化学系廃棄物の安全な処理

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引火性液体(溶剤類)の安全な取扱い
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始めにテスト
究極の選択です。
アルコールが入ったドラム缶、次のどちらかにラ
イターで火をつけなければならないとしたら、貴
方はどちらを選びますか?
満杯にアルコールが入ったドラム缶
アルコールの残りがほんの僅かのドラム缶
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溶剤類の危険性を示す性質




引火点が常温付近
液の比重が水より軽い
水に不溶なものもある
ガスの比重が空気より重い
これらの性質から取扱上のポイントを学びましょう
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燃焼の3要素
空気
(酸素)
可燃物
火災・爆発
着火源
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引火性液体の燃焼
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引火性液体の爆発
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引火性液体の燃焼
燃焼継続
空気(酸素)
爆発範囲濃度
空気(酸素)
着火源
蒸発
可燃性液体
可燃性液体
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液体の温度と蒸気
液の温度が上昇すると、
蒸発量も上昇する。
爆発限界に達する温度
↓
引火点
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液体の温度と蒸気
引火点:可燃性液体が燃焼をはじめるのにじゅうぶんな濃度の可燃性蒸気を
液面上に発生させる最低の液温。
液温が
引火点に!
蒸発
可燃性液体
●可燃性蒸気は発生しているが、
濃度が低いので引火しない。
加熱
温度上昇
●発生した可燃性蒸気がじゅう
ぶんな濃度になり引火した。
液の温度が上昇すると、
蒸発量も上昇する。
爆発限界に達する温度
↓
引火点
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下の図は次の場合の液体の温度と、液面上の空間の
その液体蒸気の濃度の関係。
爆発範囲
液体
密閉容器
ではこの
空間
液体
温度上昇
↓
蒸発が進む
↓
濃度上昇
爆発範囲
上限界
度濃
開放容器
では液面
のすぐ上
濃すぎても
爆発しない
下限界
薄すぎても爆発しない
液体の温度
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主要物質の爆発範囲
物質名
メチルアルコール
アセトン
エタノール
イソプロピル ア ル コー ル
酢酸エチル
n-ヘプタン
ブチセル
トルエン
爆発範囲(vol%)
下限界
上限界
5.5
2.1
3.3
2.0
2.0
1.0
1.2
1.2
44
13.0
19
12.7
11.5
6.7
12.7
7.1
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引火点とは
上限界
度濃
溶剤は、常温付近が
引火点
下限界
(下部)引火点
上部引火点
液体の温度
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主要物質の引火点
引火点
消防法第4類
主要物質
-20℃未満
特殊引火物
ジエチルエーテル、二硫化炭素、
アセトアルデヒド
21℃未満
第一石油類
ガソリン、ベンゼン、トルエン、酢
酸エチル、MEK
30℃未満
アルコール類
メタノール、エタノール
21℃以上70℃未満
第二石油類
灯油、軽油、キシレン、スチレン 、
酢酸
70℃以上200℃未満
第三石油類
重油、エチレングリコール
200℃以上250℃未満
第四石油類
ギヤー油、潤滑油
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引火点の考え方
常温で密閉容器に液体を入れて火をつけてみると
 ガソリンは引火しない
 灯油は引火しない
 主な溶剤は爆発する
→ 蒸気が濃すぎる
→ 蒸気が薄すぎる
→ ちょうど良い
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主な溶剤の引火点
冬気温
夏気温
夏・直射日光下
屋内
温度
(下部)引火点
上部引火点
セロソルブ
イソブチルアルコール
トルエン
アセトン
n-ペンタン
-60
-40
-20
0
20
40
環境温度(℃)
60
80
100
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主な溶剤の引火点
冬気温
夏気温
左図は下図の場合
夏・直射日光下
屋内
温度
液体
密閉容器
ではこの
空間
セロソルブ
イソブチルアルコール
トルエン
アセトン
液体
開放容器
では液面
のすぐ上
n-ペンタン
-60
100
-40
-20
0
20
環境温度(℃)
40
60
80
次の場合は、上部引火点
以上の温度でも引火する。
・密閉容器でも蒸発が充分
に進んでいない時。
・開放容器で液面から離れ
た位置。
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燃焼に必要な量は?
 例えばエタノールの場合
ドラム1本あたり16cc
 ドラム缶に16ccのエタノールを入れると
すべて気化して液は残りません
もし、そこに火をつけると・・・
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前ページの計算根拠
液体Mのxccを容量Vccの容器内で完全蒸発させた場合の蒸気濃度
濃度計算(容器内温度をt℃とする)
濃度(vol%)=100×((x×比重)/分子量)×22400×(273+t)/273/V
tは20℃とする。
Vは200×103cc(ドラム缶容量を200㍑とする)
エタノールの液比重は0.79、 分子量は46.07
爆発下限界は3.3 %。この時のxccは16cc。
ちなみに20℃における飽和蒸気圧は5.874kPa、大気圧下だと、この時の濃度は5.8%
この時のxccを計算すると28cc。
28ccまでなら、液全てが蒸発することになる。
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特徴的な事故
空のドラム缶を半分に切って屑入れにしようと、
ガス溶断で切ろうとしたところ → 爆発
泥棒がシンナーを盗もうと夜間、塗料倉庫に忍
び込み、照明の代わりにライターで照らそうと、
点火したとたん → 爆発
見えない蒸気が事故を招きます
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引火性液体の特徴
品目
引火点
比重
蒸気比重
水に
メタノール
11℃
0.79
1.1
易溶
アセトン
-18℃
0.79
2.0
易溶
トルエン
4℃
0.86
3.1
不溶
IPA
イソプロピル
アルコール
12℃
0.79
2.1
易溶
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液の比重が水より低い(軽い)
 水の流れに乗って溶剤が移動する
 側溝を伝わって広がる可能性
 水溜りだと思っていたら上面に溶剤
 特に水に不溶なものは注意
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蒸気の比重が空気より高い(重い)
 臭気に気付かない
 床面を伝わり拡がる
 ピットや側溝などに蒸気が滞留する
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着火源とはどんなもの?
 電気スパーク
 衝撃火花
 ハンマーによる打設など
 工事にともなう火花
 電気溶接、ガス溶接
 高速カッター、投光機
 静電気
 皆さんの身体も静電気発生源(数万ボルト)
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工事用火気の管理
 火気使用工事の管理システム
 工事方法の確認、事前承認
 工事従事者、立会い者の教育
 工事管理




