2000年度エックス線安全講習会 2000年4月28日17:00~ 57号館201教室

2002年度エックス線安全講習会
2002年5月9日15:00~ 62号館大会議室
早稲田大学放射線安全管理室
理工学部技術総務課・放射線安全管理グループ
はじめに(講習会の趣旨と前提)
この講習会は、早稲田大学理工学系各キャンパスに設置されているエック
ス線装置の取り扱う際の放射線安全のためのものである。
しかしながら、1Mev以下のエックス線についての学生・大学院生を対象
とした規制の法律がない。「電離放射線障害防止規則」(労働省管
轄)は労働者のための法律。学生が使用することが想定されていない。
ただし、早稲田大学では、学生に対してもこの法律に準拠してエックス線
に関する安全管理を行ってきている。この講習会もそうした基準で設
定されており、理工学系の実験室・研究室でX線を発生する装置を使
用する学部学生、大学院生は、原則としてこの講習会を受講しなけれ
ばならない。
6.X線の安全管理
1.施設・設備の管理
設備の保守管理 定期点検・測定
・X線作業主任者の配置:(各装置に掲示)
2.人の管理
健康診断 被曝管理 講習
①放射線モニタリング
・問合せ先 放射線安全管理室 担当:高橋 内線8024
②健康診断
・問合せ先 健康管理センター 担当:上柳 内線2640
③安全講習会
1 X線とその人体への影響
X線ディフラクトメータから放出される放射線
①最高エネルギーが管電圧(普通Kvpで表す)、その約1/3のエネル
ギーを平均とする連続した分布をもった制動X線
②対陰極物質できまるエネルギーを特性X線との合成。
・X線管等から発生するX線のエネルギーはさほどではなく(せいぜい1
00kev程度)であるのでアルミ板で十分しゃへいできる。)
・一方で、強度(光子の数)はかなり大きく、管電圧35Kvp、管電流10mA、
距離10cmで1分間照射4.8×10-2 C/kg(186R)になるので、十分注意
して取り扱わねばならない。
・現在製造されているX線ディフラクトメータは、X線の照射部分がシー
ルドされているため、よほどのことがないかぎり、測定中に装置外に
X線が漏れることはない。
2.放射線と物質の相互作用
・光電効果
・コンプトン効果
さらにこのようにしてできた電子によっても
電離
・生体の細胞はこのような相互作用や、その結
果できた二次電子によって影響を受ける。
直接作用
間接作用
3.放射線の単位
1)照射線量
C/kg(クーロン/キログラム)
2)吸収線量
Gy(グレイ)
3)実効線量
Sv(シーベルト)
4.放射線による障害
ICRP勧告(1990年勧告)
•
1)確率的影響(stochastic
effect)
・線量-効果の関係が直線的で
相関性
・効果が確率的であると仮定さ
れる影響
・ある種の障害連鎖のおきる割
合が線量に比例
・がんや遺伝的な障害がそれに
あたる
•
2)確定的影響
(deterministic effect)
・影響が起きる確率と重篤度
(severity)に関係
・線量-効果曲線にしきい値
・確率的影響以外の影響はこれ
に該当する。
※X線による被ばくは定的影響。
3)放射線防護のための線量制限体系
• 確定的な影響:被ばく量を一生の間にしきい値に達しないよう
にする。
確率的影響:一生の間に受ける線量によって、一生の間におけ
る全死亡率に対する放射線に起因する死亡の増加割合(寄与死
亡率)が社会通念上許容されるであろう範囲内にとどまるよう
な被ばく量を限界と考えることにある。
この限度の割合は、放射線作業者に対し5%以内、一般公衆に対
し0.15~0.4%(発がんのモデルによって異なる)としている。
許容限度
放射線作業者: ヶ年間の被ばく量が100mSv以下
かつ年間50mSvを超えぬ量(平均すると年間20mSv)
一般公衆:年間1mSv以下。
•
「放射線被ばくを伴ういかなる行為もその導入が正味のプラスの利益
を生むのでなければ採用してはならない。」
「すべての被ばく(個人線量、被ばくする人数、受けることが確かで
ない被ばくの起きる可能性)は経済的および社会的な要因を考慮にい
れながら合理的に達成できるかぎり低く保たなければならない。」
5.X線ディフラクトメータによって起こりうる障害
・皮膚などの身体の表面およびそれに近い部位
・確定的影響に限られる
・皮膚は、大量被ばくの危険が高い とくに手や足の皮膚
・皮膚の変化は急性、亜急性、慢性の3種類に大別
・被ばく量により4度に分類
・
表3
放射線による皮膚の急性変化
度
第1度(Epilation dose)
第2度(Erythema dose)
第3度(Erosion dose)
第4度(Tolerant dose)
主 変 化
脱 毛
紅斑, 色素沈着
水泡形
潰瘍形成
病 理
毛嚢の変化
毛細血管の変化
表皮の変性
全層の壊死
被 曝 量
3.00 Gy
5.00 Gy
7.00 Gy
10.00 Gy
表4
度
第1期
