650 日呼吸会誌 39(9) ,2001. ●原 著 肥満が睡眠時無呼吸症候群に与える影響 ―とくに低酸素血症への影響について― 宋 以信1)2) 中野 博1) 池田 東吾1) 岩永 知秋1) 西間 三馨1) 要旨:肥満が睡眠時無呼吸低呼吸症候群(SAHS)の病像に与える影響について,横断的に検討した.対象 は SAHS を疑って睡眠ポリグラフ(PSG)を施行し,無呼吸低呼吸指数(AHI)15 hr 以上であった患者 87 名である.BMI の中央値 27 kg m2 の上下 2 群(O 群,N 群)にわけて比較検討した.その結果,症状,睡 眠の質,AHI は両群間で差が無かったが,O 群では低酸素血症の諸指標はすべて程度が強かった.無呼吸持 続時間は両群間で差が無く,無呼吸時の SpO2 低下速度は BMI と強い相関を認めたことから,O 群で低酸 素血症が高度であるのは,無呼吸に伴う酸素飽和度低下速度が速いためと考えられた.脂肪分布との関連で は,無呼吸時 SpO2 低下速度は腹囲と,AHI は頚囲との相関が強かった.肥満,とくに腹部肥満は SAHS に 対し重症度とは別に無呼吸時の低酸素血症を増強させる.これは循環器疾患の risk factor としての SAHS を考える上で重要であると考えられる. キーワード:睡眠時無呼吸低呼吸症候群,低酸素血症,肥満 Sleep apnea-hypopnea syndrome,Hypoxemia,Obesity 緒 自覚症状は初診時に質問紙法で調べた.このうち日中 言 睡眠時無呼吸低呼吸症候群(sleep 過剰傾眠については Epworth sleepiness scale(ESS)3) apnea-hypopnea syndrome ; SAHS)は肥満がその発症や重症化に関与す 1) る 代表的な疾患の一つであるが,非肥満者にも稀では を用いた. 2)身体計測 身長,体重を測定した.さらに男性 52 名では頚囲(甲 なく,従来,日本での SAHS は欧米の報告に比べ一般 状軟骨下部) ,腹囲(臍位) ,臀囲,皮脂厚(上腕 3 頭筋 に肥満が少なかった.しかし日本でも,とくに男性で肥 上,肩甲骨下部,腹部)を計測した.これらの計測値と 満者が増加しつつあり2),SAHS の病像は今後変化して 他のパラメータとの相関の検討に際しては,体格による いく可能性が考えられる.そこで本検討では,肥満が 差を除外するため,身長で除した値を用いた. SAHS に及ぼす影響について横断的に検討した.その検 3)睡眠ポリグラフ 討の結果,肥満はとくに低酸素血症への関与が大きいこ 多用途脳波計(日本光電)を用いて,脳波(C3-A2), とが明らかになったので,その点に焦点をあてて,SAHS 左右眼電図,おとがい筋電図,サーミスター気流曲線(鼻 における低酸素血症の要因について詳しく検討した. 孔,口) ,インダクタンスプレシスモグラフ(米国 AMI 対象と方法 社 Respitrace)の胸郭,腹壁出力を収録,A D 変換器 (Canopus ADN 1400)で A D 変換(14 bit,50 Hz)し 1)対象 パーソナルコンピュータ(NEC 9801 NE)に入力した. 1998 年 4 月から 2000 年 9 月の間に,いびき,眠気, また指尖のパルスオキシメータ(ミノルタ PULSOX 7) 窒息感での覚醒など,SAHS を疑う自覚症状のため国立 のデジタル出力を RS 232 C を介して直接にパーソナル 療養所南福岡病院を受診し,診断のための終夜睡眠ポリ コンピュータに入力した.睡眠段階は,収録されたデー グラフがおこなわれた 120 名のうち,無呼吸低呼吸指数 タをパーソナルコンピュータのディスプレイ上に一画面 (apnea hypopnea index ; AHI)15 hr 以上であった患 者 87 名(男性 79 名,女性 8 名)を対象とした. 〒811―1394 福岡市南区屋形原 4―39―1 1) 国立療養所南福岡病院呼吸器科 2) 北京大学第一医院老年病科 (受付日平成 13 年 1 月 9 日) 15 秒で再生し,Rechtshaffen & Kales の国際基準4)に基 づき判定した.無呼吸は 10 秒以上の気流停止,低呼吸 は,インダクタンスプレシスモグラフの振幅(胸郭,腹 壁の合計)の 50% 以上の低下が 10 秒以上持続し 120 秒 以内に回復するものと定義し,その検出は,コンピュー タのプログラムにより自動的に検出されたものを視覚的 肥満が睡眠時無呼吸症候群に与える影響 651 に確認することでおこなった.無呼吸についてはインダ 酸素飽和度の低下度(∆SpO2 at apnea events of 10―20 クタンスプレシスモグラフ上,胸郭・腹壁の呼吸運動を second duration)の平均値を各症例で求めた. 伴わないものを中枢型,胸郭・腹壁の奇異性運動を伴う 5)検討方法 ものを閉塞型と分類した.無呼吸と低呼吸の睡眠 1 時間 まず肥満の影響を全体とし て 知 る た め に,対 象 を Body mass index(BMI:体重 身長2)の中央値 27 kg あたりの回数の和を AHI とした. 4)パルスオキシメトリーの解析 m2 の 上 下 2 群(O 群:BMI 27 以 上,N 群:BMI 27 未 パルスオキシメトリーのデータはサンプリング周期 2 満)にわけ,自覚症状,および睡眠ポリグラフの諸指標 秒でデジタルデータとして保存しパーソナルコンピュー について比較した.