事前協議(工程確認、有資格者確認)
消火器具の準備
危険物の縁切り、廃棄、置換
立会い者の承認 → 火気工事スタート
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静電気対策
 静電気が発生する状況





接触帯電
摩擦帯電
はく離帯電
衝突帯電
流動帯電
2つの物質が接触したとき
物質同士をすり合わせたとき
接触したモノをはがしたとき
物質と物質がぶつかったとき
ものが流れたとき
 対策
 帯電させないこと
 逃がすこと
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静電気対策
 帯電させないこと
 材質の選定
 接触、剥離、流動の抑制
 帯電した静電気を逃がすこと




湿度を上げる(発生した静電気を素早く放出)
アース(接地)を取る
静電服、静電靴を着用する
除電器(イ オナイザー)を使用する
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健康への影響
 多くの引火性液体は、労働安全衛生法で規定
する有機溶剤でもある。
 蒸気を吸引しないよう、マスクを着用するなど
注意する。
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最初のテストの答え
 爆発を起こすのはアルコールの蒸気です。
 気層部分の多い、ほとんど空のドラム缶のほ
うが爆発性蒸気が多く、火をつけた際の爆発
力が大きいことになります。
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終了試験
 あなたならどうします。
業者にタンクの裏の配
管補修(溶接)を委託し
ます。
タンクはサービスタンク
で中はトルエンです。
前日は雨でした
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最後に
引火性液体の事故は、毎年、繰り返し発生して
います。
特に工事の際に多く発生しており、その根本的
原因は被災者の知識不足によるものがほとん
どです。
正しい知識を身につけて安全に取扱いましょう。
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