ここから物理にもどる。 剛体とは。 慣性モーメント 1 剛体とは 教科書 p.65 大きさを持った物体。 しかし、変形、膨張圧縮はしない。 形や体積は一定。 (形や体積が変わる場合は、 弾性体力学や流体力学で考える。) 質点の集まりと考えればよい。 2 質点系の角運動量 質点の角運動量は、 L r mv 質点系の場合、質点miの位置、速度をri, viとして、 L ri mi v i i 質量が連続的に分布している場合は積分で置き換える。 ( x, y, z) L (r v) ( x, y, z )dxdyd z 密度:単位体積中の 質量。 dz dy dx r o 3 v 記号の説明 N a i 1 r i i シグマ 和(たし算) a1 a 2 a3 a N mi v i r1 m1v1 r2 m2 v 2 i 質点1 質点2 質点系 剛体の角運動量 質量が連続的に分布している場合は 積分で置き換える。 L ri mi v i i 質量=密度×体積 L (r v) ( x, y, z )dxdyd z 密度: 単位体積中の 質量。 ( x, y, z) dz o r dx dy 5 ( x, y, z) の意味 場所(x,y,z)によって値が違う。 1変数だとf(x)など。 例:人間は場所によって密度が違う。 頭は密度が高い。 手は密度が低い。 6 角運動量に戻ると、 角速度ωで回転している、物体の角運動量は、 (質点の場合) L r mv 密度をρとして、 v ω r L (r (ω r )) dxdyd z (以前やった) 問題 r=(x,y,z), ω=(ωx,ωy,ωz)を使って、 角運動量は以下のように書けることを示せ。 L Iˆω I xx ˆ 但し、 I I yx I zx 2 2 I xx ( y z ) dxdydz I xy xy dxdydz I xy I yy I zy I xz I yz I zz ^:ハットと読む。 7 解答 L (r (ω r ))dxdydz に成分を代入する。 外積の成分での表示は(復習) A A1 , A2 , A3 , B B1 , B2 , B3 に対して、 A B A2 B3 A3 B2 , A3 B1 A1 B3 , A1 B2 A2 B1 ω x , y , z r x, y, z に対して、 ω r y z z y, z x x z, x y y x 8 解答 ω r y z z y, z x x z, x y y x r x, y, z y x y y x z ( z x x z ) r ω r z (y z z y ) x( x y y x) x( z x x z ) y (y z z y ) ( y 2 z 2 ) xy zx x xy ( z 2 x 2 ) yz y 2 2 zx yz ( x y ) z 各成分に dxdydz をかけて積分する。 9 教科書p.71 角運動量の続き I xx Iˆ I yx I zx 前問より、 L Iˆω I xx ( y z ) dxdydz 2 2 I xy I yy I zy I xz I yz I zz I xy xydxdydz 対角成分を慣性モーメントと呼ぶ。(非対角成分は、慣性乗積)。 慣性モーメント 慣性モーメントを書き換えると、 I r 2 dm rは軸までの距離。 例えばIxなら、x軸までの距離は、 r2=y2+z2 dmは質量の微小部分 11 慣性モーメントが大きいと、 ・回し始めは回りにくい。 ・いったんある速度で回ると、止まりにくい。 微小部分とは 数学的には、 x dx (デルタx) xの差(有限) difference of x x x2 x1 (ディーx) 微小の(無限に小さい)x differential of x 図に描くときは、dxは有限の大きさで書く。 (無限に小さいと見えないため。) dx x dx x 微小部分をたくさん加えると、 全体の長さになる。 いろいろな微小部分 dx 長さの微小部分 x dx 微小部分dxの和は、全体の長さ 曲線の場合も同様 ds s ds 微小長さの和は、曲線全体の長さ 面積の微小部分 S dS surface 曲面の面積は、 微小面積dSの和。 体積の微小部分 V dV 微小体積をたくさん加えると 全体の体積になる。 volume 質量の微小部分 微小質量をたくさん加えると、 全体の質量になる。 m dm 1次元 dx dm dx 線密度(単位長さ当たりの質量) 2次元表面なら、 dm dxdy 面積密度(単位面積当たりの質量) 3次元の立体なら、 dm dxdydz 密度(単位体積当たりの質量) 剛体の運動 重心の運動以外に、「回転」を考える必要がある。 力のモーメント dL dt N N rF 角運動量Lは、剛体の場合は、 前回の計算より、 L Iˆω 行列 Iˆ F m r ω 回転ベクトル の対角成分が慣性モーメント。 