発達と学習Ⅰ 発達の測定(1)

発達と学習Ⅰ
発達の測定(1)
2007 5 9
発達の測定(アセスメント)

アセスメント(査定)とは?
測定された具体的なデータに基づいて、
個人ないしは集団の特徴を
評価したり、理解したりする方法

アセスメントの内容
粗大行動(歩行、姿勢維持など)
微細行動(手先の器用さなど)
身辺自立(トイレットトレーニング、衣服の着脱など)
社会性(同年齢との関係、大人との関係
ルールの理解など)
言語(理解力、発話、コミュニケーション能力など)
アセスメントの主な方法
 観察法
特定の場面における対象の姿(行動)を
できるだけ客観的にとらえる方法
 面接法
言語的やりとりを通して、対象の特定の側面
を理解する方法(思考・感情などの内的体験も含む)
 検査法(テスト)
特定の刺激に対する反応のちがいから
個人差を検討し、対象の姿をとらえる方法
アセスメントの方法:観察法
自然観察法
観察者は、観察場面の外側にいて、対象者に対し
て、意図的操作をせずに日常的な状況の中で特定
の行動を観察する。
 参加観察法
観察者が、日常的な状況に参加し、対象者と関わ
りながら観察する。
 実験観察法
観察場面に意図的操作を加えて、対象者の特定の
行動を観察する。

アセスメントの方法:面接法
 心理臨床的面接法
ガイダンス: 進路や職業選択などのために適性能力を
評価し、助言や指導をする
心理相談: 問題をかかえた個人や集団と信頼関係を築
くなかで、来談者の自己理解を深め自己実現をうながすのを
支援する
診断的面接: 個人の抱える問題の質や病理を診断し、
適切な治療法を決定する
 調査的面接法
調査目的に従い、個人まだは集団から情報を収集し、仮
説検証したり、対象への新たな理解を深めたりする
アセスメントの方法:検査法
 知能検査
知的能力(知能)を評価(集団式・個別式がある)
 学力検査
教育の効果と関係した知的能力を評価
 発達検査(主に乳幼児対象)
他者報告(保護者など)・検査成績
 人格検査(性格検査)
作業検査法(内田クレペリンなど)
質問紙法(YGなど 自己報告法と他者報告法がある)
投影法(ロールシャッハテストなど)
知能検査の種類

個別式知能検査
ビネーの検査(田中ビネー、鈴木ビネーなど)
1歳から成人まで使用可
→ 知能を総合的全体的に測ろうとした
ウェクスラーの検査
WPPSI(Wechsler Preschool and Primary Scale of
Intelligence) 4歳から6歳
WISCⅢ(Wechsler Intelligence Scale for Children)
6歳から15歳
WAIS( Wechsler Adult Intelligence Scale) 成人
→ 知的能力を多次元的にとらえようとした
言語性(6)と動作性(7)
知能検査ちょこっと体験
 田中ビネー式(例)
2歳 (絵を見せながら)水を飲むときに使
うものはどれですか?指で指してください。
5歳 私のすることをよく見ていてください。
(ビーズのひも通しをして)これと同じものを
作ってください。
9歳 この言葉の意味を言ってください。
「有名」とはどういうことですか?
つづき
12歳 ねずみは猫より弱い。トラよりねずみは強い。
さて、一番弱いのはどの動物ですか?
13歳 あなたが南に向かって歩いているとします。
途中で右に曲がり、しばらく行ってまた右に曲がり、
さらにもう一度右に曲がりました。それからしばらく
行って今度は左に曲がりました。
さて、あなたは今どちらに向かって歩いていますか?
13歳 「あるデパートで豊臣秀吉展がひかられまし
た。会場には秀吉が7歳のころの頭蓋骨と秀吉が
使った鎧や兜、刀が展示されていました」
さて、この話の中には変なところがあります。どこが
変なのかどうして変なのかを説明してください。
つづき

WISCⅢ(言語性)
*象形文字とはなんですか?
*ゴムと紙の共通点はなんですか?
*ゲームにルールがあるのはどうしてですか?
*「とりとめがない」とはどういう意味ですか?
*これからいくつかの数字をいいます。言い終わった
ら、それらの数字を逆から言ってください。
8ー5ー9ー2ー3ー4ー2
つづき
 WISCⅢ(動作性)
*迷路問題
*積み木問題 4つor9つの積み木で見本通りに作る
*組み合わせ問題 バラバラの絵を完成させる
*符号問題 決められた符号を決められた形に書き写す
*記号探し 左の記号と同じものを右の中に探す
*絵画配列問題 物語を完成させる など
知能検査の IQ とは


