(カツラマルカイガラムシの付いた苗木を林地へ植栽しないように - 山梨県

NO.1
(平成 19 年 2 月 1 日号)
(平成 23 年1月 25 日改訂)
発行
山梨県森林総合研究所
〒400-0502 富士川町最勝寺 2290-1
カツラマルカイガラムシとは
マルカイガラムシ科に属する小さなカイ
ガラムシ(直径 2 mm 以下)です。近年、
山梨県内
山梨県内で大発生し、大きな問題となりま
大発生
した。
生活史
年 2回発生します。1回目は6
6 月中旬~
回発生
月中旬 ~
7月中旬、2回目は、8
月中旬
8月下旬~
月下旬~9月上旬
です。母虫のカイガラから出てきた1齢幼
虫は足があり、動き回りますが、直ぐに定
カツラマルカイガラムシが
カツラマルカイガラムシが一面に
一面に寄生した
寄生した樹幹
した樹幹
着し、2齢幼虫(殻あり)を経て親虫(3
齢)となります。
寄主植物
寄主範囲が広く、バラ
バラ科
バラ科、リョウブを
リョウブを除く多くの樹木が被害を受けます。
山梨県では、ナラ
ナラ類
ナラ類、クリ、
クリ、カエデ類
カエデ類、シデ類
シデ類、カンバ類
カンバ類、ハンノキ類
ハンノキ類、エノキ、
エノキ、アオハダ、
アオハダ、ア
ワブキ、
ワブキ、エゴノキ、
エゴノキ、ヤマナラシ等
ヤマナラシ等で特に被害が激しくなります。
公園、庭
被害地としては、里山林
里山林、クリ
クリ園、公園
公園 庭などが挙げられます。
里山林 クリ園
-1-
被害の
被害の見分け
見分け方
肉眼的な被害は葉のしおれから始まり、や
がて木全体が、枝枯れ~半枯れ状態となりま
す。激しい被害を受けた木は、枯死すること
もあります。近づくと直径2mm以下の灰色
で、殻の頂きが白色の円形のカツラマルカイ
ガラムシが、葉脈から樹幹まで、樹皮の薄い
木には樹幹下部まで一面に寄生しています。
果樹に付くナシマルカイガラムシとの見分
けは肉眼的には困難ですが、ナシマルカイガ
ラムシは、主にバラ科の樹木(ナシ、ウメ、
スモモ、モモ、リンゴ等)に寄生するのに対
し、カツラマルカイガラムシは、ブナ科(ミ
被害の
被害の始まり(
まり(葉が萎凋し
萎凋し、褐変)
褐変
ズナラ、コナラ、クリ等)を中心に寄生しま
す。
山梨県内の
山梨県内の被害状況
本害虫は、1999 年~2008 年にかけて、峡北
峡北、峡東
1,500ha にお
峡北 峡東、東部
峡東 東部地域で大発生し、合計
東部
よぶ大被害となりました。被害はコナラを中心とした 2 次林やクリ園で特に激しく確認されまし
た。しかし、その後、被害は減少し、2009 年、2010 年には被害は確認されておらず、県内の被
害は終息したと考えています。
被害遠景:
被害遠景:広い部分が
部分が褐変している
褐変している
クリ園
クリ園におけるカツラマルカイガラムシ
おけるカツラマルカイガラムシの
カツラマルカイガラムシの被害
-2-
天敵微生物の
天敵微生物の発生(
発生(オレンジ色
オレンジ色のキノコ)
キノコ
被害から
被害から回復
から回復しつつある
回復しつつあるコナラ
しつつあるコナラ
対 策
クリ園
クリ園
クリはカツラマルカイガラムシの被害を 休眠期(冬期)
:トモノール
14倍希釈
受けやすく、放置すると大被害となります。 発生初期:スプラサイド乳剤40 2千倍希釈
被害が発生し始めたクリ園では、右記の農
(収穫前日まで、年2回まで撒布可)
薬が効果があります。
アプロード水和剤
千倍希釈
(収穫7日前まで、年2回まで撒布可)
庭木、
庭木、公園木
多種類の広葉樹がカツラマルカイガラム スプラサイド乳剤40
千倍希釈(年2回)
