プロセス制御工学 2.プロセスモデル 京都大学 加納 学 Division of Process Control & Process Systems Engineering Department of Chemical Engineering, Kyoto University [email protected] http://www-pse.cheme.kyoto-u.ac.jp/~kano/ 講義内容 プロセスモデルの構築 ラプラス変換 2 動的なプロセスモデルの必要性 プロセス制御を実現するためには,プロセスの入力変数 (操作変数と外乱)が変化したときに出力変数(制御変 数)が時間的にどのように変化するか,すなわちプロセ スの動特性を表現できるモデルが必要である. プロセス設計に利用されるモデルは,定常状態におけ る変数間の関係を表現するものであり,動特性は無視 されている場合が多い. アクセルやブレーキと車速の関係を 知らなかったら,どうなるだろうか? 3 プロセスモデルの種類 物理モデル(現象論的モデル) 物理や化学の法則に基づいて化学プロセスの動特性を 一連の微分方程式や代数方程式で表現するモデル ブラックボックスモデル(統計的モデル) プロセスの運転データから導出されるモデル 例えば,操作変数を人為的に変化させることによって,操 作変数が制御変数に与える影響を知ることができるため, そのときの入出力データからモデルを構築できる. システム同定:入出力データから統計的モデルを構築す ること グレイボックスモデル=現象論的モデル+統計的モデル 4 5 状態変数と状態方程式 プロセスの動特性を表現するためには,プロセスの状態 を表す変数(状態変数)とその時間的変化を表す数式 (状態方程式)が必要である. 例)物質収支式や熱収支式などのプロセス方程式 dx 状態方程式 f ( x, u ) dt 状態変数 x 初期状態 x0 と入力 u が与えられれば,プロセスの状態 が変化する様子を知ることができる. プロセス方程式から状態方程式へ プロセス方程式が 1 階微分方程式で与えられるとは限 らないが,状態変数の 1 階から n-1 階微分までを状態 変数に加えることにより, n 階微分方程式に変形できる. 2 d y dy a g ( y, u ) 2 dt dt dy x1 y, x2 dt x2 d x1 dt x2 g ( x1 , u ) ax2 6 定常状態と非定常状態 定常状態 状態変数が時間的に変化しない状態 0 f (~ x , u~) 非定常状態 状態変数が時間的に変化する状態 dx f ( x, u ) dt 7 例題2.1 物質収支 エネルギー収支 dL A Fi F dt d ( LT ) c p A c p FiTi c p FT Q dt 8 例題2.1 物質収支 エネルギー収支 dL A Fi F dt d ( LT ) Q A FiTi FT dt c p d ( LT ) dT dL dT A AL AT AL T ( Fi F ) dt dt dt dt dT Q AL F (Ti T ) dt c p 9 10 例題2.1 状態方程式 dL A Fi F dt dT Q AL F (Ti T ) dt c p 状態変数 L T 自由度 プロセス自由度 プロセスの定常状態を決めるために必要十分な変数の 数,あるいは互いに独立に変化させることのできる変数 の数 プロセス自由度 = 変数の数 - 式の数 制御自由度 制御可能な変数の数 制御自由度 = プロセス自由度 - 外部条件変数の数 11 自由度の計算例(例題2.2) 状態方程式 dL A Fi F dt dT Q AL F (Ti T ) dt c p プロセス自由度 4 = 変数の数 6 ー 式の数 2 制御自由度 = プロセス自由度 - 外部条件変数の数 2 4 2 12 線形化 化学プロセスの物理モデルの多くは非線形微分方程式 で与えられる.しかし,プロセスが狭い条件範囲で運転 される場合には,線形モデルによって非線形モデルを 十分な精度で近似できる. プロセスをある定常状態に保つことが目的である場合 には,その定常点周りでのプロセスの動特性は線形近 似したモデルを用いて表現できるため,その線形モデル に基づいて制御系を設計すればよい. 近年,反応器など非線形性が強く,かつ高い制御性能 を要求されるプロセスに対して,非線形モデルに基づく モデル予測制御の適用などが進められている. 13 14 線形化 テイラー展開 2 x x0 ( x x ) ( 2) 0 f ( x) f ( x0 ) f ' ( x0 ) f ( x0 ) 1! 2! n ( x x ) (n) 0 f ( x0 ) n! f (x) 2次以上の項を無視 f ( x) f ( x0 ) f ' ( x0 )(x x0 ) x0 x 例題2.3 dL A Fi a L dt 1 ~ ~ L L ~ (L L ) 2 L dL a ~ ~ A Fi a L (L L ) ~ dt 2 L 15 定常値からの変化量に着目 定常値からの変化量 x x ~ x 状態方程式の線形近似 dx f ( x) f ( ~ x ) f ' (~ x )( x ~ x) dt 定常状態 d~ x 0 f (~ x) dt dx f ' (~ x )x dt 16 17 例題2.4 定常値からの変化量 物質収支式 定常状態 ~ L L L dL A Fi a dt ~ 0 Fi a a ~ ~ L ~ (L L ) 2 L ~ L dL a A Fi L ~ dt 2 L ~ Fi Fi ~ L 2L 撹拌槽型加熱器の線形モデル(例題2.5) ~ Fi dL A Fi ~ L dt 2L dT ~ ~ ~ Q AL Fi (Ti T ) Fi (Ti T ) dt c p 状態空間表現 ~ Fi d L 2 AL~ dt T 0 1 0 L A~ ~ ~ T T Fi T i AL AL 0 ~ Fi AL F i Ti 1 c p AL Q 0 18 講義内容 プロセスモデルの構築 ラプラス変換 19 20 ラプラス変換 ラプラス変換の定義と基本特性 定義 L[ f (t )] F (s) f (t ) 0 線形性 合成積 e st dt L[af (t ) bg(t )] aF(s) bG(s) t L[ f (t ) g ( )d ] F ( s)G( s) 0 21 ラプラス変換 微積分のラプラス変換 ( n) L[ f (t )] s F (s) s n L[ f ( n) (t )] s n F (s) n1 f (0) f t n 指数関数のラプラス変換 L[e at 1 ] sa (0) 初期値がすべて0の場合 1 L[ f (t )(dt ) ] n F ( s) 0 0 s t ( n1) 22 例題2.6 b (t 0) dx ax f (t ), x(0) 0, f (t ) dt 0 (t 0) ラプラス変換 逆変換(合成積) sX (s) aX (s) F (s) F ( s) X ( s) sa t x(t ) e 0 a ( t ) f ( )d b (1 e at ) a ラプラス変換 移動定理 ds L[ f (t d )] e F (s) 最終値定理 lim f (t ) lim sF ( s ) t s 0 23 24 例題2.7 b (t 0) dx ax f (t ), x(0) 0, f (t ) dt 0 (t 0) b F (s) s b X ( s) s( s a) 最終値定理 lim x(t ) lim sX ( s) t s 0 b b lim s 0 s a a t x(t ) e 0 a ( t ) f ( )d b (1 e at ) a ラプラス逆変換(例題2.8) 7 s 20 7 s 20 a b c F ( s) 3 2 s 7 s 10s s( s 2)(s 5) s s 2 s 5 s を掛けて s=0 を代入 s+2 を掛けて s=-2 を代入 20 a b0 c0 25 1 s 2 s 5 7(2) 20 a 0 b c 0 (2)(2 5) s 1 s5 2 1 1 F (s) s s2 s5 項ごとに逆変換 f (t ) 2 e 2t e 5t 25 おわり 宿題? 26
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