エックス線装置安全取扱いの手引き

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エックス線装置安全取扱い
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はじめに
 エックス線装置は、工業用や医療用などに幅
広く利用されています。
 一方、その透過性ゆえに人体に対する影響も
大きく取扱いには細心の注意が必要です。
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放射線の種類
 エックス線も放射線の一つとして扱われますが、
放射線を分類すると次のようになります。
エックス線
電磁波
ガンマ線
放射線
アルファ線
高速粒子
ベータ線
中性子線
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身近な放射線
 放射線というと非常に特殊な印象があります
が、実は私たちの身のまわりにも宇宙線や大
地、食物、建材などにたくさん存在し、私たち
は1年間に約2.4ミリシーベルトの線量を受け
ています。また、その他にも医療用のレントゲ
ン検査により0.3から4ミリシーベルト程度の
放射線を受けています。
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エックス線とは
 エックス線の正体は光(電磁波)です。テレビ
やラジオの電波や紫外線や赤外線などの光と
同じものです。
 ただエックス線は波長が100万分の1~100
億分の1と極めて短い電磁波であり、そのた
めに透過力が大きいのです。
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放射線の種類と透過力
α線を止める
β線を止める
紙
アルミニウムなど
の薄い金属板
γ・X線を止める
中性子線を止める
鉛や厚い鉄の板
水やコンクリート
アルファ(α)線
ベータ(β)線
ガンマ(γ)線
エックス(X)線
中性子線
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エックス線の発生
 エックス線は、他の放射線と異なりウランやプ
ルトニウムなどの放射性物質から発生するの
ではなくエックス線管にて作り出すものです。
 エックス線は高速の電子を陽極の金属に衝突
させて発生させます。
 つまりエックス線は電源を入れなければ発生
する恐れはありません。
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放射線の単位
 管理上使用される放射線の単位は「線量当量」、
Sv(シーベルト)です。
 これは人体の組織が受ける放射線のエネル
ギーを示すものです。
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放射線の単位
 線量当量には実行線量当量と組織線量当量が
あります。
 実効線量当量 - 頭部、胸部、腹部の表面より
1cmの組織が受けた線量当量より身体全体が受け
る線量当量を求めたもの。発ガンや遺伝的影響を評
価するために用いる。
 組織線量当量 - 白内障や皮膚障害などを評価
するために特定の組織が受ける線量当量を求める
もので、眼の水晶体は表面より3mmの位置で、皮
膚は表面より70μmの位置において測定される。
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放射能と放射線
懐中電灯
光を出す能力
光
光の強さを表す単位
カンデラ(cd)
明るさを表す単位
ルクス(lx)
放射性物質
放
射
線
人が受けた放射線影響
の度合いを表す単位
シーベルト(Sv)
放射線を出す能力
放射能
放射能の強さを表す
単位
ベクレル(Bq)
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放射線の人体への影響
 放射線の人体への影響は身体的影響と遺伝
的影響に大別され、また身体的影響は急性影
響と晩発影響に分けられます。
 急性影響では500ミリシーベルトを超えると白
血球減少などの症状が現れ、7000ミリシーベ
ルトの被ばくを受けると100%の人が死亡しま
す。
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放射線影響の分類
急性影響
放
射
線
影
響
身体的影響
晩発影響
皮膚の紅斑
脱毛
白血球減少
不妊など
非確率的影響
白内障
胎児の影響
など
白血病
がん
遺伝的影響
確率的影響
代謝異常
軟骨異常
など
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線量当量限度(法令)
 放射線業務従事者の被ばくの許容値(線量当
量限度)は法令により次のとおり定められてい
ます。
通常作業の場合
緊急作業
眼の水晶体
眼の水晶体以外の
組織(肺や皮膚)
50mSv/年
100mSv
150mSv/年
500mSv
実効線量当量
女子の腹部
13mSv/3月
組織線量当量
妊娠中の女子
の腹部
10mSv
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管理区域とは
 法律では1週間につき0.3ミリシーベルトを超
える場所を管理区域として、立ち入り者の被ば
く防止管理を行うことを定めています。
 管理区域の選定の事例
8μSv/時間 * 8時間/日 * 5日/週
= 320μSv/週 > 0.3mSv/週
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管理区域と守るべき義務
管理区域には次の対策が義務付けられています。
 境界を明示し、標識を設けること。
 資格を有する者の中からエックス線作業主任者を選任
し、被ばく防止の管理をさせること。
 空間線量率を6ヶ月以内に1回測定すること。
 立ち入り者に対する措置
1. 就業前に特別教育を受けさせること。
2. 就業前及び就業後は6ヶ月以内ごとに健康診断を
受診させること。
3. 個人被ばく線量を測定すること。
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エックス線の測定
1.空間線量率(作業場の線量)の測定
 放射線を取り扱う場所の雰囲気を測定するに
はサーベイメータを使用します。
 エックス線の測定には電離箱式、GM管式、シ
ンチレーション式、半導体式などのサーベイ
メータがあります。
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エックス線の測定
1.空間線量率(作業場の線量)の測定
 電離箱式は、放射線により箱内に生成したイ
オン対を加電した電極で集め、その電流を増
幅して電位差を求めるものです。
 電離箱式はその動作原理上、湿気を嫌うので
使用、保管場所には注意を要します。
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エックス線の測定
2.被ばく線量の測定
 個人の全身及び局部線量を測定するために人
体に被ばく線量測定用具を装着します。
 個人被ばく線量測定には、次のような種類があ
りますが、放射線の写真フィルムの黒化作用を
利用したフィルムバッジが最も一般的です。
 フィルムバッジ
 熱蛍光線量計(TLD)
 ポケット照射線量計
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エックス線の測定
2.被ばく線量の測定
 妊娠可能な女子は腹部に、それ以外は胸部
に装着します。
 必要により指先などの局所被ばくを検出する
ためにリングなどの形状を持つなどを併用す
ることもあります。
 TLD:放射線を受けると光を発するもの。500℃程
度の加熱で繰り返し使用可
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放射線防護の3原則
 放射線による被ばくには、外部被ばくと放射
性物質の吸入などによる被ばくがありますが、
エックス線の場合は外部被ばくの低減が主眼
となります。外部被ばくを低減するには次の3
つの方法があります。
1. 遮蔽
2. 距離
3. 時間
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放射線防護の3原則
1. 線源と人体の間に遮へい物を置くこと。
原子番号が大きく密度が高いほど有効で、
通常、鉛、鉄、コンクリートなどを用います。
2. 線源と人体との距離を大きくとること。
距離の2乗に反比例します。
3. 放射線を受ける時間を短くすること。
出来る限り作業を短時間にします。
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緊急措置
 放射線取扱い施設において事故が発生した際
には、次の対応が義務付けられています。
 直ちに人を避難させる
 健康診断を受診させる
 所轄の労働基準監督署長に報告する