シの被害に遭います。右記の農薬が散布可
能です。
山林
山林では薬剤散布も困難な場合が多く、現在までのところ速効的な対策はありません。しか
し、今までの調査で以下の様なことが分かっています。
同虫による被害はある程度拡大すると、寄生菌(ネクトリアコッコフィラ)や寄生蜂により
被害が終息に向かうことがわかりました。被害による枯死木は激害林では全体の40%に及ぶ
こともありますが、枯れるのは被圧木や幼齢木が中心で、多くの優勢木は枝枯れ程度で生き残
り、萌芽により回復します。このため森林は比較的早く回復することがわかりました。
現在までのところ標高1100m以上では大被害は発生しておらず、高標高では被害が発生
しにくいことがわかっています。
-3-
カツラマルカイガラムシ(
カツラマルカイガラムシ(拡大)
拡大)
クリ苗木
クリ苗木に
苗木に付着した
付着したカツラマルカイガラムシ
したカツラマルカイガラムシ
被害の
被害の再発生を
再発生を防止するために
防止するために
カツラマルカイガラムシ
カツラマルカイガラムシの
カイガラムシの分散は
分散は、歩行、
歩行、風、寄生苗木の
寄生苗木の移動、
移動、の 3 つの方法
つの方法で
方法で行われると考
われると考
えています。
ています。歩行移動
歩行移動による
移動による距離
による距離は
距離はわずかですが
わずかですが、
ですが、風による分散
による分散で
分散ではかなり広範囲
はかなり広範囲に
広範囲に及ぶと思
ぶと思わ
れます。
れます。また、
また、寄生苗木の
寄生苗木の移動は
移動は、大変な
大変な長距離移動も
長距離移動も可能で
可能で、全く被害のなかったところに
被害のなかったところに突
のなかったところに突
然持ち
然持ち込まれることになります。
まれることになります。
苗木の
苗木の流通段階で
流通段階で、山梨県内に
山梨県内に、県外の
県外の苗木業者から
苗木業者からカツラマルカイガラムシ
からカツラマルカイガラムシの
カツラマルカイガラムシの寄生した
寄生した苗木
した苗木
が持ち込まれて、
まれて、植栽されていることも
植栽されていることも判明
されていることも判明しました
判明しました。
しました。今後、
今後、このような苗木
このような苗木の
苗木の持ち込みが、山
梨県内に
梨県内にカツラマルカイガラムシの
カツラマルカイガラムシの再被害をもたらす
再被害をもたらす可能性
をもたらす可能性があります
可能性があります。
があります。
苗木を
苗木を購入する
購入する業者
する業者に
業者に冬季に
冬季にカイガラムシの
カイガラムシの消毒を
消毒を行っているか良
っているか良く確かめ、
かめ、苗木にカツラマ
ルカイガラムシが
ルカイガラムシが寄生していないかも
寄生していないかも良
していないかも良くチェックしてから
チェックしてから、
してから、植栽を
植栽を行うようにする必要
うようにする必要があり
必要があり
ます。
ます。クリ苗
クリ苗でもカツラマルカイガラムシが
カツラマルカイガラムシが寄生したものが
寄生したものが持
したものが持ち込まれ、
まれ、クリ園
クリ園や山林に
山林に植栽さ
植栽さ
れる可能性
れる可能性があ
可能性があるため
があるため、
るため、クリ苗
クリ苗についても同様
についても同様の
同様のチェックが
チェックが必要です
必要です。
です。
監修:山梨県森林総合研究所
編集 普及指導部
森林研究部
TEL 0556(22)8001
主幹研究員 大澤正嗣
FAX 0556(22)8002
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