新型インフルエンザA(H1N1) 2009年10月19日、20日 在ストラスブール総領事館 インフルエンザ (感染経路) ①飛沫感染:咳やクシャミによる飛沫 → 1mで落下 ②飛沫核感染:5um以下の小さな粒子(飛沫核) → 数時間は空中に浮遊 ※特殊な環境でのみ ③接触感染:手や物体の表面に着いたウイルスが口や 目に入ることによる ※ウイルス粒子の安定化には、低温、低湿度が最適 ※発症後、3~4日がウイルス排泄のピーク ※1個のウイルスが呼吸器粘膜に感染 → 24時間後には100万~数千万個に増殖 インフルエンザ (症状) ①潜伏期(1~3日)の後、38℃以上の高熱、 頭痛、関節痛、全身倦怠感、消化器症状 ②インフルエンザ肺炎、インフルエンザ脳症など の合併症にて死亡のことあり -----------------------------------------------------③通常の風邪(感冒)とは全く異なる疾患 インフルエンザ (治療薬) <タミフル> ①ウイルス表面の酵素阻害 → ウイルスの増殖を抑制 ②発病から48時間以内に服用 <リレンザ> ①タミフルと同様の効果 ②口から気道に吸入するタイプ(ドライパウダー) 新型インフルエンザ A(H1N1)2009年4月からの経緯 ① 4月下旬、豚インフルエンザ発生(メキシコ)し、 米国、カナダにも波及 ② 南半球、アジア、欧州にも感染が拡大 → WHOは6月11日に「フェーズ6」を宣言 ③ 北半球の冬季に感染拡大が危惧されている ※ 南半球の感染は下火になっている 新型インフルエンザ 名称:「豚インフルエンザ」から ① WHOは、「2009 H1N1 influenza」 「Pandemic (H1N1) 2009」 ② 日本は、一般に「新型インフルエンザ」 「新型インフルエンザA(H1N1)」 ③ 米国、英国、インドは、「Swine flu」 、「H1N1 flu」 ④ フランスは、一般に「Grippe A」 ※ 季節性のAソ連型インフルエンザ: A(H1N1) ※ スペイン風邪もA(H1N1) : 1918年、5000万人の死者 新型インフルエンザ A(H1N1)の特徴ー① ① 北半球で夏季にもかかわらず流行 ※インフルエンザウイルスは乾燥、寒冷を好む ② 感染者:10代を中心に若年者に多い ※日本では19歳以下で約80%を占める ③ 高齢者に感染者が比較的少ない ※ 90歳以上には免疫あり(スペイン風邪の抗体?) ※ 類似のウイルス流行時の免疫の保有か 新型インフルエンザ A(H1N1)の特徴ー② ④ 重症者:妊婦(免疫力が低下)、既往症(糖尿病、腎不 全、呼吸器や循環器疾患)のある患者に多い ※肺炎球菌等の二次感染も少なくない ⑤ 基礎疾患のない患者の重症化、死亡は少ないが皆無 ではない ※死亡率は季節性なみ(0.045%)との報告も ある (9/30、米ハーバード大学・研究チーム) → 今後、ウイルス変異で毒性が高まる可能性もある 鳥インフルエンザ(H5N1) ① 強毒ウイルス(重症化、高死亡率)であり、ヒト 型に変異した場合、「スペイン風邪の再来」かと 危惧されている ② 世界的に、タミフルの備蓄等の対策に追われた ③ 現在も、エジプト等でヒトへの感染が報告され ており、今後の推移が注目されている 新型インフルエンザ 鳥インフルエンザ(H5N1)との相違点 ① H1N1は、重症化が少なく、死亡率は低い ② H1N1の感染性は、季節性よりは高い A(H1N1)は、「新型のインフルエンザ」ではあるが、 ① H5N1(鳥)との差異を理解する必要がある ② 感染拡大はほぼ確実であり、今後毒性が高ま ることも否定できないため、侮れない 新型インフルエンザ 診断法 ① 簡易キットでA型インフルエンザは診断できる が新型、季節性の判定はできない ② 陽性率は決して高くない(早期には陰性 etc) ③ 診断キットは不足している → 検査せずに症状により診断することもある 