Mathematics that the professor loved 徳山 豪 東北大学 Combinatorics that professors love 博士たちの愛する組合せ論 内容 • 組合せ数学の美しさ • 『当たり前のこと』の威力 – Pigeon hole (鳩の巣)原理 – Double Counting: 二通りに数えてみよう • Paul Erdosが天才を探すときの質問 – 200以下の自然数が101個あるとしよう。以 下の2つの命題は正しいか? • 互いに素(公約数が1)な2つの数が必ずある • 約数の関係(小さい方が大きい方を割り切れる)にあ る2つの数が必ずある。 鳩の巣原理 • N羽の鳩がM個の巣箱に入っていると • N/M 以上の鳩が入っている巣がある – N=M+1だと、(整数なので)2羽以上の鳩が入っ ている巣がある • (数学的に言うと)有限集合Sから有限集合T への写像Fがあり、|S|=N, |T|=Mなら F-1 (t) = { s ∈ S: F(s)=t } とすると、 |F-1(t)|≧N/Mであるt∈Tが存在する 鳩の巣原理を使おう:1 • 200以下の自然数が101個あるとしよう。 – 互いに疎な2つの数が必ずあることを示せ • 鳩=101個の自然数。 N=101 • 巣をどうするかが腕の見せ所。 – (1,2), (3,4),…, ( i, i+1),…,(199,200) – 100 個の巣。 M=100 – N=M+1なので、2羽以上が入っている巣がある – (k, k+1) この二つは互いに素。 鳩の巣原理を使おう:2 • 200以下の自然数が101個あるとしよう。 – 約数の関係(小さい方が大きい方を割り切れる) にある2つの数が必ずあることを示せ。 • 鳩=101個の自然数。 N=101 • 巣:(1,2,4,8,..), (3,6,12,24,..),(5,10,20,..), ( 2i+1, 2(2i+1),4(2i+1),…),…, (197), (199) – 200以下の奇数は100個なので100 個の巣。 – 同じ巣に入る2羽の鳩が居る。 – 約数の関係(実際は2のべき乗倍)にある。 鳩の巣原理:上級編 • 長さnの(異なった)実数の列 a1,a2,…,anがある。 このとき、長さn1/2 以上の部分列で、単調増加 あるいは単調減少であるものが必ず存在するこ とを示せ。 (Erdos-Szekeresの定理) – 徳山は大学院時代に証明に四苦八苦した。 – 数多くの高度な応用がある(講義では紹介しない) – 面白い「鳩の巣」を作る。 Erdos-Szekeresの定理の証明 • • • • • 長さnの実数列 a1,a2,…,anがある。 q = n ½ 未満の最大整数 L(j):aj から始まる増加列の最大長 S(k)={aj: L(j)=k } S(1), S(2),..,S(q): 鳩の巣 – 巣に入らない鳩が居れば、長さq+1以上の増加列がある。 – 全部の鳩が巣に入れば、q+1羽以上が入る巣がある。 • その巣に入る要素からなる部分列は単調減少列になる – なぜでしょう? – よって証明終了 (判ったかな?) 二重数え上げ法 • 同じものを2通りに数えることで定理を証明する • 例題1: 自然数mの約数の数をf(m)とする。 (1/n)∑1≦m≦nf(m)を(誤差2の範囲で)求めよ • 例題2: グラフの次数とは、その頂点から出る 辺の数である。 5頂点のグラフで、全ての次数 が3であるグラフは存在するか?存在するのな ら構成せよ。 二重数え上げ法 • 例題1: 自然数mの約数の数をf(m)とする。 (1/n)∑1≦m≦nf(m)を(誤差2の範囲で)求めよ • (k,m) kはmの約数、m≦nである対の数を2 通りに数える。 – mでまとめると、 ∑1≦m≦nf(m) – kでまとめると、どうなりますか? 二重数え上げ法 例題2: グラフの次数とは、その頂点から出る辺 の数である。 5頂点のグラフで、全ての次数が 3であるグラフは存在するか?存在するのなら 構成せよ。 • 「頂点と辺の対(v, e): 頂点vは辺eの端点」を2 通りに数える – vでまとめると、次数の和 – e でまとめると、何ですか? 二重数え上げ法(上級編) 問題3: n個の単位円(半径1の円)がある。円た ちの交点のうちで、次数(交わっている円の数) の多い方からn点の集合Sを選ぶ。 このとき、 次数の和がn3/2以上にならないことを示せ。 • 使うべき事実: 2点を通る単位円は高々2個し かない • 数えるべきもの(p, C1,C2) pはSの要素、C1,C2 はpを通る円 二重数え上げ法(上級編)の利用 Erdosの距離重複度問題: 平面上にn点がある。 これらの点の点対で同一の距離dにあるものは 最大いくつあるか??? 先ほどの問題から: n3/2 以下 現在知られている最善: n4/3 以下 もっと少ないはず。(nの定数倍よりは大きい) 二重数え上げ法(上級編)の利用 平面上にn点が正方格子状に配置してある。 1点から距離1の点はいくつ? 1点から距離5の点はいくつ? 1点から距離65の点はいくつ? ラグランジュの整数二次形式の理論 一般に、大きい距離はたくさん出てくる 問題: 正方格子より本質的に距離重複度の大きい配置はあるだ ろうか? 誰かチャレンジしませんか? (博士号+海外留学は保証します)。 組合せ論の美の典型 • Brouwerの不動点定理(1912) – 「中間値の定理」 の一般化 – 幾何、解析、プログラム基礎理論、情報理論な どの基本定理 • D次元の球BからBへの連続写像fは必ず不 動点(f(x)=xである点x)を持つ。 • オリジナルの証明:高等な解析と幾何を利用 • 天才Sperner(23歳)の初等的証明(1928) – これは来週(二次元の場合のみ。乞うご期待)
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