産業衛生とタバコ • 労働災害とタバコ • メンタルヘルスとタバコ • 糖尿病と職場の受動喫煙 • 検診異常所見率とタバコ 2009年3月4日 松崎道幸(日本禁煙学会理事) [email protected] 労働安全とタバコ 労働災害とタバコ • 喫煙で労災増加 • 受動喫煙でも増加の可能性 労働災害発生要因 7.29倍 インド化学工場調査.2008年 喫煙 2.51倍 短期 雇用 1.01倍 飲酒 Saha et .al. Factors of occupational injury: a survey in a chemical company. Ind Health. 2008 Apr;46(2):152-7. 労働災害発生リスク 2004年 フランス鉄道従業員 30歳未満 現職5年未満 不眠症 喫煙 1.47倍 1.43倍 1.30倍 1.27倍 Chau et al. Correlates of occupational injuries for various jobs in railway workers: a case-control study. J Occup Health. 2004 Jul;46(4):272-80. http://www.jstage.jst.go.jp/article/joh/46/4/272/_pdf 喫煙による労働災害リスク増加 報告・対象・調査法 喫煙者の労働災害リスク (非喫煙者=1) 調整因子 Wenら(2005年) 前向き調査 公務員・教師64319名(男性 100%) 2.91 (1.00-8.42) 年令・飲酒習慣 Olecknoら(1987) 症例対照調査 労災入院患者869名(男性82%) 2.52 (1.79-3.55) 年令・性・飲酒習慣 Gauchardら(2003) 症例対照調査 鉄道労働者854名(男性100%) 1.53 (1.13-2.07) 年令・肥満指数・職業経験・ 飲酒習慣・ストレス・身体症 状・不安・うつ病・収入 Ryanら(1992) 前向き調査 郵便労働者2537名(男性66%) 1.40 (1.11-1.77) 年令・性・人種・薬物使用・ 運動習慣・職業分類 Chauら(2004) 症例対照調査 建設労働者1768名(男性100%) 1.27 (1.04-1.76) 年令・職業経験・身体活動 度・身体障害・不眠症 Nakata A et al. Non-fatal occupational injury among active and passive smokers in small- and medium-scale manufacturing enterprises in Japan. Soc Sci Med. 2006 Nov;63(9):2452-63. 喫煙習慣別労働災害リスク 対象:非致死性労働災害・八潮市中小企業製造業労働者2302名・無作為抽出 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所.東京大学.2006年 労 働 災 害 リ ス ク 1.58 1.00 非喫煙者 喫煙者 Nakata A et al. Non-fatal occupational injury among active and passive smokers in small- and medium-scale manufacturing enterprises in Japan. Soc Sci Med. 2006 Nov;63(9):2452-63. 非喫煙者の労働災害リスク:受動喫煙状態別 対象:非致死性労働災害・八潮市中小企業製造業労働者2302名・無作為 抽出独立行政法人 労働安全衛生総合研究所.東京大学.2006年 労 働 災 害 リ ス ク 有意差はないが, 傾向が覗える 1.72 1.00 なし 1.11 時々あり 常にあり 職場の受動喫煙 Nakata A et al. Non-fatal occupational injury among active and passive smokers in small- and medium-scale manufacturing enterprises in Japan. Soc Sci Med. 2006 Nov;63(9):2452-63. メンタルヘルスとタバコ うつ状態とタバコ • 喫煙でうつ病リスク増加 • 職場の受動喫煙でうつ状態悪化 喫煙者はうつ病になりやすい:日本人男性 6.5* う つ 病 罹 患 率 % *(p<0.05) 2.7 2.4 非喫煙者 禁煙者 喫煙者 http://joh.med.uoeh-u.ac.jp/pdf/E46/E46_6_10.pdf 喫煙者と職場受動喫煙者は 「うつ」のリスクが高い Nakata 他. 米国国立労働安全衛生研究所.2008年. 対象:東京近郊労働者2770名.(大半が製造業) Nakata et al. Active and passive smoking and depression among Japanese workers. Prev Med. 2008 May;46(5):451-6. 能動喫煙と職場の受動喫煙は 「うつ」のリスクを高める Nakata 他. 米国国立労働安全衛生研究所.2008年. 対象:東京近郊労働者2770名.(大半が製造業) Nakata A et al. Active and passive smoking and depression among Japanese workers. Prev Med. 2008 May;46(5):451-6. 2.25 * う つ 状 態 リ ス ク *有意差あり 1.63 * 1.00 なし あり 職場の受動喫煙 非喫煙者 喫煙者 受動喫煙と糖尿病 職場の受動喫煙で糖尿病倍増 2008年04月03日朝日新聞 職場の受動喫煙で糖尿病リスクが81%増加:日本 3.4年追跡調査。日本 HIPOP-OHP study.調整因子:年齢、性、BMI、運動習慣、飲酒、糖尿 病家族歴、血圧、健診受診歴、甘味飲料摂取、野菜摂取、脂肪摂取 糖 尿 病 発 病 リ ス ク 1.81 * 1.99 * *有意差あり 1.00 なし あり 職場の受動喫煙 喫煙者 非喫煙者 Hayashino(京大)ら Diabetes Care. 2008 Apr;31(4):732-4. 耐糖能異常出現リスク: 受動喫煙で35%、能動喫煙で65%増加:米国 糖 尿 病 発 病 リ ス ク 18-30 才男女15年追跡調査.米国CARDIA研究.調整因子:性、年齢、人 種、学歴、収入、血圧、中性脂肪、飲酒、BMI、喫煙状態の変化 尿中コチニンで受動喫煙状態判別 1.65 * 1.35* 1.00 なし あり 受動喫煙 喫煙者 非喫煙者 Houstonら: BMJ. 2006 May 6;332(7549):1064-9. 禁煙の職場ほど働く人が健康。 完全禁煙で異常率が半減 職場を完全禁煙にする と喫煙者が減り、受動 喫煙も減るためであろう http://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/47/4/139/_pdf 異常所見率 (全体) 産衛誌2005; 47: 139–141 % 異 常 所 見 率 60 職場の喫煙規制別 検診異常率 秋田大学調査 2005年 40 高脂血症 肥満 肝機能異常 高血圧 20 難聴 高血糖 心電図異常 0 完全禁煙 分煙 自由喫煙 職場の喫煙規制状況 結論 • 喫煙は、労働災害、うつ病、糖尿病のリスク を大きく増やす • 健診異常所見率は完全禁煙の職場の労働 者において最低である • 雇用者の禁煙と職場の完全禁煙を推進す ることが産業衛生上の重要緊急課題である • 産業医が自ら禁煙の手本を示すことが期待 される
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