経営情報学概論

経営組織論
広島大学大学院工学研究院
特任教授 伊藤孝夫
第4章 権限と組織の構造
前回の復習
• 経営活動
技術、商業、財務、会計、保全、管理
• 管理の原則
分業、権限、規律、命令の統一、指揮の統一
階層組織、秩序など
• 集権と分権の決定要因
組織の規模、仕事の内容、地理状況、リーダーのタイプ
権限法定説(Formal theory)
•委譲の論理によって説明され
る
•貨幣の最大所有者としての雇
用者に最高権限を認め、順次、
上位者から委譲される権限
権限委譲論
•組織構造の拡大・成長の過程を、
とくに「責任の委譲」(delegation
of responsibility)という把握の仕
方
権限委譲における権限と責任
権限職能説(Functional theory)
•権限は職能に付随するもの
•職能:職務を遂行する能力
•委譲説と対立
権限受容説(Acceptance theory)
権限は次の4条件が満たされる場合
のみ成立する。
•受容すべき人に理解される。
•共通目的に矛盾しない。
•受容者の個人的利害と対立しない。
•受容者に対して精神的・肉体的苦痛
を与えない。
権限受容説(Acceptance theory)
権限受容説は常に組織の混乱をもたらす
危険性を内包しているが、実際の組織は
混乱しない理由
•命令者側は1)常に受け入れやすい命令
を出す、2)受け入れにくい命令を出す場合、
命令を受け入れるように、罰職や報酬等
の措置をとる
•被命令者側は命令を受け入れようとする
傾向を持つ
権限起因説
(Derivation theory of authority)
•権限は下位者によって上位者に委託され
たものであり、あるいは上位者の権限は
下位者によって認められたものであると
いってもよい。
•同好会や組合などの組織では、貨幣で
はない。(権限法定説と対立)
今日の復習
• 権限の理論:
権限法定説、権限職能説、権限受容
説、権限起因説
• 責任移譲理論の提唱者:
ブラウン
今日の復習
• 権限受容説の決定者:
上司と部下の場合の部下(下位者)
• 権限法定説の背景:
資本主義の私有制
次回のための予習
• 第4章 権限と組織の構造
• 組織の構造とは
組織の構造
•組織構造の基本:権限
•組織の発展:垂直的分化と水平
的分化
組織の構造
•ライン組織(Line organization)
•ファンクショナル組織(Functional
organization)
•ライン・アンド・スタッフ組織(Line
and staff organization)
ライン組織
•基本的なライン権限を
中心に形成された単純
な形態
•「軍隊組織」
(military
organization)
統制の範囲と階層の矛盾
•効率の改善を実現するために、一般
的には統制の範囲はできる限り小さく
するが、統制の範囲を小さくすると、
階層の数が多くなる。階層の数が多く
なると、効率の低下をもたらす。また、
階層をできる限り少なくするが、そう
すると、統制の範囲が大きくなるとい
う統制の範囲と階層の間の矛盾
職能組織
•包括的権限と責任が職能的に分割され
担当され、各職能の担当者が、自己の担
当職能を、部下に
実施せしめる権限
を有する組織構造
ライン組織と職能組織
• ライン組織の形態では、適切性を欠く
(すべての問題処理が不可能)
• ファンクショナル組織では、命令の統
一性を欠き、混乱を発生させる恐れ
• 対策:ラインアンドスタッフ組織
ラインアンドスタッフ組織
•執行職能を遂行するラインに、全般的
あるいは専門的知識を基として、ライン
に助言あるいは援助
を与えるスタッフを
付置させた組織
各組織の長所と短所
基本形態
メリット
デメリット
ライン組織
① 命令の統一の維持
② 責任権限の明確
③ 命令伝達の迅速
① 権限集中による責任過大
② (多階層時)命令の迅速性
と正確性の問題
職能組織
① 専門家による負担の軽減
② 専門家の育成が容易
① 命令統一との矛盾
② 職務担当者の意見対立時
の調整が困難
命令の統一の確保
① スタッフ利用の困難
ラインアンド ①
② 専門家利用による効率の ② ラインとスタッフの区別が
スタッフ
向上
難しい
その他の組織構造
•マトリクス組織
管理が容易、命令の統一が困難、資源の2重利用
•プロジェクト組織
問題解決が有効、専門家の意見調整が困難
•事業部制組織
独立採算性で経済性が高い、企業内部の調整
が困難
今日の復習
•組織の構造
ライン組織、職能組織、ラインアンドスタッフ組織
•ライン組織の長所
命令の統一、責任の明確、命令伝達の迅速
•その他の組織
マトリクス組織、プロジェクト組織、事業部制組
織など
次回のための予習
•合理的な組織構造への追求
•ホーソン実験とは
ありがとうございました!