その結果で差が認められた低酸素血 タを用いて以下の解析をおこなった.その算出項目は酸 症の要因について明らかにするために,酸素飽和度の底 素飽和度低下指数(ODI : oxygen desaturation index), 値平均,無呼吸持続時間,SpO2 基礎値,BMI などの相 SpO2 90% 未満低下時間(T 90 ; %Time spent with SpO2 互関係について検討した.また,脂肪分布の影響を知る <90%) ,SpO2 底値平均(mean nadir SpO2) ,SpO2 基 ため,詳しい身体計測がおこなわれた男性 52 名につい 礎値(baseline SpO2)などである.ODI は SpO2 の 3% て,身体計測諸値と睡眠ポリグラフの諸指標について相 以上の一過性低下の出現回数を検査時間で除した値と定 関を求めた. 義した.T 90 は検査時間に対する SpO2 90% 未満の時 6)統計処理 間の比率で,百分率で表した.SpO2 底値平均は,3% 2 群間での平均値の比較は Student’ s t test を,2 つの 以上の一過性酸素飽和度低下事象(desaturation events) 変数の相関は Spearman の順位相関係数を用いて検討 での SpO2 最底値の平均値として算出した.SpO2 基礎 した.また SpO2 底値とそれに関与する変数との関係に 値は,検査開始時 2 分間で最も出現頻度の高い SpO2 値 ついては重回帰分析を使用した.これらの統計学的解析 とした.このほかに,無呼吸に際しての酸素飽和度の低 は医学統計パッケージ StatFlex を用いた. 下速度の指標として,短い無呼吸(10∼20 秒)に伴う Table 1 Characteristics of the subjects of non-obese(N)and obese (O)groups Gender (M : F) Age, years BMI,kg/m2 Neck circumference,cm Waist,cm Epworth sleepiness scale Times of nocturnal urination Sleep efficacy2),% Stage 1,% examination time Stage 2,% examination time Stage 3 + 4,% examination time Stage REM,% examination time Apnea-hypopnea index,/hr Mean duration of apnea-hypopnea,sec Baseline SpO23),% Mean nocturnal SpO2,% % Time spent below 90% SpO2,% Oxygen desaturation index4),/hr Mean nadir SpO25),% Δ SpO26),% N : BMI1) < 27 O : BMI ≧ 27 Mean SD Mean SD Difference (p value) 13.9 1.8 2.4 5.5 4.9 1.2 17.3 7.5 16.9 1.3 6.3 17.8 6.7 1.3 1.7 7.9 13.7 2.9 1.9 39:5 48.0 31.4 41.4 102.7 12.2 1.7 72.6 19.3 42.8 1.0 9.5 47.1 27.5 95.9 93.4 15.0 40.9 87.2 7.9 12.8 4.3 3.1 8.5 5.4 1.6 14.2 11.2 16.9 2.5 5.4 18.5 8.5 1.6 3.2 17.8 18.3 4.8 3.0 0.0078 < 0.0001 0.0009 < 0.0001 > 0.1 > 0.1 > 0.1 > 0.1 > 0.1 > 0.1 > 0.1 > 0.1 > 0.1 0.0124 0.0002 0.0010 < 0.0001 0.0001 < 0.0001 40:3 55.8 24.4 38.7 88.4 10.7 1.4 67.7 16.3 40.7 0.4 10.5 41.0 28.9 96.7 95.5 5.0 24.1 90.7 3.9 1)body mass index (kg/m2) 2)total sleep time/total examination time × 100 (%) 3)mode of SpO2 value during the first 2 minutes of polysomnography 4)number of SpO2 dips (≧ 3%)per hour of examination 5)mean value of SpO2 nadirs during SpO2 dips 6)mean fall in SpO2 at apnea episodes of 10―20 second duration 652 日呼吸会誌 結 39(9) ,2001. 3)脂肪の分布の影響(Table 2) 果 AHI と脂肪分布の各指標との相関は高くは無かった. 1)N 群と O 群の比較(Table 1) AHI と有意の相関を認めたのは,頚囲,腹囲,waist hip 年齢 は N 群 が O 群 よ り 有 意 に 高 か っ た(N : 55.8± ratio で,この順に相関係数が高かった.