波側にエ
ネルギーが移動
• 子供が乗っているブランコ
を親が止めるようなもの
基本波:振動電場E
基本波:振動電場E
Ex ( t ) = cosν t
緑矢印
電場E
x ( t ) = − sinν t
青矢印
電子が受ける力
Ex ( t ) = cosν t
緑矢印
電場E
x ( t ) = sinν t
青矢印
電子が受ける力
430-5
分極振動:共鳴(3)
光減衰:
• ブランコの勢い増加
• 光波のエネルギーが電気双
極子側に移動
• 子供が乗っているブランコ
を親が押すようなもの
光増幅:
• ブランコの勢い減少
• 電気双極子から光波側にエ
ネルギーが移動
• 子供が乗っているブランコ
を親が止めるようなもの
基本波:振動電場E
基本波:振動電場E
Ex ( t ) = cosν t
Ex ( t ) = cosν t
x ( t ) = sinν t
電子振動子模型
d 2x
dx
e
2
+
γ
+
ω
x
=
−
A exp iν t
2
dt
dt
m
減衰定数
共鳴周波数
振動電場E
残念ながら…
• 電子振動子模型では光増幅を記述することはできません。
• 但し、光増幅を「子供が乗っているブランコを親が止めるよう
なイメージ」で捉えるのは妥当
• エネルギーは電気双極子側から光波側からに移動(光増幅)
• 継続的にブランコを揺らすためには自然放出や非発光過程、光
増幅(誘導放出)により電気双極子側から光波側に移動したエ
ネルギーを補填する必要があります。
共鳴状態の電子振動子模型では
• 減衰定数はブランコ回転軸の摩擦力に相当する分極振動に対するブレーキ
• 継続的にブランコを揺らすため、エネルギーが光波側から電気双極子側に移動(光減衰)
• 共鳴状態なので基本波周波数と共鳴周波数は一致するから、光吸収による電子励起、緩和による自然放出
や非発光過程(熱放出等)によるエネルギー散逸が分極振動のブレーキとなる。
• 光波が減衰するから媒質は不透明(損失)
430-6
分極振動:非共鳴
基本波:複素数表示
共鳴:光減衰
ω =ν
→ ∝ iA exp iν t
x ( t ) 
ω =ν
→ ∝ − A sinν t
x ( t ) 
Ex ( t ) = A exp iν t
共鳴:光増幅
Ex ( t ) = A cosν t
ω =ν
→ ∝ −iA exp iν t
x ( t ) 
ω =ν
→ A sinν t
x ( t ) 
電子振動子模型:振動解
x ( t ) = − X (ν ) exp iν t
→ − X (ν ) cos (ν t −ψ )
非共鳴:光減衰でも光増幅でもないから透明
複素数表示
ω −ν iνγ
x ( t ) 
→ ∝ ± A exp iν t
γ =0
2
実数表示
ω −ν iνγ
x ( t ) 
→ ∝ ± A cosν t
γ =0
2
 X (ν ) =
(e m) A
ω 2 −ν 2 + iνγ
νγ
 tanψ (ν ) = 2
ω −ν 2
2
位相遅れ
2
注意:減衰定数γを零扱い。非共鳴の場合、光吸収による
電子励起は頻度が極端に減少、緩和による自然放出や非発
光過程(熱放出等)によるエネルギー散逸も微小とするこ
とができる。
430-7
共鳴状態:位置依存(1)
物質をモデル化
• 原子核(赤)、電子(青)
• 原子核は不動
• 電子は常に原子核に束縛されるが、外部電場印加に
よる微小変位は可
基本無:分極無
簡単のため
• 水素原子モデルを採用して、原子を原子核と一個の
電子で表現する。
• 基本波が無なれば電子は原子核を中心に等方的に分
布するから分極(正負電荷の偏り)無。
z軸
お約束:電子振動子模型
• 物質を構成する各原子を「仮想的なばね」に繋がれている電子でモデル化
• ばねどうしはお互いに独立、干渉しない。
簡単のため
• 一列のみ扱い、整列方向をz軸方向とする。
• 振動電場Eの向きをx方向として電子位置変位をx方向に限定する。
• 基本波が無くなれば、電子は原子核の位置で静止
Ex ( t ) = A cosν t
基本無:静止状態
×
基本波:振動電場E
振動:x方向
z軸
430-8
共鳴状態:位置依存(2)
質問:「仮想的なばね」に繋がれて
いる電子が密に整列している状態に
対して光波を入射するとどうなる?
?
基本波:振動電場E
振動:x方向
z軸
ν
 z
−

