酸化チタンの効果と日常生活への応用 茨城県立日立第一高等学校 堀 愛佳(2年)野内哲也 【はじめに】 近年、酸化チタンが光に当たると触媒としてはたらく物質(光触媒)として注目を集めており、 身の回りでは日焼け止めや化粧品などさまざまなところで応用されている。そこで、私たちの身 近なところで酸化チタンがもっと役に立つのではないかと考え、酸化チタンの触媒作用の可能性 を調べるためにさまざま実験を行うことにした。 【実験内容】 <実験1>酸化チタンの生物への影響や殺藻効果を調べる。 <実験2>二十日大根の種をまき、育ち方や虫が寄って来るか、来ないかを見て、酸化チタン の植物・虫への影響を調べる。もし、虫に影響があれば、虫は寄って来ないのでは ないかと考えた。 <実験3>食用色素で緑・黄・赤の色をつけた色水に酸化チタンを加え、光触媒の効果のひと つである水の浄化作用を調べる。 【実験結果・考察】 <実験1>殺藻効果は見られなかった。しかし、メダカ(卵が実験に使用した藻に付着してい たと考えられる。)やカイミジンコなどの生物が多く生存していた。このことから、 生物は酸化チタンの影響をあまりうけないことが分かった。 <実験2>種をまいた後、1か月間観察を続けた。結果、酸化チタンを土に混ぜて育てた二十 日大根と酸化チタンを入れないで育てた二十日大根を比較してみると、大根の葉や 大きさに差が出た。 (写真1)また、酸化チタンを混ぜた方に多くの虫が集まる傾向 にあった。 虫 悪い影響はなし 植物 植物が成長する過程には影響がありと考えられる。 <実験3>緑 5日後に分解された。 赤 10日後に分解された。 黄 5日後に分解された。 結果、色によって全て分解されるまでの時間に差が出た。 (写真2、実物は左から緑・黄・赤) (写真1) (どちらの写真も 左:チタンあり (写真2) 右:チタンなし) 全て分解された 【まとめ・今後の課題】 今回の実験は、酸化チタンが生物には基本的に影響を与えないことを示した。 今後は、実験1で生物に影響を与えないだけでなく、メダカを飼育していた水もきれいになった ため水槽を掃除しなくてもきれいに保てないか研究を行っていきたいと考えている。 また、色の違いや物質の構造の違いによって、光触媒の効果や分解速度にどのような差が出るの かを調査しているところである。 化学2-① 合金による熱電対の研究 茨城県立日立第一高等学校 中垣 怜(2年) 野内哲也 【概要】 熱電対とは、異なる金属を接合し電圧をかけると、接合点で熱の吸収と放出が起こる現象であ る。そして、異なる金属を複数の金属元素からなる合金に置き換えて電流を測定した。今回合金 にはスズ、ビスマス、カドミウム、鉛を原料とする合金を用いた。 【仮説】 異なる二種の金属を用いると温度差から電流は流れるから、二種類の異なる合金を用いても構 成元素の割合の違いにより微量の電流が流れると考えた。 【実験とまとめ】 三種類のウッド合金、リボヴィッツ合金、ニュートン合金を用いて下図の実験装置を使い、 合金間に温度差を与え発生する電圧を測った。合金の割合は下表の通りである。しかし、そ れぞれの合金を使い熱電対による電流を測定しようとしたが、電流は流れなかった。 . スズ Sn カドミウム Cd ビスマス Bi 鉛 Pb ウッド合金 14% 12% 50% 24% リボ゛ウ゛ィッツ合金 10% 10% 45% 35% ニュートン合金 16% 0% 52% 32% . . 【今後の展望】 結果より、この実験で電流が流れなかった理由は、「二種類の合金を用いてはいたが、構成元 素の種類は同じであった。」「流れた電流が微量であったため測定できなかった。」という二つが考 えられるため、電流の測定のやり直しと、今回使用した合金とは異なる金属原料の合金を用いて 電流の測定を行い、合金を使用したときに電流が流れるか検証したい。 化学2-② マグネシウム空気電池の可能性 茨城県立日立第一高等学校 林 和馬(2年) 野内哲也 【動機】 地球上にある資源は限られている。そんな中マグネシウムは地球上に沢山あり、マグネシウム 空気電池は高いエネルギーを取り出せることを知り、興味を持ち、高い電圧を取り出したいと思 いこの研究を始めた。 【仕組み】 e⁻ 負極では、マグネシウムが電子を放出してマグネシウムイオンとなり OH⁻ 電解液中に溶け出す。