皮下脂肪の厚 13.9,O : 48.0±12.8 ; p=0.0078) .自覚症状(ESS,夜間 さとの間には有意の相関を認めなかった.これにたいし 尿回数)は両群間で差が無かった.睡眠効率,各睡眠段 SpO2 の低下速度は,各指標と比較的高い相関があり, 階の分布,AHI も両群間で差が無かった.無呼吸の型 とくに腹囲との相関が高かった. は全例で閉塞型優位であり,中枢型優位の症例は無かっ 考 た.夜間の SpO2 平均値は N 群より O 群で低く(N : 95.5 察 ±1.7,O : 93.4±3.2 ; p=0.0002) ,SpO2 90% 未満の時間 睡眠時無呼吸が個体に及ぼす影響は多様であるが,そ 比率も N 群より O 群で高く(N : 5.0±7.9%,O : 15.0± の主なものとして呼吸異常に伴う睡眠障害と,低酸素血 17.8% ; p=0.001) ,ODI-3 は N 群 よ り O 群 で 高 く(N : 症の 2 つの側面がある.本検討の結果をそのような観点 24.1±13.7%,O : 40.9±18.3% ; p<0.0001)無 呼 吸 中 の からみると,肥満の有無で AHI や睡眠構築,眠気の度 SpO2 底値平均値は N 群より O 群で低値(N : 90.7±2.9 合いに差はなく,一方酸素飽和度の各指標は肥満群で著 %,O : 87.2±4.8% ; p=0.0001)であった. しいことから,肥満は SAS に対して,睡眠の質の悪化 2)無呼吸中の SpO2 低下に関与する因子についての よりも,低酸素血症を増強させる要因としての面が大き 検討 いことが示された.また本検討で,肥満は無呼吸時間に SpO2 底値平均値と,無呼吸平均持続時間,SpO2 基礎 は影響を与えず,酸素飽和度の低下速度を高めることに 値,BMI,年齢のそれぞれとの相関係数は,−0.354(p より低酸素血症を増強させることが示された.また脂肪 =0.0008) ,0.381(p=0.0003),−0.519(p<0.0001),0.154 分布との関係で,AHI については頚部の脂肪蓄積が, (p=0.15)であった(Fig. 1) .有意の相関があった前 3 低酸素血症にたいしては腹部の脂肪蓄積が強い影響を持 者を説明変数,SpO2 底値平均値を目的変数として重回 つことが明らかになった. 帰分析をおこなうと,3 者とも有意であり(t 値はそれ 従来,AHI は肥満により影響を受けるとの報告が多 ぞれ 7.42,7.19,3.74) ,重回帰係数は 0.76 であった(p い5)6).本検討でも全体で検討すると AHI と BMI とは有 <0.00001) .3 者のうち,とくに無呼吸平均持続時間と 意の相関を認めたが,その関係は比較的弱かった(r= BMI の影響が大きかった.なお,無呼吸平均持続時間 0.25 ; p=0.02) .従来の報告は低呼吸の検出条件に酸素 と BMI との間には全く相関が無かった(r=0.123,p= 飽和度の低下を含めている場合が多く,肥満者では低酸 0.257) . 素血症が起こりやすいため低呼吸が検出されやすくなっ 酸素飽和度の低下速度の指標である 10∼20 秒の無呼 ていることが考えられる.本検討では,睡眠分断は上気 吸での SpO2 低下度(∆SpO2)は,SpO2 基礎値との相関 道抵抗症候群にも認められるように低酸素を伴わなくと は弱く(r=0.291,p=0.0062) ,BMI と強い相関(r=0.724, も生じるとの観点から,無呼吸低呼吸と低酸素血症とを p<0.00001)があった(Fig. 2) . 分離して評価する目的で,あえて酸素飽和度の低下を低 Mean nadir SpO2 (%) 95 95 95 90 90 90 85 85 85 80 80 r=−0.354 p=0.0008 r=0.381 p=0.0003 75 75 20 30 40 Mean duration of apnea/hypopnea 50 (sec) r=−0.519 p=0.0001 80 75 92 94 96 98 Baseline SpO2 100(%) 20 25 30 35 40 Body mass index 45 (kg/m2) Fig. 1 Mean nadir SpO2 is plotted against the mean duration of apnea hypopnea, the baseline SpO2 and the body mass index. There is a significant correlation between the mean nadir SpO2 and each of the three parameters. 