社会福祉調査論 第1回 授業の概要

社会福祉調査論
第3回
1_3 社会福祉と社会調査
10月26日
先週の復習
• 科学とは
• 根拠に基づいた仕事を
⇒ 実態把握が必要 ⇒ 社会調査
• なぜ富山の保険料は高いか
図表の見方、統計の整理等が大事
高齢化比率は高いか、差の原因か
• 職業倫理
1-3-1 社会調査の歴史・素描
1-3-2 社会福祉(学)における社会調査
• 臨床的課題の解決
実践の学
• 多様な価値
離婚・・自由度が高い?
根本問題への言及
・価値判断の論争
e.g.ノーマライゼーション
社会学
社会科学
社会学、政治学、経済学、法学、経営学等
社会学の広範な守備範囲
• 理論社会学・・・行為論、相互作用論、集団論、
社会構造論、全体社会論等
• 領域社会学(連字符(-)社会学)
社会学が中心の分野・・・メディア論、家族社会学、
社会病理論等
他に専門学問がある分野・・法社会学、政治社会学、
教育社会学、都市社会学等
★社会調査の歴史と調査手法
• 社会調査の歴史
• 調査手法の概観
★調査の歴史
•
社会調査は、古くから、国家の経営のために
行われてきています。
• しかし、科学的社会調査は、産業革命後に始
まっており、これまで多様な調査が行われてき
ました。
①国家経営のための社会調査
②社会学の誕生
③社会調査の隆盛
④統計学の隆盛
⑤日本の社会調査
⑥業務記録の分析調査
①国家経営のための社会調査
◎国勢調査
土地、人口、家族の調査
エジプト ピラミッド建設 人口・富調査 B.C.2700~
ラメス二世 課税のための人口調査 B.C.1300
ギリシャ アテネ、スパルタ・・・ 壮丁調査
ローマ 人口調査
う王 戸口調査
春秋戦国、前漢、後漢 墾田戸口
人口調査
• 崇神天皇(11代) 調役のための人口調査
• 正倉院文書
律令制定時代 戸口調査
• 大化の改新 645 戸口調査 班田収受 造籍
• 豊臣秀吉 検地令1590 刀狩令1588
農民・武士の区分と身分調査
• 宗門改1614
各国での近代的国勢調査の実施
• 18c末 アメリカ
• 19c初~ イギリス、フランス、デンマーク、
ポルトガル・・・
フィリピン、インド、ビルマ・・・
• 1920 日本
②社会学の誕生
◎前史
• アリストテレス ギリシャ
人間は社会的動物である 政治的共同体の分析
• ホッブス 社会を意識の対象に 17C
国家と市民社会の関係分析 社会契約論
• モンテスキュー 啓蒙時代 18C
「法の精神」 法、政治、習俗、宗教、経済制度等々
相互に関連し一体のものとして存在
教会・王制からの離脱
⇒社会の在り方の議論が不可欠
◎19世紀の歴史の段階的発展説
• A.コント 実証主義 社会学の提唱
人間精神の進歩 神学的→形而上学的→実証的社会
社会の進歩
軍事的→法律的→産業的
• H.スペンサー 社会進化論
未開社会→複合社会
軍事型社会から産業社会へ
• K.マルクス、F.エンゲルス 『共産党宣言』1848
原始共産制→古代奴隷制→中世封建制
→近代資本主義社会→社会主義社会→共産主義社会
⇒「比較研究法」
◎社会学再興(創設)の3学者
• ヴェーバー
理念型による議論 特定の理念社会を切り出す
価値自由な議論
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』1905
• デュルケム
『自殺論』1897 社会と個人のかかわりを提示
統計の二次調査では典型例として重要
• ジンメル
相互作用としての社会の把握
シカゴ学派への影響
③社会調査の隆盛
ⅰ.社会調査の展開
(政府による国勢調査の先行)
•
産業革命下での混乱・・・都市調査
ⅱ.イギリスでの展開
◎19世紀末
• 資本主義の矛盾
貧困・衛生・犯罪
• 社会改良思想としての社会調査
産業革命の中での社会問題への対応
社会福祉調査
• 監獄調査 ジョン・ハワード
非人道的状態の放置への対処 1770イギリス、イタリア、ロシア
• 労働者家族調査 ル・プレー フランス
家族を調査単位に 金銭出納簿調査 1829• 貧困調査
メイヒュー