成長と共に変化する可能性がある側面と遺伝性の強い側面
の両面をもつ知能を同じ暦年齢集団のなかで位置づけ評価
知能指数(Intelligence Quotient)
ビネー:精神年齢(MA)という年齢尺度
ターマン: IQ=MA÷CA×100
100を中心に正規分布することを見出す
その後、偏差IQを使用
偏差IQ=(MA-該当暦年齢集団の平均)÷
該当暦年齢集団の標準偏差×16+100
ウェクスラー:偏差IQ(ただし、平均100 標準偏差15)
言語性IQ,動作性IQ、全検査IQの3種類
偏差IQ
85以上115以下に同年齢の68%の人が入る
IQから分かること

知的障害の診断 (個人式のIQ 言語+動作)
知的障害の境界領域(70,75以上85ぐらい)
普通学級で学習するのに問題ないといわれている
軽度知的障害 (50~70)
中程度(35~50)
重度(20~35)
最重度(20以下)

軽度発達障害の発見
言語性IQと動作性IQの大きなギャップ(15以上)
下位検査の得点の大きなばらつき
IQに影響を与える要因

環境と遺伝
生まれつきの遺伝的要因に影響を受けやすい能
力と後天的な環境的要因の影響を受けやすい能力が
存在するといわれている。
例 推理力←環境的要因
視覚的記名力←遺伝的要因
環境的要因の一つとして他者からの評価(期待)
の影響力→ピグマリオン効果
発達検査の種類
津守式乳幼児精神発達検査
乳幼児対象
運動、社会性、言語などの領域
保護者や担任によって評定される
 新版K式発達検査
新生児から13才ぐらい

姿勢・運動、認知・適応、言語・社会の3領域
発達指数(DQ)=発達年齢÷生活年齢×100
検査者と子どもが一対一で行う
発達検査ちょこっと体験

津守式乳幼児発達検査
78・86 ひとりでなわとびをする
66・93 経験したことを絵に描く
54・67 こんなことができるよと他の子に自慢する
84・94 ちょうちょ結びができる
78・86 トランプの神経衰弱ができる
(数字は月齢 前の数字が通過率40%、後ろが
80%)
 新版K式発達検査
寝ている状態から座った状態に引き起こす
→このときに頭を体軸より先行させて自分で
引き起こすことができる(5~6ヶ月)
積み木でトラックをつくり、それと同じもの
を作りなさいという→おおよそ作れる(2才3ヶ
月~6ヶ月)
発達と学習Ⅰ
発達の測定(2)
2007 5 23
学校におけるアセスメント
 学校不適応(いじめ、不登校)のアセスメント
 軽度発達障害のアセスメント
 道徳性のアセスメント
学校不適応のアセスメント
児童・生徒の身体的健康
(頭痛、腹痛、過食、拒食、不眠など)
児童・生徒の精神的健康(うつ病などの精神病理など)
児童・生徒の発達障害的問題
(自閉性障害やアスペルガー障害、ADHD,LDなど)
児童・生徒の学習上の問題(知能、発達障害等が関与)
生徒の人間関係上の問題
(いじめ、教師ー生徒関係、家族関係など)
思春期は第二次性徴にともない、精神的にも身
体的にも大きな変化を体験し、発達的危機(自分
とは何か、自己価値への疑問、親・社会への反
発など)を体験する
軽度発達障害のアセスメント

軽度発達障害とは?
認知・思考・感情・行動・コミュニケーションなどの 発達全体、
あるいは部分的な遅れ
知能の遅れがないものに「軽度」とつけられる。
普通 IQ > 75
なかには 130 以上の子どももいる。
しかし、決して障害として「軽い」わけではない。
普通学級に在籍するが、集団生活や学習過程に困難をしめす
① 広汎性発達障害(高機能自閉性障害、アスペルガー障害)
(PDD Pervasive Developmental Disorder)
② 注意欠陥/多動性障害
(ADHD Attention Deficit/Hyperactivity Disorder)
③ 学習障害(LD: Learning Disorders)
PDD の例
A君は、音楽室に一歩入って急に泣き出した。そして、ク
ラスメイトが手を引っ張っても決して中に入ろうとしなかっ
た。後でわかったのだが、音楽の先生のつけていた香水
がいつもと違っていた。
 「まっすぐ家に帰りなさい」と担任がいうと、B君は、「僕の
家には角をまがらないと帰れないんだけど」と真面目な
顔でいった。
 風で教室のドアが大きな音をたて、ばたんとしまった。ク
ラスメイトたちは悲鳴をあげたが、C君はまったく平気。で
も、隣の席の子がシャーペンの芯を出す音に耳をふさい
で悲鳴をあげた。