=
Ex =
A
ν
t
Kz
K
, t ) A ( z ) cosν  t − =
cos
,
(
)
( t ) A cosν t → Ex ( z=

c
 c
振動解:光減衰
位置依存性:z方向
位置依存性省略:正実数(赤)
 z
ω =ν
→ − X (ν ) sinν t → x ( z , t ) ∝ − A sinν  t − = − A sin (ν t − Kz )
x ( t ) 
 c
振動解:光増幅
 z
ω =ν
→ X (ν ) sinν t → x ( z , t ) ∝ A sin=
x ( t ) 
ν  t −  A sin (ν t − Kz )
 c
430-9
共鳴状態:位置依存(3)
光減衰の場合:「仮想的なばね」に繋がれている電子でモデル化
時刻:t=0
z軸
Ex ( z , t )
= A cos (ν t − Kz )
波の進行方向
t =0
A cos Kz
→
分極振動:振動電場Eに誘われて伸縮する電気双極子の集団運動
• 電気双極子:原子核(赤)、電子(青)
• 本当はもっと密に電気双極子が存在します。
x ( z , t ) ∝ − A sin (ν t − Kz )
t =0
→
A sin Kz
波の進行方向
z軸
430-10
共鳴状態:位置依存(4)
ストロボ撮影:振動電場Eに誘われて伸縮する電気双極子の集団運動
基本波:振動電場E
x ( z , t ) ∝ − A sin (ν t − Kz )
波の進行方向
t =0
z軸
t = t1
Ex ( z , t )
= A cos (ν t − Kz )
t = t2
t = t3
注意:各位置で電気双極子が伸縮運動をしている。(分極振動)
430-11
光減衰
光減衰:矢印の位置で
• 電子が受ける力の向きと電子双極子の伸長方向が一致
するため分極振動が活性化
• ブランコの勢い増加
• 光波のエネルギーが電気双極子側に移動
光減衰:矢印の位置で
• 青矢印:電子が受ける力
• 緑矢印:電場E
• 赤矢印:電気双極子が伸びる方向
時刻:t=0
電子位置変位x
波の進行方向
x ( z ,=
t 0 ) ∝ sin Kz
時刻:t=Δt
x ( z , t = ∆t ) ∝ − sin (ν∆t − Kz )
時刻:t=0
x ( z ,=
t 0 ) ∝ sin Kz
基本波:振動電場E
時刻:t=0
Ex ( z ,=
t 0 ) ∝ cos Kz
430-12
光増幅
光増幅:矢印の位置で
• 電子が受ける力の向きと電子双極子の伸長方向が逆転
するため分極振動が不活性化
• ブランコの勢い減少
• 電気双極子から光波側にエネルギーが移動
光増幅:矢印の位置で
• 青矢印:電子が受ける力
• 緑矢印:電場E
• 赤矢印:電気双極子が伸びる方向
時刻:t=0
電子位置変位x
波の進行方向
x ( z , t= 0 ) ∝ − sin Kz
時刻:t=Δt
x ( z , t =∆t ) ∝ sin (ν∆t − Kz )
x ( z , t= 0 ) ∝ − sin Kz
基本波:振動電場E
Ex ( z ,=
t 0 ) ∝ cos Kz
430-13
整理:共鳴・非共鳴
共鳴:基本波と分極振動間でエネルギーの移動がある。
x ( z , t ) ∝ sin (ν t − Kz )
Ex ( z , t ) =
− A ( z ) cos (ν t − Kz )
光減衰
=
Ex ( z , t ) A ( z ) cos (ν t − Kz )
非共鳴:媒質透明、エネルギーの移動なし。
光増幅
x ( z , t ) ∝ ± cos (ν t − Kz )
Ex ( z , t ) =
± A ( z ) cos (ν t − Kz )
透明媒質
共鳴の場合:光増幅では電気双極子のエネルギーが光波側に移動、光減衰では光波のエネルギーが電気双極子側に移動する。
非共鳴の場合:光減衰でも光増幅でもないから媒質透明である。エネルギーの移動もなし。
• ばねが理想的であれば分極振動は基本波周波数のみ。(線形ばね振動)
• ばねが不完全であれば基本波周波数以外の振動成分を含むかもしれない。(非線形ばね振動)