新型インフルエンザ 流行の拡大は? ① 日本:1週間に約33万人の患者(9/28~10/4) で前週(約24万人)の1.4倍 → 1人の患者が1.4人に感染させた計算 ② 患者は約1週間で治癒するので、流行の拡大 傾向は1週間の患者数の推移で予測できる ③ 日本での死者は26名 (10/14 現在) ④ 全人口の約30%が感染するとの予測あり 小児の治療 ① 体重37.5Kg以上は、成人と同じ量のタミフル 1回1カプセル、1日2回、5日間、計10カプセル ② リレンザ(吸引するタイプ) ③ 5歳以下の小児でリレンザが使えない場合 → タミフルドライシロップ or タミフルの脱カプセル 小児の異常行動 ① 現時点では、インフルエンザ罹患後のタミフル 服用と異常行動の因果関係は不明 ② タミフルは異常行動の主因のひとつである可能 性はある ③ 異常行動は稀で過剰な心配はいらないが、発 熱の初日と、タミフルを飲んだ直後の数時間は 子供を注意深くみる方がよい タミフル耐性ウイルス ① タミフル耐性ウイルスが日本を始め、世界で28例が報 告されている (WHO、9/25) ② 耐性ウイルスは自然に生まれるもの、タミフルの予防内 服等によるものがある ③ タミフル耐性株による流行は今のところ少ない → ① ほとんど症例にタミフル、リレンザは有効 ② タミフルの予防内服は控えるべき フランスでの受診方法 ① 症状があった場合、かかりつけ医に「電話」し、 指示に従う (受診時間 etc) ② 自己判断で病院を受診してはならない! (他の一般患者に感染させる可能性あり) ③ 受診しても、タミフルは処方されるとは限らない ※ 診断キットによる検査もしない可能性あり ④ 重症化した場合、SAMU(15)に連絡する 新型インフルエンザ ワクチン ① 日本:国産ワクチン(4社)と輸入ワクチン(2社) ② フランス:国産、輸入の4社 → 副作用については、季節性ワクチンと同等かは不明 (日本での輸入ワクチンの治験は、 成人200人、 小児100人のみ) ④来年の季節性ワクチンに新型株が加わる可能性あり 豚インフルエンザ 1976年の教訓 ① 1976年、米国で豚インフルエンザの流行が あり、スペイン風邪の再来と恐れられ、 ② 4,000万人にワクチンを接種したが、 ③ 流行は数ヶ月で収束した → 副作用(500人以上のギランバレー症候群、 30人の死者)、訴訟問題、膨大な経費だけが 残り、政治問題にまで発展した 新型インフルエンザ ワクチン(問題点) ① アジュバンド(免疫賦活剤)添加や組織培養に よる新しいタイプのワクチンもあるが、 ② 副作用のチェック(治験)が殆どなされていない ③ ワクチン生産は予定の60%程度と遅れている ④ 接種の優先順位(医療関係、妊婦、基礎疾患、 小児)となり、健康成人の優先順位は低い (日本もフランスも事情は同じ) 季節性インフルエンザ ① 日本で、年間1500万人が感染し、1万人~ 1万5000人が死亡 ② 死者の多くは、高齢者(肺炎の合併)で、小児 の脳症もある → ①「季節性インフルエンザワクチン」接種の勧 奨 ②高齢者への「肺炎球菌ワクチン」接種 季節性インフルエンザワクチン ① 2つのA型(H1N1:ソ連型、H3N2:香港型)と B型インフルエンザウイルス株を使用 ② フランスでは、処方箋なしで購入可(6.25€ /本) → 一般医に接種依頼する ③ パリでは、エールフランス・ワクチンセンター、 アメリカン病院でも接種可能 ④ 新型インフルエンザA(H1N1)には効果なし インフルエンザ 予防法 ① 飛沫感染:飛沫は2m以上は飛散しない ② 接触感染:重要視されている → ①手を洗う ②人ごみを避ける ③咳エチケット ④感染者はマスクを装着 ※季節性ワクチン接種を受ける
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