2013年11月16日 新潟大学小児科アレルギーチーム 第2回アレルギーブートキャンプ 気管支喘息診療 ~呼吸機能検査について~ 新潟医療センター 高見暁 小学校~高校生の喘息有症率 気管支喘息の児童生徒はどれくらいいるでしょうか? 小学校~高校生の喘息有症率 学校生活管理指導表(アレルギー疾患用):喘息 病型・治療 学校生活上の留意点 緊急時連絡先 医師名 医療機関名 小児気管支喘息診療のスタンダード 作成:日本小児アレルギー学会 出版:協和企画 定価 3500円 (2011年10月発行) 小児気管支喘息診療のスタンダード 作成:日本小児アレルギー学会 出版:協和企画 定価 1500円+税 (2013年5月発行) 小児気管支喘息の診断 〔症状〕 • 喘鳴、呼気延長、呼吸困難を繰り返す 〔既往歴・家族歴〕 • アレルギー疾患を有する場合が多い 〔検査〕 • IgE高値、特異的IgE(吸入系)陽性 • 呼吸機能検査、気道過敏性試験、呼気中NO測定 〔鑑別(気道感染症以外)〕 • 胃食道逆流、気道異物、声帯・喉頭の異常、腫瘍等の気道圧迫、等々 〔乳幼児喘息(2歳未満)〕 • 気道感染の有無に関わらず、明らかな呼気性喘鳴を3エピソード以上 繰り返す 「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012」より 小児気管支喘息の治療目標 〔症状のコントロール〕 • β2刺激薬の頓用が減少、または必要ない。 • 昼夜を通じて症状がない。 〔呼吸機能の正常化〕 • ピークフローやスパイログラムがほぼ正常で安定している。 • 気道過敏性が改善し、運動や冷気などによる症状誘発がない。 〔QOLの改善〕 • スポーツも含め日常生活を普通に行うことができる。 • 治療に伴う副作用が見られない。 「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012」より 気管支喘息の病態 〈喘息ではない子供の気道〉 〈発作時の気道〉 正常な気道の状態には 戻りにくい 完全には回復せず 気道炎症が残っている状態 リ モ デ リ ン グ が 進 行 ・喘息患児の気道 ・喘息ではない子供の気道 著 明 な 好 酸 球 浸 潤 画像 : 気道生検×630 〈発作後(無症状期)の気道〉 基 底 膜 網 状 層 の 肥 厚 Barbato A et al. : AJRCCM 168 : 798, 2003一部改変 監修 : 東京慈恵会医科大学 小児科学 勝沼 俊雄 気管支喘息の病態 〈喘息ではない子供の気道〉 〈発作時の気道〉 正常な気道の状態には 戻りにくい 〈発作後(無症状期)の気道〉 完全には回復せず 気道炎症が残っている状態 リ モ デ リ ン グ が 進 行 呼吸機能検査:この状態を客観的に評価する方法の一つ ・喘息患児の気道 ・喘息ではない子供の気道 著 明 な 好 酸 球 浸 潤 画像 : 気道生検×630 基 底 膜 網 状 層 の 肥 厚 Barbato A et al. : AJRCCM 168 : 798, 2003一部改変 監修 : 東京慈恵会医科大学 小児科学 勝沼 俊雄 コントロール状態による喘息治療の調整(JPGL2012) 気管支喘息治療の予後 ~喘息は治らない?~ ● 3歳前から6歳までに喘息を発症した群で、 22歳まで継続?%、途中寛解し22歳までに再発?% (Stern DA et al. Lancet 2008; 372: 1058-64) 気管支喘息治療の予後 ~喘息は治らない?~ ● 3歳前から6歳までに喘息を発症した群で、 22歳まで継続59%、途中寛解し22歳までに再発13% (Stern DA et al. Lancet 2008; 372: 1058-64) ● 3歳から26歳までに2回以上喘鳴があったのは51.4%、 26歳の時点でまだ喘鳴があるのが26.9%(継続14.5%、 再発12.4%)。 (Sears MR et al. N Engl J Med 2003; 349:1414-22) 気管支喘息の定期受診時の 問診ポイント • • • • • • • • 咳嗽の有無:本人、保護者それぞれに 咳止め薬(ホクナリン、ムコダイン等)の使用の有無 気管支拡張薬吸入の使用の有無 学校・園を休まなかったか 運動時の症状=運動誘発喘息:本人に、具体的に 鼻炎症状の有無 感染症の有無 よく寝られているか Japanese Pediatric Asthma Control Program (JPAC) 15点:完全コントロール、14~12点:良好なコントロール、11点以下:コントロール不良 吸入ステロイド薬が有効な場合の指標 (Bates et al. J Allery Clin Immunol Vol 111. 2. p256-262) 症例のプロフィール(1) 症 例:11歳男児 主 訴:繰り返される喘息発作 既往歴:アレルギー性鼻炎 家族歴:母方曾祖父に気管支喘息 現病歴: 気管支喘息を1歳で発症し、近医総合病院にて各種治療を 行っていたがコントロール不良であった。2008年秋より小発 作や中発作が持続し、頻回のメチルプレドニゾロンの頓用や 入院治療を必要とした。 症例のプロフィール(2) 前医での治療内容 ・ブデソニド(BUD)吸入(1200μg/ 日) ・ロイコトリエン受容体拮抗薬 ・テオフィリン徐放製剤 ・長時間作用性吸入β2刺激薬(LABA) ・抗コリン薬吸入 ・Th2サイトカイン阻害薬 JPGLのステップ4の治療に関わらず発作を繰り返し、時に大発 作となるため、2009年4月20日群馬大学医学部附属病院小児 科へ入院した。 入院時検査所見 ・非特異的IgE : 1812 IU/ml ・RAST (class) : ヤケヒョウヒダニ (5)、ハウスダスト (5)、 スギ (6)、ヒノキ (4) ・胸部CT検査:気管、気管支に明らかな狭窄所見認めず。 ・フローボリューム曲線 %FVC %FEV1 %MMF 吸入前 95.0% 81.4% 57.0% 吸入後 100.9% 97.5% 99.2% ・eNO濃度:164.9 ppb (基準値:5~15) 入院後経過 大量の吸入ステロイドを使用していたが、 eNO濃度164.9ppbと気道炎症が治まっておらず、 フローボリューム曲線より末梢気道狭窄も認められた。 患児の吸入方法を確認したところ、吸入時間が非常に短くほと んど気道内に入っていない状態であった。 吸入方法の指導を徹底し、ステロイド吸入量を増量するため BUD吸入1200μg/日からフルチカゾン吸入1000μg/日に変更 した。 当科入院 ピ ー ク フ ロ ー の 測 定 方 法 ピークフロー測定の意義 • 気道閉塞の経時的・経日的変化を追跡できる。 • 急性発作への適切な対応と治療効果が評価できる。 • 自覚症状および他覚症状がない早期の時点での気道閉塞 の認識ができる。 • 日内変動による重症度を評価できる。 • 特定の抗原や誘発因子が解明できる。 • 長期的治療の効果や妥当性が評価できる。 • 喘息児に治療の主体性を持たせることができ、患者教育に 役立つ。 • 喘息児と医師のコミュニケーションの促進に役立つ。 「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012」より 呼吸機能検査の意義 • 気流制限=閉塞性換気障害の程度と性質を評価できる。 • 気管支拡張薬に対する反応性を確認できる。 • 長期管理薬の減薬や中止の判断を行う場合に客観的根拠 になる。 • 長期的治療の効果や妥当性が評価できる。 • 喘息児に治療の主体性を持たせることができ、患者教育に 役立つ。 • 喘息児と医師のコミュニケーションの促進に役立つ。 「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012」より スパイロメトリー解釈のポイント • 一秒量(FEV1)、一秒率(FEV1%) 中枢気道の閉塞性変化の指標 喘息の重症度の指標としてはFEV1%がより感度が高い • V50、V25 末梢気道の閉塞性変化の指標 自覚されていない平滑筋の収縮、気道炎症による粘膜浮腫や分泌亢進、 気道リモデリングによる器質的変化の存在を考える • 可逆性 β刺激薬吸入後のFEV1改善率が12%以上(小児では10%でも可)で陽性 喘息の診断基準のひとつ 吸入ステロイドへの反応性と相関 治療中でも可逆性が大きい場合治療が不十分な可能性を考える 藤澤隆夫 日本小児アレルギー学会誌第26巻第4号,p640-645,2012
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