• ばね振動の非線形性により、基本波周波数以外の振動成分を持つ分極が誘起され、新しい光波「高調波」が発生する。
• 不完全なばねによる非線形ばね振動:基本波周波数と異なる新しい光波(高調波)発生の可能性
• 次頁以降で不完全なばねについて検討しましょう!
430-14
線形ばね振動(1)
強制力が働く調和振動子:理想的なばねの場合
d 2x
dx
e
2
x
Ex ( t ) ,
γ
ω
+
+
=
−
dt 2
dt
m
基本波:振動電場E
A exp iν t
 Ex ( t ) =
イメージ:調和振動子
ポテンシャルエネルギー
線形性:フックの法則
V ( x) =
k
F=
−kx ← ω 2 =
m
1 2
kx
2
ポテンシャルエネルギー:弾性力による位置エネルギー
F = −∇V
→ V=
1 2
kx
2
電気双極子
原子核(赤)
電子(青)
壁
分極振動
線形振動:理想的なばねによる振動
•
•
•
•
分極振動は振動電場E(強制力)に誘われて伸縮する電気双極子の
集団振動(付録:411)
伸縮する電気双極子を強制力が働く調和振動子でモデル化する。
調和振動子とはポテンシャルエネルギーの大きさが距離の自乗に比
例する振動運動
注意:原子核(赤)の位置は「ばね」を壁の位置と異なる。
理想的な
ばね
430-15
線形ばね振動(2)
理想的なばねの場合
イメージ:調和振動子
V ( x) =
1 2
kx
2
不完全なばねの場合
イメージ:ポテンシャルエネルギーに歪み
自乗のみ:細線
電気双極子
原子核(赤)
電子(青)
分極振動
三乗成分追加:太線
再確認:理想的なばねの場合
• 分極振動は強制力である振動電場Eの周波数と一致
• 双極子放射光も振動電場Eの周波数と一致
V ( x) =
1 2 1 3 1 4
kx + ax + bx + ...
2
3
4
これからやりたいこと:不完全なばねの場合(但し、不完全性は非常に小さい:
ka
)
• 歪み:距離の三乗に比例するポテンシャルエネルギーを追加(簡単のため四乗以上は無視)。
• 分極振動に基本波周波数以外のものも含まれるかもしれない?
• 基本波周波数と異なる新しい光波(高調波)が発生するかもしれない。
430-16
非線形ばね振動(1)
ポテンシャルエネルギー:三乗成分追加
F = −∇V
x軸
電子(青)
1
1
→ V ( x ) = kx 2 + ax3
2
3
簡単のため:ばねの振動方向はx軸に限定
F=
k ax
−kx − ax 2 , k  a → F =
−k ' x, k ' =+
非線形振動:強制力が働く電子振動の運動方程式
d 2x
dx
e
2
2
x
a
x
Ex ( t ) ,
+
γ
+
ω
+
=
−
2
dt
dt
m
青色:複素数、赤色:実数
x
*:複素共役
ばね定数:伸縮具合に依存(定数ではない)
A cosν t
 Ex ( t ) =
赤字:実数
ν:基本波周波数
Ex ( t ) + Ex* ( t ) Aeiν t + Ae − iν t
x + x*
iν t
=
 Ex ( t ) =
, Ex ( t ) Ae =
,
2
2
2
430-17
非線形ばね振動(2)
基本波分極振動(添字:1)
x1 + x1*
ν 1 v=
, ax  0, x1
2
d 2 x1
dx1
e
e
2
+
+
=
−
=
−
γ
ω
ν
x
A
E1 ( t )
t
cos
1
1
1
2
dt
dt
m
m
dx1
d 2 x1
e
e
2
+
+
=
−
=
−
γ
ω
ν
x
E1 ( t )
t
i
A
exp
1
1
1
2
dt
dt
m
m
e m)
(
− 2
x1 ( t ) =
E ( t ) ,  E1 ( t ) =
A exp iν 1t
ω −ν 12 + iν 1γ 1 1
2
二倍波分極振動(添字:2)
非線形分極振動から二倍波振動成分のみ抽出
d 2 x2
dx2
2
2
+
γ
+
ω
=
−
x
a
x
2
1
2
dt 2
dt
2
 x1 + x1* 
1 2
1 2 ν 2 =2v
* 2
*
2
=
+
+
→
→ E12 ( t ) ∝ exp iν 2t
2
x1 ( t )  =
x
x
x
x
x1 
(
)
1
1
1
1