放射線による皮膚の亜急性変化
主 変 化
色素沈着と脱毛
病 理
毛嚢および表皮
被 曝
10.00 Gy/1月
(Pigmentation and epilation)
第2期
乾 性 皮 膚 炎
基底層の変化・落屑形成
20.00 Gy/1月
(Epidermitis sicca)
第3期
湿 性 皮 膚 炎
び ら ん 発 生
50.00 Gy/1月
潰
70.00 Gy/1月
(Epidermitis exsudativa)
第4期
亜 急 性 潰 瘍
(Ulcus subacuta )
瘍
形
成
表5
度
皮膚の慢性放射線障害
主 変 化
第1期 表皮萎縮
病 理
潜 伏 期
血管の変化による栄養不良
1 ~ 5年
表皮の異常増殖
3~10年
表皮の脱落
3~15年
(Atrophy of the skin)
第2期 角皮形成
(Hyperkeratosis)
第3期 湿性皮膚炎
(Ulcus chronica)
第4期 亜急性潰瘍
(Carcinoma)
表皮のがん変性および皮下の線維肉腫化5~30年
5.電離放射線障害防止規則
・労働安全衛生法の施行規則のひとつ
・ICRPのPublication26(77年勧告)適合
・放射線業務従事者に対し、
①実効線量当量 50mSv/年を超えない
②組織線量当量
a.眼の水晶体
150mSv/年を超えない
b.それ以外の人体組織 500mSv/年を超えない
c.女子(妊娠不能者、妊娠者を除く)の腹部
13mSv/3箇月を超えない
d.妊娠と診断された女子の腹部
それ以降出産までに10mSvを超えない。
・外部放射線による実効線量当量は、1センチメートル線量当量
・眼の水晶体については3ミリメートル線量当量
・皮膚については70マイクロメートル線量当量
具体的にどうしたらいいのか
• 法令を守る
教育訓練・健康診断・被曝管理・施設点検
• 通常に使うならば、健康に影響を与えるようなこと
はない。
ただし
• 法令だけで安全を確保できるわけではない。
• 自分を守るのは自分。
安全装置を使う・安全装置の動作点検
不安・疑問は必ず解決する:X線作業主任者
労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)
電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41
号)及び関係告示の改正
用語の変更
改
正
実効線量
等価線量
実効線量
線量
放射線測定器
現
行
実効線量当量
組織線量当量
1センチメートル線量当量
(モニタリング線量を表す場合を除く。)
線量当量
(1センチメートル線量当量等のモニタリング線
量を表す場合を除く。)
被ばく線量測定用具
測定器
2
管理区域の設定
管理区域の設定に係る規定を次のとおり改める。
(1) 次のいずれかに該当する区域を管理区域とすること。
イ 外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計
が3月間につき1.3mSvを超えるおそれのある区域
ロ 放射性物質によって汚染される物の表面の放射性物質の密度が表面汚染に
関する限度の1/10を超えるおそれのある区域
(2) 上記(1)イに規定する空気中の放射性物質による実効線量の算定は、1.3mSvに、
1週間の労働時間中における空気中の放射性物質の濃度の平均(1週間におけ
る労働時間が40時間を超え、又は40時間に満たないときは、1週間の労働時間
中における空気中の放射性物質の濃度の平均に、当該労働時間を40時間で除し
て得た値を乗じて得た値。以下「週平均濃度」という。)の3月間における平
均の、別記1に定める空気中濃度限度の1/10に対する割合を乗じて行うこと。
3
放射線業務従事者の被ばく限度
管理区域内において放射線業務従事者の受ける被ばく線量の限度を次のとおり改める。
(1) 実効線量限度については次のとおりとする
イ 5年間につき100mSv、かつ、1年間につき50mSv
ロ 上記イにかかわらず、女性(妊娠の可能性のない者、及び下記(3)に規定する者を
除く。)については、3月間につき5mSv
(2) 等価線量限度については次のとおりとする。
イ 眼の水晶体に受けるものについて、1年間につき150mSv
ロ 皮膚に受けるものについて、1年間につき500mSv
4
作業場所の線量等の基準 。
作業場所の線量等の基準を次のとおり改める。
(1) 放射線装置室、放射性物質取扱作業室、貯蔵施設又は保管廃棄施設について、
遮へい壁、防護つい立てその他の遮へい物を設け、又は局所排気装置若しくは
放射性物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備を設けて、
労働者が常時立ち入る場所における外部放射線による実効線量と空気中の放射性物
質による実効線量との合計を1週間につき1mSv以下とすること。
(2) 核原料物質を坑内において掘採する作業を行うときは、その坑内の週平均濃度
