経営組織論 広島大学大学院工学研究院 特任教授 伊藤孝夫 第3章 ファヨールの組織管理論 前回の復習 • 割賦販売の意味は 分割払いが可能な販売制度 • 管理過程学派の普遍妥当性とは どこでも通用する管理又は組織の原理の特徴 • 管理過程学派と人間行動学との違いは 前者は合理的な組織構造で、 後者は組織よりも組織を構成する個人を重視 テイラーのその後 •H. Fayol(1841-1925)Comambault コマンボー ル社入社、その後、 その経験をまとめて、 1917年『産業および 一般管理』出版 ファヨールのプロフィール 1841年 誕生 1872年 鉱山会社グループの役員 1918年 退任 1925年 他界 1950年代 『産業ならびに一般の管 理』を出版 企業の諸活動(ファヨール) • • • • • • • 技術活動:生産・製造・加工 商業活動:購買・販売・交換 財務活動:資本の調達と運用 保全活動:財産と人員の保護 会計活動:財産目録・貸借対照表・ 原価・統計など 管理活動: • 経営とは、事業活動に必要なこ れらの六つの機能を総合して事 業の目的を効率的に達成してい くことをさしている。 管理活動:計画・組織・命令・調 整と統制 管理活動 • 計画:柔軟性・継続性、周到性 組織:権限と責任の系統やコミュニ ケーションの流れを作り、資源を有効 に活用する。 命令:責任の実行 調整:活動のタイミングの決定 統制:計画の実行状況 指導 ファヨールの法則 • 社員の能力は技術、営業、財務、保全、会計および、管理の六 つに分けられる。新入社員に要求する主な能力は技術能力で ある。管理者になると、管理能力が求められるようになる。管理 者の職位の上昇とともに、管理者の全体の能力に占める管理 能力の比重が増大していく法則を指す。(一人の管理者の全体 の能力の中で、管理能力の占める比重が増大していく。) 新入社員の場合 技術能力 営業能力 管理者の場合 財務能力 保全能力 会計能力 管理能力 ファヨールの管理原則(1) • 分業Specialization of labor:職務の専門化、個人が専門的 な知識や技能を習得し生産性を高めること。 • 権限Authority:権限とは人に対して命令を下す権利のこと で、それに見合った責任が伴う。 • 規律Discipline:マネジャーがリーダーシップを発揮し自分 の役割を果たして初めて従業員も命令に従う。 • 命令の統一Unity of command:1人の部下に上司は1人だ けである。 • 方向性の統一Unity of direction:同じ活動に従事している スタッフは同じ目標を持つ。 ファヨールの管理原則(2) • 個人利益に対する全体利益の優先Subordination of Individual Interests:組織の利益はいかなるチームの利益 よりも優先される。 • 従業員への報酬Remuneration:報酬は公正かつ平等で、 正しい努力に報いることによって生産性を高めるもの • 集権化と分権化Centralization:集権化か分権化かの決ま った法則はない。 • 階層組織Scalar Chain (line of authority):必ずしも最も迅速 なコミュニケーションを実現するものではなく、横のコミュニ ケーションも同様に必要不可欠 • 秩序Order:適切な組織を通じて重複や無駄を避ける。 集権と分権の決定要因 規模 仕事の内容 地理状況 リーダーのタイプ 集権 分権 小規模 大規模 体力労働 頭脳労働 集中 分散 強いリーダー 弱いリーダー ファヨールの渡り板 • 下位部門の間で問題を生じ た場合、相互に直接に協議 して問題を解決していく権限 をそれぞれの上司からの委 譲を受けた下位部門の間の 連絡チャネルを指す。図で 示すと、次のD-GまたはC-F のようになる。問題解決でき ない場合、順次上に持って いく。 A B C D E F G ファヨールの管理原則(3) • 公正Equity:処置。従業員は「温情と正義を持って」扱 う。 • 任職の安定性Personnel Tenure:事業が成功している ほど、マネジメントの体制も安定的である。 • 自発性Initiative:イニシアティブである。従業員に自発 的努力を促すこと • 結束Esprit de corps:団体精神。マネジメントは従業員 の士気を育み開発し、各人が能力を発揮する *管理とは、組織化された集団の中で働く人々に仕 事を行わせる過程 ファヨールの具体的な管理方法 • 年間計画と10 年ごとの計画を立て、それに基 づいて行動 計画 • 社内秩序を明確化し推進するために組織図 を作成 組織 • 適材適所を実現するために採用と教育訓練 を入念に行なう 命令のための教育 指導 • 命令系統の原則を忠実に守る。 調整 • 調整を確実に行なうため、各部門長との定例 ミーティングを実施する。 統制 今日の復習 • ファヨールの経営活動: 技術、商業、保全、財務、会計、管理 • ファヨールの法則: 従業員に対する要求する能力の変化:技術 から管理へ • ファヨールの渡り板: 下位部門の間で、それぞれの上司からの委譲を 受けた下位部門の間の連絡チャネルを指す 今日の復習 • 集権と分権の決定要因: 規模、仕事内容、地理、リーダー • ファヨールの管理原則: 分業など14の原則 • 命令の統一と指揮の統一: 上司と部下vs計画と指揮 次回のための予習 • 第4章 権限と組織の構造 • 権限とは ありがとうございました!
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