貧民の状態記述
• エンゲルス
『イギリスにおける労働者階級の状態』
C.ブース
『ロンドン民衆の生活と労働』1892-1903
• 数多くの調査研究による膨大な資料
• 統計と記述の重ね合わせ
貧困者30%
ワーキングプアーの発見
• B.S.ラウントリー
貧困調査 ヨーク調査 1899
貧困線=絶対的貧困
• P.タウンゼント
貧困の再発見
社会メンバーとしての貧困線=相対的貧困
• ボーレイ
サンプリング法 2年間でブースに相当する調査
パンチ・カードの利用 ホレリスの発明
ⅲ.シカゴ社会学(都市社会学)
アメリカでの先駆的調査
• P.ケロッグ調査
ピッツバーグ調査
• トマス、ズナエツキー
『ヨーロッパとアメリカにおけるポーランド農民』
1918-1920
⇒ドキュメント調査、生活史
• シカゴ大学
ロツクフェラー 1889
学問の新天地 許容
都市問題の進展
黒人、浮浪者、家族解体、ギャング、
ゲットー、移民等の調査
プラグマティズム
デューイ他 現実的対応を重視
スモール 社会学部創設
ジンメルに学んだ
20世紀前半 シカゴ学派
◎踏査法
• 社会生態学
R.パーク、E.バージェス『社会学という科学への誘い』
1921
都市内の地理的分布 ←ブースの街区単位集計
• ゾーホ 紳士録、自殺地点、犯罪発生地点、
・・プロット
• スラッシャー 同心円地図 擬離地区の証明
⇒参与観察
• ショウ 保護監察官
⇒インタビュー
少年犯罪の地理的分布
◎生活史
C.ショウ『ジャック・ローラー』1930
少年の遍歴
⇒◎インタビュー調査
・ラザースフェルド「人々の選択」パネル調査
・A.ストラウス「死の気づき」グラウンデッド・セオリー
◎コミュニティ・スタディ
リンド夫妻 『ミドルタウン』1929
詳細な資料の添付(シカゴ学派の外)
W.L.ウォーナー
ヤンキーシティー
◎参与観察
アンダーソン 『ボボ』
1923
スラッシャー 『ギャング』 1927
クレッシー
『ダンスホール』 1932
ホワイト『ストリート・コーナー・ソサイエティ』
1943 コーナーヴィルへ入り込む
ベッカー
『マリファナ使用者への道』1953
• ジャーナリストの報告と区別できない
ⅳ.関連学問分野
◎文化人類学
B.K.マリノフスキー 『西太平洋の遠洋航海者』1922
人類学の調査の手法として参与観察
M.ミード 『サモアの思春期』1928
多様な文化の存在証明として注目
C.レヴィ=ストロース 『親族の基本構造』1948
構造主義の基礎
・川喜多二郎『発想法』KJ法
◎経営学
⇒実験的方法
レスリーバガー、メイヨー
ホーソン実験
生産性は人間関係によって左右される
◎実験経済学
④統計学の隆盛
ⅰ.統計学の展開
• 前史
H.コンリング
「国家に関する知識」(1660講義)
G.アッヘンヴァル
Statistik(国状学)
• 政治算術
J.グラント
死亡表(生命表)
W.ペティ (統計学の父)
経済統計への拡大 ペティ=クラークの法則
確率論
B.パスカル
三角数、信仰の利益計算、賭け中断の分け前
P.フェルマー
ベルカーブ
P.ラプラス
正規分布の意味
統計学の展開
• A.ケトレー (近代統計学の父)
社会事象の正規分布
記述統計学
• 19c末~20c初
F.ゴールトン 指紋の発見者
生物測定研究所 生物学に数学的厳密さを
回帰 平均への回帰 親子の身長
相関 計測の尺度
K.ピアソン
進化論の追跡 『科学概論』1880s
決定論的見方に追加すべきものを認識
推計統計学
フィッシャー
実験計画
ロザムステッド農事試験場のデータ解析
W.ゴセット
ステュデントのt検定
ⅱ.社会調査での標本調査と統計学
マスコミの隆盛
新聞社の模擬投票 20cに入って盛んに
世論調査社の設立
アメリカ大統領選挙
ギャッラップの大成功(1936)と大失敗(1948)
センサス局等の活動 標本調査の価値
→ 標本調査の理論
⑤日本の社会調査
○戦前
律令国家以来の国勢調査
社会問題への対応調査
横山源之助『日本の下層社会』1899
農商務省『職工事情』1901内務省『細民調査』・『貧民調査』
