睡眠と呼吸 島根大学医学部附属病院 呼吸器内科 濱口俊一 睡眠時無呼吸症候群 県警、運転士ら事情聴取 JR西、全運転士と面談 新幹線居眠り JR山陽新幹線で26日、運転士(33)が居眠りして岡山駅手前 で停車した事故で岡山県警は27日、業務上過失往来危険、 鉄道営業法違反などの疑いで捜査を始めた。 事故は26日午後3時過ぎに発生。広島発東京行き「ひかり12 6号」の運転士が、岡山駅到着の約8分前から眠り込み、列車 は同駅の所定位置より約100メートル手前に自動停止した。 運転士はJR西日本の事情聴取に対し、「前日は公休で十分に 睡眠をとった。なぜ眠くなったかは自分でも分からない」と話し ている。 JR西日本は今回の事故について、「健康上のトラブルはなく、 運転士の気のゆるみが原因」との見方を強めている。 2003年2月27日 朝日新聞より一部抜粋 睡眠時無呼吸症候群とは • 睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に呼吸が 止まる病気 • 眠っている時のいびきや息が止まっているの を家族に指摘されたり、昼間のひどい眠気で 気付くことが多い • 日本人の約7~9%が睡眠時無呼吸症候群に かかっているといわれている 睡眠時無呼吸症候群とは • 睡眠時に10秒以上呼吸が止まっていれば、 睡眠時無呼吸(Apnea)という • 睡眠時に10秒以上呼吸が弱くなり、酸欠状態 になれば睡眠時低呼吸(Hypopnea)という • 睡眠時無呼吸と睡眠時低呼吸が1時間あたり 5回以上であれば睡眠時無呼吸症候群となる • 無呼吸・低呼吸により様々な症状が出現する 睡眠時無呼吸症候群の症状 睡眠時に呼吸が止まると、 ①酸素不足による症状 酸素不足で睡眠中に体にストレスがかかり続ける ②睡眠不足による症状 睡眠中の酸素不足により深い睡眠が得られなくなり、 睡眠不足になる 睡眠時無呼吸症候群の症状 酸素不足により起こりうる病気・症状 ・交感神経、副交感神経(自律神経)の異常 ・高血圧症、不整脈 ・糖尿病 ・脂質異常症(高脂血症) ・動脈硬化 ・狭心症、心筋梗塞 ・脳卒中 ・頭痛 睡眠時無呼吸症候群の症状 睡眠不足により起こりうる病気・症状 ・日中の眠気 ⇒居眠り運転や産業事故の原因 ・体のだるさ、集中力の低下、抑うつ気分 睡眠時無呼吸症候群の種類 • 閉塞性睡眠時無呼吸 大部分は咽頭(のどのあたり)の気道(空気の通り道)の 閉塞が原因。 その閉塞は咽頭の形の異常と機能の異常により起こる。 • 中枢性睡眠時無呼吸 • 混合型睡眠時無呼吸 咽頭(のど)の形の異常 骨格 脂肪・筋肉 咽頭(のど)の機能の異常 のどの気道(空気の通り道)の周囲には筋肉がある。 筋肉の筋緊張が低下すると、気道がつぶれて閉塞し やすくなる。 気道周囲の筋 筋緊張の低下 筋緊張低下の原因 飲酒 睡眠薬 加齢などによる筋力低下、など 睡眠時の咽頭(のど) 気道が狭い状態で仰向けで寝ると、、、 さらに気道が狭くなり、呼吸が止まってしまう! 睡眠時無呼吸症候群の種類 • 閉塞性睡眠時無呼吸 咽頭(のどのあたり)の気道(空気の通り道)の 閉塞が原因。 その閉塞は咽頭の形の異常と機能の異常により 起こる。 • 中枢性睡眠時無呼吸 呼吸中枢(呼吸調節の司令塔)の異常が原因。 心不全や脳・神経の病気で起こる。 • 混合型睡眠時無呼吸 睡眠時無呼吸症候群の重症度 重症度は1時間あたりの睡眠時無呼吸(Apnea)、 睡眠時低呼吸(Hypopnea)の回数が用いられる。 