正極では空気中の酸素が電子を受け取って還元 される。同時に電解液中をイオンが移動して電子が取り出せる。 e⁻ H₂O O₂ Mg²⁺ 【実験】 何が電圧に影響を与えるのか調べるために以下のような4つの装置を用意した。 ・①で正極と負極の電解液に浸す面積を変えて電流、電圧の変化を計測した。 ・負極の量が電圧に影響するのか調べるために②と③を比較した。 ・この4つの電圧を計測し、②と④は長時間計測し続けた。 ① ② ③ 塩化ナトリウム水溶液に ①の黒鉛の周りに 黒鉛とマグネシウムを 二酸化マンガンを添加し 浸した。 不織布を巻いた。 ④ ②のマグネシウム ②において、 の量を増やした。 電解液に浸さず 吸い上げる形にした。 【結果】 ・①で黒鉛、マグネシウムと塩化ナトリウム水溶液の接触面積が大きいほど、大きい電流が得ら れた。 ・①で黒鉛、マグネシウムと塩化ナトリウム水溶液の接触面積を変えても電圧は変化しなかった。 ・マグネシウムの量を増やしても、電圧は変化しなかった。 ・二酸化マンガンを黒鉛に添加したところ、より高い電圧が得られた。 ・②は生成された水酸化マグネシウムが電解液中にたまるため、④より長持ちした。 【まとめ】 電圧の大きさは、負極ではなく正極によって決まると考えられるので、今後は正極材の 炭素、触媒の量や種類を変えて実験をしていきたい。 化学2-③ 可溶性・不溶性プルシアンブルーの酸化体・還元体に関する研究 茨城県立水戸第一高等学校 須藤 駿(2年),山口 悟 【緒言】 鉄を含む物質の代表例としてプルシアンブルーがあり,放射性セシウムの吸着剤として使われ ている。先行研究から,プルシアンブルー“PB”には不溶性と可溶性が存在し,その酸化体はプル シアンブラウン“PBr”,還元体はプルシアンホワイト“PW”であることがわかった。本研究では PW・PB・PBr の詳細な関係を定量的に評価し,化学式や構造を明らかにすることを目的とした。 【結果および考察】 本研究から,PW にも不溶性・可溶性があり,それぞれ可逆反応で PB から生成されることがわ かった。また PBr は可溶性と不溶性の条件で見た目に違いはなく,PBr から PB の変化は不可逆的 であった。 一方,濃度による分散・凝集の変化を確かめたところ,可溶性・不溶性の PB や PW とはいえ, 濃度が低ければ分散し,高ければ凝集することがわかった。さらに PBr は濃度にかかわらず常に 透明褐色溶液であることがわかった。 それらの結果から,鉄錯体の化学式と構造を推測した。可溶性と不溶性 PB については化学式 や構造まで判明していたので,それらの可逆反応から可溶性と不溶性 PW の構造を推測した。PBr を可溶性・不溶性の条件で還元すると可溶性・不溶性両方の PB となり,その逆反応は起こらな いことが分かった。また PBr は,濃度を高くしても沈殿ができなかったことから,PBR の構造は PB に似た構造であると考えた。さらに PBr は沈殿しないことから,PB に類似した構造を持つ小 さな結晶が分散し,PW や PB ではこれらの構造を持った大きな結晶ができ,それが濃度によって 分散したり,凝集したりすることが示唆された。 【結論】 本研究から,可溶性・不溶性プルシアンブルーの酸化体・還元体の関係が以下のようになるこ とがわかった。 化学2-④ リーゼガング現象 茨城県立水戸第二高等学校 川澄京花(2),佐藤育実(2),友部美樹(2) 浦川順一 1.はじめに リーゼガング現象とは,ゲル化した電解質溶液に,その電解質と反応して沈殿を生じる電解質 溶液を加えると,ゲル中に一定の間隔で沈殿の層ができる現象である。 【バンド状】 【樹枝状】 2.実験 <目 的>ゲル化剤にカラジーナンを用いた場合にバンドが形成されるかを観察する。 <仮 説>カラジーナンがある一定の濃度のとき形成される。 <実験器具>ビーカー, メスシリンダー,薬包紙、駒込ピペット,試験管,薬さじ,ガラス棒, 電子はかり,オートクレーブ <試 薬>二クロム酸カリウム,クエン酸ナトリウム,硝酸銀,カラジーナン <方 法> ① 水 100 mL を用意し,カラジーナンを溶かす。 ② 二クロム酸カリウム 6.5 mmol/L,クエン酸ナトリウム 2.7 mmol/L を①に加え,試験管に 20 mL 注ぎ,常温においてゲル化させる。 ③ 硝酸銀水溶液 5.8×10⁻² mol/L を 10 mL 用意し,②の上に注ぐ。 ④ 常温で保存し,観察する。 3.結果・考察 <結 果>バンドが形成されなかったが,黒い斑点状の粒を観察することができた。 <考 察>バンドが形成されなかったことから,今回の実験においてのカラジーナンの濃度は 不適であった。このことから,試薬またはゲル化剤の濃度を変化させることでバン ド状や樹枝状の沈澱が見られるのではないか。 4.今後の課題 ゲル化剤にカラジーナンを用いた場合の実験結果の分布図を作成する。この時,クエン酸ナト リウムとニクロム酸カリウムの濃度は固定し,硝酸銀とカラジーナンの濃度を変化させる。 化学2-⑤ ウォータープルーフ効果を高めた化粧品をつくる 茨城県立竹園高校 神場未菜(2) 宮内和広 1. はじめに ウォータープルーフとは一般に「耐水性」を示す。化粧品では,夏用やスポーツ用の日やけ止 め化粧品やファンデーションなどを中心に表示されており,「汗や水,涙などに強く落ちにくい」 といった意味で用いられている。本研究では,ウォータープルーフ効果を高めることは可能であ るのか,また,どのようにすればその効果を高められるのかを調べ,研究を行った。 2. 実験 ・予備実験 今回の実験では,安全性が十分に保証できないため,人肌ではなくその代わりとなる物質に施 すことにした。よって肌の性質により近く,ファンデーションのウォータープルーフ効果の大小 をより比較しやすい試料を選定した。 ・本実験 上記の実験を通して選定した試料を使用して行う。ファンデーションパウダーに加える撥水性 の高いシリコンオイルを,ファンデーションパウダーの量の 0%,3%,4%,5%,6%,8%,10% と増やしていき,それぞれの量でのコーティング性能を比較した。 (1) ファンデーション 0.100 g をシャーレに量り,シリコンオイルを加え均一に混ぜた。 この時,0%で行うなら 0.000 g,3%なら 0.003 g 加えた。 (2) それを試料に均一に塗り,塗ったあとの重さを量った。 (3) ビーカーに水を 200 ml 注ぎ,(2)をクリップで挟みながら入れ,数回振って洗浄した。 (4) 十分に水分を飛ばし,再び重さを量った。 (5) クレンジングオイルを一定量塗り,再び 200 ml の水で同様に洗浄した。 (6) 十分に水分を飛ばし,最後に重さを量った。 以上の作業をシリコンの量を変えて行い,その結果を比較した。 3. 結果 水のみの洗浄では落ちずに,クレンジングオイルを塗った洗 ウォータープルーフ効果の大小 ( ) 割 合 % 80 70 60 50 40 30 20 10 0 浄では完全に落ちるような,化粧品として適度なシリコンオイ ルの数値を出すために,割合(%)=(4)(g)/全工程(g)×100 を用 いて左のグラフを作成した。よって,単純に考えると,値が小 さいものの方がよりウォータープルーフ効果が高いということ 0% 3% 4% 5% 6% シリコンオイルの量 8% 10% が分かる。 4. 考察 化粧品としての実用性を考慮すると,シリコンオイル 8%を含ませたものが最良である。 化学2-⑥ 人工サファイアをつくる 茨城県立竹園高校 宮崎菜摘(2年) 指導教員 飯村好和 1.はじめに 宝石、パワーストーンとしてよく知られるサファイアやルビーは、酸化アルミニウム(アルミ ナ)と微量の酸化金属でできていることを知った。この微量の酸化金属の量、組合せによってカ ラフルな人工鉱石がつくれると考え、研究を始めた。 2.方法 電気炉を用いるので、フラックス法によりアルミナの融点を下げて実験を行う。実験条件を、 アルミナ‐氷晶石系の状態図(図1)より検討した。校内で使用できる電気炉で可能な 1100℃で 完全に融解できる境界をまたぐ、アルミナ 12~24%まで考えた。表に示す。 アルミナ (%) 12 16 20 24 アルミナ (g) 0.6 0.8 1.0 1.2 氷晶石 (g) 4.4 4.2 4.0 3.8 0.015 0.015 0.015 0.015 0.01 0.01 0.01 0.01 酸化チタン(g) 酸化鉄 (g) なお、温度設定は先行研究より図2とした。 4.結果 実験中なので当日発表する。 5.