PDD の例
授業中、突然Dさんが悲鳴をあげ、自分の手の甲を
噛みだした。隣の席の子が、Dさんの筆箱から赤鉛
筆を借りたのだが、それを筆箱の右から二番目にも
どしたからだ。赤鉛筆は一番左に入れないといけな
かったのに。
 人の気持ちを考えて行動してね、といわれても、Eさ
んには分からない。クラスメイトが泣いていても、怒
っているのか、悲しんでいるのか、感動しているの
か、気持ちを読み取ることがまったくできないのだ。
 Fさんは自分は他の人と違うな、という思いが日に日
につよくなった。みんなが寒がっているときに、彼は
暑くて汗をかいていたし、みんなが何も感じていない
蛍光灯は目に痛かった。

PDD の例
この時代の農民の生活について周りの人と話し合っ
てみて、と歴史の先生がいったが、Gさんは、きょと
んとしている。Gさんには「周りの人」が誰と誰のこと
をさしているか全くわからなかった。
 毎日ちょっとずつ練習していれば、書けるようになる
わよ、と先生はいうが、Hさんは、とまどってしまった
。「ちょっと」というのはどれくらいなんだろう・・・
 惑星のことについては1年生のI君に聞けば何でも
わかる。彼は幼稚園の頃から天文博士といわれて
いる。

広汎性発達障害(PDD)
3つの特徴
*人間関係の問題(表情の読み取り困難、共感性のむずかしさ)
*言語コミュニケーション (エコラリア、独特な使い方)
*こだわり(儀式行為、自己刺激的行動、変化を嫌う)
その他、感覚の異常な過敏さと鈍感さ
感情や場の読み取りの困難、異常な記憶力などがみられる。
*高機能自閉性障害 知的障害はない、 人との関わりに限界
*アスペルガー障害 知的障害はない、 人との関わりに限界、
言語発達にも大きな遅れは見られない、 不器用、運動不得意、
嗅覚、味覚に敏感
 http://www.the-fortuneteller.com
/asperger/aq-j.html
 http://www.the-fortuneteller.com
/asperger/aq-j.html
千葉大学 若林明著
自閉症スペクトラム指数(AQ)日本語版について

1.何かをするときには,一人でするよりも他の人といっしょにする方が好きだ.


2.同じやりかたを何度もくりかえし用いることが好きだ.


3.何かを想像するとき,映像(イメージ)を簡単に思い浮かべることができる.


4.ほかのことがぜんぜん気にならなくなる(目に入らなくなる)くらい,何かに没頭してし
まうことがよくある.


5.他の人が気がつかないような小さい物音に気がつくことがよくある.


6.車のナンバーや時刻表の数字などの一連の数字や,特に意味のない情報に注目す
る(こだわる)ことがよくある.


7.自分ではていねいに話したつもりでも,話し方が失礼だと周囲の人から言われること
がよくある.


8.小説などの物語を読んでいるとき,登場人物がどのような人か(外見など)について
簡単にイメージすることができる.


9.日付についてこだわりがある.


10.パーティーや会合などで,いろいろな人の会話についていくことが簡単にできる。

11.自分がおかれている社会的な状況(自分の立場)がすぐにわかる.


12.ほかの人が気がつかないような細かいことに,すぐ気づくことが多い.


13.パーティーなどよりも,図書館に行く方が好きだ.


14.作り話には,すぐに気がつく(すぐわかる).


15.モノよりも人間の方に魅力を感じる.


16.そうすることができないとひどく混乱して(パニックになって)しまうほど,何か
に強い興味を持つことがある.


17.他の人と,雑談のような社交的な会話を楽しむことができる.


18.自分が話をしているときには,なかなか他の人に横から口をはさませない.


19.数字に対するこだわりがある.


20.小説を読んだり,テレビでドラマなどを観ているとき,登場人物の意図をよく理
解できないことがある.

21.小説のようなフィクションを読むのは,あまり好きではない.


22.新しい友人を作ることは,むずかしい.


23.いつでも,ものごとの中に何らかのパターン(型や決まりなど)のようなものに
気づく.


24.博物館に行くよりも,劇場に行く方が好きだ.


25.自分の日課が妨害されても,混乱することはない.


26.会話をどのように進めたらいいのか,わからなくなってしまうことがよくある.


27.誰かと話をしているときに,相手の話の‘言外の意味’を理解することは容易
である.


28.細部よりも全体像に注意が向くことが多い.


29.電話番号をおぼえるのは苦手だ.