慣性モーメント I r 2 dm dmは質量の微小部分 rはdmから軸までの距離。 軸が大事。 15 同じ剛体でも、軸が違えば、慣性モーメントが違う。 慣性モーメントを求めてみよう。 16 慣性モーメント I r 2dm rは軸までの距離。 dmは質量の微小部分 ある軸の周りの回転しにくさを表す量 問題 質量M、長さ2ℓの細い一様な棒の、 図の軸(中心を通る)の周りの慣性モーメントを求めよ。 2ℓ 教科書p.71 17 解答 I r 2 dm rは軸までの距離。 dmは質量の微小部分 z dx M -ℓ 0 x ℓ 線密度(単位長さ当たりの質量)をρとする。 dm=ρdx, 3 I x 2 dx 2 3 ρ=M/(2ℓ)より、 M 2 I 3 18 解答続き:別解1 z y方向の厚みをbとする。 z方向の高さをcとする。 体積密度をρとする。 ρ=M/(2ℓbc) y M 0 -ℓ dx x ℓ dm dxdydz b c 0 0 I dx dy dzx dxx 2 2 b c 0 0 dy dz 2 3 M 2 bc 3 3 19 解答続き: 別解2 x-ℓ dx M xを棒の端からとる。 0 I 2 0 x 2ℓ x 2 3 ( x ) 2 2 ( x ) dx 3 3 x 0 ρは線密度で、ρ=M/(2ℓ)より、 3 M 2 I 3 20 慣性モーメント続き (重積分) 問題 質量Mの長方形の板ABCDがあり、 AB, BDの長さはそれぞれ2a, 2bであるとする。 A 2a M C B 2b D (a) 長方形と同じ面内で、AB, CDの中点を通る軸の周りの 慣性モーメントを求めよ。 (b) 中心を通り、長方形に垂直な軸の周りの 慣性モーメントを求めよ。 21 (a)の解答 z b 図のように座標をとる。 y方向の厚さをcとする。 y x dx 0 a x 座標(x,y,z)にある 微小部分を考えると、 M (2a)(2b)c dm dxdydz 回転軸までの距離はx a b c a b 0 a I dx dz dyx dxx 3 4a Ma bc 3 3 2 a 2 b c b 0 dz dy 2 22 z (b)の解答 y 図のように座標をとる。 x 座標(x,y,z)にある 微小部分を考えると、 dm dxdydz M (2a)(2b)c 回転軸までの距離rは r 2 x 2 y 2 a b c a b 0 a b a b y I dx dy dz( x 2 y 2 ) x c dx dy( x 2 y 2 ) a b a b 2 c dxx dy dx y 2 dy b a b a 2a 3 2b 3 M a 2 b 2 c 2b 2a 3 3 3 23 慣性モーメントの続き。 問題 教科書p.72 一般に慣性モーメント I r 2 dm rは軸までの距離。 dmは質量の微小部分 を重心を通らない軸の周りで求めたいとする。 重心を通る軸(図)の周りの慣性 モーメントIGを使って、 I I G Mb 2 (bは2つの軸間の距離) と書けることを示せ。 これを使って、棒の端を通る軸の周りの 慣性モーメントを求めよ。 M b 2ℓ 24 円筒座標をやる前に 復習をします。 1.三角関数の復習(高校数学) 2.2次元極座標の復習(高校の数学B) 3.円筒座標の復習(前期) 25 三角関数の 復習 高校の数学1,数学2 図のように、直角三角形を置く。 (角度φが水平からの角度、直角部分が右下) 水平の辺 cos 斜辺 垂直の辺 sin = 斜辺 斜辺 φ 水平の辺 高校では、角度はθ(シータ)を用いたが、 後で極座標や円筒座標と比較するために、 φ(ファイ)を使っている。 垂直の辺 2次元極座 標 高校の数学Cの復習 質点の位置P(x,y)を2次元極座標(r,φ)で表す。 x r cos y r sin y P(x,y) r r≧0 0≦φ<2π 高校ではθを使うが、 後の都合でφを 使っている。 0 φ x 質問:なぜφの範囲を0からπにして、 rをマイナスも考えないか? ぐるっと回った時に、 rがプラスからマイナスになるのは、 不連続な変化になってしまう。 rはずっとプラスにしておく。 y 0 x 2次元極座標、続き r=一定の図形 y 半径rの円 x 0 φ=一定の図形 半直線 y 0 x 少し質点に戻って。。 円筒座標系 粒子と一緒に動く 座標系 30 教科書p.2の1-1図の右 z 質点の位置P(x,y,z)を円筒座標(r,φ,z)で表す。 円筒座標系 x r cos y r sin zz φ(ファイ) 0 x P(x,y,z) φ r Q 点P(x,y,z)のxy平面上への射影を Qとする。 OQの長さがr, x軸からOQへの角度がφ 角度によく使う記号。 