1時間当たりの睡眠時無呼吸(Apnea)と 睡眠時低呼吸(Hypopnea)の回数 Apnea-Hypopnea Index(AHI) AHIが高いほど重症 睡眠時無呼吸症候群の重症度 A:無呼吸数による重症度 軽症 : 5≦AHI<15 中等症 :15≦AHI<30 重症 :30≦AHI B:眠気による重症度 軽症 :あまり集中していないとき、眠気が出たり、気付かず眠ってしまう (テレビをみている時や読書している時、乗り物の乗っている時) 中等症 :多少集中力が必要な時、眠気が出たり、気付かずに眠ってしまう (耐えがたい眠気がコンサート、会議、発表などに参加してる時起こる) 重症 :かなり集中を必要とする活動時、眠気が出たり、気付かず眠ってしまう (耐えがたい眠気が食事中、会話中、歩行中、運転中などに起こる) A、Bどちらか重症な方をとる 検査 *終夜睡眠ポリソムノグラフィ(polysomnography:PSG) 無呼吸の種類、重症度が分かる検査 測定項目:脳波、眼球運動、筋運動、呼吸の気流、 心電図、胸部呼吸運動、腹部呼吸運動、酸素飽和度、 いびき、体位 *簡易モニター(PSGの簡易版) 自宅でも検査可能な簡易検査。検査の精度はPSGより悪い。 測定項目:呼吸の気流、心電図、呼吸運動、酸素飽和度 *原因となる病気を探すための検査 血液検査(糖尿病、脂質異常症、心不全)、心電図、 胸部X線、血圧、CT検査など 治療 • 無呼吸の原因の治療(減量、心不全治療など) • 持続気道陽圧療法 (continuous positive airway pressure:CPAP) • 適応補助換気(adaptive servo-ventilation/auto servo ventilation:ASV) • 口腔内装置療法 持続気道陽圧療法:CPAP 持続気道陽圧療法(CPAP):鼻にマスクを着けて空気を送り込むこと により、睡眠時の気道の閉塞を解除する治療法。 睡眠時無呼吸症候群(特に閉塞性)に最も効果が期待できる治療法。 CPAPの保険適応基準 (A)以下の1)、2)を満たす場合 睡眠時無呼吸症候群の原因を 簡易モニターによる適応 1)無呼吸指数(AHI)が40以上 2)日中の眠気、起床時の頭痛などの自覚症状が 取り除く治療ではありません! 強く、日常生活に支障をきたしている場合 (B)以下の1)、2)、3)を満たす場合 PSG(精密検査)による適応 1)無呼吸指数(AHI)が20以上 2)日中の眠気、起床時の頭痛などの自覚症状が 強く、日常生活に支障をきたしている場合 3)PSGで、睡眠時無呼吸が原因で睡眠が十分で ない場合、CPAPで睡眠が正常化する場合 CPAPの問題点 皮膚損傷 目への刺激 口からの空気もれ マスクからのもれ 不快感 鼻閉 鼻出血 鼻水 閉所恐怖 息の吐きづらさ 空気を飲み込む 機器の騒音 チューブ・マスクの結露 持ち運びが大変 適応補助換気:ASV 適応補助換気(ASV):鼻にマスクを着けて空気を送り込む。そのときの 呼吸状態に合わせて、送り込む空気圧を自動調節する。 1回の呼吸で出入りする空気の量が毎回同じになるため、呼吸状態が 安定する。 呼吸状態が不安定になりやすい、中枢性睡眠時無呼吸症候群への 効果が高い。 CPAPと比べると高価。 睡眠時無呼吸症候群への保険適応は定まっていない。 口腔内装置療法 あごを前に出すことで気道を広げる まとめ • 睡眠時無呼吸症候群は、生命に危機をおよぼす さまざまな病気を引き起こす • 睡眠時無呼吸症候群は肥満の人がなりやすいが、 骨格が小さい人、顎が小さい人もなりやすい • CPAP治療は睡眠時無呼吸症候群の原因治療で はない
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