Gravitational Wave from Kerr B.H

カオス力学系と重力波
木内 建太 & 前田 恵一
(早稲田大学)
PRD、70 064036(2004)
0.概要
1.序章
2.ブラックホールとディスクからの重力波
3.カーブラックホールからの重力波
4.結論とこれからの展望
1. 序章
1.1 重力波天文学に向けて
世界各地の重力波観測装置
観測された重力波から情報を抽出するために、
テンプレートを作成する必要である。
理論の担う
役割
1.2 動機
重力波源となりうる天体や現象
連星の合体、超新星爆発、星の振動・・・
どの様な重力波源を考えるのか?
カオス
その理由
非線形現象の
重要な側面を
説明しうる可能性
① 自然現象にはカオスが溢れている。
② アインシュタイン方程式自体が、高次の非線形方程式
カオスが重力波に与える影響を考察する。
1.3 本研究の流れ
カオス力学系
からの重力波
多重極展開で、重力波放出
を評価する。(Thorne 1980)
① (i) 質点 + disk (Newton重力)
(ii) B.H. + disk (一般相対論)
② Kerr B.H.
モデル化
大質量B.H.&
コンパクト天体
(i) 自転のない粒子
(ii) 自転のある粒子
試験粒子の運動よりカオス性を判断する。
2 モデル①
ブラックホールとディスク
2.1 (i) Newtonian
ディスクに関する仮定
① 無限に広がっている。
② 状態方程式はポリトロープ
③ 一様
但し、Lz:角運動量 α:diskの面密度
2.1 続き
ディスクによるポテンシャル
厚さ減少
重力ポテンシャルとディスクによるポテンシャルの非
一様性により、粒子の運動はカオス的になる。
Alberto Saa(2000)
2.2 粒子の運動のカオス性
(i) ポアンカレ断面図
(断面:z=0)
(ii)リャプノフ指数
*面密度αを一定に
取っているので、
diskが薄くなるほど
質量密度は大きくな
る。
diskが薄くなるほ
どカオス性が強く
なる原因
2.3 放出重力波の特徴
軌道の設定
パラメーター
軌道(a)
軌道(b)
軌道(c)
0.1M
0.25M
0.5M
初期値
重力波を四重極公式で評価する。
2.3 放出重力波の特徴
(i)重力波形
2.3 放出重力波の特徴(続き2)
(ii)エネルギースペクトル
2.5 (ii) 一般相対論
軸対称静的な系を考える。
ワイル解
但し、νとωはr、zの関数である。
ここで、中心天体としてシュワルツシルトブラックホールを考え、
赤道面に一様密度のディスクをデルタ関数的に張り巡らせる。
z>0に対して、
但し、
2.5 (ii) 一般相対論(続き)
測地線方程式
但し、f1、f2、g1、g2はr、zの関数であるが、複雑な形
なのでここでは省略する。
拘束条件
粒子の動きはカオス的になることが報告されている。
(A.Saa,R.Venegeroles (1999))
2.6 粒子の軌道
パラメーター
初期値
軌道(a)
軌道(b)
(i) ポアンカレ断面図
(ii) リャプノフ指数
2.7 放出重力波の特徴
(i) 重力波波形
(ii) エネルギースペクトル
2.8 ここまでのまとめ
我々は、ブラックホールとディスク系において試験粒子の動きが
カオス的になることに注目して、四重極公式により重力波を解析
した。
その結果、以下の2点の特徴を重力波に見出した。
粒子の運動のカオス性は、
① 波形には、影響与えない。
② カオス性が強いほど、エネルギースペクトルの周
波数分布が広がる。
2.9 問題点
① 四重極公式の有効性(弱重力場近似、スローモー
ション近似)
② モデル依存性
①を検証するためには、ブラックホール摂動論
を用いて、重力波を評価する必要がある。
②を検証するために、他のカオス力学系から
の重力波を解析する。
3.モデル②
test particle
だが、見た目は
不規則な運動
②(i) 自転なし
Carter
Constant
③(ii) 自転あり
カオスなし
(Carter(1968)、
M.Johnston,R.
Ruffini(1974))
カオスあり
S.Suzuki, K.Maeda(1997,1998)
3.1 このモデルの問題点
① 連星系のモデルだと考えると、重力波による散逸効果
が大きく、軌道がカオス的になる前に合体してしまう。
(J.D.Schnittman, F.A.Rasio (2001))
② SMBHとコンパクト天体だとすると、自転の値が大きす
ぎる。(M.D.Hartl (2003))
但し、具体的なカオス力学系を他に設定するのは難しい
ので、今回はこのモデルを採用する。
3.1 基礎方程式
3.1.0 背景時空
Kerr時空
(Boyer-Lindquest 座標)
但し
3.1.1 自転なし
保存量
但し、
3.1.2 自転あり(続き)
保存量
3.2 軌道の安定性
先行研究
(A) S.Suzuki & K.Maeda(1997)
Schwarzschild時空のSpin粒子の運動を解析した。
Schwarzschild時空の対称性を用いて、
有効ポテンシャルを分類した。
(B) S.Suzuki & K.Maeda(1998)
Kerr B.Hの赤道面を飛ぶSpin粒子の円軌道の安定性
について調べ、(A)の有効ポテンシャルと対応付けた。
先行研究(A),(B)の結果
図2.円軌道(赤道面)の安定性
図1.有効ポテンシャルの分類
表1.有効ポテンシャルの分類と粒子の軌道
有効ポテンシャル
Type(U1)
粒子の軌道
落下 or
無限遠
Type(U2) Type(B1) Type(B2)
落下 or
無限遠
束縛軌道
(安定)
束縛軌道
(カオス)
3.3 結果1(粒子の運動のカオス性)
3.3.1 自転なし(カオスなし)
粒子の軌跡
軌道(a)
パラメーター
初期値
Poincaré maps
3.3.2 自転あり(カオス)
粒子の軌跡
パラメーター
初期値
軌道(b)
軌道(c)
Poincaré maps
Lyapunov指数
3.4 結果2(放出重力波)
* l=2,3
波形
カオスなし
軌道(a)
カオス系からの重力波で
は、l=3のモードがl=2よ
カオスあり
り卓越しているかも?
軌道(b)
軌道(c)
3.4 結果2(続き1)
エネルギースペクトル
カオスなし
軌道(a)
カオスあり
軌道(b)
軌道(c)
*カオス的でない場合、スペクト
ルが離散的になることは既にS.
Drasco(2003)が解析的に示して
あった・・
3.4 結果2(続き2)
各モードに含まれるエネルギーの比較
l=2のモードに含まれるエネルギーに対して、
軌道(a)
軌道(b)
軌道(c)
4.7%
12.4%
29.5%
4.結論とこれからの展望
我々は、カオス力学系からの重力波を評価する
ことによって、カオスが重力波にどの様な影響を
及ぼすかを考察した。
①波形、エネルギー放射率には、決定的な違いを引き起こさない。
②カオス性の強い場合でも、占有するモードはl=2のモードである。
③エネルギースペクトルの周波数分布を広げる。
*また、Shwarzshild時空の自転粒子から放出される
重力波を、Regge-Wheeler方程式を用いて評価した
が、やはり重力波中に上述の特徴が見られた。
Appendix A : ディスクのポテンシャル(Newtonian)
状態方程式
Emden方程式
力の半径方向の勾配は中心の質点による力と
釣り合っている仮定する。さらに軸方向の勾配
より十分小さいと仮定する。
ここで等温(λ=1)を考えると、