ポリシーミックス及びルールと裁量 金融概論(小川担当分)2014 1 ポリシー・ミックス ポリシー・ミックス:複数の政策目標を同時に達 成するために複数の政策手段を組み合わせて 運用する。 Tinbergen:「n個の政策目標の達成には、少なく ともn個の独立な政策手段を必要とする。」 Mundell:「有効市場分類原理」ある政策手段を ある政策目標に割り当てるときに、政策目標に 対して相対的に効果の高い政策手段が割り当て ることが必要である。 金融概論(小川担当分)2014 2 政策割当の例 (1) (2) 固定相場制度下における政策割当 政策手段:①金融政策と②財政政策 政策目標:①完全雇用と②国際収支均衡 モデル 物価固定( P P* =1) 財市場均衡(IS)と貨幣市場均衡(LM)と国 際収支均衡(EE) 金融概論(小川担当分)2014 3 モデル 財市場均衡 Y C I G X IM Y C I G NX Y f Y T , r g r G h Y T , E 貨幣市場均衡 M L Y , r 国際収支均衡 h(Y T , E) k (r r * ) 0 金融概論(小川担当分)2014 4 図:IS-LM-EE r IS EE LM Y 金融概論(小川担当分)2014 5 金融政策目標のトレードオフ r IS LM EE A Yf(完全雇用水準) 金融概論(小川担当分)2014 Y 6 金融政策による完全雇用達成 but 国際収支不均衡拡大 r IS LM LM’ EE A B Yf(完全雇用水準) 金融概論(小川担当分)2014 Y 7 金融政策による国際収支均衡達成 but 失業増大 r EE IS LM” LM C A Yf(完全雇用水準) 金融概論(小川担当分)2014 Y 8 ポリシー・ミックスと政策割当 金融政策目標のトレードオフ 1つの金融政策手段のみでは同時に2つの政策目標を達成で きない。一方の目標を均衡に近づけると、他方の目標が均 衡から遠ざかる。 ポリシー・ミックスと政策割当 2つの政策目標には2つの政策手段を利用。 ① 財政政策⇒国際収支均衡 金融政策⇒失業 ② 財政政策⇒失業 金融政策⇒国際収支均衡 ②のポリシー・ミックスが必要。①のポリシー・ミックスは不均衡 を拡大。 金融概論(小川担当分)2014 9 財政政策⇒国際収支均衡 金融政策⇒失業 r EE IS LM LM’ IS’ A D Yf(完全雇用水準) 金融概論(小川担当分)2014 Y 10 財政政策⇒失業 金融政策⇒国際収支均衡 r IS EE IS’ LM’ E LM A Yf(完全雇用水準) 金融概論(小川担当分)2014 Y 11 ルールと裁量 時間不整合性(time inconsistency) 裁量的政策は、時間を通じて整合的な、あ るいは、一貫したものとはならず、さらに、 その政策の効果は自然失業率以下に失 業率を減少させることができず、インフレ率 を高めるだけという経済の悪い状態に陥る。 金融概論(小川担当分)2014 12 フィリップス曲線と自然失業率仮 説 フィリップス曲線:インフレ率と失業率との関係 ①失業率↓⇒名目賃金上昇率↑⇒インフレ率↑ ②予想インフレ率↑⇒名目賃金上昇率↑⇒インフ レ率↑ f (U ) e e インフレ率の完全予見( )の下では、失業 率は自然失業率水準で一定。 金融概論(小川担当分)2014 13 図:フィリップス曲線と自然失業率仮説 π 1 f (U ) e ( e 1 ) 0 U f (U ) e ( e 0) 金融概論(小川担当分)2014 14 時間不整合性のモデル分析 (1)中央銀行の金融政策 中央銀行の政策目標:ゼロインフレ(π=0)と自然失業 率以下の失業率(U=UN-a) 損失関数 L 2 (U U N a)2 を最小化 フィリップス曲線 1 f (U ) (U N U ) e b e フィリップス曲線を損失関数に代入すると、 2 2 e L b( ) a e 最適な金融政策(民間部門の予想インフレ率 を所 2 与として) b e ab C e D 1 b 2 金融概論(小川担当分)2014 1 b 2 15 時間不整合性のモデル分析 (2)民間部門の予想インフレ率 民間部門:完全予見 e 中央銀行の最適な金融政策と民間部門の完全 予見より、 ab e 金融概論(小川担当分)2014 16 裁量的金融政策の時間不整合性 π PP(民間部門の予想) e AA(中央銀行の金融政策) C D e N abω A 0 πe abω 金融概論(小川担当分)2014 17 時間不整合性とナッシュ均衡 インフレ率=予想インフレ率=0のとき、中央銀行 の損失 2 2 e L b( ) a a 2 ナッシュ均衡:インフレ率=予想インフレ率=abω のとき、中央銀行の損失 2 2 e L b( ) a a 2b2 2 a 2 民間部門が完全予見であれば、中央銀行の金融 政策と民間部門の予想はナッシュ均衡となり、ゼロ インフレ率をめざすときよりも損失が大きくなる。 金融概論(小川担当分)2014 18
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