高機能広汎性発達障害に対する グループを活用した治療・教育支援の試み 新潟県立精神医療センター 藤田 基,櫻井観喜 はじめに 1.当院では広汎性発達障害のこどもの支援を30 有余年に渡って継続している 2. 最近2-3年,広汎性発達障害(PDD)のこどもの 来院が激増しており,従来の体制では対応し きれなくなってきている 3. 従来の個人療法中心の援助では,高機能群の 対人関係の困難に直接アプローチできない 4. 障害は生涯にわたるものなので患者や親の自 助グループ的つながりを育成する必要がある 5. 以上から治療の構造にグループを導入した (1)本人に対してSSTを援用した集団療法 (2)家族・教師に対して心理教育的アプローチ 2000年度 2001年度 年齢別新患数の推移(2000-2001年 度)幼児期の増加は高機能広汎性発達障害の早期受診を反映している 障害別新患数の年次推移① PDD:広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorder) ADHD:注意欠陥多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder) MR:精神遅滞(Mental Retardation) 広汎性発達障害の新患の激増 PDD:広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorder) ADHD:注意欠陥多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder) MR:精神遅滞(Mental Retardation) 障害別新患数の年次推移② 新患の1/3が広汎性 発達障害 PDD:広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorder) ADHD:注意欠陥多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder) MR:精神遅滞(Mental Retardation) 障害別新患割合 半数が高機能群 PDDNOS: 他に分類されない広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorder Not Otherwise Specified) PDDの知的機能の分布 従来の治療構造 問題点 個人カウンセリング 治療者 個別教育プログラム 子 (子担 当) 治療者 (親担 当) ・対象患者数が制限される ・PDDに対する系統的な知識 を,全ての親にもれなく伝え ることは時間的に不可能 ・基本的に個人療法なので その場でのコミュニケーショ ンの練習はできない (高機能群の主訴のほとん どは対人関係,コミュニケー ションの困難) 親 障害理解 学校 ・学校への支援が不十分なた め環境の変化が遅い (教師へのアドバイスはして いたが,知識を系統的に伝 えていなかった) グループを取り入れた治療構造 集団精神療法 (Social Skills Trainingに 遊戯療法を加味した構造) 子 治療者 (子担 当) 子 子 ★多数のケースを 扱うことが可能 親 治療者 (親担 当) 子 親 障害理解の ための家族教室 教師 (心理教育的アプローチ) ★直接の相互作用 のなか で ・情報 交換 ・支え 合い ・対人 関係の練習 ができ る 教師 ★親と教師がより 一致した視点で 問題解決にあた れる PDDに対する集団精神療法の方法 ★Social Skills Training(SST)の枠組みを基礎として メンバーがPDDであることに配慮 ★1グ ループ5~8人のメンバー,リーダー,コリーダー★月 2回,半年で1クール 1.時間の構造化 PDDとしての配慮 2.場の構造化 3.メンバーへのポジティブフィードバック 4.メンバーの発言を促進するプロンプト 5.メンバー同士の会話の促進 一般的なSSTの テクニック 6.遊びの活動の援助 【先行研究】 Marriage 1995, New Zealand J Psychiat Mesibov 1984 Williams 1989 PDDの家族教室 (親,教師のための教育プログラム) 1.構造 (1)月1回約1時間の講義に,必要に応じて10人 程度の小グループでの質問・討論を加えた (2)小グループでは,参加者同志の討論を援助 し,親や教師自身の問題解決技能の向上を 目指した (3)5回で1クールとした 2.プログラムの内容 (1)PDDの理解 (2)PDDの治療教育の基本(構造化について) (3)コミュニケーションの発達援助 (4)問題行動への対処法 (5)社会資源・親の会についての情報提供 ま と め 1.近年高機能広汎性発達障害のこどもの受診が激増している 2.従来の個人療法中心の治療構造では以下の理由で対応困 難となっている (1)スタッフ数との兼ね合いで物理的に対応不能 (2)高機能群の主訴である対人関係の改善のための実際的な 練習の場がない 3.このため,治療構造に大幅にグループを導入したところ以 下の有用性が確認あるいは示唆された (1) 年間40人を超える高機能広汎性発達障害の新患につ いて,本人および親に対して一定の援助を実施できた (2) グループのなかでコミュニケーションの改善を目指し た練習ができた (3) グループの活動を通して,患者や家族相互の情報交換, 支え合いを促進できた 4.これらの成果の客観的な評価は今後の課題である
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