精神分析をはじめる はじめに:治療構造論 日本で開発されたもっとも強力な力動学派 の初期の業績のひとつ 甘え、阿闍世、見るなの禁止などの概念 装置は、内面の心理状態を記述するため の道具 治療構造論は技法的な道具であり、しかも 精神分析に固有の道具ではなく、その拡 張をもくろむもの(日本特有の文脈) 治療構造論の展望 1.治療者の意図を超えて与えられたもの 治療構造=準拠枠 2.治療者が意図的に設定するもの(治療設 定)=セッティング 3.治療経過中に自然に形成されるもの 構造転移ほか →基本原則、自我の分裂や変容的解釈論、 そして等距離性などの概念が治療的に意 義を持つ 構造的な認識 自分は、どうしてこういう文脈で、仕事を するようになったのか 自分がどのような臨床場面にいるのか、 そしてそれはどんな構造をしているのか 自分でその構造は、どの程度、設定とし て変化させられるのか、それとも変化さ せられないのか 精神分析があっているか 分析家が設定ができるという前提なら、 Lemma(2003)が指摘しているように • • • • • 患者が関心があって、初歩的な、自己内省の能力があるかどうか 患者が自己探求を行うための治療関係のなかにある固有のフラ ストレーションに耐えられるだけの自我の力を十分に持っている かどうか。 行動化なしで心的な痛みに耐えられるかどうか(自他に害を及ぼ さない)。 行動化の危険性があるなら、治療が行われる設定の中でマネー ジできるかどうか 患者は個人的そしてあるいは職業的に治療の困難な時期の間に 自分を維持するように支えられるかどうか 主訴や問題を記述する ①問題を記述する:主訴であることが多いが、主訴 は誰が作ったかわからないことも多い。 患者から見た問題:何に、あるいは誰に患 者が反応しているのか 患者の「核となる痛み」は何か:彼が最も恐 れている、そしてあるいは避けようとしてい るものは何か? の二点から、主訴を見直してみる。そうすると経過 のなかに、誰が誰にということが見えてくることが多 い。 治療同盟、あるいは作業同盟 観察自我【1934から】 Zetel(1956) Greenson(1967) 精神分析の関係:転移、作業同盟 現実的関係の三つがある。 :自分の悩みを克服するために分析家と 協同したいという合理的な患者の願望と分 析家の指示と洞察とに従う彼の能力によ って促進される。→同一化 分析可能性-治療同盟-作業同盟 主訴の特定から文脈の特定 経過として誰が誰 に何を問題として いるか? 主治医から言われている。 「ここに来たの、何が問 題なの?」 治療者 自分で来たの?NO 主治医から何と言われているか ラポールと治療同盟⇒作業同盟 経過 うつという診断で カウンセリングが 必要だと主治医 が考えているので 治療者 照合 reflection 「ここに来て相談する 必要がある経緯かど うか」を確認する ラポールと治療同盟⇒作業同盟 カウンセリングに 来る必要性、理由 は何か? 治療者 精神分析が必要なのだろうか? うつと呼ばれる恐怖症 問題に名前を付けていく作業 ②問題の心理的なコストを記述する 患者の機能の中でのどのような限界、あるいは 他者や自己の知覚の中の歪みがその問題から生 じているのだろうか?つまり主訴は誰をどのように 困らせているのか、だからその問題はどんな名前 がふさわしいのかと、言い換えてみる。診断名はあ くまで精神医学的名前でDSMのおかげで共通語 になった部分もあるが、それでも患者の主観から は遠いことが多い。 作業同盟から分析可能性への道 今ここに来る私との間でする 作業の背景や理由を考えて、 自分としてはどうしてだと思う か?誰のために誰が、何をし に来ているのか? 治療者 うつと呼ばれる 不安ヒステリー 力動的フォーミュレーション1 ③問題を文脈化する:関連している前提にな っている要素は、心理療法に乗るかどうかと いう問題をはらんでいるので、それらの要素 を文脈化してみる。 環境要因:トラウマの歴史、トラウマに影響を及ぼし ている発達要因、家族の布置、他の関連したライフ・ イベント 生物学的な所与:身体、気質、身体的な問題:それら のなかで現在の問題に関連したものを考えるなかで、 文脈を考える 問題を文脈化する 対象関係 経緯 現病歴 生育歴 症状 治療選択 心理療法の選択 ④患者のもっとも主たる、繰り返されている対象関係を記述 する 患者は他者との関係で自分自身をどう体験しているだろう か。その問いが治療のなかで、転移を考える上でもっとも重 要な問いなので、対象関係がだいたいわかると、なぜ今こ こに彼が訪れたのかがだいたいおおまかにわかる。そのた めに次のようなことを考える 1. 2. 3. 4. 5. 患者の内的な世界を支配している対象関係は何か 誰が誰にどんなふうに、そして関連した情動を発見する これらの内在化した対象関係は現在の患者の人生でどんな不 運現れているだろうか? 自己や他者の表象は、どんなふうに影響を及ぼしているのか、 現在の関係によって影響を受けているのだろうか これらの対象関係がどんなふうにあなたとの間で現れているだ ろうか? 分析可能性:距離として 風景としての精神分析 治療者 異化された主観的問題 パースペクティブ 分析可能性から精神分析への道 治療者 不安ヒステリー Unknown elements of Unconsciousness 今ここに来る私との間です る作業の背景や理由を考 えて、自分としてはどうして だと思うか?誰のために誰 が、何をしに来ているの か? ⑤防衛を発見する 患者がもっているさまざまな症状を生み出し た防衛は、変化の可能な結果は何かとの関 連で、心理療法の対象になるだろう。その場 合、 1. 2. 患者が心的な痛みを対処している習慣的な 方法 神経症的なあるいは原初的な防衛を用いて いるなら、それを記述する ⑥治療の目標を発見する (治療者のニードに対して)患者は何を求 めている、何をニードしているのか 治療者:構成の仕事としての精神分析 精神分析が構成の仕事であるという Freudの理解 パースペクティブというGillの理解 歴史的真実と物語的真実というSpence の理解 社会構成主義的な空間として、過去、現在、 未来、を構成する精神分析という Hoffmanの理解 患者の語り:風景-寝椅子に寝てもらう 自由連想法の寝椅子は、クライエントの心の風 景をゆっくりと眺める。 自由連想の基本原則は、確固とした構造でク ライエントを抱える。 毎日分析の設定は、クライエントの心のなかを ゆっくりと悠長に眺める。 精神分析の分析的スクリーンはクライエントの 心のなかを映し出し、そのため治療空間のな かに転移と抵抗とを浮き彫りにする。 共視論、スクリーン・モデル、共同 的経験主義 Th Cl(y) (x) 治療開始から契約までの条件 最初の主訴の特定のときから、治療の動きは方向 付けられている。 分析可能性は観察できる関係づくりに左右される。 分析可能性‐治療同盟‐作業同盟は連続したプロセ スと見なしていく。 分からなかったことに気づく驚き、そして「分からな いこと」を共有できる同盟関係、その双方が一つの プロセスとして発展できるようにする。 生育歴から経緯を構成していく作業のなかに、「分 からないこと」、つまり問題を位置付けていく作業が 可能にする。 同盟可能で分析可能なら、自由連想と寝椅子の効 果を使える方向付けを行う。
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