民俗学(folklore)
柳田国男、折口信夫、渋沢敬三
○戦後
・アメリカ社会学から 調査票調査
個人単位の意識・態度測定
社会的成層構造に関する調査(社会学会)1952
・事例的調査研究 モノグラフ
福武、島崎 農村社会学
森岡
宗教・家族
岩井
反社会集団
・隣接科学との大規模共同研究
『山村の構造』農村調査研究会
『アメリカ村』人口問題調査会
対馬、能登、利根川・
⑥業務記録の分析調査
• 根拠ある実践
業務記録
共有
分析総合
★社会調査手法の種類
•
社会調査は、事例的調査(定性的調査)と統
計的調査(定量的調査)に大別され、研究者
の性向、時代の流れの中で、重視される調査
手法に確執があります。
• 配布資料参考
公式統計調査の二次分析
◎既発表統計の分析
他の社会調査を補完する調査として重要。
それ自身が社会調査としての意味を持つことが
できる。
近年、情報技術の浸透によって、多様な情報の
活用可能性、多様な分析の可能性が高まってき
た。
統計データをインターネット等から入手し、分析、
表現できる力を早期に身につけておくことが極
めて大切です。
実験
◎社会事象を対象とした実験
科学的な調査には実験は不可欠。
社会科学の調査では、通常、実験は困難です。
実験に替わる方法が工夫されます。
近年、心理を基礎とした実験などにより合理的行
動の再検討が盛んに行われている。
調査票調査
◎調査票による意識を主体とした調査
統計学を基礎に、人々の意識のありようを見
つけ出す。
近年、回収率が低下し、その信頼性に不安
が高まっている。
調査票の設問の表現等によって回答が大きく
変わることに細心の注意が必要。
インタビュー調査
◎インタビューを重ねて、人々の意識や事実関係
の情報を収集
統計的集計、深い思いを聞き出すための調査、
テーマに関する回答者の熟した意見を求める調
査など多様なものがある。
多くの仕事で、他者からの聞取り調査(ヒアリン
グ)は重要。
改まった体系的なヒアリング調査であり、円滑な
聞取りには配慮すべき事項がいろいろとある。
参与観察調査
◎社会集団の中に入り込んで直接、見聞きし情報を収
集
非参与(傍観)から潜入までの広がりがある。
その客観性、代表性に疑問が呈されますが、その社会
集団についての深い理解を得ることができます。
実際の調査では、調査者に極めて大きな負担を強い
る。
踏査
◎調査対象とする社会現場に入り込んで多様
な手法で情報を収集
特定の調査手法ではない。
特定の地理的範囲の社会集団の総合的調
査になり、節度ある行動が求められる。
ドキュメント調査
◎他者の手によって記録されたものの体系的
調査
情報資源の限界や他者が記録する際に偏り
が入り込む。
近年、多様な情報の蓄積が進んでおり、テキ
ストマイニングが盛んになっててる。
新聞、会議録等々、多様なドキュメントがあ
り、興味深い調査が可能。
比較調査法
◎時間的・空間的に異なる場の多様な社会事象の
観察から、その事象間にある同一性あるいは異
質性を求め、そこから社会事象の法則性を発見
する手法
社会事象の把握(分析視点)自体が恣意的となり、
斉一性の問題もあり、科学となるか疑問。
研鑽を積んだ碩学による提示は、大いに意味が
ある。
既存研究分析
◎他者による既存の研究からの情報収集と体
系的整理
調査研究の出発点で行う情報収集
これだけでは調査手法にはならない。
三角測量
◎多様な調査手法を総合的に活用し、社会の
実態に迫ろうとする手法
推論の蓋然性を高めていくため、衆知を結集
していく。
社会の理解に貢献するように、調査研究結果
を公に提供していくことが重要。
業務記録の分析
◎事例的調査と統計的調査を重ねた調査が期
待される
◎情報の共有が前提
1-3-3 社会調査の歴史における位置
• 貧困線
• 福祉国家
• 規則・法則性と逸脱と
1-3-4 社会的なものと社会調査
• 社会問題の解決と科学的実証
• 近代の自己認識
• 福祉の正しい位置付け
時間末レポート
• 近年につながる社会調査が19世紀末にロン
ドン等で始まったことについて簡単に説明し
なさい。