4 
4
 2 
430-18
非線形ばね振動(3)
整理:分極振動
− ( e m ) E1 ( t )
d 2 x1
dx1
e
2

+
+
=
−
=
γ
ω
x
E
x
t
t
,
)
(
)
(
1
1
1
1
ω 2 −ν 12 + iν 1γ 1
dt 2
dt
m
− ( a 2 ) x12 ( t )
d 2 x2
dx2
a 2
2
+γ2
+ ω x2 =
− x1 ( t ) ,  x2 ( t ) =
ω 2 −ν 22 + iν 2γ 2
dt 2
dt
2
(e m) E t ,  E t =
− 2
A exp iν 1t
x1 ( t ) =
1( )
1( )
2
ω −ν 1 + iν 1γ 1

 2
a 2 ) x12 ( t )
a 2)
e m)
(
(
(
− 2
=
− 2
x2 ( t ) =

 E (t )
ω −ν 22 + iν 2γ 2
ω −ν 22 + iν 2γ 2  ω 2 −ν 12 + iν 1γ 1  1
2
( a 2)

( e m )  A2 exp iν t
= − 2


2
ω −ν 22 + iν 2γ 2  ω 2 −ν 12 + iν 1γ 1 
2
非線形振動:不完全なばねによる振動
• 基本波周波数の二倍で振動する分極振動が発生
• 二倍分極振動成分は基本波の自乗に比例
430-19
比較:線形電気感受率(1)
基本波の誘電分極:線形分極振動
• 右辺負符号:電子位置変位
x1 ( z , t )
使用のため
• N:単位体積に存在する電気双極子数
Pν 1 ( z , t ) =
− Nex1 ( z , t ) ∝ exp iν 1t
( Ne m )
2
=
ω −ν + iν 1γ
2
2
1
Eν 1 ( z , t )
基本波線形電気感受率:添字(1)
下線部:対応関係
線形性:振動電場Eに比例
虚数部の符号に注意(+νのため)
 χ r(1) (ν 1 ) − i χ i(1) (ν 1 )  Eν 1 ( z , t )
=
=
Pν 1 ( z , t ) ε 0 χ (1) (ν 1 ) E
ν 1 ( z, t )
ω 2 −ν 12
ν 1γ
Ne 2
Ne 2
(1)
(1)
χ r (ν 1 ) =
,
χ
ν
(
)
i
1
ε 0 m (ω 2 −ν 2 )2 + (ν γ )2
ε 0 m (ω 2 −ν 2 )2 + (ν γ )2
1
1
1
1
大雑把にいえば
• 線形電気感受率は「ばね振動の線形性に基づく電子の運動方程式」の解に相当する。
• クラマース・クローニヒの分散公式(因果律)を完全に満足する。(付録:412)
• 非共鳴状態では線形電気感受率の「虚部」は零になり、実数(透明媒質、屈折率)
430-20
比較:線形電気感受率(2)
非共鳴の場合:虚部は零
虚数部の符号に注意(+νのため):非共鳴の場合、注意不要かもしれませんが
(1)
χ=
(ν 1 ) χ r(1) (ν 1 ) − i χi(1) (ν 1 )
χ
(1)
r
(ν 1 )
近似:非共鳴であるがやや共鳴的な場合
 Ne 2   1  1

