資料の活用での分布の見方 宮崎大学教育文化学部 藤井良宜 今日の話の概要 • 問題解決における問題設定の重要性 • データの分布を調べる必要性 – 3つの分布を調べる設定 • 分布を調べる際のコンピュータを活用 – SimpleHistの利用 日本科学教育学会2009 2 「資料の活用」での大きなポイント • 問題の解決に取り組むこと – 資料の整理の方法を,具体的な事象にかかわる 何らかの予測や判断を行うために用いることがで きるようにすることが重要である。 中学校学習指導要領解説 数学編 p.49 日本科学教育学会2009 3 問題解決の流れ データの収集 問題の設定 データの解析 結果の解釈 今回の改訂では,この問題解決の流れを 生徒にも先生にも考えていただきたい 問題の設定の難しさ 問題の設定ができない理由 • 考えている問題が漠然としている • 調査によって、どのようなことが示せる 調査によって,どのようなことが示せるのかを 知らない のかを知らない • データに基づく議論に慣れていない この点は,生徒だけの問題ではない。大人でもな かなか難しい どう解決したら良いのか? • 実は,これが「資料の活用」領域に課された もっとも大きな課題である。 まずは,先生自身が問題の設定に なれることから始める必要がある どのような場面が考えられるのか? • 3つの場面 – ある量の分布を調べたい – 大きな集団での分布と身近なデータとを比較した い – 二つの集団の比較を行いたい ある量の分布そのものに 興味がある場合 • 靴メーカーの話(学習指導要領解説より) – 問題は,「来年,どのようなサイズの靴を多く製造 するのかを決めたい」 • 製造や販売にかかわるところでは,分布その ものに興味がある場合も多い • 健康にかかわること(正常値は?) 身近なデータの分布を 調べることは「資料の活用」の基本 • 身近なことを問題にして,その分布を調べる ことに興味を持つことが大切 • 分布をさまざまな角度からみることができる • しかし,単純に分布の特徴を挙げるだけに終 わるとそれをどう活用していくのかが不明確 になる • 目的に応じた分析ができることを目標にした い 大きな集団での分布と 身近なデータとを比較したい • 大きな集団を基準と考える – たとえば,全国の結果や県全体の結果を基準に 考えることが多い • 漠然と次のように考えるだけでは少し弱い – 自分たちのデータは,全国的に見てどうなのか? – 宮崎県は,全国的にみてどうなのか? • どのような違いがあって,それをどう生かして いくのか? 二つの集団の比較を行いたい • 昨年と今年でどう違っているのか • 1年生と2年生でどう違っているのか • AとBの二つの方法で、結果はどのように異 なるのか? • この場合も,「これらの違いをどのように生か していくのか?」が重要 こんな問題はどうだろうか? • 中学校から,短距離走のスタートがスタンディ ングスタートからクラウチングスタートに変わ るが,本当にクラウチングスタートの方が早く なるのだろうか? • 800m走からは、スタンディングスタートになる のはなぜだろうか? 先生が関心を持つことが重要 • 学校の中には,いろいろなデータがある。 • それらのデータは,何のために集めているの だろうか。 • それらのデータをどのように生かしていったら よいのだろうか。 • よりよいデータ(活用できるデータ)にするに はどうしたらよいのだろうか? • 他教科の内容の中に、データを用いて調べる ことができるものはないか? 活用を考えるには コンピュータの有効利用を Excelを利用する場合の問題点 – 一般的によく用いられているExcelを活用すること が考えられるが,度数分布の作成やヒストグラム の作成ではExcelでは手間がかかる – 単なるExcelの使い方に終わってしまう恐れがあ る。 • ヒストグラムを作成するソフトを作ってみまし た。ここからダウンロードできます。 http://www.miyazaki-u.ac.jp/~yfujii/histgram/ 宮崎大学の シンボルマーク SimpleHistへ 始まりは学部学生の卒論から • 学部4年生が卒論でコンピュータを使った教 材づくりを行っていた • その中の一つにヒストグラムの作成プログラ ムがあった • 卒論としては,そのプログラムは完成したつも りで,すでにそのプログラムを使った指導案 の作成等を行っていた 日本科学教育学会2009 16 試作品1号(2008年12月) 日本科学教育学会2009 17 いろいろな先生からのご意見 • 実際に,授業を考えている先生方からのご意 見を頂いた • 試作品1号では,不十分な点や改良のアイデ アが多く集まった。 • 主な変更 – ヒストグラムの複数表示 – 平均と中央値をヒストグラムに表示 – 相対度数の表示 日本科学教育学会2009 18 試作品 第3号?(2009年1月) 日本科学教育学会2009 19 いよいよVer.1の公開 • 2009年2月にHPとして公開 • 指導要領の先行実施がスタートする2009年 度に間に合わせたかった • すぐに,小池先生から授業で使った感想が届 いた(3月初旬) – 実際に授業を行ったうえでの要望が届く • 許可を頂いて,指導案をHPで公開 • 少しずつ,HPへのアクセスが増える 日本科学教育学会2009 20 SimpleHist Ver.1 2009年2月 日本科学教育学会2009 21 その後 • 2009年5月にダウンロードのカウンターを設 置(非公開) • 2009年6月にVer.1.1.0を公開 • 「数学教育」2009年8月号で紹介記事が掲 載される 現在までのアクセスとダウンロード数 (2009年8月23日 午後6時現在) アクセス件数 1211 (2月以降) ダウンロード数 477 (5月以降) 日本科学教育学会2009 22 少しだけ裏技紹介 SimpleHistへ • 問題設定 – 上の空白の四角の領域には,そのデータを用い て解決する課題を書くことができる – データ作成の際に,問題を書いておくと自動的に 表示される – データと同じフォルダーに,データと同じ名前で拡 張子がprobのファイルがあるので,これを修正し てもよい • 度数分布表の最小値と階級の幅の表示 日本科学教育学会2009 23 これからも改良していくつもりです • ご意見ご要望は,遠慮なくお送りください。 – 対応できるものについては,できるだけ早く対応 します。 • SimpleHistを使った事例も送ってください。 – 簡単な指導案でもよいですし,授業風景でも結構 です。 日本科学教育学会2009 24
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