肥満が睡眠時無呼吸症候群に与える影響 (%) SpO2 at apnea of 10−20s 15 r=−0.291 p=0.0062 653 15 10 10 5 5 r=0.724 p<0.00001 92 94 96 98 100(%) 20 Baseline SpO2 25 30 35 40 45 (kg/m2) Body mass index Fig. 2 Mean fall in SpO2 at apnea episodes of 10―20 sec( ∆SpO2)is plotted against the baseline SpO2 and the body mass index(BMI) . The correlation of ∆SpO2 with BMI is far higher than that with baseline SpO2. Table 2 Correlation of AHI and rate of SpO2 fall with anthropometric parameters ΔSpO21) AHI Body mass index Waist circumference/height Waist hip ratio Skin fold thickness/height abdomen triceps subscapular Neck circumference/height rs2) p rs p 0.236 0.315 0.286 0.086 0.020 0.036 0.653 0.588 0.378 < 0.001 < 0.001 0.007 0.086 0.118 0.103 0.353 > 0.1 > 0.1 > 0.1 0.010 0.475 0.300 0.459 0.511 < 0.001 0.029 < 0.001 < 0.001 1)SpO2 fall at apnea events of 10―20 second duration 2)Spearman’ s correlation coefficient 呼吸の条件として含めなかった.また AHI のカットオ 本検討で,腹部の脂肪蓄積が酸素飽和度の低下速度に影 フ値も影響していると思われる.AHI のカットオフ値 響が大きいことが示された.腹部の脂肪蓄積はとくに臥 については,従来,10 時間または 15 時間とする施設 床時には機能的残気量を減少させることが推測されるの 7) が多かった.一方最近の米国睡眠医学協会の定義 では で,それによる肺の酸素予備量の低下や換気血流不均等 5 時 間 以 上 を 陽 性 と し て い る.本 検 討 で は 明 確 な の結果としての血液の酸素飽和度の低下が大きな要因で OSAHS のみを検討対象とする目的で,Sleep hypopnea あると考えられる.このほか腹部脂肪蓄積は胸郭・腹壁 8) syndrome を提唱した Gould ら の定義に従い 15 時間 のコンプライアンスを低下させ無呼吸回復時の換気反応 以上を陽性とした. を低下させ,そのためベースラインの動脈血酸素分圧を 肥満が低酸素血症をきたすことは既に多くの報告が 低下させることが関与している可能性も考えられる.こ あり,臥床時の換気血流不均等がその主な原因と考えら の機序は無呼吸エピソードが頻発する AHI 高値例で働 れている.無呼吸に伴う低酸素血症は,無呼吸前の動・ いている可能性がある. 静脈血酸素飽和度,肺気量(とくに ERV) ,無呼吸持続 肥満の影響を脂肪分布からみた研究はすでに多くなさ 時間,酸素消費量などがその決定因子であるとされてい れており,とくに頚部周囲径や咽頭周囲の脂肪分布が る9)∼11).本検討では SAHS 患者の睡眠中の無呼吸時の酸 AHI と関連することを示した報告が多い6)12)∼14).本検討 素飽和度の低下速度を調べ,それが BMI により強く規 では脂肪の分布が,酸素飽和度低下速度と AHI とに異 定されている(r=0.72 ; p<0.00001)ことを明確に示し なった影響を与えることを示した.すなわち,酸素飽和 た点が従来の報告には無い新しい知見である.BMI は 度低下速度に最も影響が大きいのは腹囲であり,体幹の 前述の 4 つの因子のうち,無呼吸持続時間を除くすべて 皮下脂肪とも相関があるのに対し,AHI と相関するの に影響を与えている可能性がある.脂肪分布については, は,頚部周囲径,続いて腹囲や,W H 比であり,皮下 654 日呼吸会誌 39(9) ,2001. 脂肪との相関は無かった.腹囲や W H 比は内臓脂肪型 6)Young T, Palta M, Dempsey J, et al : The occur- 肥満の指標とされており,SAHS と内臓脂肪型肥満の関 rence of sleep-disordered breathing among middle- 係を示した Shinohara らの報告15)に一致している.しか aged adults. N Engl J Med 1993 ; 328 : 1230―1235. し頚囲や腹囲など内臓脂肪蓄積を示す指標もすべて 7)AASM Task Force : Sleep-related breathing disor- AHI とより酸素飽和度低下速度との相関の方がはるか ders in adults : recommendations for definition and に高く,脂肪蓄積はその分布にかかわらず低酸素血症へ の影響が強いことが示唆される. 本検討は臨床的にも意味を有している.診断面では, 肥満者では無呼吸時の酸素飽和度低下速度が大きいた measurement techniques in clinical research. Sleep 1999 ; 22 : 667―689. 