想いに寄り添って ~外出活動の取り組み~ 特別養護老人ホーム 白寿苑 ケアワーカー 井上真梨子 宮武卓也 はじめに 1995年から外出活動開始 連携ミス 各部署 アンケート実施 職員の思いの再確認 連携強化のための要因 発表内容 ①外出活動の実際 ②今回の取り組み ③考察 ④まとめ・今後の課題 外出活動報告 ・遠足委員6名(全て介護職員) 各フロア担当者が中心となり外出企画する。 今年度は旅行などの遠方への外出は控え、 近畿圏内の近場でより多くの利用者が外出 できるように支援していった。 ・外出内容 水族館、動物園、映画館、ショッピング、カラ オケ、外食など。 具体的な取り組み 期間:2012年11月3日~11月17日 対象:相談員6名、看護師5名、 理学療法士1名、介護職員9名 方法:上記各職員にアンケートをとり、 項目別に内容の比較を行った。 アンケート項目 ①遠足企画を通して生じた問題、困ったこと、 悩んだこと、他部署との連携ミスなど壁に ぶち当たったことを記入してください。 ② ①に対してどのような対応をして、 遠足企画をできる限り利用者の希望に 沿う形にしていったかを記入してください。 ③遠足企画をする中で何を大切にしています か。 アンケート項目 ④何を目的に遠足企画をしていますか。 ⑤遠足企画をした中で自分自身何を得ること ができましたか。 ⑥遠足委員を今年始めたころと今とでは、ど のようなことが改善できた、又は改善した 方が良いことを記入してください。 アンケート結果① (介護職員) 生活相談員との連絡ミスで行き違いが起 こり、御家族への了承を得る前に計画を すすめトラブルになることがあった。 利用者にどこに行きたいのか等尋ねても「ど こでも良い」と言われ外出場所に困った。 先輩職員からの口伝えや、一緒に企画をす ることで運営方法を教わったが、先輩職員に よって進行する過程が違った。 アンケート結果② (介護職員) 生活相談員より、参加の了承というより、費 用面を気にされている御家族が多いのが現 状というアドバイスをもらった。 「外出企画について」のマニュアルを改めて 全フロアに配布し周知した。 普段の会話の中で行きたい場所や希望、好 きなことを、聞ける方には積極的に聞き、答え られない方には、御家族・生活相談員に相談 した。 アンケート結果① (相談員) 個人負担金の件で事前に御家族へ連絡する 際に、詳細までケアワーカーが準備できてお らず問題になった。 対象となる利用者の選出が遅くなっていたの ではないか。 希望を叶えようとし過ぎていた為、まとめきれ ず、企画を最初から立て直さなければならな くなった。 アンケート結果② (相談員) 企画書に「個人負担予定額」欄を設け、費用 の見込みを早期に提出するようにした。 場所はもちろんのこと、叶えてあげたいという 想いと、本当に本人の希望する要望かどうか を再度ねり直しし、考えてもらうようにした。 アンケート結果① (診療室) リハビリテーション、機能訓練を行う日時が重 なることがある。 ( 栄養士) 食事療養をしている方が外出先で少しでも希 望のものを食べていただけるよう配慮したい が、現状難しい方も多く、医療間での意見が 割れてしまうことがある(制限し過ぎる事なく 許容範囲内で食べていただく事が難しい)。 アンケート結果② (診療室) リハビリテーション・機能訓練を本人に確認し 中止・もしくは延期にしている。 (栄養士) 糖尿病の方に関しては、外出の際に摂取さ れた内容を聞き取り、できる限りその後の食 事の献立を調整し、療養にさしつかえないよ うにしている。 アンケート結果③ (全部署共通) 利用者目線に立って計画が立てられている か。 楽しんで下さること。 一緒に楽しむこと。 安全面(トイレ等環境含め)。 入所者の体調。 車椅子での体勢や疲れ。 気分転換 アンケート結果④ (全部署共通) 「行きたい」と思うところへ「行ける」ように。 余生を楽しんでいただくため。 いつもの生活とは違う空気・雰囲気を味わっ ていただくため。 生活の中で良い刺激や気分転換になること。 昔の事を懐かしんだりして下さるように。 利用者とスタッフ・利用者同士の交流。 アンケート結果⑤ (介護職員) 利用者の喜ぶ姿を見て、外出することの大切 さを感じた。 普段見る事のない利用者の姿を見れて意外 性を知れた。 