の3月間における平均を空気中濃度限度以下とすること。
(3) 放射性物質取扱作業室及び核原料物質を掘採する坑内を除く事業場内の週平均
濃度の3月間における平均を空気中濃度限度の1/10以下とすること
5 線量の測定等
線量の測定等に係る規定を次のとおり改めること。
(1) 管理区域における外部放射線による線量当量率の測定は、1センチメートル線
量当量率について行うこと。
ただし、70マイクロメートル線量当量率が1センチメートル線量当量率の10
倍を超えるおそれがある場所においては70マイクロメートル線量当量率につい
て行うこと。また、3ミリメートル線量当量率については、測定の義務を課さ
ないこと。
(2) 放射線業務従事者、緊急作業に従事する労働者及び管理区域に一時的に立ち入
る労働者の管理区域内において受ける外部被ばくによる線量及び内部被ばくに
よる線量の測定について、次のとおりとすること。
イ 外部被ばくによる線量の測定は、1センチメートル線量当量及び70マイクロ
メートル線量当量について行うこと。また、3ミリメートル線量当量について
は、測定の義務を課さないこと。
ロ 内部被ばくによる線量の測定は、別記2に定めるところにより、管理区域の
うち放射性物質を吸入摂取し、又は経口摂取するおそれのある場所に立ち入る
者について、3月以内(1月に受ける実効線量が1.7mSvを超えるおそれのある
女性(妊娠の可能性のない者を除く。)及び妊娠中の女性にあっては1月以
内)ごとに1回行うこと。ただし、その者が誤って放射性物質を吸入摂取し、
又は経口摂取したときは、当該吸入摂取又は経口摂取の後速やかに行うこと。
(3) (2)の線量の測定の結果に基づき、次に掲げる放射線業務従事者の線
量を別記3により算定し、記録すること。
イ 男性又は妊娠の可能性のない女性の実効線量の3月ごと、1年ご
と及び5年ごとの合計(5年間において、実効線量が1年間につき
20mSvを超えたことのない者にっては、3月ごと及び1年ごとの合
計)
ロ 女性(妊娠の可能性のない女性を除く。)の実効線量の1月ごと、
3月ごと及び1年ごとの合計(1月に受ける実効線量が1.7mSvを超え
るおそれのない女性にあっては、3月ごと及び1年ごとの合計)
ハ 眼及び皮膚に受ける等価線量の3月ごと及び1年ごとの合計
ニ 妊娠中の女性の内部被ばくによる実効線量及び腹部表面に受ける
等価線量の1月ごと及び妊娠中の合計
7 健康診断
放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者に対する健康診断を次の
とおり改めること。
(1) 雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後6月以内ごとに1回、定期に、
次の項目について医師による健康診断を行うこと。ただし、当該健康診断(定
期のものに限る。)を行おうとする日の属する年の前年1年間に受けた実効線
量が5mSvを超えず、かつ、当該健康診断を行おうとする日の属する1年間に
受ける実効線量が5mSvを超えるおそれのない者については、この限りでない
こと
イ
被ばく歴の有無(被ばく歴を有する者については、作業の場所、内容及び期
間、放射線障害の有無、自覚症状の有無その他放射線による被ばくに関する事
項)の調査及びその評価
ロ 白血球数及び白血球百分率の検査
ハ 赤血球数の検査及び血色素量又はヘマトクリット値の検査
ニ 白内障に関する眼の検査
ホ 皮膚の検査
(2) 上記(1)の健康診断のうち雇入れ又は当該業務に配置替えの際に行わなければ
ならないものは、線源の種類等に応じて上記(1)のニに掲げる項目を省略する
ことができること。
(3) 上記(1)の健康診断のうち定期に行わなければならないものは、医師が必要で
ないと認めるときは、上記(1)のロからホまでに掲げる項目の全部又は一部を
省略することができること。
(4) 上記(1)のただし書に該当する者については、上記(1)のロからホまでに掲げる
項目は医師が必要と認めるときに行えば足りるものとすること
別記3 放射線業務従事者の受けた実効線量及び等価
線量の算定
1
実効線量
放射線業務従事者の受けた実効線量の算定は、外部被ばくによる1センチメー
トル線量当量を外部被ばくによる実効線量とし、当該外部被ばくによる実効線
量と別記2により計算した内部被ばくによる実効線量とを加算することにより
行うこと。ただし、体幹部が不均等に被ばくする場合にあっては、適切な方法
により行うこと。
2 等価線量
(1) 皮膚の等価線量の算定は、70マイクロメートル線量当量によって行うこと。
(2) 眼の水晶体の等価線量の算定は、放射線の種類及びエネルギーを考慮して、1
センチメートル線量当量又は70マイクロメートル線量当量のうち適切な方に
よって行うこと。
(3) 妊娠中の女性の腹部表面の等価線量の算定は、1センチメートル線量当量に
よって行うこと。