0≦φ<2π 問題 円筒座標系で、下記の条件を満たす点の集合は、 どのような面になるか。それぞれ3次元空間内に図示せよ。 (a)r=一定 (b) φ=一定 (c)z=一定 31 y 教科書p.2の1-1図の右 円筒座標 z P 0 x P(x, y, z) y r Q x r cos y r sin zz y xy平面 Q r O x 32 問題の解答 z=一定 x z 0 xy面からの距離が一定。 無限に広がる平面 y 例:床から3mの高さの点の集合は、 天井になる。 問題の解答 r=一定 r x 0 y 円筒座標のrの定義に注意。 xy平面に射影した時の原点からの 距離 (つまり、z軸との距離) r=一定は、円筒の側面になる。 上下に無限に続いている。 例1:海苔の缶の側面だけ。これが無限に広がったもの。 例2:トイレットペーパーの芯の部分が 無限に広がったもの。 問題の解答2 φ一定 φはxy面上に射影した時の、 x軸からの角度。 0 x y φ=一定の図形は、 半平面。上、下、rが大きくなる方向 に無限に広がる。 z軸の反対側には行かない。 φの範囲は0から2π。 反対側は違うφになる。 参考:極座標(後期に詳しくやります。) z θ 0 x P P(x,y,z) z r Q r Q θ y O y y Q O x x 角度が2種類必要。片方がθ、もう片方がφ。 -> 円筒座標の角度φと同じ測り方。 rの取り方が違うことに注意。 極座標では原点からの距離。 円筒座標では、xy面上に射影してから、原点からの距離。 極座標は球対称な場を考えるときに使う。 例:電荷が球状に分布している場合。 36 円筒座標を使うメリット ・円運動、らせん運動、円筒の 対称性を持つ系 (例えば直線電流の周りの磁場)を 扱いやすい。 37 次に 円筒座標系の 基本ベクトルを求める。 (粒子が動くと、基本ベクトルも動く。) 38 基本ベクトルと は 長さが1 お互いに直交する。 3次元なら3個 (2次元なら2個) 座標系によって、基本ベクトルが違う。 その座標系のベクトルを、 基本ベクトルを使って書く。 1) 直交座標 2) 円筒座標 3) 極座標 (後期にやります。) 直角座標系の基本ベク トル ex , e y , ez x軸、y軸、z軸方向の単位ベクトル(長さ1)。 x, y, zがそれぞれ増える方向 z 成分で書くと、 e x (1,0,0) ez e y (0,1,0) e z (0,0,1) ex O y ey 終点 x 始点 ベクトルの始点(矢印の根元)を原点に置いた時の、 ベクトルの終点(矢印の先)の座標で表す。 動径ベクトル r radius vector 位置ベクトルとも言う。 r xex ye y zez z ある原点Oからのベクトル。 P(x,y,z) r ez ex x 復習 O ey y 41 円筒座標系の基本ベクトル x r cos y r sin zz 円筒座標系の基本ベクトル。 長さは1で、点Pにおいて、 er e ez rが増える向き。 φが増える向き z 0 φ r P(x,y,z) y x x軸、y軸、z軸は、 空間に固定されている。 注意: e 点Pにおいて、r,zは 一定で、φが微小量だけ 増える向き。 zが増える向き。 問1:er , e , ez を図示せよ。 問2: er , e , e z のx,y,z成分が 右のようになることを示せ。 e r cos sin 0 e sin cos 0 e z 0 0 1 42 解答:基本ベクトルの図示 z e er 0 r x y xy平面 ez ez y はz軸方向の長さ1のベクトル。 e z 0 0 1 erとe はxy平面内のベクトル。 z成分はゼロ。 e er r x er はx軸と角度φなので、 e は er cos sin 0 er と垂直な方向。 e sin cos 0 O 43 解答:基本ベクトルの図示 er e 1 1 α φ α er cos sin 0 φ φ+α=90° e sin cos 0 44 解答:基本ベクトルの成分表示 前問の結果から、円筒座標の基本ベクトルのx,y,z座標は、 e r cos sin 0 e sin cos 0 e z 0 0 1 x,y,z方向の基本ベクトルを使って書くと、 er e x cos e y sin e e x sin e y cos 45 解答補足:円筒座標系の基本ベクトルの図示 z 0 x ez e er r y 基本ベクトルは、数学のベクトルなので、 平行移動してよい。 円筒座標や極座標を物理で使う時は、 粒子のいる位置を始点に矢印を書くことが多い。 46
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