8)Gould GA, Whyte KF, Rhind GB, et al : The sleep hypopnea syndrome. Am Rev Respir Dis 1988 ; 137 : 895―898. め,パルスオキシメトリーで容易に無呼吸が検出される 9)Strohl KP, Altose MD : Oxygen saturation during が,非肥満者では検出されがたいことを意味している. breath-holding and during apneas in sleep. Chest また治療面では,体重が減量すれば,酸素飽和度低下速 1984 ; 85 : 181―186. 度が減少し,少なくとも夜間の低酸素ストレスが緩和す 10)Fletcher EC, Costarangos C, Miller T : The rate of ることが期待される.われわれの予備的な検討では,本 fall of arterial oxyhemogrobin saturation in obstruc- 検討症例中 5 名で減量(平均 7.4±1.8 kg)後に PSG を tive sleep apnea. Chest 1989 ; 96 : 717―722. おこない,酸素飽和度の低下速度は全例で減少していた 11)Series F, Cormier Y, Forge JL : Role of lung volumes (前:7.0±3.2%,後:2.4±1.5%) .このことは鼻 CPAP in sleep apnoea-related oxygen desaturation. Eur 療法施行中においても,多くの患者で CPAP 非使用の 睡眠時間帯が存在することから重要と考えられる. 本検討では肥満の SAHS におよぼす影響について検 討した.肥満はそれ自体が特に循環器系疾患の risk factor であるが,最近 SAHS は肥満と独立した高血圧の要 Respir J 1989 ; 2 : 26―30. 12)Horner RL, Mohiaddin RH, Lowel DG : Sites and size of fat deposits around the pharynx in obese patients with obstructive sleep apnoea and weight matched controls. Eur Respir J 1989 ; 2 : 613―622. 13)Hoffstein V, Mateika S : Differences in abdominal 因であるとの報告16)∼18)も見られる.いずれにせよ,肥満 and neck circumference in patients with and with- が SAHS に伴う場合,肥満,SAHS それぞれ単独より out obstructive sleep apnea. Eur Respir J 1992 ; 5 : 低酸素血症を増強させることによりさらに risk が増大 する可能性が考えられる.この点でも SAHS における 肥満の重要性が示唆される. 文 377―381 14)Mortimore IL, Wraith MPK, Sellar RJ, et al : Neck and total body fat deposition in nonobese and obese 献 1)Strobel RJ, Rosen RC : Obesity and weight loss in obstructive sleep apnea : a critical review. Sleep 1996 ; 19 : 104―115. 2)伊藤千賀子:疫学:肥満者頻度と肥満発生率の推 移.肥満研究 2000 ; 6 : 120―124. patients with sleep apnea compared with that in control subjects. Am J Respir Crit Care Med 1998 ; 157 : 280―283 15)Shinohara E, Kihara S, Yamashita S, et al : Visceral fat accumulation as an important risk factor for obstructive sleep apnea syndrome in obese subjects. J Intern Med 1997 ; 241 : 11―18. 3)Johns MW : A new method for measuring daytime 16)Bixler EO, Vgontzas AN, Lin HM, et al : Association sleepiness : the Epworth sleepiness scale. Sleep of hypertension and sleep-disordered breathing. 1991 ; 14 : 540―545. Arch Intern Med 2000 ; 160 : 2289―2295. 