参考文献 http://school.gifu-net.ed.jp/ena-hs/ssh/H17SSH/05research2/jewel.pdf ℃ 時間 時間 図1 アルミナ-氷晶石系の状態図 化学2-⑦ 図2 電気炉の温度設定 テルミット反応を利用した合金の製造とその成分の分析-リサイクルへの活用長崎県立猶興館高等高校 柳田一樹 (2 年),野口大介 【背景と目的】一般的にアルミ缶やスチール缶を分別する際にはアル ミ缶分別機などの機械を使って分別しリサイクルをするが、機械を作 るには多くのコストを必要とする。そのため私は多くのコストを使わ ずにアルミ缶やスチール缶をリサイクルできないかと考えた。スチー ル缶の鉄は空気中で徐々に酸化され酸化鉄(III)になる。テルミット反 応はアルミニウムで酸化鉄(III)を還元することができ、反応時に 3000℃を超える発熱を伴う(図 1)。設備器具も簡単で軽量かつ電力も 使わない。今回、使用するアルミニウムと酸化鉄(III)の量や混ぜ方を 図 1 テルミット反応の様子(先生 いろいろと変えたところ、生じる鉄はアルミニウムとの合金(図 2)であ の監督のもと、安全に配慮した) ると分かったため、合金を作る方法と生じる合金について調べた。 【方法】実験方法は酸化鉄(Ⅲ)とアルミニウム粉末を適量用意し、そ れらをフィルムケース内で混ぜて封筒の角などに入れ、 砂の上に置く。 そしてマグネシウムリボンを導火線代わりにして着火し、反応後不純 物を取り除いて生成物を取り出す、というやり方である。 【結果と考察】まず酸化鉄(Ⅲ)を 3.0 g にしてアルミニウム粉末の量を、 1.5 g から 2.0 g まで 0.10 g ずつ変え、それぞれをフィルムケース内で 60 秒間混ぜてテルミット反応を行い、生じる合金の質量を調べた(図 3)。生じた合金は、原料に用いたアルミニウム粉末が 1.5 g~1.7 g で 図 2 鉄とアルミニウムの合金 は磁石にくっつき、1.8 g~2.0 g では磁石にくっつかなかった。塩酸 に溶かすと溶液は次第に黄色になったことから、磁石にはくっつかな いが鉄は含まれており、鉄とアルミニウムの合金である。アルミニウ ムは鉄より軽く、磁石にくっつかないので、アルミニウム粉末が 1.7 g 以下の時は鉄が多く含まれている合金、アルミニウム粉末が 1.8 g 以 上の時はアルミニウムが多く含まれている合金ができた。次に混ぜる 時間について、酸化鉄(Ⅲ)3.0 g にアルミニウム粉末を 2.0 g 加え 5 分 間混ぜてテルミット反応させたところ、生じた合金は 0.76 g であり、 60 秒間混ぜたときよりも軽い合金が得られた。これは原料がよく混ざ ることにより、その分よく反応するので発熱量が大きく、生じた鉄が 塵状になって飛び散ったから、合金の質量が減ったと考えられる。さ らに、生じた合金から不純物を取り除く方法の違いに着目し、原料お よび混ぜる時間はそれぞれ同じにし、反応後すぐに不純物を取り除い 図 3 酸化鉄(Ⅲ) 3.0 g に対して加 たところ、生じた合金は 0.53 g だったが、反応後一日置いて不純物を えたアルミニウム粉末の質量 取り除いた場合では、生じた合金は 1.16 g だった。これはまだ熱を持 [g](横軸)に対し、テルミット反応 っているときは完全に合金として固まっていないからだと思われる。 で生じた合金の質量[g](縦軸) 効率よく合金を取り出すには、十分冷やす必要があると示唆された。 【今後の課題】合金を作る際、お互いの欠点を補い合うような組み合わせをすれば、ステンレスのような 頑丈でさびに強い合金を作ることも可能である。参考文献によると、今回生じた合金はアルフェ[AlFe]で あると考えられる。アルフェとは非常に硬く、さびにくく、加工しやすいという特徴を持ち、自動車など の部品に使われている。今回分かった結果は、通常はリサイクルされないさびたスチール缶をアルミ缶と 一緒に再生させる方法になり得ると期待される。今後、実際にアルミ缶とさびたスチール缶でテルミット 反応を起こしてみようと思う。 【参考文献】 「株式会社アーバンマテリアルズ」(http://www.urbanmat.co.jp/) 化学2-⑧
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