30.状況(部屋の様子やものなど)や人間の外見(服装や髪型)などが,いつもと
ちょっと違っているくらいでは,すぐには気がつかないことが多い.

31.自分の話を聞いている相手が退屈しているときには,どのように話をすれば
いいのかわかっている.


32.同時に2つ以上のことをするのは,かんたんである.


33.電話で話をしているとき,自分が話しをするタイミングがわからないことがある
.


34.自分から進んで何かをすることは楽しい.


35.冗談がわからないことがよくある.


36.相手の顔を見れば,その人が考えていることや感じていることがわかる.


37.じゃまが入って何かを中断されても,すぐにそれまでやっていたことに戻るこ
とができる.


38.人と雑談のような社交的な会話をすることが得意だ.


39.同じことを何度も繰り返していると,周囲の人からよく言われる.


40.子どものころ,友達といっしょに,よく‘○○ごっこ’(ごっこ遊び)をして遊んで
いた.

41.特定の種類のものについての(車について,鳥について,植物についてのよ
うな)情報を集めることが好きだ.


42.あること(もの)を,他の人がどのように感じるかを想像するのは苦手だ.


43.自分がすることはどんなことでも慎重に計画するのが好きだ.


44.社交的な場面(機会)は楽しい.


45.他の人の考え(意図)を理解することは苦手だ.


46.新しい場面(状況)に不安を感じる.


47.初対面の人と会うことは楽しい.


48.社交的である.


49.人の誕生日をおぼえるのは苦手だ.


50.子どもと‘○○ごっこ’をして遊ぶのがとても得意だ.
ADHD の例
 担任の先生は、朝、I君の顔を見て声をかけた
。「ちょっと隣の教室行く?」 I君は素直にした
がった。以前の彼は、突然キレて上履きをクラ
スメイトに投げたり、窓から飛び降りようとした
りした。後で理由を聞かれてもよく分からなかっ
た。専門家にかかるようになったI君は「胸のと
ころがもやもやしてきたら、一人になるようにす
れば、暴力をふるわなくてすむんだ」ということ
が分かるようになっていた。
 J君は、担任に「黒板を消した後、窓をしめて、
あかりを消して」といわれても、はじめの一つし
かできない。すっかり忘れてしまうのだ。
ADHD の例
 Kさんは、忘れ物やなくしものが多い。学校の
机の中はいつもぐちゃぐちゃだ。また、一週間
前に出された宿題も、いつも提出に間に合わ
ない。担任は「計画を立ててちゃんとやりなさ
い」というけれど、時間配分をどうしてもできな
い。
 L君は、小学校6年の間に一度も絵をしあげ
たことがない。10分ぐらいしかじっとすわって
いられないのだ。そこで、ある専門家に相談
して、10分ごとに体を動かすようにした。その
結果、はじめて絵を完成することが出来た。
注意欠陥 / 多動性障害(ADHD)
2つの特徴
*多動性、衝動性
怒りっぽい、落ち着きがない、じっとすわっていられない
計画性がない、ルール守れない、自分勝手、
邪魔や妨害、活発、リーダーシップ・道化師、正義感強い
*不注意、集中困難
あきらめが早い、ぐずぐず、話聴けない
忘れ物多い、片づけられない、ものをなくす、
約束をすっぽかす、やさしい、過集中、空想力
刺激を制限することで行動を制御しやすくなる。
→単文での教示 一回に一つ 視覚的支援などの工夫
LD の例
 M君は20分休みを全部使っても、黒板の字
をノートに写すことができない。マスの中に字
をおさめることも苦手だ。そのために、作文や
日記の提出をしないことが多い。→タイプを
用いるようになったら、長文をかけるようにな
った。
 Nさんは、一字ずつは読めるけれども、長い
文章になっている文字を読もうとすると、文字
がゆらゆら動き出すので読めなくなる。それ
を必死に追いかけてると、意味を理解するこ
となんてできなくなるんだそうだ。
LD の例
 0さんは、数の大小を理解するのにとても苦
労した。一方で三桁のかけ算はクラスで一番
速い。でも、今でもどちらがどれだけ多いでし
ょうというような簡単な問題を解くことができな
い。
 P君は、立体的な図形をノートに写すことが苦
手である。
 Qさんは、「才能」の「才」という字を完成する
のに10分以上もかかっていた。最後の斜め
の線がどうしても書けないのだ。
 スキップができないRさんは、大縄飛びでもい
つも失敗してしまう。
学習障害(LD)
*文章を読んで理解することの問題(読字障害)
*文字を書き写す、なぞることの問題(書字障害)
*数の概念形成・図形認知上の問題(算数障害)
*運動バランス機能の問題(運動機能障害)
全般的知的能力は劣っていない
知能検査をすると言語性・動作性 IQ 間に差、
ならびに下位検査間にもばらつきが大きい
アスペルガーやADHDとの合併が多い
青年期の軽度発達障害の問題
 軽度発達障害の症状によって
学習の遅れ、対人関係のトラブル(いじめ)、
自傷行為、自殺、
孤立化が生じるとともに、
いじめ、不登校
自己イメージの歪み、低下
攻撃行動、非行

