―日本の地震災害― 第4章 環境改変が招いた都市災害 小川聡美 新潟地震 1964(昭和39)年6月16日午後1時 発生 M7.5、粟島南方沖海底34kmの深さ 15分後から日本海沿側に津波 (4m以上ところも) 石油タンク火災 液状化災害 地震予知の第一歩に ―石油タンク火災― スロッシング現象によって発生。2週間以上燃え続 けたものもあった。 スロッシング現象とは: タンク内の石油の液面が、地震の長周期の地震動と共振を 起こして大きく波打つ現象であり、タンク内の石油が溢れ出し、 着火し火災になったりする。 地震動によって折損した地下パイプから漏れ 出た石油が津波によって運ばれ、着火し民 家 に燃え移り、民家290戸が焼失した。 図.重油に浸かった町 ―液状化災害― 新潟地震では信濃川沿いの地区を中心にして新潟市内で地盤の 液状化現象が起こった。地中から砂まじりの水を大量に噴き出し、 津波とあいまって市内は水浸しになった。 液状化により多くの建物が沈下したり、傾斜したりした。道路は亀 裂や段差を生じ、線路は蛇行し、橋桁が落ちたりした。 図.落ちた昭和大橋の橋桁 図.液状化による道路の地割れ 液状化現象とは: 砂地盤で地下水の水位が3m以下の地盤環境で起こりやすい。 普段は砂粒と砂粒の間に噛み合わせの力が働き、互いを支えてい る が、地震動により、その噛み合わせの力がはずれ、水とともに流動 す ることになり、これが液状化現象である。 港湾地帯や、河川の下流域、湖沼の周辺低地などで発生しやすい が、近年では埋立地での発生が目立つ。 新潟地震以外にも、1983年日本海中部地震、1993年釧路沖地震で も発生。また、1995年兵庫県南部地震では人工島のポートアイラン ドでも発生。 “砂+水”=液状化の条件 ―旧河道の液状化― 新潟地震での液状化被害の分布を地図に描いてみると、被害の 大きかった地域は、信濃川の両岸に限られ、それは、旧河道と一 致した。 蛇行した川の幅を埋め立て市街地化のための土地を確保する都市開発 ⇒“砂+水”の液状化の条件を人間がそろえていることになる ―地震予知の第一歩― 日本の地震予知計画の土台 ・・・「地震予知―現状とその推進計画」(ブループリント、1962年) 新潟地震は地殻変動の観測の予知における重要性を示した。 宮城県沖地震 1978(昭和53)年6月12日午後5時ごろ 発生 M7.4、仙台市の東方沖約100kmの日本海溝付近 北米プレートと太平洋プレートの境界で発生 ブロック塀による死者が18人(全死者数28人) 新興住宅地の地盤災害 人災的要素の大きい地震 ―新興住宅地に集中した地盤災害― 宮城県沖地震では、昔から人の住む仙台市中心部の旧市街地の被害 ではなく、新しく開発された土地に地盤災害が集中した。 膨れ上がる仙台市の人口を吸収するために、水田の埋め立てにより産 業団地を作り、森林を伐採して、丘陵地を造成宅地とした。 しかしずさんな造成が行われ、ベッドタウンの宅地は危険を潜在させた まま発展していった。 激しい揺れにより、もとの丘陵を構成していた地盤と、新たに盛土して作 られた地盤との境界をすべり面として地すべりや斜面の崩壊が起きた。 ↓ ずさんな都市開発や拙速な環境改変がもたらした人災的側面が大きな災害 ↓ 高度経済成長が招いた開発優先の思想に問題を投げかけた現代的な災害 ―切迫する次の宮城県沖地震― 比較的短い間隔で繰り返し発生してきた地震である。 1793年、1835年、1861年、1897年、1936年、1978年に大地震が発生 してきた。 平均活動間隔は37.1年であり、2003年6月の時点で、20年以内の発生 確率は88%、30年以内では99%となっている。 被害想定では、冬の夕方発生の場合の死者を1300人と想定しており、 過去の災害に学びつつ、備えを急がなければならない。 2005年8月16日11時46分に、宮城県東方沖を震源とするマグニチュード (M)7.2 の地震が発生し、宮城県南部の川崎町で震度6弱、仙台市など で震度5強を観測した。この地震の深さは約28km 。
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