4)Rechtschaffen A, Kales A : A manual of standard- 17)Lavie P, Herer P, Hoffstein V : Obstructive sleep ap- ised terminology, techniques and scoring systems noea syndrome as a risk factor for hypertension : for sleep stages of human subjects. National Insti- population study. BMJ 2000 ; 320 : 479―482. tute of Health, Publ. No. 204, 1968. 18)Nieto FJ, Young TB, Lind BK : Association of sleep- 5)Bliwise D, Feldman D, Bliwise N, et al : Risk factors disordered breathing, sleep apnea, and hyperten- for sleep disordered breathing in heterogenous geri- sion in a large community-based study. JAMA atric populations. J Am Geriatr Soc 1987 ; 35 : 132― 2000 ; 283 : 1829―1836. 141. 肥満が睡眠時無呼吸症候群に与える影響 655 Abstract The Impact of Obesity on Oxygen Desaturation in Patients with Sleep Apnea hypopnea Syndrome Song YiXin1)2), Hiroshi Nakano1), Togo Ikeda1), Tomoaki Iwanaga1)and Sankei Nishima1) 1) Department of Pulmonology, National Minami-Fukuoka Chest Hospital, Fukuoka, Japan 2) Department of Geriatrics, The First Hospital, Peking University, Beijing, China We performed a cross-sectional investigation on the impact of obesity on clinical manifestations in patients with obstructive sleep apnea hypopnea syndrome(SAHS).The subjects were 87 patients who underwent overnight polysomnography with an apnea hypopnea index(AHI)of 15 h or more. We divided these patients into nonobese(N)and obese(O)groups based on the median value of the body mass index(BMI) , 27 kg m2. Subjective symptoms, sleep quality and AHI were similar in both groups, but every parameter related to oxygen desaturation was worse in group O than in group N. There was no difference in the mean duration of apnea events between the two groups. The rate of fall in oxygen saturation during apnea events was highly correlated to the BMI (r=0.72 ; p<0.00001) . Accordingly, we concluded that profound desaturation in group O is due to a rapid fall in oxygen saturation during apnea events compared with group N. Anthropometric measurements revealed that the rate of fall in oxygen saturation was more related to abdominal circumference(AC)than the neck circumference(NC) , which is contrasted with the finding that AHI was more related to NC than AC. This fact suggests thet abdominal obesity may deteriorate oxygenation during apnea events and may therefore aggravate the risk of cardiovascular disease in patients with SAHS.
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