今も根強い障害への誤解
親の育て方のせい、親のしつけのせい
わがままのせい、努力不足のせい
大脳中枢の機能障害
軽度発達障害の有名人たち
トム・クルーズ(読字)
 トーマス・エジソン(ADHD)
 アルバート・アインシュタイン( LD or ADHD)
 ダリ(PDD)
 ガウディ(?)
 ウォルト・ディズニー(ADHD)などなど
根深い偏見を解いていくこと

 軽度発達障害自体は消失しないが、学習で
きないわけではなく、彼ら特有のやり方で社
会適応力を高めていくことは出来る。→周囲
の理解と忍耐
軽度発達障害のアセスメントの
重要性
特別支援教育への取り組みは始まったばかり
 多数とは「違う」あり方への理解の必要性
→多くのノーベル賞受賞者たち
私たちの社会に
多くの豊かさを提供してくれている人たち
 通常教育を基礎に、個々人のニーズに合わせた教育
の工夫と提供
 二次的な障害(自己イメージの低下や他者不信など)
を予防するためにも、早期発見・早期介入が必要
→不登校やいじめの背景に存在する発達障害

発達障害者支援法(平成十六年十二月十日法律第一六七号)
(17 年より施行)
第一章
(目的)
第一 条 この法律は、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活
の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが
特に重 要であることにかんがみ、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに
関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達
障 害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等に
ついて定めることにより、発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全
般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の
広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障
害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものを
いう。
2この法律において「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社
会生活に制限を受ける者をいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満
のものをいう。
3 この法律において「発達支援」とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な
発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う発達障害の特性に対応した
医療的、福祉的及び教育的援助をいう。
軽度発達障害児への支援
 校内資源:スクールカウンセラーや養護教員
との連携
 校外資源:地域の児童相談所、教育相談所
医療機関、その他の専門家などとの連携
具体的には
 「たとえば」が解らない、書かれた物が読んで
理解できない→軽度発達障害の疑い。
 地域の心理臨床の専門家へ査定の依頼
 専門家による WISC-III 等の査定の実施。
 結果を学校、本人、保護者に報告。
 教師とは学習方法の工夫を指導。
 クラスメイトに理解を求めることも
軽度発達障害の例
 所見一部
*
全体IQは正常の範囲内である。動作性と言語性検査の差が大きく、言語
性に比べて、動作性検査の得点が高い。また、動作性内のばらつきが大きく、
非言語性の軽い学習障害傾向が疑われる。
*
仮定された状況設定上での問い(もしも~)への回答が困難である。実
際に自分が体験したことがあると理解できているのだが、架空の状況に身を
置くことが最後までできなかった。
図形や記号などの抽象的刺激を瞬時に取り込み、記憶し、再生する力は
極めて優れている。
*
動作性検査の中では、ひとつの見方や仮説にこだわってしまい、柔軟に
課題に取り組美、試行錯誤することが困難になることがある。
*
意味を理解して記憶するというよりも、音として記憶に留める傾向があ
る。聴覚刺激への注意集中は優れている。
道徳性検査のちょこっと体験
 お母さんが病気になった。でも、お薬を買うお
金がない。そこで、息子はアルバイトをするこ
とにしたが、薬はとても高価なので、今月末に
なっても買えるかどうかわからない。ぐずぐず
していたら、病気はどんどん悪化するだろう。
ある晩、息子は近所の薬屋さんのガラスを
割って、高価な薬をたくさん盗んだ。
 この息子の行動について、どのように思うか。
道徳性のアセスメント
社会的成熟の指標のひとつ
 4つの水準
①個人的欲求や個人的利益のみを追求する段階
②権威ある大人や親しい人によく思われたいという
社会的欲求を満たそうとする段階
③守るべきルールを意識し、それに違反することに
罪悪感を感じるため、ルールに従って行動しようと
する段階
④自分の行為が他者に与える結果について内省し、
自分だけでなく他者の幸福も考慮して柔軟にルール
を適用できる段階

参考文献
前川あさ美 (2007) つなぐ心と心理臨床
有斐閣
市川伸一(編)心理測定法への招待
―測定からみた心理学入門 サイエンス社