→ −


m
2
ε
ω

ν1 − ω
 0 
Ne 2
1
ε 0 m ω 2 −ν 12
半古典論の場合:付録415
ω ν1
虚数部の符号に注意(-νのため)
(1)
χ=
(ν 1 ) χ r(1) (ν 1 ) + i χi(1) (ν 1 )
χ r(1) (ν 1 )= −
℘ N
2
近似:非共鳴の場合(飽和効果無視)
γ ab (ν 1 − ω )
ε 0 γ ab γ ab2 (1 + I ) + (ν 1 − ω )
2
γ ab = 0

→
 ℘2 N  1

−
 ε 0 ν1 − ω


飽和効果
あまり深入りしませんが…
• 半古典論(付録:415)で導出する線形電気感受率に対して線形ばね振動では飽和効果を説明できない。
• 但し、ばね振動による線形電気感受率はクラマース・クローニヒの分散公式(因果律)を完全に満足する。
• 半古典論の結果は線形ばね振動の近似「非共鳴であるがやや共鳴的な場合」に相当、分散公式を満足しない。
• 近似「非共鳴であるがやや共鳴的な場合」において光周波数依存(緑色)は両者で完全に一致する。
• 半古典論と電子振動子模型、一長一短である。
430-21
比較:非線形電気感受率(1)
第二高調波の誘電分極:二倍波分極振動
下線部:対応関係
Pν 2 ( z , t ) =
− Nex2 ( z , t ) ∝ exp iν 2t
=
Ne ( a 2 )

( e m )  E 2 z, t
 2
 ν1 ( )
2
2
2
ω −ν 2 + iν 2γ  ω −ν 1 + iν 1γ 
2
二倍波非線形電気感受率:添字(2)

Ne ε 0 )( a 2 ) 
e m)
(
(
(2)
χ (ν 2 :ν 1 ,ν 1 ) = 2 2


ω −ν 2 + iν 2γ  ω 2 −ν 12 + iν 1γ 
2
Pν 2 ( z , t ) ε 0 χ (2) (ν 2 :ν 1 ,ν 1 ) Eν 1 ( z , t ) Eν 1 ( z , t ) ∝ exp iν 2t
添字:ややこしい対応関係
非線形性:振動電場Eの自乗に比例
430-22
比較:非線形電気感受率(2)
非共鳴の場合:虚部は零
虚数部の符号に注意(+νのため):非共鳴の場合、注意不要かもしれませんが
(2 )
χ=
(ν 2 :ν 1 ,ν 1 ) χ r(2) (ν 2 :ν 1 ,ν 1 ) − i χi(2) (ν 2 :ν 1 ,ν 1 )
3
3
 1 
( Ne ε 0 )( a 2 )  ( e m )  
1
1
a
Ne


ω ν1
→


ω 2 −ν 22  ω 2 −ν 12  ω ν 2 2 ε 0 m 2  2ω   ω −ν 1  ω −ν 2
2
χ r(2) (ν 1 )
半古典論の場合:非共鳴の場合
χ
(2)
(ν 2 :ν 1 ,ν 1 )
2
近似:非共鳴であるがやや共鳴的な場合
N
2 2
0


− ρvv0
ρ nn0 − ρvv0
ρ mm
+

μ vmμ mnμ nv
∑
−
−
−
−
ν
ω
ν
ω
ν
ω
ν
ω
( 1 mv )( 2 mn ) 
n , m ,v 
vn )( 2
mn )
( 1
仮想励起準位νに対して総和
三階のテンソル積:電気双極子モーメント演算子の行列要素
あまり深入りしませんが…
• 残念ながら、ばね振動で求めた非線形電気感受率は半古典論の結果と大きく異なる。係数aは定数でよいのか疑問。
• 非線形電気感受率は半古典論で導出するとき密度行列の二次摂動を利用する。
• 興味があれば、末松、伊賀、長嶋(共訳)「量子エレクトロニクス」p.302、丸善を参照して欲しい。
• 半古典論による非線形電気感受率の導出では仮想励起という概念が登場するが、半古典論でも線形電気感受率の導出に仮想励起は
不要である。仮想励起の有無がポイントかもしれない。
• 但し、線形・非線形電気感受率の定性的な説明であれば「ばね振動」で十分対応できると思う。
430-23