GoNERIにおける 「廃棄物・サイクル・社会学」 プログラムについて カリフォルニア大学バークレー校 安 俊弘 2008年3月25日9時~17時 東京大学工8号館226室 2008年7月16日9時~12時 東京大学工8号館502号室 議論のポイント • 動機・現状認識(Why) • 目指す到達点とマイルストーン (What/When/Where) – GoNERIの期間内 – Beyond GoNERI • 方法論・アプローチ・手法(How/Where) – 東大UCBオフィスの役割 – 連携のあり方 • 参加メンバー(Who) 審査のコメントとヒアリングの質疑応答 (社会学関連)-1 • ポイントは社会学であると思われる。社会学についてもう少しご説明 を。 – 「社会の中の原子力の問題の解決が求められている。従来の理工学系の教育だけで は、この問題を正しく理解し対処できない。 」 • 理工学系の研究・教育に社会の視点をどのように組み込むのか?何が足りないのか? • 社会側の視点を理解することで、工学の目指すものが変化するのか? • (7/16)社会科学教育を工学教育に組み込むことで、(社会的コンテクストの理解できる) 新しい世代の工学者・技術者を養成する。そのような教育プログラムを開発する。 – 「例えば原子力国民理解の問題は社会心理をきちんと理解して対処する必要があ る。」 • 『社会心理』が社会学か?社会学の一分野? • 『国民理解』とは何か?原子力を国民に飲み込ませるのが目的か? • (7/16)『社会科学』ととらえる – 「原子力法工学、核不拡散、パブリックコミュニケーションをコア分野として、…(中略) …教育研究を行う。」 • これが『社会学』の中身?これでOK?『法工学』とは? • (7/16)『社会科学』ととらえる – 「社会文系科目を含む教科書の出版や、原子力法制研究会、市民講座などにすでに 着手している。 」 • 市民講座は大学での知的作業の成果を発信する場。知的作業を実行する場としてふさわし いか?市民との交流というと、公聴会のようになってしまう。 • (7/16)フィールドワークを取り入れた社会科学をコア科目とする原子力工学教 育プログラムを開発する。 審査のコメントとヒアリングの質疑応答 (社会学関連)-2 • 連携によって社会学をやるというが、実際には拠点メンバには工学の側 しかでていないので、これで本当にできるのか? – 「公共政策大学院の城山教授らとは相互に学生を教育しあう、原子力法制 研究会を共同で開催するなど実際に協力して研究教育を進めている。」 • 公共政策論、法学と『社会学』は領域が異なる。この答えでは、質問に答えていな い。 • (7/16)『社会科学』ととらえる • (7/16)GoNERI特任教員 – 「原子力社会学は広範な分野で連携が重要と考えている。それによりまず専 門家を育てる。連携は客員教員がおり、研究機関との連携もできている。 」 • 具体的に、どのような分野なのか?どの研究機関か?現状でどのような連携なの か? • 廃棄物・サイクルの分野では? • (7/16)必ずしも広範である必要はない? • (7/16)世界の原子力の趨勢を見ると、原子炉など生産的な経済活動に関連す る部分では核不拡散問題が、廃棄物など非生産的な『負』の部分に関連する問題 では国民合意形成が、それぞれ焦点となっている。 • (7/16)そのような点に絞って対応していけばよいか? 審査のコメントとヒアリングの質疑応答 (社会学関連)-3 • 原子力社会学について、科学である以上、賛成の立場から 考えるだけでは片手落ちで、反対する立場が必要ではない か。 – 「反対派の方も招いて市民講座を公開で開催している。議論の場を 設けて、反対の立場の意見を伺う事は重要と考えている。 」 • 反対派の考え方を採取する手段として「市民講座」が適当か? • この質問は、本質的な点を突いている。反対派を説得するロジックやア プローチを開発するという今までと変わらない方向性からは何も新しいこ とは生まれないし、大学で行うことではない、という指摘か? • (7/16)2008年上半期で行ってきたフィールドワークは依然として『賛 成』の立場の人々のみを対象としている。『反対』の人々(例えば、東洋 町のサーファー)にもフィールドワークを行えるようになる必要がある。 GoNERI採択理由の中に指摘される 『社会学』アプローチ • 世界を先導する原子力教育研究を目指す世界的教育研究拠点として、 将来構想が明確になっており、これまでの教育研究活動の実績も高く、 計画全体が機動性を持った優れたプログラムである。原子力と文科系の 複合により日本の原子力の国際化と国の発展に貢献する拠点を目指し ていることは評価できる。 • 人材育成面においては、原子力に関する教育研究を一体的に推進する 構想であり、原子力社会学との融合による技術と社会の調和に関する教 育システムの構築は、今後の原子力エネルギーの発展への貢献が期待 できる。 • 研究活動面においては、質の高い研究成果を有しており、既に原子力エ ネルギーを軸とする国際的なネットワークも構築されており、今後の研究 連携の実効性も期待できる。 • ただし、計画の実現に向けては、教育研究計画の視点の更なる拡大に 努め、工学に偏ることなく、現状原子力技術にある重心を適切に移動さ せるなどして、原子力社会学との有機的な連携による学際融合拠点とし ての機能を一層高めるための工夫・検討が望まれる。 工学と社会科学 Solutionを求める 工学、医学、薬学、 農学、など ①原子力工学により、 文明観、社会観、生命 観に影響を与え、新た 『核兵器』 法学、政策論、教育学、 なパラダイムを生み出 リスク管理、金融・会計学、 す引き金となる。 組織論、など 観測技術 基礎理論 解釈を求める 社会の変化 ②文明観、社会観や 生命観によって、技 人間の営 術が求めるSolution みに対す が影響を受ける。 