開発部 SERIES 中西智昭 35 フッ素樹脂コーティングの表面粗さ コーティングの表面粗さについて、今回は考えてみたいと思います。 さて、コーティング表面は「つるーっ」としていますが、うねりが存在 さて、コーティングの表面を手で触ってみると、多くのコーティング しています。 は「つるーっ」としています。フッ素樹脂は熱可塑性の樹脂 (つまり熱に 機械精度・公差が必要な場合には、このうねりに注意しなければいけ 溶ける)であって、コーティングはフッ素樹脂粒子を表面に乗せた後 ない場合があります。 に、 融点以上の温度で溶融し、 レベリングしているためです。 (図1参照) 表面状態を機械的に表す方法としては 「表面粗さ」が有ります。 そして、打合せの時にRmax50μm以下とか、Ra10μm程度とか、 【図1】 5S希望とかの言葉か交わされます。これを簡単に整理しておきたい レベリング 樹脂粉体 と思います。また、表面粗さJISの最新の改訂である、2001年版に統一 して表してみます。 コーティング 溶融焼成 ◎まず、 「S」は無くなっていました!?今は「Pt」と表し、計測した断面 曲線の最大山さと最小谷の差で最大高さμmを表します。 溶融焼成 ◎さて、 「Rz」も最大高さで、 粗さ曲線での最大山さと最小谷の差です。 ここで、代表的なフッ素樹脂コーティングの表面形状について表して みました。 ◎また、 断面曲線=粗さ曲線+うねり曲線+αの関係になります。 (【図5】 参照) 【図2】NF-004A 水平角:45 仰角:45 【図3】NF-001 水平角:45 仰角:45 【図 5】断面曲線 (c)断面曲線 (d)粗さ曲線 【図4】NF-020BR 水平角:45 仰角:45 + (e)うねり曲線 (f)うねり曲線より長い波長成分 + ◎ここに、コーティング特有のうねりによって、 「S」→「Pt」と「Rz」が 一致しないことが判ります。 【図2】NF-004Aは非粘着性の高いFEP樹脂のコーティングです。表面 がレベリングしてなめらかなコーティングとなっていることが判ります。 対して、 【図3】NF-001は低摩擦性のPTFE樹脂のコーティングです。 PTFEは溶融粘度が高く、融点以上でも実質的にレベリングしません。 このため、表面は凹凸に富んだ物となっています。 【図4】NF-020BRは耐食コーティングです。薬液浸透を抑制するため に、フッ素樹脂以外の充填物を含みます。このため、レベリングしにく く、表面の凹凸も大きくなっているようです。 【表1】 断面曲線 パラメーター 種類 旧JIS (1994年版) 新JIS (2001年版) S Pt 旧JIS (1994年版) 新JIS (2001年版) Ry Rz 十点平均粗さ Rz Rzjis 算術平均高さ Ra Ra 最大断面高さ 粗さ曲線 パラメーター 種類 最大高さ 念のために、 【表1】に変わったところを貼ってみました。理解されてい なお、これらのチャートは全て、高さ方向のみが1万倍以上に強調され る方がほとんどだと思いますが、今後は何年度JISで書いた図面かを、 ています。実際は「つるーっ」としたコーティングです。また、顕微鏡写 まず確認して行きたいと思いました。 真では有りません。 参考文献:日刊工業新聞社編 「モノづくりのための精密測定」 深津拡也著 5 日本フッソ技術情報誌
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