企画をするのは簡単ではなく、本当に大変な ことだが、だからこそ事故なくやり遂げたとい う達成感があった。 利用者ができることをできるときに実行できた。 アンケート結果⑤ (相談員) 各部署との連携について具体的な案と具体 的な要望を提示する必要性を再確認できた。 調整等大変だが、また企画して、もっといろい ろな方に楽しんでもらいたい。 (栄養士) 「おいしいもん食べてきたよ」と、とても喜んで 報告を受けると、無理なくその方に合った外 出内容で満足感を得てもらえる。利用者の笑 顔を引き出す大事な企画である。 アンケート結果⑤ (診療室) 長い時間一緒にいる事が少ないため、食べ 方一つにしても、話し方、考え方、昔の生活な ど、改めてその利用者がどんな方なのかわ かる機会だった。 利用者や御家族の笑顔や活気から我々も癒 され、満たされている。 企画に携わり、実行できて良かったという満 足感を得られている。 アンケート結果⑥ (介護職員) 外出企画に関して、苑全体が協力していこう という動きに少しづつなってきていると思う。 初めは個人の経験・力量で企画していたもの が、マニュアルを配布することにより、スムー ズに企画できるようになった。 アンケート結果⑥ (相談員) 利用者が同じ人ばかりになっているところも 見受けられるため、もう少し人選してみてはど うか? 他部署との連携がとれるようになってきてい る。 各々調整部分はスムーズになってきている。 企画書がそのまま「しおり」になるようなもの になれば全体を把握しやすいかもしれないと 思う(準備品の持ち出し忘れは人的な安易な ミスなのでしっかりしないといけないが・・・ )。 アンケート結果⑥ (診療室) 外出後、リハビリテーション・機能訓練を行う 際、外出時の話しを聞くようにしている。そこ では行き道、食事、施設内など、人それぞれ 楽しかった部分も違うし、楽しみにしている部 分も違うという発見ができた。 可能なら利用者全員対象の企画はできない か?大規模な外出ではなく、個人に合わせ散 歩など・・・ 利用者に計画していただくということはできな いだろうか? 利用者の過去の趣味や希望を聞いて楽しん でもらえる場所選びを続けて欲しい。 アンケート結果⑥ (栄養士) 時々、外出(遠足)の件を聞いていないことが あり、後日報告を受けることもある。服薬管理 等あるので看護師、栄養士には企画の段階 で相談いただければありがたい。 考察① アンケート結果を振り返り各職種それぞれの 外出に対しての想いや、配慮していることな どを知ることができた。 全部署共通していることは、利用者目線に立 ち、共に楽しみ、事故のない安全な外出を目 標にしている。 外出することが利用者にとっていい影響を与 えるため、大切な取り組みであるということを 感じている。 考察② 介護職員以外の職種は、普段利用者と長く 関わることがないため、外出について話せる ことで話題作りのきっかけやコミュニケーショ ンの場になり、利用者の新たな一面を発見す る機会になっている。そのことから、外出企画 は、他の職種が、より信頼関係を築くことがで きる取り組みと考えられる。 考察③ 各部署で様々な意見があり、連携課題がみ えてきた。 全ての調整は介護職員が中心となるため、 積極的に他部署と連携をとり、企画を運営し ていく必要がある。そのため他部署の理解・ 協力が不可欠である。 マニュアルだけではできない各職種への細か なやり取りが求められる。 連携強化のための要因 新しいマニュアルを作成する。 今のマニュアルに、課題となった反省点をもと に、事前に改善できること(他部署への確認 事項など)を追加していき、各部署に配布して どの職員が企画運営をしても、同じように他 部署と、連携がとれるようなものに仕上げて いく。 まとめ 全職員、外出企画に対しての想いは共通して おり、施設のいつもの生活とは違う刺激・空 気や雰囲気を味わったり、昔のことを懐かし んだりして気分転換になればと思っている。 「行きたい」と思うところへ気軽に行けるという 意識をもって余生を楽しんでいただくため、利 用者が自分自身の可能性に気付くきっかけ になるように、今後も企画していく。
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