る基本的 ●万能細胞を使った研 理解 究への制約。 ●Pu(あるいは原子力 人文・社会科学 自然科学 (社会学、歴史学、宗教学、 そのもの)を忌避する社 (物理、化学、生物学、 自然観 倫理学、政治学、経済学、 会。 『手段として使えば有 地学、数学、など) 文学、など) 効だろうが、この一線 を越えてはいけない。』 Answer、View、 『核抑止』 Claude Monet, “Meules, Soleil, Voile” (1884) 20世紀が始まるころ、量子力学の勃興に呼応するように、印象派の絵画が現れた。 自然科学における自然観の変遷と社会における自然観の変遷が呼応したことを示す好例。 動機・現状認識(Why) • 原子力工学関係者のコンセンサスとして: – 原子力はエネルギー源として社会に貢献できる。 – 問題点はあるが、一層の研究開発と適切な社会的制度の構築によっ て解決できる。 – 社会の理解、賛同が十分でなく、意思決定プロセスに必要以上の時 間がかかり、最大多数の最大幸福を達成するという Consequentialism的(あるいはUtilitarianism的な)目標を実現でき ていない。 • Deontologicalに思考する公衆への対応をする必要がある。 – 公衆の「理解」を得るため、さまざまな工学的努力や説明の努力をし たが、どれも決め手にならなかった。何か、もっと効果的な解決策が あるのではないか? – 最近の『ルネッサンス』現象では、再び炉の新規発注が増加している。 しかし、廃棄物管理、なかんずく、処分については、状況が停滞して いる。 • 地球温暖化対策が最優先、そのための原子炉建設が重要。廃棄物処分 のための時間はまだあるので、今は急ぐ必要がない。 動機・現状認識(Why) • GoNERIで『社会学』を考えるのはなぜ?誰のため?一番そ のことで利益を得るのは誰?そのモティベーションの部分を 明確に規定してからはじめないとレトリックに堕する。 – 原子力業界の利益のため、であれば、正当化できない。 • 原子力を安全だ、安心だとpublicに押し付けることではない。 • 規制体系に改良の余地ありとすれば、『安全な原子力』も改 善の余地あり。社会が理解・納得できる規制体系の考え方 やそれを確立するためのアプローチがあるのではないか? • 重要なことは, – 社会が共有するパラダイム(社会観、文明観、生命観、など)を正しく 理解し、(社会に対する構造的理解) – publicが判断プロセスに参加できるよう、定量的判断材料を提供する、 (構造的社会理解に基づいた定量的性能評価) – それに則った技術的解決策(Performance)を追求する、 ことである。 Consequentialism (帰結主義) G.E.M. Anscombe, "Modern Moral Philosophy" (1958) • Actions are evaluated based on the results they achieve. • A morally right action is one that produces a good outcome, or consequence. • The ethical action is the one that maximizes overall good. • Such theories are labeled teleological(目的論的). • A consequentialist may argue that lying is wrong because of the negative consequences produced by lying — though a consequentialist may allow that certain foreseeable consequences might make lying acceptable. Utilitarianism(功利主義) John Stuart Mill's essay Utilitarianism (1861) • “the greatest good for the greatest number”(最大多数の最大幸福) • the moral worth of an action is solely determined by its contribution to overall utility, that is, its contribution to happiness or pleasure as summed among all persons. Deontology(義務論) • Actions are evaluated based on the motivation behind them. • Deontology derives the rightness or wrongness of an act from the character of the act itself. • A deontologist might argue that lying is always wrong, regardless of any potential "good" that might come from lying. Kant’s three significant formulations of the categorical imperative (定言命法) 『実践理性批判 』 (deontological) • Act only according to that maxim by which you can also will that it would become a universal law.「汝の信条が 普遍的法則となる事を、その信条を通して汝が同時 に意欲出来る、という信条に従ってのみ行為せよ」 • Act in such a way that you always treat humanity, whether in your own person or in the person of any other, never simply as a means, but always at the same time as an end. • Act as though you were, through your maxims, a lawmaking member of a kingdom of ends. Conflicting motives • Consequentialism seeks the best outcome, despite the action. • Deontology seeks the best action, despite the consequences. GoNERI「廃棄物・サイクル・社会学」 プログラムの方針(案) • 以上のような現状認識の中で、廃棄物・サイクルの分野で、 社会学的な取り組みをどのように進めるのか? • 社会科学的な考察を深めることで、工学の目指す方向性が 変わるのか? – 社会に対する構造的理解をベースに、Performance-based, Riskinformed, technology-neutral design and regulationという新しいト レンドにおいて、ターゲットとなるPerformanceを規定する。 – 既存のシステムがそのような新しいアプローチでどのように変わるの か?その分かりやすい実例を示すことが急務。 • 地層処分の安全評価は、そのような思想のもとに行われて いたはず。では、なぜ、社会の理解が得られないのか? – 問題点の整理。 – 新しいアプローチの『地層処分』バージョンを作る。 – 新しいアプローチの応用。 目指す到達点とマイルストーン • 究極の目標(理想像): – 原子力は社会の基盤となる重要な複雑・巨大技術であるが、現世代の 利用による負の影響が長期にわたり残存する可能性がある。また、関 連技術の開発に1世代を超える長い時間を要する。そのような選択肢に 対して、国民が合理的な判断に参加できるよう、工学と社会科学の両面 からアプローチをし、判断のための思想と方法論を構築する。 • GoNERIの『廃棄物・サイクル・社会学』分野での目標とマイル ストーン: – 上記のような目標達成のため、工学と社会学の境界領域の基礎(基礎 理論、手法など)を確立する。 – その領域で継続して研究・教育をする(第1世代の)人材を養成する。 – マイルストーン • 2007:方向性のための基礎調査、議論 • 2008:社会学(基礎的勉強・調査)、工学(地層処分性能評価の手法)、シン ポジウム • 2009:技術的問題に関する社会的意思決定・政策決定の類型化、 Stakeholderとの議論・フィールドワーク、ワークショップ • 2010:Coreになる大学院講義科目の開発、サマースクール • 2011:まとめのシンポジウム 方法論・アプローチ・手法(How) • 2007: – 東大UCBオフィスにおける議論・調査、 – 関連する人材の発掘 – 2008年3月25日:東大における議論 • 2008: – 通年:社会学勉強会:月2程度の頻度。(プランの具体化要) • Polycomテレビ会議を用いて遠隔で • 数回、バークレーからも – 2008年6月:UC Forum II • Session IIIが廃棄物・サイクル関連。 • Forumの基調がPerformance-based, Risk-informed, Tech-neutral – 2008年7月:安、東大滞在 – 2008年12月:??? – 2009年3月:UCBにてワークショップ(内々でのもの.) • 工学的なState-of-the-artsのまとめ *UC Forumは1月15,16日 • 社会学的アプローチのまとめ *2月末~3月初めにワークショップ. • Cross-cutting issues • 東大UCBオフィスの役割と連携のあり方 当該分野連携の経費内訳 (UCB) • 総額510万円(全体1650万円の約1/3) – – – – – – – 旅費(安ほか、米国内、日本) 60万円 報告書印刷費 20万円 消耗品費 10万円 連絡・通信費 10万円 安 50万円 ワークショップ(諸経費含む) 250万円 社会学勉強会 60万円 (バークレー開催分) • 講師旅費 50万円 • 連絡・通信・消耗品費 10万円 参加メンバー(Who) • 東大など日本 – – – – • 田中先生・長崎先生 小田さん Jorshan Choi先生? ??? バークレーなど米国 – – – – – – 安 Mick Apted Rebecca Adams? Tom Isaacs? Cathryn Carson その他、Berkeleyの社会科学者 • Kate O‘Neill – (training: poli sci) – http://ecnr.berkeley.edu/facPage/dispFP.php?I=624 • David Winickoff – (training: STS and law) – http://ecnr.berkeley.edu/facPage/dispFP.php?I=644 • その他? 今年度ここまでの成果 • 社会科学勉強会 • 外部協力者との接触 • フィールドワーク 今年度後半のスケジュール • 外部協力者との協力内容を煮詰める。 • 米国におけるフィールドワークの計画立案 (ワークショップの前後) • 社会科学勉強会のまとめとしてのワーク ショップat Berkeley(2月末~3月初め) • 次年度以降の計画立案 • 10月の成果発表 • 10月にアイザックさんを交えてワークショップ (10/11予定)
© Copyright 2024 ExpyDoc